※この作品はR-18です。

【小宮果穂とちょいワル男子のオトナ甘くてコドモ苦い】ぷらすえっくす!   作:形のない者

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pR【四時限目:病(や)だなって】小宮果穂

 

 休日。晴天の昼前。最寄りの公園。

 アルファと小宮果穂は、日課の体力錬成に精を出していた。

 

 そこへ偶然、ストレイライトが通りかかる。

 

「あ! 果穂ちゃーん!」

「……! あさひさん!」

 

 芹沢あさひと小宮果穂は笑い合って駆け寄る。

 

「今日はストレイライトでお出かけですか?」

「うん! ほら、この前サバゲーしたでしょ? あれを公園でやろうって、愛依ちゃんたちを誘ったの!」

「サバゲー……でもあれは、赤外線のおもちゃがないと……」

「じゃーん!」

 

 芹沢あさひは、拳銃型の赤外線銃(ハンドガン)を取り出す。

 その後ろから手を振って近づいてきた和泉愛依は、刀型の赤外線刀(カタナ)を見せてきた。

 

「わぁ……! 買ったんですね!」

「うん!」

「うちの弟も欲しがってさ~。でも一台だけで超高いじゃん? さすがに二台買うのはな~……と思っていたら、あさひちゃんとそれぞれ買えばいいって話になって。それで一緒に買って、こうして遊ぼーってことになったわけ~。一個だけじゃあ遊べないからね~!」

「そうだったんですか! あれ、でも……愛依さんの弟さんは……?」

「それがね。午前中にいっぱい遊んでくれたんだけど、もう疲れちゃったみたいで。いま愛依ちゃんの家で休んでる」

「あはは~。あさひちゃん、体力ありまくりだから~! ──でもぶっちゃけ、私も遊び疲れてて……もうムリ! というわけで応援を呼んだわけ。あとはお願いね、冬優子ちゃん!」

 

 午前中は一切、芹沢あさひ・和泉愛依・和泉弟妹の赤外線バトルに参加しなかった黛冬優子は、どうせこうなると思って体力を温存していたのだ。しかし、だからといって、こうなる展開は避けたかった。汗をかいたらメイクが落ちる。まったく芹沢あさひの体力お化けには困ったものである。内心でため息をつきながら、表向きはいつも通りのふゆに徹する。

 

「うん❤ 任せて! でも~……もしよかったら、果穂ちゃんたちも遊ばない?」

 

 それはそれとして僥倖である。運良く小宮果穂と出会えた。ここは芹沢あさひの対戦相手になってほしい。そうすれば黛冬優子の負担は著しく減る。彼女はきゅるんとした可愛さを振りまきながら、虎視眈々とチャンスを逃さない。

 

「……いいんですか?」

「もちろんだよ~❤ 天道さんもどうかな~?」

「いいっすよ。果穂、休憩がてらに遊んだらどうだ?」

「……! じゃあ、やりますっ! 混ぜてくださーい!」

 

 和泉愛依と黛冬優子は、近くのベンチに腰掛ける。

 芹沢あさひ、小宮果穂、アルファの三人は、広い場所で話し合う。

 

 武器は二つ。必然タイマン形式。レギュレーションは勝ち抜き形式。最初はジャンケンでかわりばんこの順番を決める。

 

 第一戦は、拳銃の小宮果穂vs旋空(カタナ)の芹沢あさひ。──勝者は芹沢あさひ。

 小宮果穂の拳銃速射に対し、芹沢あさひは突貫斬撃で斬り伏せた。

 

 第二戦は、拳銃の小宮果穂vs旋空のアルファ。──勝者は小宮果穂。

 アルファは思う。さすがに西部劇の決闘形式で“拳銃対カタナ”は厳しいものがある。拳銃の射程は20mなのに対して、カタナの射程は15m。残り5mの差で殺られてしまう。

 

 第三戦は、拳銃の芹沢あさひvs旋空のアルファ。

 

「ハナワカ! リベンジだ! 次は勝つ!!」

「……いいっすね。ならばこちらは120%の力で対峙します」

 

 風向きが変わる。雰囲気が一変する。

 互いに本気。全身全霊のその先をひねり出す気迫。

 

「……それでは! 行きますよぉ~~~~? はっけよーい────残ったっ!」

 

 小宮果穂が仕切る。

 

 相対距離30m。

 アルファは駆け出す。

 芹沢あさひは迎撃する。

 

 アルファの跳躍宙返り。着地時点で射程圏内。旋空抜刀。

 芹沢あさひは屈むことで飛ぶ斬撃を躱しつつ、精密射撃。

 

 アルファの三角跳び。脚部筋肉が悲鳴を上げつつ駆け抜けながら納刀。再び抜刀する。カタナは抜刀してから一秒間しか赤外線が出現しないのだ。納刀すれば赤外線照射時間がリセットされるため、抜刀後は即時納刀する必要がある。

 対する芹沢あさひは見よう見まねで横っ飛び宙返り。赤外線の斬撃を回避した。

 

『……っ!?』

「ちょ……!」

 

 和泉愛依と小宮果穂は驚く。今の動きは、完全にアルファの回避法をコピーしたものだ。

 黛冬優子は心配する。それは見よう見まねでやってはいけない動きだ。着地に失敗したらケガどころでは済まない。アルファは──なぜかは知らないが──完璧に宙返り等の体術を会得しているため、危なっかしいところがない。そのため誰も何も言わないのだ。加えて彼は体術を使う時、他人にぶつからないよう配慮することもできている。万が一さえ想定している気遣いがある。しかし芹沢あさひは違う。ただ“できそうだからやった”だけ。自分の身の安全や他人の被害を何も考えていない。

 

「────」

 

 芹沢あさひは着地した。一瞬、足首が曲がりそうになる。あと少しでねんざするところだった。

 それを目にしたアルファは万が一を考えて接近戦に転じる。このまま中距離で撃ち合っていれば、彼女は再び宙返りを敢行する。今度こそねんざするかもしれない。そのため宙返りによる回避術は発動させない。納刀。

 

 芹沢あさひの速射。

 アルファは地面と水平になるまで姿勢を低くしつつ、赤いレーザー光線を鞘で防ぎつつ急接近。接近戦に持ち込む。相対距離5m。ここまでくれば宙返りするより横っ飛びする方が最適だ。それまでに五発被弾していたが、芹沢あさひの安全には代えられない。

 

 近距離の射撃と斬撃。

 芹沢あさひは完勝するため、一発も喰らう気はない。横っ飛びしつつ速射する。

 アルファは──刹那、視線を下げると何かを見つけて──刀を捨てた。相手と同じ方向に横っ飛び。

 

「っ!?」

 

 芹沢あさひは驚く。なぜ刀を捨てたのか。勝負を諦めたのか。めぐる思考の中、突として体のバランスが崩れる。

 

「うわぁ!」

 

 芹沢あさひの着地場所には、一個の小石が転がっていた。それを踏んだ芹沢あさひは、横っ飛びした慣性を受けているため、思いっきり後頭部から倒れ込む。

 すかさず手を伸ばしたアルファは、芹沢あさひの腕を取ってたたらを踏む────が、思ったより慣性が強くて引っ張られた。

 

(うおっ! どれだけの踏み込みで跳んだんだこの人────!? 負けず嫌いが過ぎるだ────)

 

 とっさにアルファは身を倒し、芹沢あさひの後頭部に手を回す。

 ふたりは転倒。

 仰向けに転んだ芹沢あさひの全身。それに覆いかぶさる形で、アルファの全身が重くのしかかる。

 

「────ろぉっと!? っ……すみません、先輩、おケガは? 無いなら一言説教の時間っす。──ひとつルールを決めましょう。障害物のないビルの中ならまだしも、滑ったり転んだりすると膝小僧を擦りむく土の公園では、俺含めて宙返りは禁止です。なぜかは……今の状態を見れば分かりますよね?」

「……………………」

 

 芹沢あさひは、小さくうなずく。

 するとベンチを蹴り立った和泉愛依が、超絶慌てた様子で駆けつけてきた。

 

「ちょいちょいちょい! あさひちゃんだいじょうぶ~!? 今思いっきり頭から突っ込まなかった~!?」

「……大丈夫っす。ハナワカが守ってくれたっす……」

「マジで!? 天道さんマジありがと~!! でも! 天道さんも大丈夫な感じ!?」

「ハナワカ……わたしのせいで、ケガしちゃった?」

 

 アルファは重い腰を上げて、芹沢あさひの全身から離れる。馬乗りになってしまった状態から素早く離れて、彼女の後頭部を庇った手の甲を確認した。

 

「あー……まぁ、特に痛みはないっすけど……手の甲が、少し。ちょっとグロイから見ないほうがいいっすよ」

「えぇええ!? いやいや、ちゃんと見せてみー!? うち、消毒液とばんそうこう持ってきてるから!」

「用意がいいっすね。──先輩、立てますか?」

「うん」

 

 アルファは、もう片方の手で芹沢あさひの手を引っ張り、立ち上がらせる。

 

 一方の黛冬優子は、和泉愛依と同じタイミングでベンチから立ち上がって駆けつけていたが、小宮果穂のとなりで立ち止まっていた。和泉愛依だけで事足りると判断したのもそうだが、このまま近づけば“冬優子”が出てきてしまい、怒り心頭の大説教が始まってしまうことを我慢した部分もある。

 ともあれ無事で良かった。ため息ひとつ。まったく、このあと芹沢あさひには、たっぷり説教を喰らわせなくてはならない。それはそれとして、となりには小宮果穂が立っている。芹沢あさひのせいで、小宮果穂が好意を寄せる人にケガをさせてしまった。その謝罪を代わりにした方が良いだろうか。

 

「ご、ごめんね~果穂ちゃん……! あさひちゃんも、悪気はな────」

 

 黛冬優子は目を見張った。

 自分が今、目にしているものを疑うほかない。

 

「────え……?」

 

 光のない瞳。影差す表情。

 それはすべてアルファの横顔に注ぎ込まれていた。

 

「っ……!? ……えっと……果穂ちゃん……?」

 

 思えば、小宮果穂の性格を考えるに。

 転倒したふたりの下に、和泉愛依と同じタイミングで駆けつけなかったのは、少し違和感がある。

 

 小宮果穂もびっくりしていたのだろう、と思っていたが。これは明らかに異なる。

 芹沢あさひとアルファが体を重ねた瞬間、何を思ったのかは知らないが────

 

「…………」

 

 ────ポツポツとしずくが弾ける。

 通り雨が降ってきた。

 

「あ。雨っす」

「え、マジ? あんなに晴れてたのに!」

「んじゃ解散っすね。そろそろ帰るつもりだったので。また遊びましょう」

「あ、ハナワカ! 今度こそリベンジするからね!」

「あはは~! あさひちゃん、ホント負けず嫌いだね~!」

「ははっ。受けて立ちますよ!」

 

 手の甲にばんそうこうを貼ってきたアルファは、小宮果穂と黛冬優子の下に戻る。

 

「──……っ?」

 

 そこでアルファは、小宮果穂から受ける視線の意味に気がついた。それはアルファが最も苦手とするものである。

 さらに黛冬優子の怯え具合を見るに……アルファは──なるほど──と得心した。どうやら自分は、少女に対する好感度調整や精神療法をミスったようである。などとアルファは思う。

 

「……黛さん。すみません。あさひ先輩がどこもケガしてないか、もう一度確認してみてください。後頭部しか守れなかったもので。服の裏、たとえば背中とか……擦りむいてるかもしれないっすから」

「……! わ、わかった……あさひちゃんを庇ってくれて、ありがとね❤ 天道さん!」

「いえいえ。……んじゃ、帰るか! 果穂」

 

 不意に呼びかけられた小宮果穂の瞳に光が戻る。

 

「あっ……は い……」

 

 その返事には、ややどもりがあった。

 

          §

 

 一方その後。和泉邸の風呂場。

 黛冬優子は自分なりの解釈で、芹沢あさひに忠告する。

 

「あさひ」

「?」

「あまり小宮果穂のことを困らせんじゃないわよ」

「……困らせてないっすよ? ……でも冬優子ちゃんがそういうってことは……わたし、なにかしちゃったっすか?」

「……いや、特には……」

「え~? どういうことっすかー! なんか理不尽っす~!」

「あんたと違って乙女心ってのはね、複雑なのよ!」

「え~。わたしも女の子っすよー冬優子ちゃ~ん!」

「だったら恋のひとつくらいしてみなさい」

「?? なんで恋の話になる?」

「っ~~……」

 

 その時、和泉愛依が入ってくる。

 

「なになに!? いま冬優子ちゃんとあさひちゃん、恋バナしてた~!? 混ぜて混ぜて~!」

「してない!」

「うーん……」

 

 芹沢あさひは腕を組んで考え込む。それでもさっぱり分からなかった。

 

          §

 

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