※この作品はR-18です。

【小宮果穂とちょいワル男子のオトナ甘くてコドモ苦い】ぷらすえっくす!   作:形のない者

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sR【神無月に初まゐる】篠澤広〔夢オチ回〕

 

 元旦のプチパレス。朝方の食堂。

 そこにはアルファと芹沢あさひと小宮果穂が残っていた。

 

「アルファさん! 初詣に行きましょう!」

「行こうよハナワカ! もうみんな行っちゃったよ~?」

「…………」

 

 アルファは何も答えない。先刻見た初夢で、ビターエンドのルート分岐を心得た。ここで気軽に失言するとロクなことにならない。そういうお告げだと認識する。

 

「……? アルファさん? 聞こえてますかー?」

「ハナワカ? もしかして寝てる……?」

 

 アルファは狸寝入りする。否、それだと芹沢あさひがこちょこちょ攻撃を仕掛ける前兆を察知。すぐ狸寝入りがバレるため、ここで尤もな虚実を織り交ぜて話をそらす。

 

「おふたりさん。俺ァ朝帰りっすよ? もう少し寝させてくれてもいいじゃないっすか……」

「えー! じゃあ初詣は~?」

「アルファさん……あたし、アルファさんと初詣に行きたいですーっ!」

「先輩。果穂。俺は思うんすよ。正月ってのは日がな一日ゴロゴロしてこそなんすよ。これを邪魔する人とは、ちょっとこれからやっていけないっすね~」

「え~!」

「……! っ……じ、じゃあ、ほかの人と初詣、行かないでくださいね……?」

 

 小宮果穂の独占欲が発揮される。

 アルファは内心(かわいい……)と思いつつ、神妙にうなずいた。

 

「そりゃもう。俺の初詣は果穂と、って決めてるからな。──あ、それといろはも預からせてもらう。毎日のような脱走騒ぎは、三が日の夕暮れに限って禁止とさせてもらう。俺なら面倒見切れるから心配すんな。あとはみんなで行ってこい」

「ぶ~!」

「……わかりました。じゃあ、アルファさん、いろはちゃんとのお留守番、よろしくお願いしますね!」

「応。行ってこい!」

 

          §

 

 三が日が過ぎた頃。早朝のプチパレス。

 快晴の庭先で、アルファといろはちゃんは伸びをする。

 

「あ~! やっぱ正月は家の中でぐーたらするに限るな~! ──ってセリフを二週間くらい前に言ったことがあるような……いや二日前か? 二ヶ月前か? だいたい二の倍数や2に関する概念(なにか)で感じるんだよな~。たぶん二日前くらいかな~?」

「かぎりゅな~! ──かんでないよっ!! ……──?????? いろはこれしってる~。つぎはね~。ぜっちゃんくる~!」

「あ~。やっぱお前も正夢とかデジャブとかよく見るタイプ? でも来ないと思うぜ」

「なんで~?」

「直感だよ。大抵こういうのは脳医学の観点で、脳みその防衛本能として未来を予測演算してる結果なんだ。あらゆる生物に生来備わっている未来予測能力だよ。全然スピリチュアルなもんじゃない。……ただまぁ、そこに外部の刺激(スピリチュアル)が加わったら、そりゃ未来予測の的中率は跳ね上がると思うけどな!」

「??? いろはちゃん、さんさい! おまえばか? さんさいにわかるよういいなさい!」

「はは。マジで昔の俺ってこんなに口が悪かったの? ──で、実際に杜野さん来てないだろ? そういうことだよ」

「はっ!!! ほんとだー!!!!!!!」

 

 いろはちゃんは目を見開いて元気に叫ぶ。

 

「うおー! はじめてちがうのだった!」

「……そうなのか? まぁ確かに正夢は基本的に抗えないけど、たまにこうして抗える時があるんだよな~。なんでだろーなー?」

「なんでだろーねー?」

「何かに守られてるのかもしれない」

「……いっちゃんに?」

「そんな殊勝な神(ひと)になってたら、そりゃありがたいんだけどなぁ……まぁあのひとも被害者だからさ。石置いた奴が百パー悪いんだし。おかげで俺は地獄に放り込まれて、こんな奴に育っちまった。──お前はこんな奴に育つなよ? あの歌を聴くに、お前の世界ではもう、俺が経験したことは終(・)わ(・)っ(・)た(・)出(・)来(・)事(・)なんだろう? なら安心だ」

「……? うた?」

「……──たしかに。いま俺なに喋ってた? たまにあるよなー」

「あるー!」

「たぶん夢の内容を部分的に口走ったんだろ。記憶の引き出しにしまわれてたんだよ。そんで勝手に出てくんだ」

「そうなのかー」

 

 アルファといろはちゃんは朝の体操を終える。

 すると玄関の引き戸から篠澤広が出てきた。

 

「アルファ、いろはちゃん、おはよう……朝から元気だね……」

「おはようございます。なんか顔色悪いけど大丈夫です?」

「ひろっちおはよー!」

「うん……なんか、変な夢を見た……ちょっと怖い夢で……夏葉と果穂も見たんだって……」

「はーん。まぁ大方予想は付きますけど……ご愁傷さまデース」

「いろはもみたー! アルファにおこられたー! なんもしてないのにー!!」

 

 いろはちゃんは不満を叫ぶ。

 それにアルファが物申した。するといろはちゃんは首をひねる。

 

「お前はあっさり連れて行かれるところだったろうが!」

「……? なんのはなし?」

「……たしかに。まぁいっか!」

「!! それ! いろはの! せりふ!!」

「……別に、俺の昔の口癖でもあったんだからいいだろ別に」

「そーなのー? まぁいっか!」

 

 アルファといろはちゃんはあっけらかんと片付ける。

 それに篠澤広は首をひねるしかない。

 

「……どういうこと? ま、いいか……それよりアルファ。朝ご飯、作ってほしい……な?」

「はいよ! ──って冷蔵庫の弁当切らしてました? すみません! まだちょっと本調子じゃなかったみたいで……!」

「ふふ。全然構わない、よ? アルファも人間らしいところ、あるって分かるから……」

 

 すぐさまアルファは台所に戻る。

 それに篠澤広といろはちゃんがついて行った。

 

          §

 

 かくして今日も今日とて何事もなく、平穏な日々は続いていく。

 ただしアルファ/ハナワカの過去に触れることなかれ。

 さすれば八岐(やまた)の分霊が黄泉(よみ)の国より眼を醒ます。

 伊吹の分霊(いっちゃん)もまた呪いの龍脈より蘇る。

 しかし過去の恨み忘れ去れば。

 この世は全て事もなし。

 

          ∵

 

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