【小宮果穂とちょいワル男子のオトナ甘くてコドモ苦い】ぷらすえっくす! 作:形のない者
まえがき
オチなし。
そこは魔法魔術が実在する世界。
普通の学校が放課後を迎えた頃。
教室の掃き掃除を済ませた魔女っ子アイドルは、いざ窓を開け放って箒に跨り、夕空の向こうへレッツゴー!
飛び立つは魔女のタマゴ。
箒の助けがなければ空も飛べない魔女の雛鳥は、夕闇の海を越えた魔女学園に訪れる。
「おっはよーございまーすっ!」
『おはよう!!!! 果穂!!』
既に魔女教室に揃っていた
「みなさん! いつもの顔ぶれですねぇ……では! あとは先生を呼ぶだけですっ!」
小宮果穂のセリフに一同はうなずく。
『せーのっ────
廊下側の引き戸がガラガラと開かれた。
黒い生徒名簿を持った天八先生が入ってくる。
「はーい。えー朝起きたらこの魔女学園の教師になっていました、君たちの担任の天八先生です。よろしくする気はないので自習ですね~」
『エェ~っ!?』
魔女生徒一同は驚愕する。
対する教壇側からの眺めは壮観だった。
最前列の席には、小宮、園田、西城、杜野、有栖川。
二列目の席には、佑芽、倉本、篠澤、秦谷、樋口。
三列目の席には、風野、田中、甜花、甘奈、千雪。
四列目の席には、咲季、月村、藤田、葛城、紫雲。
五列目の席には、芹沢、有村、
六列目の席には、福丸、市川、幽谷、白瀬、賀陽。
天八先生は、魔女生徒の顔ぶれを見て苦笑する。
(……めんどくせぇ集まりだなぁ……)
そこで放クラが叱咤した。
「天八先生! ちゃんと授業やってくださいっ!」
「天八先生の教えがないと、私たち一人前の魔女になれません!」
「でも……もしかして疲れてんのか?」
「教師職は……多忙を極めると、お聞きします……」
「なら放課後はきちんと休養に努めましょう! 心身を癒す魔術魔術とかあるかしら? 先生を実験台にして、新しく覚えた魔術を掛けてみたいわ!」
「勘弁してください」
いきなり訳の分からない世界が始まって混乱している。
しかし期待されているのなら応えねばならぬのがヒーローの役目。
(あ、そうだ)「──実は誤って忘却魔術に掛かったらしく。みなさんの顔と名前は覚えていますが、今日の授業内容をまるっと忘れてしまいまして」
『────えぇーっ!?』
「その代わりテキトーな魔術講座を考えてきたので、今回はそれを教えましょう」
天八先生はチョークを手にして黒板に書き記す。
「さて、今日お教えする魔術は────ダジャレ魔術です」
『だ……ダジャレ魔術……!?』
────────────
属性 地 水 火 風
特性 各種、単語概念
『属性』とかけて、
『特性』と解きます。
その心はどちらも、
『魔術効果』でしょう。
────────────
「たとえば────風属性とかけまして、記憶と解きます。その心はどちらも『流れる』ものです」
『……』
「はい。では、なぜ『記憶は流れるもの』なのか、分かる人ー」
杜野凛世が挙手する。
「はい……」
「よし杜野。答えてみろ」
「では……記憶とは、変化し続ける情報網……覚え、忘れ、常に変化を続けるもの……故に、記憶とは移ろうもの……その流動性を、風と照応させたので、ございましょう……」
「及第点だ。ちなみに流動性との照応であれば水属性でも構わない。反面、その観点では地属性と相性が悪い概念だな。──では、この照応で形成できる魔術効果とは何か? 分かる人~というか、自分ならこんなの作る~って人ー」
風野灯織が挙手する。
「はい!」
「よしいいぞ、風野。起立」
「──私は……『対象の記憶を風化』させます。忘却や希薄化が可能かと……また、腕の立つ魔女なら記憶の改変も可能でしょう」
「なるほど。そこに先生の意見も付け加えると、自分の記憶を風で固定化し、忘れないようにする応用も可能だな」
「え……し、しかし、風は流動性が強くて……? いえ、不可能ではないと思いますが……」
「たしかに風は動くものだが、風は容易に起こせるものでもある。風とは空間の移動だ。腕を振るっただけで微風が発生する。なら逆風を当てて相殺すれば、それは実質“固定”と同義だろう? ──『固定』という言い方が良くなかったな。風起こしによる『相殺』や、流動性に対する『拮抗』『制御』などと換言してみよう」
「……っ! な、なるほど……勉強になります……!」
「────では、今の例をもとに、自分だけのダジャレ魔術を作ってみろ」(本当にできるかは知らんけど。まぁ魔女ならできるだろうたぶん)「そして完成した奴からグラウンドに出てお披露目だ。先生これから見守るだけだから、あとは勝手にやってろー」
天八先生はデスクの椅子に座って暇をつぶす。
そのあいだに魔女たちは互いに語り合って意見を交換し、ダジャレ魔術を作り始めた。
§
魔術施行が可能な校庭のグラウンドにて。
「ヒーロー魔女、小宮果穂! 行きますっ!
風とかけて、ヒーローと解きますっ! その心はぁ……どちらも『駆けつけるもの』ですっ!
ゆえに、わが魔術は────『英雄疾走』────ッ!!」
クラウチングスタートを切った小宮果穂は、100mの距離を風のように一瞬で駆け抜けた。
高速移動系魔術の完成である。
「すごい果穂!」
「やったな!」
「お見事……」
「素晴らしいわ!」
「えへへ……! ありがとうございますっ!」
続いて篠澤広がチャレンジする。
「強風とかけて虚弱と解く。その心はどちらも『すぐ倒れるもの』……
故に我が魔術は────『虚風転倒』────」
突風が校庭の芝生をなびかせ、虚弱の風に触れたもの全てをすっ転ばせた。
『わぁあっ……!?』
「ふふっ。わたしのダジャレで、みんな
『……っ!!! ────あははっ……!』
校庭に多くの笑い声が咲く。
それからも魔女っ子アイドル達は、実に楽しげに魔術の修行に打ち込んでいた。
§