【小宮果穂とちょいワル男子のオトナ甘くてコドモ苦い】ぷらすえっくす! 作:形のない者
元旦のプチパレス。朝方の食堂。
そこにはアルファと芹沢あさひと小宮果穂が残っていた。
「アルファさん! 初詣に行きましょう!」
「行こうよハナワカ! もうみんな行っちゃったよ~?」
「…………」
アルファは何も答えない。先刻見た初夢で、ビターエンドのルート分岐を心得た。ここで気軽に失言するとロクなことにならない。そういうお告げだと認識する。
「……? アルファさん? 聞こえてますかー?」
「ハナワカ? もしかして寝てる……?」
アルファは狸寝入りする。否、それだと芹沢あさひがこちょこちょ攻撃を仕掛ける前兆を察知。すぐ狸寝入りがバレるため、ここで尤もな虚実を織り交ぜて話をそらす。
「おふたりさん。俺ァ朝帰りっすよ? もう少し寝させてくれてもいいじゃないっすか……」
「えー! じゃあ初詣は~?」
「アルファさん……あたし、アルファさんと初詣に行きたいですーっ!」
「先輩。果穂。俺は思うんすよ。正月ってのは日がな一日ゴロゴロしてこそなんすよ。これを邪魔する人とは、ちょっとこれからやっていけないっすね~」
「え~!」
「……! っ……じ、じゃあ、ほかの人と初詣、行かないでくださいね……?」
小宮果穂の独占欲が発揮される。
アルファは内心(かわいい……)と思いつつ、神妙にうなずいた。
「そりゃもう。俺の初詣は果穂と、って決めてるからな。──あ、それといろはも預からせてもらう。毎日のような脱走騒ぎは、三が日の夕暮れに限って禁止とさせてもらう。俺なら面倒見切れるから心配すんな。あとはみんなで行ってこい」
「ぶ~!」
「……わかりました。じゃあ、アルファさん、いろはちゃんとのお留守番、よろしくお願いしますね!」
「応。行ってこい!」
§
三が日が過ぎた頃。早朝のプチパレス。
快晴の庭先で、アルファといろはちゃんは伸びをする。
「あ~! やっぱ正月は家の中でぐーたらするに限るな~! ──ってセリフを二週間くらい前に言ったことがあるような……いや二日前か? 二ヶ月前か? だいたい二の倍数や2に関する
「かぎりゅな~! ──かんでないよっ!! ……──?????? いろはこれしってる~。つぎはね~。ぜっちゃんくる~!」
「あ~。やっぱお前も正夢とかデジャブとかよく見るタイプ? でも来ないと思うぜ」
「なんで~?」
「直感だよ。大抵こういうのは脳医学の観点で、脳みその防衛本能として未来を予測演算してる結果なんだ。あらゆる生物に生来備わっている未来予測能力だよ。全然スピリチュアルなもんじゃない。……ただまぁ、そこに外部の
「??? いろはちゃん、さんさい! おまえばか? さんさいにわかるよういいなさい!」
「はは。マジで昔の俺ってこんなに口が悪かったの? ──で、実際に杜野さん来てないだろ? そういうことだよ」
「はっ!!! ほんとだー!!!!!!!」
いろはちゃんは目を見開いて元気に叫ぶ。
「うおー! はじめてちがうのだった!」
「……そうなのか? まぁ確かに正夢は基本的に抗えないけど、たまにこうして抗える時があるんだよな~。なんでだろーなー?」
「なんでだろーねー?」
「何かに守られてるのかもしれない」
「……いっちゃんに?」
「そんな殊勝な
「……? うた?」
「……──たしかに。いま俺なに喋ってた? たまにあるよなー」
「あるー!」
「たぶん夢の内容を部分的に口走ったんだろ。記憶の引き出しにしまわれてたんだよ。そんで勝手に出てくんだ」
「そうなのかー」
アルファといろはちゃんは朝の体操を終える。
すると玄関の引き戸から篠澤広が出てきた。
「アルファ、いろはちゃん、おはよう……朝から元気だね……」
「おはようございます。なんか顔色悪いけど大丈夫です?」
「ひろっちおはよー!」
「うん……なんか、変な夢を見た……ちょっと怖い夢で……夏葉と果穂も見たんだって……」
「はーん。まぁ大方予想は付きますけど……ご愁傷さまデース」
「いろはもみたー! アルファにおこられたー! なんもしてないのにー!!」
いろはちゃんは不満を叫ぶ。
それにアルファが物申した。するといろはちゃんは首をひねる。
「お前はあっさり連れて行かれるところだったろうが!」
「……? なんのはなし?」
「……たしかに。まぁいっか!」
「!! それ! いろはの! せりふ!!」
「……別に、俺の昔の口癖でもあったんだからいいだろ別に」
「そーなのー? まぁいっか!」
アルファといろはちゃんはあっけらかんと片付ける。
それに篠澤広は首をひねるしかない。
「……どういうこと? ま、いいか……それよりアルファ。朝ご飯、作ってほしい……な?」
「はいよ! ──って冷蔵庫の弁当切らしてました? すみません! まだちょっと本調子じゃなかったみたいで……!」
「ふふ。全然構わない、よ? アルファも人間らしいところ、あるって分かるから……」
すぐさまアルファは台所に戻る。
それに篠澤広といろはちゃんがついて行った。
§
かくして今日も今日とて何事もなく、平穏な日々は続いていく。
ただしアルファ/ハナワカの過去に触れることなかれ。
さすれば
しかし過去の恨み忘れ去れば。
この世は全て事もなし。
∵