【小宮果穂とちょいワル男子のオトナ甘くてコドモ苦い】ぷらすえっくす! 作:形のない者
sR【金曜日の通い妻】葛城リーリヤ(※R-15)
金曜日の放課後。
曇天。雪降る町の一角。
プチパレス全体に呼び鈴が鳴り響く。
玄関口で待機していたアルファは引き戸を開いて、客を出迎えた。
「センパイ! 遊びに来ました!」
「……あんな超絶めんどうくさい
「────ふぇ?」
もこもこの冬服に身を包んだ葛城リーリヤは、目を丸くして白い吐息を吐く。
「……センパイは、わたしをアイドルにしてくれた大恩人なのでっ!」
「恩義で来られてもねぇ……」
「じ、じゃあ、何を持って来れば……!?」
「何も? ──さ、お入りください。俺の部屋に案内します」
「……! お……おじゃま、します……っ!!」
葛城リーリヤは玄関口で靴を脱ぐ。靴はなんとなく、わかりやすい一番下の下駄箱に投入。アルファが用意したスリッパを履く。その時に上がり
「わぁ……これが、日本の
「おや、スウェーデンではシェアハウスをそう呼ぶんですね? 少し語弊があるようですが……──ま、たしかに風情はあります。ただし武家屋敷であれば、ひのき風呂や縁側が欲しいところですが」
「ひのき風呂……エンガワ……」
「日本人でも憧れる、古き良き日本家屋の構成ですよ。ジジババが縁側で庭の桜を花見に
「……! もしかしたら、その光景……日本が舞台のアニメで見たかもしれません……! 日本庭園を眺める場所、ですよね……!」
「おっ。それならきっとそうですね」
101号室に入室。複数の畳がパズルのようにハマった正方形の個室。左手に扉とふすま。右手に台所と冷蔵庫。奥に裏庭へ続く扉、そのあたりはちょっと寒そう。
「……! これが……ロクジョウヒトマの同棲部屋……!!」
「実際はもう少しありますけどね」(同棲部屋……?)
断熱性の扉や床張りなのか、熱が逃げず室内はあったかい。葛城リーリヤは上着を脱いでハンガーラックに掛ける。黒い私服姿があらわとなった。スカートが短い。葛城リーリヤは落ち着き無くそわそわと周囲を見渡して、どこに座ったものかと困り果てる。
┌─────┐
┃ 机F台│
│団布 ┃
│団布 HR│
├━━┬─━┤
│押入│WC│
└──┴──┘
※記号解説
HR=ハンガーラック
なぜか敷きっぱなしの二枚布団。その手前に座ってみる。
「何も……無いんですね?」
「はい。寝るだけの場所ですので。何かを置く場所もないですし。あ、ノーパソを使いたければ押し入れにしまってありますので、ご自由にどうぞ」
アルファは廊下側の扉を背にして座る。葛城リーリヤと対面。
「さて、何をしましょうか」
「……せ、世間話、とか……?」
「はは。先日の『今度アパートに遊びに行ってもいいですか?』というメールにOKしただけですからね」
もじもじ。落ち着かない。
葛城リーリヤは肩身が狭い思いをする。というのも眼前のアルファの目が、いつもより少し細い。睨んでいるというわけではないが、どことなく目つきが鋭く感じる。不機嫌というわけでもないようだが、視線が気になって、なぜか居心地が悪い。
(な、なんでだろ……センパイの部屋に遊びに来ることができて、嬉しいのに……?)
当のアルファは、よく目を伏せる。葛城リーリヤの落ち着きがないことを察してのことだ。煩悩滅却に忙しい。
(まったく、無防備だ……認識を確認するためわざと布団を敷きっぱなしにしたが……まさかその手前に座るとは……押し倒してくれと言っているようなものじゃないか……本能的に警戒心は抱いているようだが、それに無自覚というのも……ハァ。薄着なのもあいまって目に毒、というより……俺の心に猛毒だ……)
アルファは溜め息をつく。
葛城リーリヤはびくっとして過剰反応。
「あ、あのっ……! すみません……わたし、なにか……」
「なぜ気まずいのかと? 決まっていますよ。────本当は、分かっているんでしょう……?」
アルファは不敵に微笑んで地を這う。正座したまま一手、身を運ぶ。
「────! ……っ!?」
女の子座りをする葛城リーリヤの膝と膝がくっついた。
「このままだと布団の上に押し倒しますよ? 机の前に避難することをお勧めします」
「っ────?!」
ぐいっと接近したアルファは慈愛の笑みを浮かべながら、少女のあごをくいっと持ち上げて膝立ち。
紅潮して影の正体を見上げる葛城リーリヤ、その全身に男らしい人影がかかる。気づけば体が後ろに流れていた。斜め後ろに倒れていく姿勢。あともうひと押しで押し倒されてしまう。
とっさに少女は横向きに倒れて、布団の上をごろりと横にころがり、なんとか緊急脱出。
「おや。逃げられてしまった」
「────~~~~っ!!?」
熱い顔。左胸がキュッと引き締められてバクバクとうるさい。振り返って相手の顔を見ることができない。でもわかる。絶対にいたずらっぽい笑顔でにやけている。いつものことだ。そそくさと机の前に避難。スマホを取り出して机の上に置く。スマホを操作して意識を逸らす。深呼吸。深呼吸。深呼吸────
「結局、今日は何しに来たんです?」
────背後から抱き締められた。右肩に青年の顔が乗っかる。両脇腹に腕を通されて、下腹部に手首が触れる。指先も少しこつんと当たる。自分の背中に、暖かくてたくましい胸板がピッタリと付いて全身鳥肌が立つ。でもそれは嫌な感じではない。とても全身がくすぐったくなるような、羞恥の快感。目がくらむ。
「あ……あわ……あわわわぁ……!?!」
「ははっ。なんとも可愛い反応ですね! 男の一人部屋に単身乗り込んできたんですから、このくらいの勘違いをされるくらいは覚悟してもらわないと~。──まぁ嬉しそうなので、俺の勘違いというわけでもなさそうですが?」
「っ~~……!!?」
少女は脱力。背中を預ける。青年の柔らかくも堅い弾力ある胸筋に、後頭部を預けてみる。なぞの安心感。それはそれとして腰辺りに、何やら硬い物が当たっている気がする。
少女は首をひねって上目遣い。泰然と見下ろしてくる青年と目が合う。不意に近づいてきたかと思えば、ほっぺの手前に唇を寸止め。耳元に囁きかけてくる。
「今、頬にキスされると思ったでしょ?」
「────────」
思考白熱。脳内沸騰。もはやゆめうつつ。白昼夢でも見ている気分。
胸が苦しい。体が熱くなってきた。服の下が暑い。どうにもならない。今にもどこかへ飛び出したい気分。
────こわい。
薄青の瞳が潤む。クリームを塗った桜色の唇につやが出てくる。発色の良い雪の柔肌。赤らむ頬。さらりと流れる雪しずりの前髪。明らかに求めている上目遣い。
青年は我慢の限界を超えた。さりとて理性の限界はキープしている。相手の求める以上の行動は起こさないよう肝に銘じる。とにかくがっつかないよう慎重に気をつけて、桜に愛を
§
互いの唇を
少女はバッグハグされた姿勢のまま、斜め後ろに舌を上向けて、全身がドロドロにとろけていた。
「……んっ……ぁっん……! ハ、ァ────ん……っ! ……♥」
互いの口は塞がれているため、呼吸のため小鼻を膨らます。ぜえぜえと乱れた呼吸。
激しい息遣いは男の態度を乱暴にさせていく。時々ギュッと抱き締める強さが増して、苦しみと快感が同時に襲う。
「ぁ…!! あっ…あっ…ぁ……っ、んっ……♥」
細い腕は、自らを抱きしめる太い腕に絡みつく。思わず腰が浮く。脚がばたつく。下腹部から登ってくる大きな左手が、豊満な輪郭を押し上げていく。
「ふぁ……ふぁめっ……
青年は右脚を伸ばして少女の左足と絡める。股の間に膝が入り込む。スカートが引っ張られてたくし上げられていく。左胸が揉みしだかれる。体が逃げようとして左に滑り落ちる。左の脇腹が、片あぐらする青年の左脚に落ちた。なおも左胸は揉まれていく。うつぶせになって逃げようとすると、無理やり右肩を引っ張り起こされて乱暴に仰向けにされる。再びキス魔の攻撃が始まった。しかも体勢的に、完全に面と向かい合う形。
「んっ……ぁ……っ!!」
全身が
(ぃん……!! ま、まっさーじ……されながら、キス、しちゃって、るぅ……!!)
胸を揉まれたり、脇腹をぐいっと押されたり、股間を優しく膝でグリグリされたり、その全てがなぜか苦しくて嬉しくて頭の中がおかしくなりそうでビクビクとけいれんする。
「──ん……ん゛! ん…ん…ん゛っ?! ……! ………………~゛♥゛!」
舌を入れられた。ぱちゃぱちゃと水音。耳が壊れる。正確には耳から伝わる音で脳が
────コンコンとノック。ガチャリと開く。
「ア~ルファさーん!」
「ただいま。遊びに来た、ヨッ────」
突然の来客が二名。
扉を開けた瞬間は光り輝く笑顔だった小宮果穂は、学校帰りのランドセルを背負ったまま、色のない病んだ瞳で静かに佇んでいる。まばたきがない。
篠澤広は目を丸くして思考硬直。まばたきすらなく、石化したように固まっていた。仰天愕然の相貌。
「────ぷはぁ!」
アルファは
「応。おかえり。ちょっと恥ずかしいところ見られちゃったな。まぁこれもシェアハウスの醍醐味か!」
……あっけらかんと笑っている。ちょっと恥ずかしかったのは事実のようだが、なんてことのないように澄まし顔なのもなんか腹立つ。
「……………………」
「……わ、わたし……プロデューサーと、
目を閉じて感情を鎮める小宮果穂は、静かに扉を閉めた。きちんと鍵を掛ける。
篠澤広、吐血したような
一方の葛城リーリヤといえば、淫らな手足の散らばり具合で、ぐったりとしながら小刻みに痙攣していた。うっとりとした目元は快楽に耽っており、とろけ落ちたほっぺたはたゆんでいて、口端から細いよだれをつーっと垂らしている。衣服も乱れており、なんともえっち。
つまり、完全に堕ちていた。
「────混ざる?」
篠澤広のように顔を斜めに向けたアルファは、まんまる目で問いかける。それはいたずらっぽい笑みというより、純朴を装った悪魔の誘いと言えた。
§