※この作品はR-18です。

【小宮果穂とちょいワル男子のオトナ甘くてコドモ苦い】ぷらすえっくす!   作:形のない者

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共同住宅プチパレス編〔不穏バトル編①〕



共同住宅プチパレス編〔不穏バトル編①〕
pSR【ダブル即堕ち2コマ】花海咲季〔夢魔(サキュバス)〕〔夢オチ〕(※R-18)


 

 深夜零時過ぎ。

 プチパレスの男湯。

 

 風呂場の内装は、縮小した銭湯を思わせる。

 壁面に備え付けられた十個以上のシャワーの並び。奥行きの壁一面に塗られた富嶽(ふがく)三十六景。その下に正方形の湯舟(ゆぶね)が二種類。子供用の浅風呂と全身浸かるための深風呂。なお個人用(バリアフリー)として、個人用の浴槽(よくそう)もいくつか設けられている。

 

 深夜帰りのアルファは中央のシャワーで洗髪。それが終われば鼻歌交じりに全身を洗う。

 ふと更衣室から物音と人影。なにやらもぞもぞと動いており、服でも脱いでいるような影が見える。体のラインとしては、くびれが目立つので女性的に見える。

 

(────? 誰かが間違えて入ってきたか……? あるいは……。まず背の高さ的に……果穂より低い。ということは広でもない。そうなると……)

 

 引き戸が開かれる。湯気が立ち込める中、威風堂々と入ってきたのは────局部を隠すようにバスタオルを巻いた花海咲季だった。

 

「ここ男湯ですよー」

「知ってるわ! それでアルファ────わたしと勝負しなさい!」

 

 いったいどういうことか。

 咲季は、既に勝ち誇ったかのような自信満々の笑顔で、平然と男湯に乗り込んでくる。アルファの横に立って仁王立ちをかまし、腰に手を当ててプロポーションをアピールする。

 

「頭おかしいんすか?」

「わ、わたしだって! ちょっと強引だな、とは思ってるわよ!!」

 

 赤面する咲季。

 ちょっとどころではないのだが。などというツッコミは抑えて、アルファは淡々と訊く。

 

「で、何用で?」

「冷静ね……もしかして来るって分かってたの?」

「いいえまったく。逆によくわからなくなりました。血迷いましたか?」

「……かもね」

 

 咲季は風呂桶を裏返してそこに座る。両拳を頬に当てて、両肘を膝に。壁面に設けられた鏡に仏頂(ふくれっ)面が映る。

 一方、となりに座るアルファは羞恥心をかなぐり捨てて、泰然自若と体を洗い続けていた。

 

 チラチラと視線。

 

「俺の局部が気になりますか」

「っ?! せ、セクハラよっ!」

「男湯に乗り込んできた変態の方がセクハラでは?」

「ぐぬぬぅ……」

 

 アルファは腹を割る決意を固める。

 

「咲季さん。俺は勘違いしそうです。なので彼我の認識を確かめましょう。──俺はあなたを抱きたい。あなたは俺に抱かれる気はない。これで間違いありませんか?」

「……間違いないわ」

「では、まかり間違っても襲うことがないよう気をつけます。──次はそちらの認識をお聞かせください」

 

 咲季は胸に手を当てて深呼吸する。

 

「……わたし、あなたが欲しいの」

「色々と誤解を招く言い方ですね」

「誤解してもいいのよ? あながち間違ってないんだもの」

 

 やがて気持ちの整理がついたのか、花海咲季は説明を始める。

 

「──……わたしのプロデューサーは堅実な知略を得意とする。データをもとに王道を歩む。対して青のプロデューサーは狡猾な知略を得意とする。データをもとに詭道(きどう)を歩む。それでも各々の一道だけでは、覇道には到底及ばない」

「……覇道とは、佑芽さんのことですね」

「ええ。現に、わたしは二ヶ月間、わたしのプロデューサーに育てられたけど、あなたが一ヶ月で育てた妹に完全敗北を喫した。それからわたしはNO.168の事務所に一時移籍して、一ヶ月間あなたに育てられた。結果、最終選考ではまた妹に負けた」

「けれど最後の最後に逆転した。あれは素晴らしい講堂(ライブ)でした」

「覚えてるわ。──『三度目の正直。仏の顔も三度まで。でも花海咲季は仏じゃない。だから許すのは二度まで』……理屈屋なあなたらしい言葉遊びの舌鋒ね。……最終選考で二度も負けて、完膚なきまで絶望して、わたしが本当に折れかけた時の、あのセリフ────今でも、大切にしているの」

 

 一度目で負けても敗因を学び、二度目で負けても勝因を探り、三度目の勝負で大逆転を仕掛ける。そして本当に逆転劇を魅せてみせる。

 

 では、もし三度目の勝負でも負けたら……?

 

 綱渡りが過ぎる。アルファが祝うように、呪うように掛けた『三敗の不退転の誓い』は、既に妹への負けを知る花海咲季の砕け散った魂に────筆舌に尽くしがたいほどの重圧を、未来永劫、与え続けている。

 

 故に、恨まれることはあれ、大切にされる謂れはないはずだ。

 そのようにアルファは考える。

 

「大切? トラウマの間違いでは?」

「大切(トラウマ)よ。でもそれ以上に誇りなの。何度負けたって最後には勝つ。その信念と手法を、あなたとの一ヶ月間で、よく学んだから」

 

 溜め息。

 

「で、つまり?」

「まだ分からないの? 今日は鈍いわね……」

「男という生き物はですね。なんだかえっちな感じになってると思考が回らないんですよ。現に私が今なにを考えているのか教えましょうか? ──た(・)ぶ(・)ん(・)今(・)こ(・)こ(・)で(・)口(・)説(・)い(・)て(・)押(・)し(・)に(・)押(・)し(・)た(・)ら(・)ワ(・)ン(・)チ(・)ャ(・)ン(・)抱(・)け(・)る(・)か(・)も(・)ってことばっか考えてますよ」

「っ!? ……」

 

 故に、花海咲季が仕掛けたハニートラップは、ほぼ成功していると言える。

 今のアルファは官能的なことばかりに酸素を使っており、脳の働きが鈍っている。速攻を掛けるなら今しかない。

 

「……つまり、ふたりのプロデューサーが組んだら最強で無敵。そう言いたいの」

「なるほど。たしかに咲季さんが妹に大逆転したあの講堂(ライブ)は、私と先輩の協力技です。ステージの仕掛けは私が担当し、あなたの持ち歌は先輩が担当した。その役割分担が功を奏した。……無論、多くの幸運も重なりましたが」

「講堂の天井が開いたら曇り空で、暴風も吹いていたって話? あの時のわたしは、無我夢中で気がつかなかったけど……でも曲が終わったあとは、ちゃんと晴れていたわよ?」

「ええ。既に先輩から聞いているはずですが……最後の最後に、雲間から天使の階段が架けられた。とんでもない天運ですよ。あれがなければ逆転劇はありえなかった」

「プロデューサーもそう言っていたわ。……なら、これは三人の勝利と言えるのかしら? だとしたらわたしの理論も正鵠(せいこく)を射ていると思わない?」

 

 王道を使う学園プロデューサー。

 詭道を使う青のプロデューサー。

 天運を持つ花海咲季。

 

 パーティーとしては────

 戦記ものなら、将軍・参謀・英雄。

 ファンタジーものなら、賢者・魔法使い・勇者。

 ────といったところだろうか。

 

「やっぱり三人で組めば最強無敵よ! この布陣なら二度と佑芽に負けることはない! だから────」

 

 花海咲季は姿勢を正す。真っ正面にアルファの横顔を据えて、背筋をピンと立たせた。

 

「────わたしたちと一緒に来て?」

「お断りします。俺にメリットがない」

「あるわ! ────わたしをあげるもの」

「──……!?」

 

 アルファは眉をしかめる。ドン引きである。

 

「……いくら勝つために手段を選ばないからといって、枕営業はどうかと……」

「っ?! ち、違うわ……!! それは誤解よ……っ!! ────し、しまったわ……そうよね……そう受け取られることも当然あるわよね……た、タンマ! やり直させてちょうだい!」

「あなたにしては珍しいミスですね」

「っ~~~~……ちゃんと、言い直すから……」

 

 花海咲季は何度も深呼吸する。

 やや赤らみながら、告白した。

 

「あなたが欲しいの。能力的にも、異性としても」

「どこらへんが気に入ったんです?」

「わたしに勝った佑芽に勝たせてくれた」

「それを言うなら先輩もでは?」

「ええ。だからあの人も手に入れる」

「……!? あのぅ────それはつまり、姫崎さんから先輩を奪う、という宣言で……?」

「莉波先輩がそう受け取るなら仕方ないけど、わたしからすれば半(・)分(・)こ(・)よ。ま~ぁ? わたしのこと好きすぎるプロデューサーが、も~し莉波先輩よりわたしを選ぶようなら? それは仕方ないわよね! 結果的に奪うことになっても、しょうがないわよね~♪」

 

 なかなかの小悪魔にして大魔王である。

 

「つまり、あなたは……────ハァ…………なんとも強欲ですね。ミス・魔王后(クイーン)」

「そうでもしないと佑芽に勝てないんだもの。三度目の正直だって……いつまで通用するか分からない……あの子も、三度目の勝利を防ぐために学習してくる……だから、そうなる前に先手を打たなきゃいけないの! 言ってる意味は分かるでしょう?」

「分かりますけど……だからって俺を得るために取る手段が……それというのは……やはり血迷ったとしか……」

 

 アルファは真摯にたずねる。

 

「アイドルとしての純潔と誇りは、どうするんです?」

「捨てる」

「闇堕ち~! 即答なところが覚悟ガン決まりすぎるでしょう!」

「……でも、わたしのプロデューサーと恋愛関係になるのは……引退してからって決めてるの。そこがアイドルとして、ギ(・)リ(・)ギ(・)リ(・)の落としどころだと信じてる……」

「え、俺は?」

「あなたはもう一般男性でしょ。も(・)う(・)プ(・)ロ(・)デ(・)ュ(・)ー(・)サ(・)ー(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)んだもの」

「なるほど。プロデューサーを抱くのは、たしかに枕営業だ。でも一般人との恋愛は、ただの普通の恋愛。そういう認識でよろしいです?」

「ええ」

「でも俺は、元・プロデューサーですよ? しかも現役のアイドルだ。芸能界のフィクサーでもある。もしこれが発覚すれば、世間は枕営業として見るでしょう」

「その時はわたしの完全敗北よ」

「おいおい……いくら佑芽さんに勝ちたいからって────」

 

 アルファは地雷を踏んだ。

 されど花海咲季はぐっとこらえる。

 

「────…………先輩に恩をアダで返すような真似はできませんね」

「! っ……」

「それにあなたは、勝利に必要な要素と恋心を勘違いしている節がある」

「……そう言っておけば、わたしが『そうかもしれない』とか言って、おめおめ諦めるとでも?」

「俺は『不自然な右に習え』が嫌いでね」

「……?」

 

 アルファは解説する。

 

「佑芽さんは俺に好意を抱いています。それは『姉に勝たせてくれた大恩』からくる感謝と尊敬の感情だ。それを恋心と勘違いしている節がある」

「……!」

「それは咲季さんも似たようなもの。『妹に勝たせてくれた恩義』からくる感謝と畏敬の感情だ。さらにあなたは、佑芽さんの気持ちに気付いている。だから、そんな佑芽さんに“勝負(アルファ)のことで先(・)を(・)越(・)さ(・)れ(・)な(・)い(・)よ(・)う(・)に(・)”……妹(・)に(・)勝(・)つ(・)た(・)め(・)こ(・)こ(・)に(・)い(・)る(・)。本当は、俺(・)が(・)好(・)き(・)だ(・)か(・)ら(・)こ(・)こ(・)に(・)い(・)る(・)わ(・)け(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)」

「────」

「反論は?」

「…………かも、しれない、けど……そうやって、否定しきれない理屈をこねて、好きなように場を誘導する手口は……既に研究済みよ。わたしには効かないわ」

「おや手ごわい。やはりあなたはトレーナーの才能がありますね。導く者として、言葉の鋭利さを良くご存知だ」

「やっぱりあなたと長話するのは避けたほうが良さそうね。初手から対策として、あなたの手口を潰しておいて良かったわ」

「最初の発言ですか」

 

 ────わたしと勝負しなさい!

 

「ええ。あなたの口八丁に流されそうになるたび、最初の発言を思い出して、こうしてわ(・)た(・)し(・)の(・)流(・)れ(・)に(・)修(・)正(・)で(・)き(・)る(・)。だからアルファ。もう何を言っても無駄よ! あなたが次に言うセリフは『はい』か『いいえ』のどちらかのみ。それ以外の発言は無意味よ! ──では勝負の内容を伝えるわ」

「困った姉さんだ……」

 

 アルファの減らず口は止まらない。

 花海咲季の覚悟は突き進む。

 

「勝負は単純。────異性として屈服した方が負け。わたしは女として挑む。そっちも男として男らしく挑んできなさい。まぁ勝つのはわたしだけどね! 見なさい、このバスタオルの下からでも分かる完璧なプロポーションを!」

「自分に自信があるのは結構なんですが……それたぶん、エロ漫画の即堕ち2コマみたいな展開になると思いますけど……」

「どうなの!? 勝負……するの? しないの?」

「…………」

 

 アルファはシャワーを手に取る。全身の洗剤を洗い流す。

 腕を組んで天井を仰ぐ。熟考。

 

 …………。

 ……………………。

 

 数分経過。

 花海咲季はしびれを切らさず待つ。その上で忠告した。

 

「そのまま押し黙って朝まで逃げる気? ところで暗(・)黙(・)の(・)了(・)解(・)って言葉、知ってる?」

「チッ」

「! ……し、舌打ちしても、怖くないわよ!」

 

 花海咲季は手ごわい。

 今のアルファの心境としては、さながら魔王から『せかいのはんぶんをくれてやろう』と言われているようなものである。

 

「アルファ。あなたはわたしのこと抱きたいんでしょう? わたしもあなたを手に入れるためなら、愛人のひとりくらい、なってあげてもいいわ!」

(それ以外に俺を得る手段は無かったのか……?)

「なかったわ! 頭の中であらゆるルートを構築しても、必ずわたしが負けるんだもの! でも体を張れば勝てる! そうとわかれば覚悟するために……半年以上かかったけど……でも心に決めたわ! 好きでもない相手に抱かれて物事がうまく行くならそれは枕営業だけど、好きな相手に抱かれて物事がうまく行くなら、それは愛(・)の(・)勝(・)利(・)でしょう?」

(乙女(ロマン)チックな考え方ですね。一理あります。それはそれとして、こっちの反論も対策済みですか……今度はこっちが口を開けば後手に回る……だから今のは口に出さなくて良かった……)

「……なかなか手ごわいわね。なんでもいいからひとつ発言してくれれば、そっからあなたの心をバッキボキに折る話術を披露できるんだけど……」

 

 恐ろしすぎる発言である。

 

 かくして花海咲季は入念な前準備で頭脳戦を仕掛けた。

 不意打ちを受けたアルファは、もはや頭脳戦で勝利を収めることは難しい。そのため心理戦を仕掛けることで巻き返しを図る。しかしそれも入念な計画でことごとくが潰されていく。ならば残され道は────

 

(……逃げる!)

「させるかぁ!」

 

 ふいに立ち上がったアルファは更衣室に突っ走ろうとするが、花海咲季にまわりこまれてしまった!

 

「ふっふー! どうする? このまま相撲になったらわたしの勝ちね! あなたの理性が耐え切れないもの! もしかしたらポロリもあるわよ? 中学生にはたまらない攻撃でしょう!」

(この人マジで……舐め腐りやがって……わからせてぇ~……!)

 

 肉弾戦になれば、今度はアルファの方が即堕ち2コマである。まず間違いなく喰ってしまう。

 ジリジリと詰め寄る花海咲季。

 ジリジリと後退するアルファ。

 

(恥ずかしくねぇのかこのアマが……)

「ごめんなさい。わたしは決(あきら)めたの。佑芽に勝つためには────絶対に! あなたが必要なのよ!!」

(俺には関係ない)

「なら逃げ切ってみなさい!」

 

 アルファは壁際に追い詰められないようカニ歩き。

 花海咲季は前進をやめて、同じくカニ歩き。常に更衣室への逃走ルートを潰し続ける。

 

(アイドルとして恥ずかしくないんです?)

「好きな人にここまでして告白したのに、ひとつも返事をくれない男の子のほうが恥ずかしいと思うわ!」

(たしかに。……この騒動を先輩が知ったら悲しみますよ)

「そうね。でもそうなったらわたしの勝利が確定する。だってあの人、わたしのこと好きすぎるもの。きっとあなたにわたしが取られたことが我慢できなくなっちゃって、すぐ直談判しに来るわよ! わたしについてこれからどうするか、前向きに相談するためにね!」

(本当にすごいですね。あらゆる反論を封じてくる。もしやこの展開、半年以上前から練ってました?)

「ええ! 完璧な計画よ! あなたの考えそうなことは全部メモに書いて頭にインプットしてある! だから何をしても無駄よ! 潔く諦めて『はい』と言いなさい!」

(SF映画のラスボス系AIかよ。それもこれも妹に勝つため? ついでに惚れた男をふたりも得るため?)

「そうよ!」

(二兎を追うものはなんとやら)

「それはいきなり追いかけたらでしょう? わたしはそれぞれのうさぎの逃走ルートを全部潰した上で動いてるわ! もはや未来予知の領域まで、今後の展開が手に取るようにわかる……!」

(妹に勝つためとはいえ、さすがにその執着ぶりは怖いっす……)

「うふふ! もう『にげる』はできないわよ? さぁ観念しなさい! わたしの詭道を埋める者! アルファ────!!」

(ならば────『たたかう』しか、ないのか……っ!)

「喰らえ! 花海咲季特製SSD(スーパースペシャル童貞)攻撃────!!」

 

          §

 

「────あっ♥ あんっ♥」

「だから言わんこっちゃない」

 

 少年少女は、それぞれかなり頑張ったが……どちらも敗(・)北(・)してしまった。

 少女は快楽に溺れており、少年もとい青年は逃げることができず抱いてしまった。

 

 双方、即堕ち2コマ。

 否、即堕ちではなかった、と言い訳したい。最初のうちは拮抗していた。それでも結果は結果。現状がすべて。

 

「んあ……! っ……! や、やめっ────!」

「自分から襲っといて『やめろ』は筋が通らない」

「はあん♥」

 

 無聊をかこつ青年は、少女を荒々しく抱きながら、今後のことを考える。

 

(抱けば俺が勝つことは分かりきっていた。抱かなかったらずっと粘着されることも分かりきっていた。それならいっそ抱いた方が面倒じゃない。──では勝利後、俺が勝者の権利を使って『三人パーティー結成』を断ったとする。それで話は終わりだ。花海咲季は卑怯な手を使わない。きちんと諦めてくれるだろう。それはそれとして別の勝負を仕掛けて口説いてはくるだろうけど……)

 

 まったく面倒な御仁に目をつけられた。

 アルファは糸目を引いて煩雑する。

 

「ハァ……もっとロマンチックに口説いてから抱きたかった……こんな展開は性癖外だ……よって今度、改めてやり直させていただきます。よろしいですね?」

 

 少女はとろけた表情で、ひたすら喘いでいる。

 もはや頭の中は真っ白で、青年の声は届いていない。

 

「ハァ……俺は三割ほど萎えています。その萎えた男根でこの有様では……俺が本気を出した時、どうなるか分かったもんじゃありませんね……」

 

          §

 

 翌日。

 深夜の男湯。

 

 アルファと学園プロデューサーは、一人分の間を空けて、横並びでシャワーを浴びていた。

 

「……先輩。ちょっと怒涛の展開が過ぎて、極めて困惑しているのですが……」

「それは私もです」

「でしょうね。だからといって────もしや先輩も血迷いました?」

「私は熟慮した上でここにいます」

「いやいやいやいやいや! 咲季さんにナニカされました!? 姫崎さんがこのこと知ったら泣きますよ!?」

「実はお姉ちゃんも『スワッピングみたいなものだから』と言って誘ったんですが……断られました」

「うわうわ最低! え、なに!? これ夢?! 夢だよね!? 明晰夢ってやつ!! お願いだ夢オチであってくれぇえええええええええええ!! 俺の尊敬する先輩と花海咲季さんがおかしくなってるぅううううう!! 解釈違いです! おととい出直してきやがれぶっ殺すぞ!! それはそれとして楽しみます!」

 

 おそらく夢魔(サキュバス)に官能的な夢を魅せられて、精気を吸い取られているのだろう。

 全て吸われる前に脱出してサキュバス退治をしなければならないが、アルファはあと一回戦くらいならやる気マンマンだった。精力絶倫ゆえ、この程度では吸い尽くされない。むしろ夢魔のほうが吸い過ぎて腹痛になるレベルだろう。

 

「ところでご同輩。俺は将軍兼賢者として、咲季さんの前身を攻めます。あなたは参謀兼魔法使いとして、咲季さんの背後を攻めてください」

「あのすみませんケツの穴に突っ込む性癖はまだ未開拓なんですけど。たとえゴムの上でも普通に汚いから嫌です……」

「仕方ありませんね……ならば逆にしましょう。ご同輩は、俺の後輩でもありますからね。大目に見ますよ」

「なんで大目に見られなきゃいけないんだ……? おかしくない? 頭の中が真っピンク過ぎない……?」

 

 引き戸が開けられる。

 バスタオルを巻いた花海咲季が入ってきた。

 

「────アルファ! ヤリましょう! わたしは勝負に負けた……だから潔く諦めるわ。でも人生の試合には勝っているのよ! このままアルファもプロデューサーもメロメロにして、わたしの言いなりにしてあげる!」

「なるほどそういう作戦だったんすね~。完璧っすね~。不可能という点に目をつむればね~?」

「ちなみに見ての通り、既にプロデューサーは陥落済みよ! わたしって傾国の美女だったのね……可愛いは罪……その意味を体現してしまったわ……!」

「申し訳ございませんが、今の咲季さんを俺は可愛いとは思えません。でもスゴくえっちだとは思います。でも色々と夢の咲季さんには幻滅しました。なのでこの夢を見せた奴は半殺しにすると誓います」

「そうなの? それはありがとう……?」

 

 さっそく咲季は、アルファと学園プロデューサーの間に座る。両方にニコッと笑いかけた。

 

「さて♪ わたしのこと、誰が最初にメロメロにしてくれるのかしら?」

 

 アルファはドン引きする。

 学園プロデューサーが答えた。

 

「当然────両方です」

「へ? ──え、ちょ、なんで後ろから羽交い締め……?」

 

 学園プロデューサーは咲季を後ろから抱きしめる。バッグハグである。そのまま男根の位置を調整。

 対するアルファは前から抱きしめる。男根の位置を調整。

 

「────!? えぇぇ……っ! ち、ちょっと! に、二本同時は、まだ無理よぉ!」

「だからこそですよ」

「ご同輩の言う通りです。それに咲季さんにはお仕置きが必要です。プロデューサーに相談せず、まさか枕営業まがいのハニトラを仕掛けて、ご同輩を篭絡しようとするとは……暴走ですよ、それは。なので少々反省してもらいます」

「っ────! い、いいわ……そういうことなら、わたしが百パー悪いし……それじゃあ! わたしが完落ちするか、ふたりが先にイっちゃうか……勝負よ────!!」

 

          §

 

「────あはっ♥ にゃ~♥」

「言わんこっちゃねえ……」

「ご同輩。リズム感のいいBGMでも掛けましょうか?」

「あっあっ♥」

「やめてください。いよいよエロビデオみたいになってくる……俺の趣味じゃない……」

「そうですか。ご同輩はプレイボーイと聞いているのですが……意外とロマン派なんですか?」

「い……っ♥ んっ♥ ぁは……や、やめっ────ん♥」

「そうっすね~。心と心で通じ合うのが好みであって……こういう雑な肉体のつながりはちょっと……」

「なるほど。意外と繊細な方でしたか。それはそれとして勃つものはあると?」

「ふ、ふた……つは……だ、あえ……めっ♥ め……っ♥」

「そりゃー男の子ですから。解釈違いのエロ漫画でも、ある程度は読めますよ。抜けるかは別として」

「……ところで、そろそろ打つのを早めたいのですが」

「────だめっ……♥」

「同時に出すのはむずいんで、好きに出せばいいと思いますよ」

「では────遠慮なく」

 

 相次ぐ破裂音。絶叫のような喘ぎ声。

 ピストンに挟まれて痙攣。陥落昏倒。

 

 まどろみの快楽。

 なおも不死鳥は復活する。

 

「あーっはっはっはっはっ! きっもちー♥ わたしのプロデューサーを独り占めするためには、莉波先輩と半分こする必要があって! 青のプロデューサーを少し得るためには、彼の恋愛観と性癖の良き理解者となる必要があって! そのどっちもこなして、ふたりをメロメロにしてやったわよー! わたしに惚れさせてみせたわー! ふははははははははは! ほら、佑芽も混ざりなさい! あなただってわたしは欲しいんだからー! あーっはっはっはっはっはっー!」

「くそおおおおお! お姉ちゃんが、えっちだぁああああああ!」

 

 花海咲季は高笑いを上げる。

 なぜか裸で混ざっている佑芽。

 

「先輩。これ魔王では?」

「魔王ですね。勇者と世界を二つとも得るタイプの。しかも妹さんまで手に入れようとしている。強欲の魔王です」

「でも俺たちの前ではよわよわサキュバス」

「かわいい。なんでこんなに可愛いんだ……っ! くそっ! 反則だろ……!」

「先輩、なんかもう色々と末期ですね……」

 

 花海咲季はガッツポーズを取った。

 

「────勝つためには手段を選ばなぁーい! わたしはスポーツマンよ! そこらのアスリートとは鍛え方が違う! アイドルなめんじゃないわよぉおおおおお!! これがアイドル!! ぬるま湯に浸かってちゃ佑芽には勝てない!! やるならとことん! それがわたしの策略よぉおおおおお────!! どうかしら?」

 

 アルファは呆れかえる。

 

「アンタほんとに花海咲季かよ……いやまぁ、割と切羽詰まったら、マジでやりかねん気配はあるけどさ……」

 

 かくして蜃気楼は夢幻のごとく。

 

 そろそろアルファは精神統一を図る。それは文字通りの心頭滅却。九字を切る。

 それは神性や呪いによる精神干渉系を跳ね除ける、毅然とした精神性の発露。

 

(さて……仕事の時間だ────)

 

 こんな悪夢を見せた、蛮族退治と行こう。

 

          §

 

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