※この作品はR-18です。

【小宮果穂とちょいワル男子のオトナ甘くてコドモ苦い】ぷらすえっくす!   作:形のない者

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pSR【June選抜試験`黄緑の輝き】No.168事務所

 

 第12週・一日目。

 エメラルドシーズン選抜試験(セレクション)・最終試験。

 ゴールデンシーズン選抜試験(セレクション)・中間試験。 

 同時開催・当日。

 

 朝方。168事務所。

 青髪のプロデューサーの眼前には、担当アイドルたちが横並びで立っている。

 

「さて、ひとつ課題を出します。今回の最終試験を以て、みなさんには独(・)り(・)立(・)ち(・)をしてもらいます」

『────……ッ!?』

「ああ勘違いなされないで。金輪際あ(・)な(・)た(・)が(・)た(・)に(・)プ(・)ロ(・)デ(・)ュ(・)ー(・)サ(・)ー(・)が(・)就(・)か(・)な(・)く(・)な(・)る(・)という話ではありません。たとえば花海咲季さんには学(・)園(・)プ(・)ロ(・)デ(・)ュ(・)ー(・)サ(・)ー(・)が(・)い(・)る(・)でしょう? そ(・)れ(・)と(・)同(・)じ(・)こ(・)と(・)です」

『……! ……』

 

 篠澤広は腕を組んで観察。

 ほかは納得した。てっきり青髪のプロデューサーが、もう二度と自分たちをプロデュースしないのかと焦ってしまった。

 一方、藤田ことねは訝しむ。なんとなくだが、なにやら含みがあるような言い回しとして感じ取ったのだ。もしや移籍の件だろうか。それなら納得できる。今週が終われば七月だ。青髪のプロデューサーは夏前に卒業する契約であるため、それについて語ったのだろう。たしかに青髪のプロデューサーが指導してくれないのは少し、いやかなり寂しい。だが、きちんと別のプロデューサーが就いてくれるなら安心だ。故にほかのアイドルも何も言わないのだろう。そのように藤田ことねは納得する。

 

「今回は人数が多いため、ひとりひとりの控え室に顔を出すことはできません。私は舞台裏から見守っています。──期待して、信じていますよ。みなさんが二位以内に入ることを。明日の講堂が楽しみですね!」

 

          §

 

 エメラルド最終試験が始まる。

 青髪のプロデューサーは、他のプロデューサーたち同様、舞台裏で担当アイドルたちを見守る。

 過程は万全だと確信している。故に、あとは結果次第。

 

『────エメラルド最終試験・終了! 順位を発表します!!』

 

 息も絶え絶えで、青髪のプロデューサーの周りに戻ってきたアイドル達は、固唾を飲んで結果を待つ。

 

『緑ブロックの上位入賞者は────2位・十王星南! 1位────藤田ことね!!』

 

 同ブロックに参加していた篠澤広と倉本千奈は、4位と3位だったそうで、惜しくも講堂入りを逃した。

 一方の藤田ことねは、信じられないという顔で振り返り、青髪のプロデューサーに潤む瞳を向ける。

 

『浅葱ブロックの上位入賞者は────2位・姫崎莉波! 1位────根緒亜紗里!!』

 

 月村手毬と秦谷美鈴は口惜しむ。

 一方、思わず青髪のプロデューサーは歩き出した。少し離れたところで、ひとり安堵しているあさり先生に向かって手のひらを掲げる。両者、笑顔の────ハイタッチ。ぱちんと響いた絆の証。それを目撃した他のプロデューサーとアイドル達は、まさか根緒亜紗里のプロデューサーは彼だったのかと度肝を抜いた。

 

『常盤ブロックの上位入賞者は────2位・花海咲季! 1位────花海佑芽!!』

 

 花海咲季は瞳が硬化して希望を喪う。中間試験に続いて最終試験と、二(・)回(・)続(・)け(・)て(・)負(・)け(・)た(・)。

 しかし青髪のプロデューサーは押し黙り、明日の勝利と敗北を確信する。

 

「三度目の正直。仏の顔も三度までと言いますが、あいにく花海咲季さんは仏(・)で(・)は(・)な(・)い(・)の(・)で(・)二(・)度(・)ま(・)で(・)です」」

 

 複雑な心境ながら、またお姉ちゃんに勝てた喜びも束の間、花海佑芽は耳を傾ける。

 

「────講堂(ほんばん)で勝利したほうが、真(・)の(・)勝(・)利(・)者(・)となる。他の競技とは違い、初星学園の試験は、あくまで前(・)座(・)に(・)過(・)ぎ(・)ま(・)せ(・)ん(・)から」

『────ッっ!!』

 

 つまり決着は明日。

 花海姉妹は、闘志宿る視線を鋭くぶつけ合う。

 

『翡翠ブロックの上位入賞者は────2位・紫雲清夏! 1位────葛城リーリヤ!!』

 

 呆然と口を開けて固まる葛城リーリヤは、つと我に返って口をパクパク。歓喜の表情で青髪のプロデューサーに振り返る。

 

『若葉ブロックの上位入賞者は────2位『爆射塔BANG a`Lore』! 1位────『neverMIX』!!』

 

 篠澤広には、緑ブロックで力を抑えてもらった。そのため上位入りは逃したが、代わりにユニットブロックでは堂々の一位を飾った。月村手毬は相変わらず体力配分が下手だったが、おかげでユニットとしての試験では満(・)身(・)創(・)痍(・)同(・)士(・)のパフォーマンスとなりお似合いだった。そして緩やかな振り付けは、徐々に試験中に体力を取り戻していく。すると月村手毬がいつも通り爆発し、篠澤広はいつも通り神秘的な神々しさを振りまいた。

 

 何事も、完璧をいつも通りにできる者が勝利する。

 そこへ導いてやるのが、プロデューサーの務めである。

 

          §

 

 ゴールデンシーズンの中間試験は不参加。

 理由は二つ。明日の講堂の大型ライブに備えてのこと。もう一つは、彼女達にもう一段階上のステージに羽ばたいてもらうため。すなわち選抜試験(セレクション)より難関な、学園外アイドルとの戦い……『NIA』や『HIF』といった大型イベントに備えてのこと。ただし、そういったものはすべて学園プロデューサーに任せてある。すでに移籍契約は滞りなく進んでおり、まとまった書類はあさり先生に提出済みである。

 

          §

 

 放課後の168事務所。

 アイドル候補生たちは、藤田ことねの提案で祝勝会を開いていた。

 

「なんだかんだありましたが、結局のところ────みんな講堂入り、おめでとぉ~!!」

 

 藤田ことね・葛城リーリヤ・篠澤広・倉本千奈・花海佑芽が笑顔で乾杯する。

 妹の勝負に負けた花海咲季は、自分だけ祝勝会への参加資格はないのでは? などと迷っていたが、藤田ことねに無理やり腕を持ち上げられて、一緒に全員で乾杯した。驚きながらも、ふと笑顔が洩れる。

 一方、まだ講堂があるというのに浮かれてはいられない月村手毬はクールぶっているが、心の中ではみんなに混じって乾杯したがっていた。その表れとして、手元にはコップが握られている。すると篠澤広が一方的にコップ同士をぶつけてきた。突然のことで驚いた月村手毬は素の丸い顔で、中身のジュースがこぼれてしまうと慌てふためく。

 

「つーか、青髪のプロデューサーの先輩? のプロデューサーもさぁ。きっちり担当アイドルを上位に入れてきたよなぁ……点数的には、あ(・)た(・)し(・)ら(・)、ほかのアイドルより、ぶっちぎりのダブルスコアを決めたわけじゃん? ほんとスゴいプロデューサーた(・)ち(・)に恵まれたよねぇ……いやどんな幸運だよ!!」

 

 藤田ことねはびっくりどっきり仰天する。

 

「そんなの当然じゃない、ことね! わたしのプロデューサーはスゴいんだから!! しかもわたしのプロデューサーは、いつか青のプロデューサーも超える、超すごいプロデューサーになるんだからね……!!」

「はいはい。咲季があのプロデューサーさんのこと大好きなのは知ってっから」

「……姫崎さんに失礼だから訂正するけど、恋愛の意味で大好きなわけじゃないからね?」

「え、そなの? てっきり恋のライバル的なものかと……」

「あのふたりのラブラブ空間には入れないわよ……むしろわたしのプロデューサーのほうがゾッコンなのよ?」

「まじぃ? そんなふうには見えなかったけど……」

「それもそうでしょ。人前でアイドルにデレデレなプロデューサーがいたら炎上ものじゃない?」

「そりゃそうだ!」

 

 引き戸がガラガラ。

 青髪のプロデューサーが帰ってきた。なにやらCDケースを持っている。

 

「ただいま戻りました」

『おかえりなさーい!』

「!? は、はい……なんだかみなさん、ご機嫌ですね……?」

「それはもう! あたしの提案で、祝勝会(パーティー)を開いていますのでぇ~♪」

 

 藤田ことねはキャピキャピとはしゃぐ。

 

「……独り立ちを促すためにも、わたしは何も言いませんよ」

 

 青髪のプロデューサーは何を言いたかったのか。

 篠澤広が言い当てる。

 

「わかってる。明日は講堂(ライブ)が控えている。調子に乗って暴飲暴食、それで体調不良になるようなミスはしない」

 

 そこで月村手毬が問いかけた。

 

「ところでプロデューサー。そのCDケースはなんですか?」

「ああ。先輩からもらったんですよ。『渾身の出来なので、ぜひ聴いてください』と。部外秘なので、まだみなさんには聴かせられませんが。明日か明後日の発売日を待ってくださいね」

 

 青髪のプロデューサーはデスクに着く。CDプレイヤーとヘッドホンをつないで、何やら音楽を聴き始めた。そこで花海咲季が、CDケースに記された『姫崎莉波 持ち歌』という手書きのマジックペンを見て、まさかと思う。

 

「えっ。ハァ……まったく、わたしのプロデューサーったら……青のプロデューサーにも配ったのね……」

「ははは。ほんと先輩、姫崎さんにゾッコンですよネ! ──それにしてもイイ曲だ。可愛くて中毒性があります。さっきMV(ミュージックビデオ)も見せられたんですが、これがまぁ素晴らしい出来でしたよ!」

 

 どうやら青髪のプロデューサーは、姫崎莉波の『clumsy trick』を聴いているようす。

 そこで篠澤広と月村手毬がむすっとした。

 

「……担当アイドルの曲は、聴かない、の?」

「プロデューサー失格ですね。謝っても許しませんよ」

「その論調だと、私はあなたがた以外の曲を永遠に聴けなくなるのですが……」

 

 青髪のプロデューサーは話題を逸らす。

 

「ところで祝勝会のところ、急な報告兼相談で申し訳ないのですが」

『……?』

「明日は講堂のブースで、みなさんのグッズ販売を行う予定です。篠澤広・月村手毬・倉本千奈は二回目の出場ですからね。それなりに売れるでしょう。また、ユニット参加ですから、初講堂の藤田ことね・葛城リーリヤ・花海佑芽も、前者三人の知名度に助けられてグッズの売り上げも伸びるはず。というわけで、売り物の最終チェックを小一時間で済ませてください」

『────』

 

 なぜ、この青髪のプロデューサーは、毎度毎度ギリギリの試練を設けてくるのか。

 すかさず藤田ことねが突っ込んだ。

 

「ちょ……そういうのは前もって確認作業するもんではぁー!?」

「そうですね。通常なら。しかし私自ら設計したグッズたちです。渾(・)身(・)の(・)出(・)来(・)ですので、至(・)ら(・)ぬ(・)点(・)は(・)一(・)切(・)な(・)い(・)かと!」

「このプロデューサーも大概だったぁああーーー!! どんだけあたしらのこと好きすぎなんだよぉおおーーー!!?」

 

 お菓子にジュースはさておいて。

 さっそくアイドル達はダンボール箱を開けて、プロマイドやら何やら、様々な種類のグッズを確認。照れくさそうに微笑み合いながら喜んでいた。

 

「花海咲季さん」

「?」

「先輩の担当アイドルのグッズ販売も、同じく明日に計画しているそうです。同じブースで店も隣同士なので……ファンたちは楽しいことになりそうですね!」

「……!」

 

 まさかと思い、自分だけ関係ないと思っていた花海咲季は、ダンボールの中を覗き込む。

 そこには花海咲季のグッズもあった。花海姉妹が揃ったレアグッズもある。

 

「お姉ちゃん見てみて! あたしとお姉ちゃんが揃ってるグッズもあるよー!!」

「────……そう。嬉しいわ。……これ、もしかしてだけど……あなたたちプロデューサーのサプライズ?」

 

 青髪のプロデューサーは、ただうなずく。

 勝負だけに囚われて、アイドルとしての本分を忘れてしまっては本末転倒。

 

 花海咲季は考え直す。今は、この時を楽しもう。

 勝負は明日の講堂、ステージの上で行われる。

 無邪気に笑う妹の楽しさを奪わないためにも、お姉ちゃんは最高の笑顔を作って強がる。三度目に負けるかもしれないという恐怖や弱音を隠し通す。

 

「うふふっ! ほんと、佑芽の可愛さが詰め込まれてるグッズね! わたし、佑芽のグッズは全部買うわ!」

「あ、ずるいー! あたしもお姉ちゃんのグッズ、全部買うもんねー!」

 

 そこで葛城リーリヤが驚きの声を上げる。

 

「えっ!? せ、センパイ……!」

「おや。見つけましたか。葛城リーリヤと紫雲清夏のコラボグッズを」

「っ……! で、でも、ファンの人達は、わたしと清夏ちゃんが親友なの、知らないんじゃ……」

「ええ。ですから仕事追加です。明日の講堂で、おふたりのライブバトルを魅せてください。なんのために同ブロックに参加させたと思ってるんですか?」

「!?」

 

 偶然ではなかったのか。いや、考えてみれば当たり前だった。

 どうやら青髪のプロデューサーは、いつかどこかで学園プロデューサーと結託していたようす。

 

「自らの成長を促す絶好のアイテムは──ライバル──ですからネ!」

 

 その時、藤田ことねが叫んだ。

 

「ぎゃー!! なんであたしと会長のコラボグッズがぁああああ!?」

 

 コラボグッズの種類は次の通り。

 藤田ことねと十王星南。倉本千奈と十王星南。

 月村手毬と秦谷美鈴。

 花海佑芽と花海咲季。

 葛城リーリヤと紫雲清夏。

 などなど。

 

 ユニットとしては、篠澤広と月村手毬。藤田ことねと倉本千奈と花海佑芽。

 ほかにも様々。

 

 また、鵲(カササギ)は過去の意味を持つ。それを超える(エクシード)。姫崎莉波・紫雲清夏・十王星南。今回の講堂では出場できないが、夏前の『ICF』に向けて調整中とのこと。

 加えて、プロデューサーの垣根を越えて、かつ『ICF』に向けて結成したオリジナルユニットも存在する。それは赤と青と紫を混ぜた獅子……『Leonides!(レオニード)』……メンバーは花海咲季・秦谷美鈴・有村麻央。

 ほかにも遊び心万歳の越境ユニットが存在する。

 

「…………」

 

 青髪のプロデューサーは微笑みながらうつむいていた。

 終わりが近い。一抹の寂しさに染み入る。離別は何度経験しても慣れないものだ。

 

「────プロデューサー! グッズ確認、OKでぇ~す♪ あ、でも会長とのコラボグッズはぁ……ちょっとびっくりっつーか、あたしなんかじゃ釣り合ってねーんじゃねーの? とも思ってしまうわけですが……でも会長に勝っちゃったからなー! さすがに今の実力で自信がないのはおこがましいってやつですよねぇ!? うごごごご……! え? マジであたし、昨年の一番星(プリマステラ)に勝っちゃったのぉ!?」

「それでも紙一重の勝利ですよ。次は先輩のプロデュースで、呆気なく追い抜かされる可能性が高い。今回の勝利で確固たる自信を身に付けると同時に、決しておごらないように」

「は、はいっ!! おごることはぜってーないって思いますけど……確固たる自信は、たぶん付いたと思います!! ほんと、プロデューサー……今(・)ま(・)で(・)、ありがとうございましたぁ……!!」

 

 藤田ことねは、まだ少し早いとは承知しているが……今生の別れとでも言うべき感謝を贈る。折り目正しくお辞儀する。

 すると周囲のアイドル候補生たちは、真顔で首をかしげていた。

 

「ことね。……やめるの?」

「へ? 篠澤さん……何が?」

「……それじゃあまるで、ことねかプロデューサーがバイバイしちゃうみたいな挨拶。縁起でもない」

「あ~……それもそっか! でも夏前には移(・)籍(・)す(・)る(・)んだし、今のうちに……的な?」

『────────?????』

 

 青髪のプロデューサーは、感謝された時点で修羅場の到来を予想していた。

 逃走経路を確認していたが、人数が多いせいで運悪く塞がれてしまっている。一応窓から逃げることもできるが、それはさすがにみっともない。否、いざやってみれば面白くなるかもしれない。いわゆる鬼ごっこタイムだ。しかし明日にライブを控えるアイドル達に無駄な体力を消費させるわけにはいかない。ここはぐっとこらえて、いたずらごころを封印する。

 

「どういうこと?」

「え? どういうもなにも……あたしら、夏前にプロデューサーが卒業したら、咲季のプロデューサーの事務所にお引越しするわけじゃん? 移籍は寂しいけど……アイドルとして成り上がるためならしゃーねー! ──だからぁプロデューサぁ♡ 明日の講堂(ライブ)が終わったら、初ライブと卒業のダブル記念ということで、遊園地にデートでも行きません~? 頑張ったご褒美とかで♪」

『────────』

 

 愛嬌を以てキャピキャピする藤田ことねは、周囲の異変を察知して、何かを悟る。

 

「──……え? ど、どした? みんな……そんな、驚いた顔して……」

 

 すかさず篠澤広と月村手毬が振り向き詰め寄り、続いて倉本千奈・葛城リーリヤ・花海佑芽・花海咲季が囲い込む。

 

「おやおや。ザ・修羅場」

「え────ええぇっ!? どど、どういうことですかぁプロデューサーぁ!? まま、まさか……移籍の件、あ(・)た(・)し(・)以(・)外(・)に(・)知(・)ら(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)のぉ!? みんな……!!」

 

 藤田ことね以外、知らなかった。

 それもまたカンに障る。

 

 決して諦めないし混ざり合わないふたりは、腕を組んでじーっと見下ろしてくる。無言の抗議。かたや嘘であってほしいという思いと、かたや心中穏やかではなく睨みつける虚勢しか保てない思いが垣間見える。

 お嬢様はガクブルと震えて理解不能に陥っており、雪の妖精は表情と腹の内が比例していない。姉妹は言うまでもなく、なぜか青髪のプロデューサーの両隣に立って圧迫面接を始めた。

 それを遠巻きに見つめる少女は、あわあわと落ち着かないようす。

 

「すでに、卒業分の単位は満了しました」

『……っ!!』

「倉(・)本(・)千(・)奈(・)を(・)春(・)が(・)終(・)わ(・)る(・)ま(・)で(・)に(・)一(・)人(・)前(・)の(・)ア(・)イ(・)ド(・)ル(・)に(・)す(・)る(・)という依頼も達成。報酬として『飛び級で卒業する権利』をいただきました。自由な校風だけあり、学園長は二つ返事で快諾してくれましたよ」

『────』

 

 一瞬、全員の視線が倉本千奈に向く。

 

「わわ、わたくしは何も知りませんわぁー!?」

 

 ならばと全員の視線が再び、泰然自若の男に牙をむく。

 

「というわけで私は、来月初頭の『ICF』が閉幕した翌日に卒業式を控えています。四月初めから七月初めまで……約三ヶ月の学園生活。非常に楽しかった。みなさんと出会えて良かった。みなさんのお役に立てて良かった。望外の喜びのうちに学園を去れるというのは、この上なき幕引きでしょう。ですから────」

 

 打ち震える全身。突として月村手毬はきびすを返し、ズンズンと強歩、教室を出てからは廊下を走り去っていった。

 なんとも感情的な背中だった。それを目にしたアイドル達もまた、走るような激情に引っ張られて小刻みに震え始める。

 篠澤広は、震える声で問いかけた。

 

「プロデューサー。なんで黙ってたの?」

「驚かせようと思いまして」

「……」

「本当はライブに支障を出さないため、『ICF』が閉幕してから明かそうと思っていたのですが。藤田さんのせいでサプライズが早めになりましたね」

 

 藤田ことねは大口を開けて騒ぎ出す。

 

「あ、あたしのせいっすかぁあああーーーーーー!? いやいや隠してたプロデューサーが悪いんじゃん! それに、あたし移籍とか隠してたの知らないしー!! 普通そういうのって前もって話すのが礼儀だろうがよぉおおーーーー!?」

「だって驚かせたかったんだもん」

「子供かっ!!?」

「子供ですが?」

 

 青髪のプロデューサー(13歳)は禁止カード級の最強返答(ジョーク)を繰り出すが、この学園の生徒は皆、青髪のプロデューサーのことを大学一年生(19歳)と思い込んでいるため、その理屈は通らない。

 

「酒が飲めねーからってガキってわけじゃあねーんだからなぁ!?」

「それはそう。──まぁそういうわけで、私の投げた学帽を受け取る準備を済ませといてください」

『……ッっ!!』

「それに、早めにバレて良かったかもしれませんね。これも独(・)り(・)立(・)ち(・)の試練です。私から出す最終課題と思ってください。今のメンタルで明日のライブを成功させなければ、あなたたちはプロのアイドルとは程遠い。健闘を祈ります」

『────……』

 

 倉本千奈は、小声で突っ込んだ。

 

「あ、相変わらず……先生はいつも、突拍子もないことをされては……そのどれもが、スパルタですわぁ……ですわぁ……ですわぁ……」

「千奈ちゃん。なんでセルフやまびこ?」

 

 花海佑芽が首をかしげる。

 その隙を突いて青髪のプロデューサーは席を立ち、包囲網を脱しようとしたが────両腕を姉妹に掴まれる。痛い。普通に痛い。妹の方は爪が食い込んでいる。

 

「プロデューサーさん?」

「どこに行くというの?」

 

 ならばと青髪のプロデューサーは実力行使。直立姿勢で腕ずもう開始。

 

『!? ……っッ!!』

 

 お互い、ぐぐぐっ、と力を入れ合い、牽制(フェイント)と全力(パワー)が見えないところで交差する。やがて青髪のプロデューサーは勝利を確信して「ははっ!」と笑みをこぼし、自らの膝をカックンと折り曲げた。見事にバランスを崩された姉妹は、腰にたくましい腕を回されて軽々と持ち上げられる。そうして両脇に抱きかかえられた。

 

「わぁ!?」

「ちょ?!」

 

 青髪のプロデューサーは双頭の赤槍を構えて軽く突撃。篠澤広と藤田ことねは激突を避けて道を開けざるを得ない。そして引き戸の境界線で姉妹を下ろした彼は、速やかに廊下に出て小走り。

 

「ふはは! それでは講堂で会いましょう! ひとりのファンとして楽しみにしていますよ!」

 

 

 

          §

 

 

 

 第12週・二日目。

 昼前。エメラルド講堂(ライブ)・開催。

 

 満員御礼の観客席。

 そこには283の面々の姿があった。購入したチケットは別々のため席も離れているが、ユニットを代表して風野灯織・三峰結華・小宮果穂・大崎甘奈・黛冬優子・樋口円香・緋田美琴・斑鳩ルカなどが観に来ている。283は『ICF』に向けた敵情視察のために来ているが、それとは別に一ファンとして、友たちのライブを観に来ている者もいた。

 

     ♪~初叶`世界一可愛い私~♪

 

 一曲目は藤田ことねの登場。ライブが黄金の輝きに満ちる。

 最前列の関係者席に座る青髪のプロデューサーのそばには、藤田一家が揃っていた。

 

「~♪ ────」

 

 ステージの上で輝く娘。

 それを見上げる父の顔。

 不意に目と目が合う。

 

 一瞬の出来事。頭の中が真っ白に浚(さら)われた。

 歌詞がすっ飛ぶ。振り付けを完璧に忘れ去った。

 

 なんだこれはどういうことだ聴いてないぞ

 蒸発して失踪した父がなぜ

 母もちびどももなぜここに

 

 となりに立つ青髪のプロデューサーは、口をパクパクと動かしている。

 

 ────せかいいち?

 

 その問い掛けは、青髪のプロデューサーだけのものではない。

 事前にPV(プロモーションビデオ)を見て訓練していたファンたちの合いの手でもある。

 

 ────かわいい!

 

 吹っ飛んだ歌詞が、ファンのおかげで返されて思い出されていく。

 忘れ去った振り付けは、体が覚えていたのか自然と張り切り出す。

 

 視界が霞む。まだ何も理解していない。納得できていない。見間違いかもしれない。

 ただひとつだけ分かることがある。自分のプロデューサーは、鬼で、悪魔で、鬼畜すぎる天使だということだ。

 

 初めてステージに立てた。

 念願のアイドルになれたかな。

 それだけで涙をこらえていたのに。

 こんなものを喰らわされては、耐えられる。────わけがない。

 

 黄金の笑顔から金色(こんじき)の涙が弾け飛ぶ。

 感無量の笑顔を見て取ったファンたちは、思わずもらい泣きする。どういう感情が彼女に渦巻いているのかは分からない。しかし配信では笑顔を欠かさず、ときおり自信なさげで、それでもアイドルになる夢を語る時の表情は可愛くて。

 

 叶ってよかったね、と贈るような歓声に。

 まだまだこれからだ、と潤む歌声を返す。

 

 あっという間の一曲だった。

 歌い終わりに、しゃくり上げるように泣いてしまった。最初のライブとしては大失敗だと思う。しかし観客はそう思わない。頑張った歌声。完璧なダンス。完璧なファンサ。唯一下手な歌声は、欠点として挙げるにはあまりにも……ファンとの交流ができていた。心が通い合っていたように感じられる。

 

 彼女はアイドル。

 藤田ことねは、名実ともにアイドルとなっていた。

 

     ♪~初星`小さな野望~♪

 

 感謝を告げて舞台袖に走り去る藤田ことね。交代が一秒遅れて申し訳ないと頭を下げる。

 構わないわ。と威風堂々。素晴らしかったわ。と余裕綽々。元王者の十王星南が、満を持して大登場。

 

 爆発的で圧倒的な大歓声が挙がる。

 一番星(プリマステラ)の座は、まだ譲れない。

 後背を脅かされるからこそ、先輩は追いつかれまいと駆け翔ぶ。

 なにより誇りある称号を学園内だけに留める気はない。もっと高く、もっと上へ。

 天上に輝く一番星。そこまでの道のりが地獄だとしても。共に登る先輩(プロデューサー)が居てくれるなら。

 

 着地を決める。

 より、上位の超次元(ステージ)へ。

 

 たとえ自らの能力が限界にあっても。花開く未知の光はあるのだと。

 それを舞台(ステージ)の上で証明する。

 なぜならアイドルという素晴らしい輝きには、果てなんて存在しないのだから!

 

     ♪~遅咲きの`桜フォトグラフ~♪

 

 講堂の中心が隆起する。突然のステージの変形。

 とんでもないサプライズに観客が驚くのも束の間、ドーム内は文字通りの桜吹雪に包まれる。

 

 圧倒的な美声と歌唱力。力強い踊り。誰をも魅了する美貌と仕草。

 今年の一番星(プリマステラ)の有力候補と見なされていた藤田ことねと十王星南を、あっさりと追い抜かすような超抜級のパフォーマンス。彼女はいったい何者か? 誰もが気になって目を離せない。目を離したくない。幻のアイドルを目に焼き付けんとする。もしかしたら、二度と会えないかもしれないから。

 

 学園生徒は絶叫と歓声。

 噂には聞いていたが、まさか「せんせー!!」「先生~!?」まさか本当に教師がステージに登るとは。

 桜色の学生服を着るあさり先生は、アイドル科の生徒に向けて「しーっ」と人差し指で口をつぐみ、ウインク。

 

 それを目にした観客は、一撃でハートを射抜かれた。

 老若男女を問わず魅了する、雷撃のような大興奮を、みなさんに。

 

 桜舞う美女。夢幻(ゆめまぼろし)の如く。

 気づけば消灯。ステージが下降する。講堂地下に消え去ってしまった。

 

     ♪~初恋`clumsy trick~♪

 

 誰もが目を奪われたまま。

 その目を奪い返す実力派アイドルの登場。

 

 学園プロデューサー渾身のアイドル。

 姫崎莉波の独壇場。

 

 ファンたちの初恋を、自分の初恋として上書きするような。

 縦横無尽にして恋情可憐な、ひとりのかわいいおんなのこ。

 

 中毒性のある楽曲。それは抑揚ある歌声あってこそ。

 癒されるような、ときめくような。

 またばき(ウインク)を一回。初恋を奪い返す。

 

 先ほどの教師にキラキラしたものを胸に抱いたとしたら。

 こちらの少女には、無性にドキドキしたものを胸に抱く。

 

 桃色格闘。

 一度にふたりに恋してしまった観客は、もう何をどうしたらいいのか分からない。

 ただ今は、なりふり構わず歓声を上げて応援して、これだけの興奮と歓喜をくれたアイドル達に感謝するほかない。

 

     ♪~初勝`The Rolling Riceball~♪

 

 これ以上、胸を焼かれては食傷気味。

 そんなところへ、天真爛漫で元気いっぱいのアイドルが登場。

 

 頭からっぽで楽しむことができる。

 理由も理屈も中身も不要。そんなものは後からいくらでも詰め込める。

 

 まるで無限大のような活力と生命の息吹を感じる。

 合いの手を打つのがこれほど楽しいとは思わなかった。

 

 はしゃいではしゃいで。

 飛び跳ねて大声叫んで。

 

 疲れ切ったはずなのに、なぜか元気をもらっている。

 ライブも折り返し地点。まだまだ疲れてはいられない。

 

「みなさーん! やる気を充填しましたかぁ~?」

 

 大歓声が上がる。

 

「それなら次は、お姉ちゃんのライブです! どうぞ~!」

 

 勝負はどこへやら。もちろんそれも忘れていない。

 それでも、お姉ちゃんの魅力をみんなに知ってほしい。

 あ、でも、お姉ちゃんは取られたくないから、ちょっぴり複雑でもある。

 

 そんなトークタイムで笑いを取り、花海佑芽は元気に別れの挨拶。

 舞台袖に戻って、大好きなお姉ちゃんとハイタッチする。

 

     ♪~初敗`Fighting My Way~♪

 

 その余裕、打ち砕く。

 元魔王の勇者が参戦。

 

 完璧という一言で終わらせるには不足する。

 威風、ドーム全体を痺れさせ。

 凜然、魅入る心臓を剣で刺す。

 

 掴み(ロジカル)は最高。

 入り(センス)は最高潮。

 振る舞い(アノマリー)は全部が絶好調。

 

 姉の誇り。いつまでも三流(トライスター)。それでも敗北は二度しか許さじ。

 それ以上は天元(プリマステラ)を翔び超えて、全天魅了。手段は選ばない。講堂の天井が開いていく。

 

 一陣の風。床に降り積もっていた夢幻の圧勝(なごり)を借りる。

 舞い上がる桜吹雪。下から突き上げる竜巻の中、二つ結びの髪と衣装が激しくなびく。

 

 点滅する赤の乱反射(スポットライト)。

 運は最悪。数分前まで晴れていたのに今は曇り。

 されど悪運跳ね返すは燦然と光り輝くアイドル・花海咲季。

 

 ラストスパート。

 誰もが息を呑む。呼気を忘我してペンライトすら振るわない。

 

 本物の魅了を見せてやる。

 本物の偶像を魅せてやろう。

 

 生中継されているライブ。

 ゆっくりくつろいでいるお茶の間の人々も、ひと目にすれば落ち着いてはいられなくなる。

 

 世界の一部が絶句する。

 魔王だけが不敵に微笑む。

 

 天使の階段が射し込んだ。

 最後に敗北の運命を蹴破る。

 

「────────」

 

 最後のポーズを取って目を瞑る。

 まぶたを開けるのが怖い。何も聴こえない。

 集中しすぎてゾーンに入ったか。それとも全てが空回って終わったのか。後者ばかり考えて魂が打ち砕かれそうになる。

 

 次の瞬間。

 奇跡は、姉の手の中へ招かれた。

 

『UUUUUUUUOOOOOOOOOOOOOOOOOOO────!!!!!!!!??????』

「っ────!!」

 

 互いに、初めて呼気を出し尽くす。

 今までにない、超圧倒的な大大大歓声。

 

 講堂の天上を突き破り、空を越えて山を越えて、天川駅まで響きそうな轟く声援。

 文句なしの決着だ。ありとあらゆる手段を用いて、1%未満の勝利をもぎ取った。

 

 完全掌握である。

 

「────ありが、とう……」

 

 本当、に……。

 声は限界。かなり痛めた。出せた言葉はそれが精一杯。

 すると全観客(ファン)がお礼を返す。

 

 震撼するドーム。

 今月の一番星(トップアイドル)は決まったかもしれない。

 それほどの大熱狂。

 

 されど来月はどうなるか分からない。

 だが負けても負けても、最後に勝つ。

 

 舞台袖に戻る。

 勝利の高笑いを上げる。

 全力で激しく悔しがる妹。

 

 嗚呼(ああ)、と決(あきら)めた。

 姉の結晶(ほこり)は────これから一生涯、砕けても砕けても、砕けたまま立ち上がり続けてやる。

 

     ♪~初雪`白線~♪

 

 始まりは、大天使のような笑顔。

 観客を一瞬で魅了し尽くす。

 

 歌も踊りも平均的。だからってそれは大前提。

 度胸と笑顔で自信いっぱいに、ファンのみんなと楽しみ尽くす。

 

 それがアイドル。

 これがアイドル。

 

 遠い異国の地にまで来て追い求めた夢の光、理想の輝き。

 閉じていく天井。曲の途中で講堂内が真っ暗となるが、そんなものは逆境ですらない。

 

 自らのパフォーマンスで景色を塗り替える。

 青と白のスポットライトが乱反射。

 

 ────貫禄。

 それが葛城リーリヤの到達点。

 

 気づけば、あっという間のライブだった。

 ちゃんとできただろうか。あとは親友に光を繋ぐ。

 

     ♪~初嘘`Tame-Lie-One-Step~♪

 

 一歩跳び出した次元。一寸先は闇。

 そこには親友の輝きと夢があった。

 

 今でも自分は闇に埋もれているけれど。

 親友のおかげで飛び越えてみせたと、逆光の嘘を張り通す。

 

 造り上げた偶像。

 学園プロデューサーと紡ぎ上げたIFの姿。

 

 緑のスポットライトに交じる、黒い閃光(フラッシュライト)。

 

 自分の全てを覆い隠し、自分の全てを曝け出す。

 愉快も恐怖も我が手の中に。

 手中に収めて自由自在に操って。

 

 圧巻のライブパフォーマンス。

 一切の迷いがない、軸のブレが一切ない、群を抜く安定感。

 

 不安要素なんてチラ見せもしない。

 最高峰のパフォーマンスで締めくくる。

 

 ────歓声。

 夢、これで叶えられたかな。

 否、まだまだ。ふたりでステージには上がったけど、それはひとりずつ。

 これから。一緒に立つためには。

 全てを塗り尽くすには、まだ早い。

 

 舞台袖に戻る。

 親友が待っていた。

 

 次の出演者に激励を送る。

 かたや友達と言う強靭な子と、かたや友達じゃないと言い素直になれない天邪鬼な子は、自分たち親友と異なり────決して交わらないスポットライトの下に躍り出た。

 

     ♪~競艶`鸚・哥・妖・精~♪

 

 ユニット『neverMIX』────女神と偶像。水面の青光と月夜の皓々(こうこう)。

 決して手綱を握れないふたりが、自由奔放に暴れだす。

 

 ふたりして全く別々の振り付け。

 統一感はかなぐり捨てた破壊者たち(ロックンローラー)。

 

 ふたりして圧倒的な歌唱力で盛り上げる。

 鳥肌を立たせて、全身を震え上がらせる。

 

 中盤から激しくなる振る舞い。

 まるで戦うような、競い合うような。

 見ているこちらが、思わず笑みがこぼれるるような、楽しい楽しいすれ違いの連続。

 

 かたや全知全能のごとく真実を見透かして。

 かたや傍若無人のごとく立ち居振る舞って。

 

 終盤、揃って疲労困憊。仲が悪いようで良いのかと思いきや似た者同士。

 そして爆発した。可愛い偶像(アイドル)に微笑む時間は終告(しゅうこく)。

 

 逆転不能な逆境でこそ輝く女神。

 土壇場こそ真価を発揮する偶像。

 

 月と鼈(すっぽん)?

 クジラとイワシ?

 聖なる龍と堕落の蛇?

 

 天女と幼女のお遊戯会。

 その皮肉は誰の発案か。

 

 ラストスパート。

 カリスマの輝きが、全観客(ファン)の度肝を抜いた。

 

 言語化できぬパフォーマンスの極み。その勇姿は完全勝利者(フェスマスター)の貫禄。

 スポットライトと大歓声を浴びるふたり。

 趣味の女神は微笑みを浮かべ、トップ級アイドルは手を振り、ゆるりと舞台袖に立ち去った。

 

     ♪~撃走`ダイナマイトバンカー!~♪

 

 締めは、余った気力を絞り尽くすに限る。

 

「みんなぁ~♪」

「最後の一曲ですわぁ……!」

「準備はい~いー?」

 

 ユニット『爆射塔BANG a`Lore』────

 

 跳んで跳んで跳ねてきた三人は、せーのでジャンプ。

 暖色系の花火が打ち上がる。黄色と橙色と赤色のスポットライトと火花が乱れては散って講堂を沸かす。

 

 パワフルでパッションな、パーフェクトライブ。

 

 伝説の一瞬を刻み込み、爆走した故に爆速で終わったライブの余韻を残してバイバイ。

 燃え尽きたように大満足しきった観客(ファン)たちは、最後まで声援を贈り、舞台裏に立ち去ってアイドル達の姿が見えなくなってもなお、未だ言い足りない愛を叫びに叫び続ける────

 

 かくしてエメラルド講堂(ライブ)は、超大成功のうちに幕を閉じた。

 

          §

 

 夕暮れのキャンパス内。

 人目につかない野外ステージ近くの芝生にて。

 

 青髪のプロデューサーはチェインで呼び出されていた。

 やがて藤田ことねが走ってくる。

 

「────このやろぉおおおおおおおお────!!」

 

 全力疾走中からの全力突撃体当たり。

 避ければ転倒してケガするため、抱き留めるしかなかった青髪のプロデューサーは瞬間的に周囲を見渡して衆目がないと確認。頭突きを胸に受けて咳き込む。

 

「ごほっ……!?」

「いったぁ……このう、プロデューサーぁ! あんたプロデューサー辞めるくせに、なにしてんですかぁ!?」

「置き土産です」

「っ! こ、こんな置き土産……最高に嬉しいですけど、最低最悪に嬉しくなーい!!」

 

 藤田ことねは目元を拭う。既に袖は濡れきっており、肘あたりも濡れきっている。

 真っ赤に腫れた目。止まってくれない涙。嬉しさと驚きと嬉しさで情緒が崩壊寸前。

 

「責任、取れぇ!!」

「ははは。……藤田さん。あなたは本当に運(・)が(・)悪(・)い(・)」

「っ……?!」

「なんせ、こんなにいたずらが大好きなプロデューサーに、捕まっ(スカウトされ)ちゃったんですからネ!」

「────ッ!! うっ……ぷ、ぷりょでゅうさぁの、ばかぁ……!」

「あーあー。なーかせたー。いったいだれだ? ひどいやつだなぁ~?」

「おまえじゃあああああああいっ!!?」

 

 藤田ことねは泣きながら怒って喜んで、笑えばいいのかどうすればいいのか何も分からなくなる。

 こんなの反則だ。三年間くすぶっていた。後がない状況だった。数ヵ月後には学費を払えず、アイドル辞めてちびどもの進学のため、バイトに専念する未来だって考えていた。割とお先真っ暗な時に、ふたりのプロデューサーに同時にスカウトされた。それからは成功のてんてこ舞いだ。三年間のくすぶりを帳消しにするほどの活躍を、ついさきほど成し遂げた。

 

「くっそぉ……今のプロデューサーは、父親を連れ戻してくるし……次のプロデューサーは、家族に『銀行の人』と思われてるし……」

「え? はは! なるほど! それは愉快なことに!」

「ふたりとも────あたしの家族に、改めて紹介しますんでっ!! いいですね!?」

「え? 俺はもう藤田一家とは知り合いですけど……」

「あ、あたしのほうから紹介したいんですぅ! わかれぇっ!!」

「え~? よくわかりませんねぇ~?」

 

 青髪のプロデューサーは笑いながら、膨大な好意をのらりくらりと躱していく。

 完全に分かってやがるコイツ……と藤田ことねは恨みがましく睨みながら、涙が止まらず困ったもんだ。

 

「ぐすっ……ど、どうして、プロデューサーは……あたしに、ここまで……?」

「え? 先輩と同じですよ。プロデューサーとして当然のことをしたまでです」

「っ……!! ふたりしておんなじこと言うなぁ!? ンなわけねぇだろ! このやろぉー!!」

 

 怒号のような絶叫が夕空に響き渡る。

 

「あんたらイカれてんのか!? 明らかにプロデューサーの範疇を超えてんだろーがよぉー!」

「おや口が汚い。どうしました? キャラ崩壊してますよ? アイドルにあるまじき精神状態ですね」

「誰のせいだとぉおおお!? 思ってんですかぁあああ!!」

 

 ああ言えばこう言う。

 こんなプロデューサーには地団駄を踏んだところで無意味。ビシッと指摘するほかない。

 

「っ……じゃあプロデューサーは、あたしにしてくれたレベルのことを、ほかの子にもしてあげてるんですかぁ!?」

「はい。必要があるなら全然しますけど」

「即答ぉ!?」

「私はそういう生き方をすると決めているので。それがたまたま、プロデューサーとしての責務と被っただけですよ」

「……“超人”かよ……」

「ええ。先輩を見るに、プロデューサーという職業は超人でなければいけないようですね。あな恐ろしや……くわばら岳之助……」

 

 青髪のプロデューサーはふざけ倒す。

 藤田ことねは拳を握り締めた。歯ぎしり。全身に力がこもる。

 

「ぐぬぬ……な、何か、恩返しを……!」

「不要です。なんならそういうのはすべて先輩に。主に今回の計画は先輩が主導していましたから」

「そんなんじゃダメですぅ! きっちり両方に返します!」

「そもそも返す必要あるので? お互いの努力が実った証でしょう? 既に先刻のライブで、恩は返されていますよ。改めて、初ライブの成功、おめでとうございます」

「ぐああああああああああーーーーーー!! 今それ言わないでください!! ──気持ちの問題なんですぅ!!」

「……さいですか。まぁ好きにしてどうぞ」

 

 藤田ことねは頭を抱える。

 情緒も理性も崩壊した。

 次に何をしてしまうか、自分でも分からない。

 

「プロデューサぁ!」

「はい?」

「また、会えますよね!? プロデューサーが、プロデューサー、辞めちゃっても……!」

「……まぁ、はい。連絡先は交換してるので、会おうと思えばいつでも?」

「じ、じゃあ……!」

 

 藤田ことねは告げようとする。

 青髪のプロデューサーは気持ちを察して片眉を上げた。

 

「……っ────ぷ、プロデューサーは……どういう女の子が、タイプですか!?」

「はいぃ?」

「いいから答えろぉ!」

「……まぁ、可愛い女の子なら、誰でもタイプですよ?」

「!!?!?!!?」

「ははっ!」

 

 藤田ことねは泡を食ったようにビビり散らかしてのけぞる。

 それを目にした青髪のプロデューサーは冗談めかして笑い、帰路に就いた。

 

「あ、ちょ、まってくださ────!」

「とりま落ち着いてください。今週は休暇なので、家族水入らずでどうぞ~」

 

          §

 

 川の匂い。

 青髪のプロデューサーは橋を渡っていると、川を眺めている篠澤広を見つけた。

 

「おや。何用で?」

「……────プロデューサーは、ひどいひと。わたしをトップアイドルにしてくれるって言ったのに……。──うそつき」

「そうですね。異論ありません」

 

 しかし青髪のプロデューサーの理屈では、その目標は学園プロデューサーに託したので、虚偽を働いたつもりはないのだろう。

 それに、もし篠澤広がトップアイドルになれない問題が起きた場合、いつでもどこからでも、手助けするため駆けつけるはず。彼はそういうひとだ。

 

「…………本当に、お別れなの?」

「はい。でもまぁ割と近くに住んでますので、会おうと思えば電車で片道、小一時間?」

「……」

「……」

 

 篠澤広からの返答が少ない。

 

「話したいこと、聞きたいこと、いっぱいある」

「それはいつでもできるでしょう」

「……」

「……」

「でも、プロデューサーとアイドルとしての会話は、もう終わり」

「プロデューサーとアイドルとしての会話、そんなにしていましたっけ?」

「趣味の話ができなくなる。守秘義務とか、ね?」

「ああ、それはそうですね。──でも互いに見抜くので問題ないのでは?」

「あ……そっか。じゃあ、いい……の? かな……」

「ふは。悩める乙女ですネ!」

 

 青髪のプロデューサーは楽観的。

 篠澤広は複雑な心境で葛藤、離別の悲しみを背負って立っている。

 

「……ずっと、この関係が続くと思っていた……」

「あなたに講釈いただいて、単位取りまくってる時点で、飛び卒の可能性は考えていたはずですよね?」

「うん」

「私が100プロに入る気がないことも、また見抜いていた」

「うん。プロデューサー、芸能界に興味なさそうだから」

「ならば、何に悩んでいるんですか?」

 

 篠澤広は、割と前から、青髪のプロデューサーが近々学園を去ることを予想していた。

 それなのに、なぜそこまで動揺しているのか。

 

「するのは、当然。……わたしの気持ち、分かってる、でしょ?」

「はい」

「……わかってるの、に?」

「はい」

「……ふふ……」

 

 篠澤広は、確認を済ませて、初めて微笑んだ。

 

「あぁ……ままならない、ね……」

「そうです、ねぇ……」

 

 青髪のプロデューサーは腕を組んで夕空を仰ぐ。

 青春の恋は、ひと夏の恋にもならず、幕引きを告げるのか。

 

「……プロデューサーを辞める時、あなたに渡すものがあります」

「……! それは、なに……?」

「お楽しみです」

 

 ふいに篠澤広は前のめり。相手の顔をよくよく観察する。

 

「…………全然わからない。プロデューサーは、ポーカーフェイスが得意」

「そりゃあ手がかりすらありませんからね。まず私の正体を突き止めなければ」

「……プロデューサーの、正体……?」

「それは来週、おいおいと。──それより篠澤さん。『ICF』、楽しみましょうね!」

「! ……うん……!」

 

 よくわからないが、青髪のプロデューサーは『ICF(それ)』を楽しみにしているようす。

 ならば最後の宴だ。共に趣味に興じよう。遊び尽くそう。そのためにも今週は休養である。

 

          §

 

 青髪のプロデューサーは中庭を通る。

 背後から気配。足音からして月村手毬だと分かる。

 

「月村さん。どうかしました?」

「っ!? ……後ろに目でも付いてるの? 気持ち悪っ」

「傷つきました。傷を癒しに早々と帰宅しますね」

「っ!? あ、まって────!」

 

 月村手毬は、黒いスーツの裾を指先でつまむ。つまんで引っ張る。ぎゅうぎゅうと引っ張る。つんつんと引っ張って、こっちに向けと合図を送る。言葉は使わない。まるで何かを訴えたいけど恥ずかしくて言えない、恥ずかしがり屋の子供のようである。

 

「なんですか? 振り返りませんよ」

「っ! っ……────」

 

 鼻をすする音。号泣九秒前の気配。

 

「ぷ……プロデューサーの、うそつきぃ……!」

「────はい?」

「ずっと……ずっと私と二人三脚でやってくって、言ってたじゃないですかぁ……!」

「言ってませんよぉ!?」

 

 とんでもない事実捏造である。

 しかし、そのくらいのつ(・)も(・)り(・)で居てくれたのだろう。

 

「言ってたァ!」

 

 言う言わないの不毛な言い合いは好むところではない。

 青髪のプロデューサーは即答して話題転換。

 

「それはプロデューサーとして? それとも別の在り方として?」

「……ぇ……?」

「答えは卒業式の後に。ではまた」

 

 青髪のプロデューサーは、すたこらさっさと帰路に就く。

 その際、裾が強く引っ張られたが、それを容赦なく振り切った。すると背後から走る音。青髪のプロデューサーは全力で逃げる。

 

「なんで追いかけてくるんです!?」

「いやだぁあああーーーーーー!!」

 

 背後から刺されるかと思った青髪のプロデューサーは、その叫びを聞いて、ただの子供の癇癪だと察した。徐々に失速。正門に近づくと、そこには倉本千奈と葛城リーリヤ、花海姉妹が待ち構えていた。

 

「……なんです?」

 

 立ち止まると、背後から月村手毬が体当たり。腕を回してお腹を引き締めんばかりに抱きしめてくる。背中に熱いものを感じる。涙だけならまだ良いが、感触的に、明らかに鼻水も混じっていた。汚い。

 

「先生……!」

「センパイ……!」

「プロデューサーさぁん!」

 

 倉本千奈・葛城リーリヤ・花海佑芽が駆け寄ってくる。

 しかし言葉が出てこないのか、じっと見据えてくるだけで何も言い出さない。

 

「……みなさん、素晴らしいライブでした。しかし涙の離別は、私の卒業式まで取っておきましょう」

 

 そこへ花海咲季が歩み寄る。腕を組んでジト目。明らかに怒っている。

 

「プロデューサー。あなたのおかげで、私は佑芽に勝てたわ」

「そうですか。良かったですね。今月が終われば交換留学も終わりですので、先輩の事務所(きょうしつ)に戻っても良いですよ」

「…………そのことなんだけど」

「?」

「わたし────あなたを逃がさない」

『!?』

 

 突然なにを言い出すのか。花海佑芽は赤面して「ま、まさか……!」などと脳内真っピンクになる。

 対する青髪のプロデューサーは、さすがストイックな人だと感心した。妹に勝つためなら、文字通り手段を選ばない。

 

「わたしの相棒は、わたしをスカウトしてくれたプロデューサー、ただひとりよ。でも姉の誇りを守ってくれたのは、青のプロデューサーでもある。だから……もしプロデューサーを辞めても、たまにでいいから……アドバイスをくれないかしら? あなたとは、これで終わりにしたくないの。捕まえておきたい人材だから」

「構いませんよ」

『……!!』

 

 プロデューサーを辞めるからといって、二度とアイドルと会えなくなるわけではない。機会はめっきり減るだろうが、交流する意思があるなら、いつでもいくらでも会えるはず。

 

「そう……なら、わたしは満足よ。これからもよろしくね? わたしのアドバイザー」

「そこは友(・)達(・)で良いのでは? まぁ肩書きなんてどうでもいいですけど……」

 

 その時、葛城リーリヤが意を決して叫んだ。

 うんと両肩を上げて、全身で吐き出す。

 

「せ、センパイ! わたしとも……(オタク)友達に、なってくれませんか……!?」

「はい。まだまだメカ談議はしたいですからね。こちらこそよろしくお願いします」

 

 倉本千奈は迷う。

 今まで私的な交流は、考えてみれば全然ない。あくまでプロデューサーとアイドルとしての交流しかしていない。なにか理由はないものか。考えに考えて、閃いたものは、別に青髪のプロデューサーではなくとも良い理由。それでも叫ばずにはいられない。

 

「先生! わたくしに……またお勉強などを、教えてくださいますでしょうか!?」

「はい。構いませんよ」

「そ、それと! 花海咲季さんのように、アイドルとしての助言なども……!」

「私で良ければ。友の心を支える程度のことは、当然しますよ」

「まぁ……! ──うぅ……わたくし、寂しくて、胸が張り裂けそうですわぁ……っ!!」

「はは。ちなみに移籍先のプロデューサーは、私が最も尊敬する先輩プロデューサーなので、何も心配は要りませんよ」

「そ、それは……先ほど、その新しいプロデューサーの方が挨拶にいらっしゃって……」

 

 どうやら面識は出来た模様。印象も良好の様子。これなら問題はないだろう。

 人生の教師は、いくら居たって良いものだ。

 

 やがて倉本千奈は嗚咽して泣き出してしまった。

 仕方がないので、花海佑芽が続きを話す。

 

「それで……『ああ、ほんとにプロデューサーさんは卒業しちゃうんだな……』って思ったら、みんな、いてもたってもいられなくて……!」

「……そうですか。ありがとうございます。そして誠に申し訳ございません。要らぬ不安を与えましたね。まぁ分かってはいましたけど。──それでも、卒業直前までには、隠していたかったんですよねぇ……」

「な、なんでですかぁ……?」

 

 青髪のプロデューサーは不敵な笑みを浮かべる。

 

「まだまだ、ド(・)ッ(・)キ(・)リ(・)があるからですよ!」

『……っ!?』

 

 そこで月村手毬が泣きながら叫ぶ。

 

「ぷろでゅうさ゛ぁ……! 私のこと、見捨てないでよぉ……! 私の何がダメなのぉ!? 暴言……? 素直じゃないとこ……? 性格……? ぜんぶぜんぶなおすからァ……!! いやだァ……やめないでぇえ……っ!」

「あの、なんかそう言われると変な意味に聞こえてくるのでやめてください……私たちそういう関係ではありませんから……」

 

 ふいに青髪のプロデューサーは視線を感じる。休日の放課後とはいえ部活動もある。動画を撮影されているかもしれない可能性を考慮して、突として大声で話す。

 

「みなさん! 私はプロデューサーを辞めます! 来週には飛び級で卒業します!! そのため、お別れを悲しんでくれるのは非常にありがたいのですが……それで立ち止まってしまうアイドルに育てた覚えはありません!!」

『っ……!!』

「泣くのも結構! 引き止めるのも結構! ですが私は止まりません! なぜなら私には夢がある! そして、あなたがたにも夢があるはずです! それが何か言ってみなさい……!!」

『……ッッ!』

 

 月村手毬は、最後に“ずびびび”と鼻をかむと、赤く腫れた目つきでキメ顔。

 ほかのアイドル達も、一斉に偶然と、声を合わせて叫んだ。

 

『────トップアイドルになること……!!』

「よろしい! それではみなさん、各々の夢に向かって────『168事務所』は解散です……!」

『────っッ……!!!』

「諸々のお別れ会などは、『ICF』のあとに! 乞うご期待! それではっ!!」

 

 青髪のプロデューサーは帰路に就く。

 正門を越えて──後ろ髪を引かれるような熱い視線を注がれながら──男子寮に向かった。

 

 ちなみに卒業式の一週間前には、事務所のような場所として使っていた教室は、学園に返却する必要がある。そのため今日の放課後から168事務所の教室には入れない。必要な資料などは隣室の倉庫から、すでに学園プロデューサーが運び終えているはず。冷蔵庫の中のものは自由に処理して構わないとも通達済み。

 ただし、あさり先生によると学園プロデューサーの担当アイドルが多くなるため、事務所となる教室が狭くなる懸念がある。そのため二つの教室の使用許可を与える可能性もあるとのこと。つまり学園プロデューサーの事務所のとなりに、168事務所が引っ越す可能性もある。そうなれば環境はそれほど変わらず、移籍するアイドルの負担を減らすことができる。学園プロデューサーも内装は同じにしたいと言っているため、いつもの居心地は保たれるだろう。

 

 かくして青髪のプロデューサーは、男子寮の自室に帰宅した。

 机の前に座り、背もたれにもたれかかる。

 

「さて、最後のひと仕事だ……」

 

 青髪のプロデューサーは、最後のレポートを書き始めた。

 

〔篠澤広のレーダーチャート〕

 歌唱力:3 ダンス力:3 表現力:9

 親密度:6→9 運動能力:3 アイドルへの興味:5

 

〔月村手毬のレーダーチャート〕

 歌唱力:7→8 ダンス力:6→7 表現力:6→7

 親密度:6→6.9.16 スタミナ:7→8 トラウマ克服度:8

 

〔倉本千奈のレーダーチャート〕

 歌唱力:3→4 ダンス力:5 表現力:5→6

 親密度:5→9  愛嬌人望:8→10  家柄:10

 

〔藤田ことねのレーダーチャート〕

 歌唱力:3→4 ダンス力:7→8 表現力:7→8

 親密度:5.7→8.10  体力:6→7 自信:3→5

 

〔葛城リーリヤのレーダーチャート〕

 歌唱力:6 ダンス力:6 表現力:6

 親密度:6→8 体力:7  度胸:6→8

 

〔花海佑芽のレーダーチャート〕

 歌唱力:10 ダンス力:10 表現力:10

 親密度:10→10.19 運動能力:10 アイドル力:2→9

 

〔花海咲季のレーダーチャート〕

 歌唱力:7→8 ダンス力:7→8 表現力:7→9

 親密度:1→9.19 不死身:10 アイドル力:7→8

 

『最終全体評価:みんなスゴい。疾うの昔から一人前のアイドルだ』

 

 共同編集者:『本当にそうですね。そして少し早いですが、お疲れ様です。アルファくん♪』

 

          §

 

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