【小宮果穂とちょいワル男子のオトナ甘くてコドモ苦い】ぷらすえっくす! 作:形のない者
後日。
夕飯後の小宮宅。
食卓で向かい合う親子。
黒いパーカーを着込む小宮果穂は、母親に正面切って『おねがい』を持ちかけていた。
「お母さん! ご相談がありますっ!」
「……なーに?」
「門限の時間を……延ばしてほしい、ですっ」
「……理由を聞いてもいいかしら」
「えっと……アルファさんと、もっと遊びたい、から……じゃ、ダメ……?」
小宮母は、いつも通りに振る舞いつつ、頭の中では大回転。
最近の娘の様子は、ちょっとおかしい。直近では黒いパーカーが顕著だ。どういう経緯で購入したのかは不明だが、主にアルファとの関係で不安定になっていると見受けられる。それは今の相談事でも明らかだ。
「……もともと中学に上がったら、門限は延ばす予定だったんだけど……」
「それ! 今からじゃ、ダメかな……? 早すぎる……?」
「……──じゃあ、こうしましょう」
「!」
「第一に、
「え……」
「第二に、アルファさんと遊ぶ時だけは、門限の時間を少しだけ延ばしてもいいわよ」
「──!」
「約束、守れる?」
「……うんっ!」
「じゃあ、このこと。一応アルファさんに伝えるけど、いーい?」
「うん! ありがとう、お母さん!」
そこで小宮母は、ひとつの懸念点を提示する。
「ただ……夜ご飯は、どうしましょうか?」
「あ! そっか……あたしは、アルファさんといっしょに食べることも、あるかもだから……」
「じゃあ、そういう時は、あらかじめ連絡ちょうだいね」
「うん!」
最後に小宮母は、必要重大なことを問いかける。
「ところで果穂は────アルファさんのこと、好き?」
「────えっ!?」
そこまで驚くことだろうか。左右に揺れる瞳。
「……う、うん~?」
うなずくような、どこか否定しきれないけど否定する部分もあるかのような、斜めに落ちていく顔ばせ。
そんな反応を見るに、友達に対する“好き”とは、明らかに異なるものと分かる。
「……そう」(よくわからないけど、複雑なのね……)
「……それが、どうしたの……?」
「いいえ。ただ、ちょっと別の話で……これから大事なことを教えたいんだけど────あ、その前にお兄ちゃんには、しばらく部屋にいてもらえるよう言ってくれる?」
「……? うん……わかった」
うなずく小宮果穂は、伝言を果たすため席を立つ。
小走りで駆け出すが、途中で立ち止まって振り返る。
「お母さん。何を教えてくれるの……?」
「────
§
翌日。
夜の帳が降りたアルファ邸リビング。
アルファは食卓でデスクワークをしている。
黒いパーカー姿の小宮果穂は、ソファに座ってスマホをいじる。検索して調べ物。
────ヤンデレ‐病んだ上で愛すること。恋愛で病的な認識に陥り、恋い慕うあまり愛情表現が暴走する人のこと。
小宮果穂は眉をしかめる。
これには異を唱えたい。
「あの、アルファさん! あたし、病んでないと思いますっ!」
「そうかい。なら門限の時間を過ぎているのに、なぜまだ俺の家にいる? 一応お前の母親から、俺に限定して門限が延びたという報告は受けているけど……どうやって母親を説得した」
「アルファさんともっと遊びたいからって言ったら、OKしてくれました!」
「マジ? そんな直球で? ……なら、それに関わることで……なんかほかに言われたことはないか?」
「────っ!」
保険体育。
女の子が身を守るために必要なこと。
「なるほど。死ぬほど安心した。教育が行き届いている良い家庭だな。それが普通であるべき家庭の姿だよ、本当に。……マジで果穂は環境に恵まれている。素晴らしいことだ。小宮家の人達には尊敬の念しかない。ただ、まぁ────ちょっと遅かったけどな!」
「ッ……!」
「フハハハハ! ──……や、ホントごめん」
「い、いえっ……。……………………」
沈黙。
その気まずさを、アルファの理屈多弁が突き破る。
その点、彼にとっての理屈とは、ムードを
「日本において。昔、男女七歳にして席を
「……?」
「席とは
「……」
「つまり何が言いたいかって? もし俺だったら、子供が七歳の頃には性教育を仕込んでおくかな~? って話だ。無論、子供の知的年齢や精神年齢、その時の対人関係や性格も加味して、だいぶん調整するけど……そうなると低学年が終わる頃には、やっぱ教えるかな~。いや、どうだろ……やっぱ実際に子を持ってみないと、こういうのは分からないな。──ま、俺は子を儲けるつもりは微塵もないんですけどネ!」
アルファは笑う。
静寂。
小宮果穂は押し黙る。
「バレたな」
「……え?」
「俺が抱いたこと、確定でバレた」
「っ……!?」
「保健体育の授業を母親から聞いている娘の反応が、予想より薄いというか、あまり驚かないというか、真剣に聞いているのはいいんだけど、なーんか違和感があるというか……あら? これってもしかして既に……? ──的な?」
「……っ……!」
「果穂は素直でいい子なぶん、ウソが苦手だからなぁ……」
「────」
「ま、たとえ得意でも。ちゃんと見ていれば気づくのが親ってもんだ。──それに、ぶっちゃけバレても問題はない。なぜならやましいことなんて何もしてないんだから。ただ愛し合っているだけだ。──や、最初は襲っちまったんだけど。それは百パー俺が悪い。両手が後ろに回る所業だ。なので改めて────申し訳ございませんでした」
突然アルファは良心の呵責に苛まれたのか、椅子から滑り降りるなり両膝をついて五体投地。流れるような完璧な土下座を披露する。
「えっ……!? あ、あの! あたしは……! アルファさんだったから、“セーフ”だったので……!」
かつてのやり取りを繰り返す。
するとアルファは、歯噛みして起き上がった。後頭部をかいて渋い顔。
「いや~。これたぶん一生気にする罪だなー! あの時の修行不足が悔やまれる……あと果穂が可愛すぎるのが悪い。いや悪くないけど」
「っ……!」
可愛い。そう言われて少女は赤ら顔。
その表情を見たら再び興奮してしまうため、青年は煩悩抑制に勤しむ。
「……いや無理だな。どうする、果穂? 俺は────いつでもいいぜ?」
流し目の誘い文句。
逆らえるはずもない魅力。
「っ────」
視線を逸らす赤毛の少女は、広いソファのすぐとなりの席を────ポンポン、と叩いた。
§
しかし小宮果穂は“おあずけ”を喰らっていた。
当のアルファは台所で調理中。少女はむすっと頬を膨らませて待ち続ける。
「悪い悪い。焦らすと昂まるだろ? それにちょうど腹減ってたからさ! おっぱじめたら、寝る時間に食うことになって体に悪いし!」
「…………」
アルファは大皿と、オレンジジュースのペットボトルを二本持ってくる。
大皿には、食パンにケチャップ、ベーコンにレタスを使った、アルファお手製のピザがある。オプションに卵焼きやセロリも付いていた。
また、ピザの大皿には、なぜかサランラップが掛けてある。すぐ食べるわけではないようだ。どうしてだろう。と思っていると、ソファ手前の座卓に大皿が置かれて、アルファは──小宮果穂が指定した席に──どかっと座って落ち着いた。
「さて……ちょっとかなり、お行儀の悪い食べ方をしよう」
「……?」
「イチャイチャしながら食べようぜ?」
「っ?!」
アルファは人差し指をくいっくいっと曲げて招く。
しばしためらった小宮果穂は、固くてたくましい左ひざの上に少しだけまたがって、斜め向きに対面。密着。相手の左上腕と肘を抱き込んで、張った胸を押し付ける。擦れる黒いパーカー。たくましい左肩の上に顔を載せて、ほっぺを寝かせる。首筋でもなんでもいいから噛みたくなる。ふつふつと煮えたぎる衝動の発露。
「怪獣になっていいよ」
「っ────」
そんなことを言われたら。はち切れんばかりの思いの丈。
ぶちかます以外に方法を知らない。衝動の抑え方なんて、誰からも教えられていない。
「……チュー、してください……」
上目遣いのおねだり。
青年は腰に手を回して抱き上げる。
少女の反り上がる腰つき。
柔和な口づけ。
ケチャップの味。
「……?」
少女は振り返る。いくつかあるピザのうち、一斤だけかじった跡がある。味見だろうか。つまみ食いだろうか。どちらでもいい。片手で大皿を拾った少女は、もう片手を青年の顔の横に突き出し、ソファの背もたれもろとも相手を押し倒す。展開されるソファベッド。大きな体の上で両足を遊ばせる少女は、青年の顔の横に大皿を置く。サランラップを少し開封して一斤のピザを取り出す。ぱくりと一口。肉厚で食感よし。ケチャップがおいしい。
「俺にも頂戴」
「……あーん」
食べかけのピザを、どうぞと口元に持っていく。
青年は、あーん、と大きな口を開けて噛み付いた。もぐもぐと咀嚼。
(……間接キスだ……)
赤らむ少女は、なぜか目を細めて訝しむような目つき。青年を見下ろす。不機嫌そうな表情だ。
対する青年はひと目で見抜く。悦んでいることを悟られたくないため、ポーカーフェイスを演じているだけであると。ならばそのポーカーフェイスを崩して素直にさせよう。頭に手を伸ばしてわしゃわしゃと撫で回す。
「……ん……」
目をつむる少女は満更でもない様子で、すんとした表情を作る。
青年は、頭をぽんぽんと優しくたたくと、ぐっと力を込めて引き寄せた。
男の力強さに押し負けた少女は流されてしまい、青年の左胸に顔を寝かせる。あたたかい体温。右耳に響く鼓動の音。一定のリズム。乱してみたい。乱してやりたい。しかし、すでにこちらが乱されている。ずっと頭をなでなでされている。どうしようもない気持ちよさ。心地よさ。快感。逃れるために身をよじる。体の上から降りて、腕の上に乗る。青年の腕を枕として、添い寝。片手に残ったピザをぱくぱくと食べきる。指先にケチャップがついた。ぺろりと舐める。
「あー……」
「……?」
残念そうに唇を舐めた青年は、寝転がって横向きとなり、少女を抱き込む。
柔らかくも固く逞しい脇に
「…………」
もっとこうしていたい。ずっとこうしていたい。
ほかの人と、どれだけこういうことをしてきたのか。
ほかの人は、どれだけこういうことが上手なのか。
余計なことを考えてしまう。
彼の時間を奪って奪って奪いまくって独り占めにしたい。
不意に青年は、少女の脇腹を攻めた。
「っ!? ふっ────あはは……! や、やめって……くださいっ……あはは……! く、くすぐったいですぅっ……!」
くすぐり攻撃を受けた。
いたずらっぽく笑う青年。
少女はお返しに反撃する。
「こしょこしょこしょこしょ……!」
「ふはは……!」
青年は逆側に寝転んで逃げる。しかし腕枕をしているため逃れられない。また寝転んで戻ってきたところを少女は追撃する。すると青年もくすぐり返す。くすぐり対決だ。どちらが根を上げるか勝負である。
「────あっんっ……!」
勝負は無効試合となった。否、青年の反則負けである。
青年の右手によって突然、お腹と脇腹の真ん中あたりを指圧された。
青年の左手によって突然、背中のツボを指圧された。脳に電流が走る心地だ。
青年は覆いかぶさる。
少女は圧迫される。
「んっ……んん~……っ」
全身のツボを指圧されていく。マッサージだ。とても気持ちがいい。全身を預ける。自由にされる。片脚を持ち上げられてふくらはぎをもちもちとされる。強い指圧を受けて、びくん、と別の反応が起きる。性的な攻撃を受けたと錯覚した。いつ性的なことが始まるのかと、疑って/期待して、身構えてしまう。
「ふわぁ……っ……」
全身脱力。弛緩した筋肉。
馬乗りの青年はピザを手に取ると、ひとりでぱくり、豪快に一口で食べてしまう。指先にケチャップ。それを舐めとろうとする。
少女は、力ない両腕を上げて、手のひらをパッと開く。とろんとした目つき。求める表情を送る。
「……俺ん時は舐めさせなかったくせに」
添い寝して頬杖をつく青年は、少女の口元に指先を送る。
少女は、人差し指をぺろりと舐めた。親指についたケチャップも舐めとる。なんだかおしゃぶりを咥える赤ちゃんみたい。少し恥ずかしくなってきたので、ちょっと噛む。
「なんで」
少女は起き上がる。横向きの青年を押し倒して上を取る。馬乗りになった。さてどうしてやろうか。
考えていると、黒いパーカーの裾の中に、青年の両手がするりと入ってきた。
「っ!?」
下着をめくって柔肌に触れる。指先がひんやりと冷たい。自分が舐めたことで唾液が付いたせいだ。ちょっと汚い。
「あっ……だめっ……」
局部に触れる。先端を弄られて、大きく揉まれる。冷却と電撃を受けたような感覚。萎縮する。これは困った。
身をよじる。その程度の抵抗では終わらない。
少女は、自らの胸を覆う男の手を、上から押さえ込む。これ以上のもてあそびは許さない。それから全身を前に倒す。大きな体の上で丸くなる。頭髪が青年の顎に当たる感触。そのまま膝に力を入れて登って行き、密着摩擦。相手との顔の高さを合わせる。ほっぺに頭髪をすりあわせて、ほっぺとほっぺをすりすり。
すると不意に────ぎゅっ! と、両方の胸を握り込まれた。
「あっきゃっ!? っ……
「……今お前“きゃっ”って言った? ……女の子らしい言い方を意識してんの?」
「……! っ~~~~……」
両目を細めて抗議の視線を送る。
「あーはいはい。お好きにどうぞ。ご自由に」
青年は思う。赤毛の少女は色々と試しているのだろう。
何が相手にとって悦ばれるものになるのか。
そろそろ攻勢に転じたいのだ。
青年は、黒いパーカーの下に潜り込ませた両手を抜き取る。乳揉みから解放して、空いた手を後頭部に回す。
対する少女は馬乗りのまま、黒いパーカーのチャックを開け始めた。
「────!」
青年は反応する。視点がチャックに吸い込まれる。
それを目の前で見て取った少女は知らず知らず微笑む。
ジジジ……と開かれていくチャック。下着の白い服があらわとなる。
「ふむ。俺の好みとしましては、そこで生肌が出てくると良いのだが」
「……!」
青年は目を閉じる。
少女は慌てて黒いパーカーを脱ぐと、下着とブラジャーを脱いで畳んで脇に置き、改めて黒いパーカーだけを着る。
青年は目を開ける。
少女はやり直す。黒いパーカーのチャックを開けていく。青年の視線を一身に受けている。好きな人に凝視されている。そのまま自分だけ見ていればいいのに。
ひらひらの黒いパーカーに谷間が見える。チャックは全て外しているため、着ているというより羽織っている状態。いつでも簡単に脱がされてしまう。もし青年が突然起き上がって肩を押してきたら、少女は一気に上半身が裸となる。
「……腹、寒くないか?」
「!」
「やはり腹巻きは外せないか……」
そうやってすぐ、こちらの体調を心配してくる。
「……そういうところが、ズルイと思います」
「そういうふうにして口説き落としてんだよ」
青年は自虐気味に嗤う。
たしかにそういう側面もあるかもしれないが、それはそれとして本当に心配しているのは事実のはず。
不意に青年は起き上がる。
「っ!!」
馬乗りの状態から滑り落ちて、あぐらをかいた青年の足の上に座り落ちる。女の子座り。密着状態。どきどき。胸が高鳴る。ハグされている。ドキドキ。心臓の音がうるさい。
「キスしてくれる?」
青年の催促。
密着状態でそれは難しい。距離を取るため少女はあごを引く。見上げる。結果的に上目遣い。腰を伸ばさないと唇に届かない。そのため足腰に若干の力を入れて背伸びする。
不意に変な力が掛かって、黒いパーカーが両肩から外れかかった。
「!?」
自らの身を抱き込んだ少女は、なまめかしい両肩をあらわにしたものの、裸になることはなかった。間一髪、黒いパーカーの袖を掴み取ることができた。それはそれとして、なぜ外れかかったのか。背中に拳の感触。青年は黒いパーカーの背中部分を掴んでいた。しかし下に引っ張ったわけではない。ただ掴んでいるだけ。つまり少女が背伸びすると、少女自身の動きのせいで、チャックを閉じていない黒いパーカーは脱げてしまう。
「キスはまだ?」
「……っ……?」
黒いパーカーを両肩に上げ直した少女は、弱い力で背伸び。すると、また肩から外れかかる。どうすればよいのか。キスしたい。要望に応えたい。こうなったらギリギリを攻めてみる。
「……────」
慎重に。微かに。背伸び。少女の唇が青年の唇に届きかかる。それでも数ミリ手前までが限界。
ゆっくり動くあまり足腰が震える少女の唇は、ぱくぱくと動く。
「────! ……────」
すると少女は気づいた。青年の静かな吐息が感じられる。
吐息の温度、とろける風、ピザの香り、吐息の柔らかさ。
ゆっくりぴょんとジャンプ。肩から半分ほど外れる黒いパーカー。ようやく唇が届く。一ミリのギリギリで、届きそうで届かない、でも時々たまに届く、食み合いの感触。ギリギリのキス。
お互いに口をパクパクと動かして、吐息を混ぜ合わせつつ、たまに上唇や下唇に届いて、食んで食まれてを繰り返す。
やがて胸の奥から体温が上がっていく。汗を掻いてきた。集中力のいることをしていたからだろうか。背中に滲む汗。黒いパーカーを汚したくない。脱ぎたい。でも脱いでしまえば────
なので、脱がない。まだ、脱がない。
キスだけでこうも焦らされたのだ。こんなキスのやり方もあるのだと学ばせてもらった。
「……~……」
少女は舌を出す。
自分も勉強してきたのだ。舌と舌を絡め合わせるディープキスとやらを。
「はは……~……」
しかし青年の方が上手だった。
黒いパーカーの背中を握られている以上、主導権は青年が握っている。ベロチューをしたければ、少女の方から行かなければならない。しかもそれは本番の開始を意味する。しっかりキスをするということは、黒いパーカーが脱がされてしまうということだから。黒いパーカーを、自ら脱いでしまうということだから。
「っ……もう────~~~────」
一気に足腰を上げて背伸びする。黒いパーカーがはらりと肩から脱げ落ちる。肘の裏に溜まる袖。半裸のまま青年の首に両腕を巻きつけて、顔を斜めに倒す。やさしく、やわらかく、舌が奥まで届くように接吻。
電撃。少女は自分で舌を入れておきながら、口の中が殴りつけられるような衝撃を受ける。
雷撃。青年に舌を入れられて脳内がパンクするショートした脳内が熱くて蒸発しそうだ
ぺちゃぺちゃと水音。
耳の奥まで熱くなってきた。このままでは溺れてしまう/溺れたい。
(おぼれさせて……)
不意に青年の腰が突き上がる。
少女の頬に赤みが差す。苦しいほど抱き締められる。後ろ首を締め上げられる。全身を上げたくなる。股のあいだがいたくなる。
「────ま……まって……ぬぎます、から……」
本能全開の腰振り。体ばかりを求められることに嫌気が差す。
(あたしの心を、求めてほしいのに……────)
そう思いながら下を脱ぐ。
(────……どうすれば、いいのかな)
それは試練という名の宿題だ。
ヒーローを支えるヒロイン……ではなく、ヒーローを支えるヒーローになるためには。
「────────────────ぁ────────────────」
うつむく少女は目をつむり、口元に自らの手の甲を触れる。
浮き上がる肉体。天へと昇る意識。蒸発する理性。
ヒーローを支えるヒーロー。
それになるためには、まず。
えっちの気持ちよさに慣れる必要がありそうだ。
§