【小宮果穂とちょいワル男子のオトナ甘くてコドモ苦い】ぷらすえっくす! 作:形のない者
共同住宅プチパレス編〔平穏ライフ編③〕
sSSR【ことばにしよう、えっちな国語!】小宮果穂(※R-18)
とある小学校の六年教室では、六時限目に国語の授業を執り行っていた。
国語の教師は、ちらりと時計を確認する。そろそろ放課後の予鈴が鳴るため、まとめに入る。
「──では『自分の気持ちを言語化する』という宿題に関してだが……やり方は『どんな出来事だったか』『その時の気持ち』『なぜそう感じたのか』『いま振り返ってどう思うか』の四つを確認すると、やりやすいぞ~」
放課後の予鈴が鳴る。
「もし『出来事』が思い付かないなら、日常の体験。たとえば、家族や友達との会話、読書や音楽で感じたこと、ちょっとしたことでもいいぞ。今回は『言語化すること』に意味があるからな~。そうすると『言葉のストックが増える』ぞ! 宿題にも『気持ちを表す言葉リスト』が載ってるだろ? 必ず一つ以上は埋めてくれよな~。──じゃ、お疲れ様! 気をつけて帰れよ~!」
『は~い! ありがとうございましたー!』
§
放課後の下校路。
小宮果穂とまおちゃんは雑談しながら住宅街を歩く。
「あ、そうだ果穂ちゃん」
「なに~?」
「宿題さ。何書く?」
「……う~ん……」
小宮果穂は腕を組んでうつむき、悩ましそうに唸る。
そして残念そうに眉を下げた。
「……まだ決めてない。まおちゃんは?」
聞かれた乙女は、もじもじと指同士を突き回す。
「わたしは……あいつのこと、書こうかなって」
「……あいつ?」
小宮果穂はまんまるおめめで首をかしげる。
すると、まおちゃんは慌てた様子で補足した。
「ほ、本当には書かないよ? 清書用のは、ぜんぜん別ので提出するつもりだし……」
「……? ……────はっ!」
小宮果穂は合点がいく。まおちゃんの恥じらうような赤ら顔を見て、今がどういう話なのか理解した。
つまり……恋バナである!
「もしかして、片岡くんのこと?」
「う、うん……やっぱ、変かな……変だよね! ごめん、やっぱ今のなしっ……!」
「え……」
「っ……」
「……──まおちゃんは、どうして片岡くんのこと、『ことばにしよう』って思ったの?」
小宮果穂は核心を突く。
まおちゃんは、そんな素直な子を見習って、正直になることにした。
「……自分の気持ち、かくにんしたくて……」
「自分の……」
────きもち。
それを、言葉に。
────言語化。
確ニンする。
────すきなひとのこと。
なんだか新鮮なことに挑もうとしてる。
そのせいか、ちょっとワクワクしてきた。
「……じゃあ、やってみない? ぜんぜん変じゃないよ。だってあたしも、やってみたいなって思ったから!」
「……え? 果穂ちゃんも? それって、つまり……」
「うん!」
小宮果穂はヒーローポーズを取って、決めセリフのようにキリッと決めた。
「────アルファさん!」
§
共同住宅プチパレス。大家は中学一年生の青年。代理人は小学六年生の女子。
黄色いランドセルを背負って、代理人こと小宮果穂は帰宅する。玄関の引き戸をカラカラと開けて、元気に挨拶。
「ただいまー!」
『おかえり~!』
たくさんの声が返ってくる。風野灯織、大崎甜花、アルファ、篠澤広、藤田ことね。
住人は高校生が多い。お昼に学校が終わる人もいるのだとか。仕事の都合で早帰りできた人もいる。
小宮果穂は
水分補給を済ませると、アルファは離席して食堂の裏口に向かう。それをちらりと見た小宮果穂は、冷蔵庫にジュースを戻して、とことこと付いていく。
食堂の裏口は、裏庭に繋がっている。そこは長方形に広い敷地だ。ドッグランと家庭菜園と屋外プールが等間隔で並んでいる。ドッグランでは、いろはちゃんとマメ丸とカトレアが遊んでいる。家庭菜園では、今の季節の野菜が育ってきている。屋外プールは夏専用で開かれる。
アルファは家庭菜園の育成具合を確認するためしゃがみこんでいたが、それもすぐに終えて立ち上がり振り返る。すると小宮果穂と目が合った。
「お、果穂。どうした?」
「……!」
小宮果穂は言われて気づく。
どうしてアルファのことを、ちらちらと観察して、とことこと付いていったのだろうか?
もちろん、まおちゃんとの話の後だ。
アルファとの間で、何かしら出来事が起こらないものかと期待していた。
なぜなら今週の宿題は『ことばにしよう』である。出来事の感想を作文すればいい。
だというのに、なぜか小宮果穂は、そのことをすっかりと忘れて……ひたすら
「……えっと……」
「?」
小宮果穂はしどろもどろ。
対するアルファは首をかしげる。ちょっとエスパーな彼でも、見抜けないものはあるようだ。
きっとそれは、少女自身の心が言語化できていないからだろう。
まだ形になっていないものは、いくら彼でも見抜けない。あやふやすぎて、断定できないのだろう。
「な……んでも、ないです……」
「そっか。じゃな!」
問いかけて刺激することを避けたのか、アルファは何も言わず食堂に戻る。そうして彼は廊下に向かう。三階に向かう。空き部屋ばかりの空っぽな最上階。その廊下の中央にある憩いの場の向かう。そうしてアルファは、豪華なソファに身を沈めた。
それが分かるということは、それが見える位置まで小宮果穂はとことこ付いていった、ということ。
もしかしたら良くないと思っていても、どうしても……ちらちらと見てしまい、彼の姿を追いかけてしまう。
そして、廊下の曲がり角からぴょこっと。小宮果穂のアホ毛が出てくる。次いで、赤毛で頬を隠す少女の顔も、ひょっこり出てきた。まあるい目で、ちらりとソファの上を見やる。そこでは青年が両手を枕にして、仰向けでお昼寝中。足を組んで姿勢を楽にしていた。耳を澄ますと、静かな廊下に健やかな呼吸音が微かに響く────
やがて少女は、青年の寝顔を見つめながら……内心、言葉にしてみる。
(出来事:アルファさんが、ソファの上で寝ていました)
(気持ち:おじゃまにならないように、静かにしようって思いました)
(理由:アルファさんは、毎日のヒーロー活動で疲れているからです)
(今の気持ち:……でも、ほんとはちょっぴり、遊んでほしいなって、思ってました)
(……これで、いいのかな? ほんとに出すものは、別のものにしたほうがいいって、まおちゃん言ってたけど……なら、プロデューサーさんのことにしようかな? あした事務所で会議する予定だし……)
ヒーローものは書こうと思わない。
好きなことは好きと言っていいけど、今はもっと別のテーマを書いてみたい気持ちがある。いつもなんでもかんでもヒーローに気を取られているわけじゃない。それはそれとして、いつもなんでもかんでもヒーローに結びつけることはしているけれど。
──ブー。──ブー・ブッ。──ブッ・ブー。──ブッ。
ふいに青年の懐から、スマホの
青年は目を閉じたまま手枕を半分解いてポケットからスマホを取り出し、片目を細くして通知のバナーを見やる。たくさんリストがあるらしく、ロック画面上で何度もスライド。やがて、一通り見通したのかポケットに収納した。寝る姿勢に戻る。
──ブー。
再び鳴る。二回目の
──ブー。──ブー。──ブー。
今度は何度も
「ったく……あの人はどんだけ訳分からん写真送れば気が済むんだ……」
青年はぽつりと一言。あの人とは誰のことだろう? 少女は首をひねる。うーんと考察する。
♪~星をめざして~♪
その時、青年のスマホから着信音が流れ始めた。
(はっ……! こ、この曲は……あさひさんの……! ──……着メロに、してたんだ……)
なぜか胸の奥がざわざわして、きゅっと苦しくなる。
一方の青年はガン無視で寝続けていた。ちょうど良い睡眠用BGMとでも思っているのか、組んだ足先をリズム良く鳴らしている。
(出ない……? なんでだろう……?)
やがて着信が途切れた。
すると────
♪~SOS~♪
(!? こ、今度は、ふゆさんの……!?)
青年はスマホを手に取って耳元に当てる。
「もしもし? ……ああ、はい。──いえ、見ましたけど。──はは! 全部削除しておきますよ。……はい、はい。では先輩によろしく言っといてください。──いやー、ツイスタに上げる前で良かったですねホント。……はい、はい、はいっ。誠にお疲れ様です……ではこれで、はいっ」
通話を切った青年は再就寝。そして「ふぅ……」と、深々とした溜め息をついた。
すると────
♪~世界一可愛い私~♪
(! これは……ことねさんの……!)
青年は手を挙げて、宙に手首を回す。出ようか迷っているのだろうか。
しかし、すぐに出ると決めたようで、スマホを耳に当てた。もし緊急の用件なら大変だと思ったのだろう。
「もしもし? ……そうですねぇ。いま俺はどこにいるのでしょうか。人生の路頭でしょうか。暇なら捜してみてはいかがです? ──はは!」
♪~Luna say maybe~♪
(! ことねさんとの通話中に、手毬さんのソロ曲が……!)
「──すみません今、月村さんから割込通話が入りました。どうしましょう? ──どちらを優先するのか? そうですねぇ……では、お昼寝を優先しましょうか」
青年は二つの通話を切った。腹の上にスマホを乗せて再就寝。
(…………)
あごに指を当てて考え、ジト目となる少女は、思うところ有りという様子で、再び内心で言葉にしてみる。
(出来事:アルファさんのスマホには、たくさんの女の人からメッセや電話が掛かってきます)
(気持ち:頼りにされてるってことで、人気者でスゴいけど、ちょっと不安で苦しいです)
(理由:よくわかんないです……黒いパーカーの時みたいに「むーっ!」ってなります。怒ってるのとは、ちょっとちがいます。似ているけど、怒っているわけではありません。だから、よくわからないんです……)
(今の気持ち:この気持ちを、言葉でなんて言うのか知りたいです! 言語化……ですっ!)
壁時計の時刻は、ちょうど十七時を差している。
少女は、静かに動き始める。息を潜めて抜き足差し足。廊下の木目はよく響く。憩いの場の絨毯を踏めば、音は最小限となるため余裕ができる。そろーりそろーりとソファに近づいていく。そして膝がソファに当たるギリギリのところまで到着。
正座。背筋を伸ばして青年の寝顔を覗き込む。
(──……アルファさんの寝顔……きょうは、やわらかい……よかった……たまにうなされてる時があるから……。──きっとアルファさんは、うなされてることに気づいてないだろうけど……)
腰を落として女の子座り。じっと青年の横顔を眺める。
(──……むかし、たくさんイヤなことがあって……それでも『めげずにがんばる』のは、ジャスティスブラックみたいで……だから、レッドが『仲間として助け合おう』って言った時みたいに……あたしも、守られるだけじゃなくて、守ってあげたい……!)
壁時計の針がチクタクと
(──……やっぱり、こんなに落ち着いた寝顔なのって、なかなか見ないかも……かなりレアだ。安心してるってことなのかな……? じゃあ、もしかして……ひとりのほうが、気が楽なのかなぁ……)
しゅんとする少女は、先ほどの決意を思い出して奮起する。
(──……ううん。あたしはこの人と、ずっといっしょにいたい……だから、お互いのこと、もっと……もっと……そうすれば、きっと────)
穏やかな時の流れ。
アンティークな文字盤のⅤを差す分針は、さらにそこから
つまり現在時刻は────十七時三十分に至る十秒前。それが九秒前になった瞬間。
わずかに壁時計は狂っていたのか、青年のスマホから『17:30』を知らせるアラームが鳴り響いた。
(っ……!!)
──……されど青年は目を覚まさない。身じろぎもなく熟睡しているようす。
少女は、彼の腹の上に置かれたスマホを、そっとそーっと手に取る。アラームが知らせる時刻を見るなり、目を丸くする。驚いて振り返り、壁時計を確認。
(えっ……あ、あたし……三十分も、アルファさんの、寝顔を……っ!?)
どうやら少女は、時間感覚を喪失していた。心理的に充足していたのも一つの要因だろう。なぜなら見ているだけで幸せな気持ちが続くのだ。寝顔を見ることを
「ア────アルファ、さーん……! 起きてくださーい……!」
小声でささやく。
「アラーム……鳴ってますよー!」
少しずつ声量を上げていく。
「お、起きない……どうしよう……じゃあ────」
もっと大きな声を出すことにした。
「────ア────」
すると予想だにしない出来事が起きた。
青年はガバッと起き上がる。ソファから落ちそうな勢いで横転。少女の顔に急接近。少女を抱くように腕を回す。大きくて逞しい片手は、少女の後ろ首をがっしりと抑え込んだ。
「っ!?」
少女は目を見開く。次の瞬間、大きく開けようとした口の中に、温かくも生々しい触感が侵入したことで、口内に多量の快感が刺激された。驚きで硬直した思考がぼんやりと溶け始める。瞳孔がふわっと膨らむ。うなじがそわそわっとくすぐったくなり、逃れずにはいられない快感に後ろ首と背中の中心と腰上と尻上をくねくねとよじらせる。すると肉体は自然と前傾姿勢になり、胸を突き出す体勢に。両手を伸ばしてソファに手をかける。かじかむ指先で青年の服をちょっぴりつまむ。
「ん……ぁ────」
とろんと落ちる半目のまぶた。青年の片頬と片耳と黒髪の先に草色のソファが見える。舌の周りをベロで掻き回される快感。脳内が白く飛ぶ。白目を剥くように眼球が上向く。ソファの上には出窓があり、青混じりの夕焼けが広がっていた。なぜいきなりこんなことをするのか理由を考える力がとろりと抜け落ちていく。
「……んぁ────」
度重なる蹂躙の快感。骨抜きにされた脊髄。海老反りにならざるを得ない。ソファの上にもたれかかる。否、理性が滑り落ちていく。欲求全開。青年の服を震える手のひらいっぱいに握り締める。脳裏は白い霧に包まれていき、遠のく意識はゆるんでほどける。
「──ぷはっ……!」
過呼吸のように喘鳴。
「ハァ、ハァ、ハァ────ンッ……ハァ、ハァ……っ────ア……アルファ、さん……?」
「お前のせいでずっと眠れなかった。だからこれは仕返し」
少女は悟る。どうやら全てバレていた。三十分前から隠れて覗き込んでいたことは筒抜けだった模様。ちょっと恥ずかしい。けれどそれ以上に申し訳なさが勝る。しゅんとする。
「ご、ごめん、なさい……せっかくの休み時間、じゃま、しちゃって……」
「そうだな。でも実を言うと嬉しかった。何をしたかったのは不明だが、とことこと付いてきてくれるのは可愛いもんだな?」
青年は面白そうに笑う。朗らかな笑顔だ。
対する少女は、なんとも言えない表情で口角を引き、上目遣い。眠りを邪魔したことへの謝罪の気持ちと、嬉しかったなら良かったのかな? という安堵のような気持ちがないまぜとなった複雑な心地。
「じゃ、改めておやすみなさい。悪いと思ってるなら、今度はそっちから来てくれ」
「……!」
どうやら青年は、眠りよりえっちをご所望の様子。
少女は困る。見開く瞳孔。赤み差す頬。丸めた唇。それでも体は前傾姿勢。ソファに倒れ込んでいる。青年の服を握りっぱなし。
(出来事:……アルファさんが、とつぜんチューしてきました)
(気持ち:最初はびっくりしたけど、スゴく気持ちよくて、うれしくなって……何も考えられなくなっちゃいましたっ)
(理由:スゴくスッゴーく、気持ち良かったからだと思います!)
(今の気持ち:……やり返したい気持ちと、お返しをしたい気持ちが、二つあります……)
少女はあごに手を持って行き「むー……」と熟考。
いかにして勝つか考え、何が悔しかったのか自己診断する。
(──……アルファさんにいじめられると、いつもいつも『何も考えられなくなる』……これ、なんとかしたい……)
今週の宿題は『言語化』だ。つまり『何も考えられなくなる』というのは、国語の『ことばにしよう』という宿題を果たすことにおいて、最も難易度が高い難問と言える。
(難問……!)
少女は、がぜん燃えてきた。
何事も一番がいい。ナンバーワンだ。この難問を攻略することができれば、もしかしたら彼に一泡吹かせることができるかもしれない。
(──……言語化……感じたことを、言葉にする……よしっ。やってみよう……っ!!)
かくして少女は身を乗り上げ、ソファどころか青年の体の上に飛び込んだ。
§
「ぐふっ」
青年は押しつぶされるような重みを受けて、うめき声を上げる。体の上でもぞもぞと動くはスレンダーで柔らかな肢体。
対する乙女は、えっちなことに興奮するよりも、なぜか闘志に燃え上がっていた。
(体……固いなぁ……)
青年の男性的な肉体の質感。
(っ……左のわき腹……もみもみするの、好きだよね……)
びくんと跳ねる。
(っ~~……親指、わき腹にめり込んで……ちょっと苦しいけどイタくない……むしろマッサージみたいで、きもちいー……)
衣擦れの音。
(わ。また、太ももで……あたしの足のあいだに入れて、おまた、さすってくる……、──っ!?)
ビリビリ。股間は弱い。いつもこれで何も考えられなくなる。頭がボーっとする。白目を剥きそうになる。
(ま……負けない……っ!)
這い上がる。彼の胸の上に頭を寝かせるのが好きだけど、それでは太ももと股間の距離が近くなる。押し付けてさすってくる力も強まる。そのため、気恥ずかしいけど、顔と顔との距離を近づけに行く。
(目、つぶってる……チュー、しても、いいん、だよね……? あ……頭なでて……、……っ? お、押される……! 下に行ってほしいのかな……? で、でも、そしたら、太ももが……っ────そ、それはイヤ、だから……ここは、力勝負……っ!)
頭を押さえつけられたので、少女は負けじと拮抗する。
抵抗を感じた大きな手は、イヤだと察してくれたのかすぐにやめてくれる。その代わり手持ち無沙汰となったのか、少女の頭を撫で回す。
(……頭、なでてくれるの好きだなぁ……ほかの人とはちがって、この人のなで方は、なんだか眠くなっちゃう……)
目をこする。伏し目がち。一見すると不機嫌そうな、よく見ると眠そうな、そんな表情で攻勢に出る。
(ほっぺにチュー……したいけど……むね、体に当たっちゃうんだよね……近すぎるから……イヤじゃ、ないかな……?)
逡巡。
(むね……たぶん好きだから、大丈夫だよね……? いつもさわってもんでくるし、まくらにしてくるし、食べたり、かんだりしてくるし……)
密着。体を重ねて、ほっぺにキス。ちゅっとしてすぐ離れる。目をギュッとつむって気恥ずかしさに耐える。猫が耳もろとも顔を掻くように、てれりこてれりこ、と顔を二の腕や前腕、手のひらで拭うようにさすって隠す。その感触で羞恥をごまかす。
(──……わぁっ!?!)
突として青年は身を持ち上げて横転。ふたりしてソファから転げ落ちる。絨毯の上に落下。
(うっ。重いぃ~……。──頭の後ろは、手で守ってくれたけど……背中とおしりは、ちょっと打っちゃってイタかった……もうっ。……でも、いきなりどうしたんだろう……? ──っ!? わ、わっ……! き、きょうは、スカート、だから……っ! パンツ、あっという間に……! 脱がされちゃった……っ!!)
ズボンの時は、それを脱がそうとしてくるので、本番を求めてくるタイミングが分かる。そのため心の準備ができる。できる前にしてくる時は抵抗する。別に嫌だから抵抗するわけではない。
それでも抵抗すること自体は乙なものだと知っている。
たとえば、力で屈服されるのは悔しいけど仕方ないし、なぜかそれを楽しんでしまう自分がいる。
たとえば、そんなに本番がしたいなら何かと交換だ、と交渉して利益を得ることもある。さらに、わざとたくさん吹っかけると、あれこれ尤もらしい理屈を捏ねて説得してくるため、その様子が少し面白くて楽しんでる自分もいる。
いずれにせよ、最終的に体を許すことは確定している。
だから。
「ぁっ、ぁ、ぁんっ!」
(うぅっ……そこのこちょこちょ……だめっ……!! っ……指、入って……くるっ……!!)
しばらくすると。ふしぎなことが起きる。とても恥ずかしいことでもある。
(ぁ……あたま、ふわふわ……からだ、びりびり……いつもの、きもちーやつ……んっ……またちゅー……くすぐったい……、────ぁ、ぴちゃぴちゃって音……してきた……なんでいつも、ぬれちゃうんだろ……?)
重ねていた体が離れる。身を起こした青年は座り、少女は仰向け。いつもの形。慣れすぎているため、特に感想を言う気はない。
(もらしてるわけじゃ、ないって言ってた、けど……でも、そうだよね……だって、トイレのとは、ちがうところだし……じゃあ、なんの場所なんっ、だろっ……!!)
「あ゛っ……!!」
(いつもの、腰振り……っ! 最初は、やさしく……だんだん、激しく……)
静寂の挿入。
(やさしいのは、いい……二番目に、きもちいー……イタくならないように、スッゴく気をつけてるって、言ってた……)
断続的な破裂音。
「あっ、あっ……アッ、アッ、アン……ンァアー♥ いぃっ……ふ、ふぅっ! ふぅぅぅっ……ッッ!! づぁ……!! ふぁ……ふあ゛あ゛、るふぁ、さん゛……ッ!!」
(はげしいのは、許す……三番目に、きもちー……でも、ほかのと、比べ、ると……あまり、気持ちよく、ないっ……! っ……き、きもちいー、けど……ちょっと、ちがう……もっと、スゴいの、あるって、知ってる、から……! でも……アルファ、さんは、はげしく、するのが、一番、きもちー、みたい……だから! あたし、ばかり、いちばん、めに、きもちー、やつ……ばっか、だと、わるい、から…………許すっ!)
加速する打擲音。
「おっ♥ お~~~~~~っ♥ むぐっ……?! んんん~~~~~~っ♥ ん~っ!! んぁ~~~~~~~~~~♥」
(くち、おさえられ……♥ でも、こえ、どしても、でちゃう────からぁっ♥ くび……♥ しめられ……っ♥ くるし……♥ のに……♥ ぁっ♥ だ、だめ……だめだめだめ♥ だめぇぇ~~~~~~っ!!)
「んにゃ────ぁっ♥」
(────────────ゆる♥ すぅぅぅぅぅぅぅぅぅ────!!)
腰が浮き跳ねる。
(あっ……♥ ……ッッ♥♥♥ ────……こ、こう、なる、と……あたま、なか……かみなり、みたい……びりびり、て……♥ おっ♥ おっ……おまた、から……こし、せなか、とお、て……くび、うしろ……♥ あたま、なか、まで……スゴい……♥ スゴい、よ……♥)
痙攣。鳴り止まず。
肉体。小刻みに感電。
(つ♥ ぁ♥ は♥ ぁ♥ は……♥ ~~~~♥ ぁ♥ ────イッ♥ ……た♥ ────♥♥♥)
脳内を支配する多幸感。弛緩する意識。全身のひりつく電撃的快感。
ガン開きのまぶた。したたるよだれ。緩みまくる口の端。べーっと出してさまよう舌。灼熱の吐息。喘ぎすぎで痛む喉。過呼吸で上下する胸元。へこむ腹部。脱力してかゆくなる腰は絨毯の下に埋没するような心地。灼熱の膣内。震える太ももと膝で彼の体をグリグリと挟み込み、ふくらはぎとかかとでギュッと抱きしめる。
(────ぁ♥ ……くるっ♥ いちばん、スゴいの……♥)
悠然と。ゆっくりと。執拗に。丹念に。スポットを知り尽くした上で、いじめ抜くように。
(やさしいより、静かで……はげしいより、ひどい……)
青年の体が倒れる。完全密着。唇を交わして舌を入れ合いながら、クライマックスに突入する。
「んむっ……んあぁ……もっと────ふぁるふぁふぁん……ふぁるふぁさ────ンッ♥♥♥!?!」
(なか、グイグイって……ザラザラって……カリカリって……!! はげしいのは、ガンガン突く、だけど……! やさしいのは、ヌルヌル入れたり出したり、だけど……っ! その、ふたつと、ぜんぜん、ちがう……!! こ、これ……ほんと、なに……!? ──押し、つぶされ、るぅぅぅ……♥ なか、ひっかかる、のと……おく、アッパク、されるの……♥ スゴい……!! スゴいぃぃぃぃぃぃ……♥♥♥)
「ひゃぁぁぁ────♥ むぐっ……♥ ん~~~~♥ んっ!!」
(またくち、おさえ……むり……こえ、おさえるの、むりだよぉ……♥ ぁっ♥ またくびっ♥ なんで……♥ こうげき、されてる、のに……♥ こんなに、こんなにぃぃぃ……!! っ♥♥ ────────────~~~~~~~~~~~~♥♥♥♥♥)
思考停止、脳髄蒸発。極楽快天、理性墜落。心身譲渡、完全委託。
その最後を目にした青年は、心の底から感心するようにつぶやいた。
「────お前……強くなったな」
まさかここまで言語化できるとは思わなかった。
今までされるがままで、口でも心でも喘いでばかりだったのに。
混乱と驚きと衝撃と快楽に溺れて溺れて、自我を見失う有様だったのに。
「……でも、イキすぎて気絶するのは相変わらずだな? ま、それはほかの女でも言えることだけど」
青年の一物は我慢の限界だ。
出す前に抜いて、出す場所を探す。ティッシュ箱が近くにない。ならば、ひとつしかないだろう。
昏倒して、阿呆みたいに開けたままの大口。そこ以外にあるまい。
なお気絶したといっても、いつもそれで覚醒する。飲まないよう注意しているため問題はない。
乱暴に打ち付ける。案の定、少女は半目で覚醒する。おぼろげな意識で喘ぎ声を上げる。
されるがままに身を委ね、よがり、咳き込んで……終いには波濤を受け止め、漢の臭いに
§