【小宮果穂とちょいワル男子のオトナ甘くてコドモ苦い】ぷらすえっくす! 作:形のない者
共同住宅プチパレス編〔不穏バトル編③〕
まえがき
本話には、「グループSEN」および「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『ソード・ワールド2.0/2.5』の二次創作物が含まれています。
(C)GroupSEN
(C)KADOKAWA
pR【新展開!? 異・裏・合の三世界!】天道唯我 ※裏世界:SW2.0
朝方のプチパレス。
突としてマザーAIは、アルファ・小宮果穂・篠澤広に向けて、念話で警告を発する。
『警告
『────っ!!?』
食堂で朝食を取っていたアルファは席を蹴り立ち、廊下を全力疾走。
それに小宮果穂と篠澤広も続く。
『最終防衛プロトコル発動
さっそくアルファは地下室に通じるエレベーター……ではなく、玄関口で急ぎ靴を履く。
「え、アルファさん!?」
「地下に行くんじゃないの……?」
アルファは引き戸を開けた。その先はいつもの庭が広がっているはず。有栖川夏葉や根緒亜紗里の自動車が駐車しているはず。しかし引き戸から先は、真っ白な光が広がっていた。まるで結界のように、プチパレスの内外を区切る色彩の粒子にあふれた光である。
そこにアルファは飛び込んだ。
すかさず小宮果穂も靴を履いて飛び込む。篠澤広も疑問を抱きながら飛び込んだ。そしてふたりは目を見開く。
「えっ……こ、これはぁ……っ!?」
「────アルファ、どういうこと?」
ピンク色の空。白い雲。
建物は現実世界と瓜二つ。だが奇妙な感覚。その正体もすぐ気づく。生き物の気配が存在しない。
いつも朝になると歩道を往来する人々が居ない。車も走らず、生活音は皆無。
小鳥の喧騒もなく、近所の番犬の吠え声も聴こえない。
『七、八────攻撃来ます。空からの衝撃に備えてください』
三人は怪しい空を見上げる。広大な大空の各所に黒点が生まれ、それは渦を巻き、黒雲を生成。黒雲の奥には宇宙空間が見えており銀河も見える。その先から一本の巨大な魔剣が刻一刻と迫る。黒雲の数だけ魔剣が見えている。
『該当世界:ラクシア
異世界と繋がる無数の黒雲の孔から、それぞれ巨大な魔剣の切っ先が通過する。
次の瞬間、魔剣は周辺の空間を塗り替えた。ピンク色の空は、様々な色の空へと塗り替えられていく。
そして無数の魔剣は順次発射された。音速を突破して地表に激突。都市のビル群を両断して吹き飛ばす。そして周辺の物体や地形を塗り替えた。鉄筋コンクリートのビル群は密林へと塗り替えられていき、地殻は変動して台地や渓谷を形成、大滝や湖畔を作り上げる。そうやって現実世界の環境を、異世界の環境へと作り替えていく。
しばらくの大地震。三人は立っていられず膝をついて座り込む。
そこでアルファが深刻そうな面持ちで言った。
「ついに地下のゲートを通さず来たか……これってあちらさんの神が、俺たちの世界を認識した……ってことでいいんだよな?」
『はい。その通りです』
アルファは振り返り、小宮果穂と篠澤広に説明する。
「果穂、広さん。鏡面世界って知ってるか?」
「……えっと、むかし、なにかの絵本で読んだことがあります! 現実世界とうり二つだけど、左右が反転していたり、生き物が住んでいなかったり……!」
「……──まさかマザーAIが、プチパレスの住人のアイドルパワーを集めて、その鏡面世界を生成した……?」
「では、なぜそうしたか。理由はもう分かりますね? もしマザーAIが敵の魔剣攻撃を、この鏡面世界を避雷針として……通称『
小宮果穂は目を見張る。篠澤広はうつむいた。
「た、大変なことになっていました……っ!!」
「たくさんの犠牲者が出ていたね……」
「その通り。つまりマザーAIのおかげで第一波の被害は無力化できた。ただし問題はここからだ。敵は明らかに現実世界への侵略を目的としている。そのため、ここが裏世界だと分かれば、現実世界へ続くゲートを探そうとするはず。そのゲートが────」
アルファは、絶対防衛ラインの死守を命令する。
「────俺たちが住むプチパレスの『正面玄関』だ」
『……!!』
「だが守ってばかりでは勝てない。敵の質量攻撃は圧倒的だ。そのため問題の根本を断つ」
『……────』
小宮果穂は覚悟を決めた顔で次の言葉を待つ。篠澤広も自分にできる事を考え始める。
「理想は、黒幕の撃破。現実的な目標は、魔剣の破壊」
かくして、アルファ・小宮果穂・篠澤広の三人による、現実世界を守るための、裏世界での大冒険が始まった!
§
『補足説明:裏世界と現実世界では時間の流れが異なります。仮に裏世界で数日数年・数百年を過ごしても、基本的に年は取らず、現実世界における影響は微量となります。少なくとも『浦島太郎』のようなことは起こりえません』
これから学校に登校する予定だった小宮果穂と篠澤広は、その話を聞いて安心する。
やがて、冒険に繰り出したアルファが、ほんの小一時間で戻ってきた。
「報告だー。やはり魔剣周辺の空間は、異世界ラクシアの自然体系に塗り替えられていた。ラクシア産の魔物──蛮族・動物・植物・アンデッド・魔法生物・魔動機・幻獣・妖精・魔神・人族──が、当たり前のように生息している」
そこでアルファは冒険中、蛮族や動物と遭遇。戦闘に発展。なんとか倒して気絶させると、なんと
篠澤広は首をかしげる。
「すべての魔物から……? じゃあ結構強かった?」
「いや。それほど強くはなかった」
「それはおかしい。剣のかけらを取り込むと強くなるのが、ラクシアの
「そこでマザーAIに、この変な剣のかけらを調べてもらった。そうしたら衝撃の新システムが判明した。──果穂、広。これから人体実験を行う。剣のかけらを配るから、しっかりと手に持っていてくれ」
「大丈夫なの?」
「俺が既に治験済みだから安心してほしい。──じゃ、適当に欲しい能力を願え」
小宮果穂と篠澤広は剣のかけらを手渡される。それをの手のひらの上に乗せるが、急にそんなことを言われても困る。
「欲しい能力……あたしは、アルファさんを手伝える力が欲しいですっ! ジャスティスレッドみたいに、悪をくじいて、だれかを守るんですっ!」
「わたしは……とりあえずフィールドワークで足でまといにならない体力が欲しい……」
次の瞬間、剣のかけらは光り輝き、ふたりの手の中に浸透していった。
「わわっ!? 剣のかけらが、あたしの体の中に……!?」
「これ……大丈夫なの?」
「嫌なら排出したいと願えばいい。俺も何度か出し入れできた。そのたび────
ふいに小宮果穂は、なんだか体が軽くなった。肉体に変化はないが、ふしぎと筋肉ががっしりした気がする。
一方の篠澤広は、肉体に変化を感じない。
「マザーAI。ふたりがどういう能力を得たのか分析してくれ」
『小宮果穂:ファイター技能5レベルを獲得 篠澤広:ルーンフォークの種族特徴〔HP変換〕を獲得』
「とまぁ、こんな感じで。剣のかけら一個で、一つの能力が手に入る。たとえば、戦士系技能1~5レベル。その他系技能1~5レベル。戦闘特技1個。魔法1個。アイテム1種類。種族特徴1種類。などをゲットできるらしい。ちなみに種族特徴をゲットすると、その種族の外見に近づく」
『ただし、我々の世界の人間は『剣のかけら』を10個以上、吸収することは危険と判断します。限界でも15個まで。それ以上は命の保証ができません』
小宮果穂と篠澤広はうなずく。
最後にアルファは、どうしたものかと頭を悩ませた。
「つまり、生身でも強い俺が先んじて剣のかけらを集める。それを果穂たちが摂取して能力を
「っ! じゃあ、じゃあ……! あたしも、冒険していいんですかぁ!?」
「そうなると手数が欲しい」
「そうなんすよねぇ……」
アルファはため息をつく。
そして覚悟を決めた。
「──なぁマザーAI。今は割と危機的な状況だ。猫の手も借りたい。そこで、お前の提案を受け入れる事にした」
『承知しました。賢明な判断です。──ではアルファさまとの折衷案で進めますか?』
「そうしてくれ」
『ではこれより、アルファさまたち三名では手に負えない
「ありまくりだけどナーシ。──ま、できるだけ、この裏世界を楽しめるような精神性を持った人物を集めてくれ。それだけだ」
『もちろんです』
そこで小宮果穂と篠澤広が危惧する。
「それって……夏葉さんや灯織さんたちに、手伝ってもらうってことですよね……?」
「縁があるってことは、プチパレスに遊びに来たことがある千奈も巻き込まれるの?」
「なんです? 自分の心配より他人の心配ですか? その気持ち、お前らを同行させると決めた時の、俺の気持ちと同じであること、忘れないように」
『…………』
小宮果穂と篠澤広は、アルファが一人で危険を冒すことに耐えられなかった。だから同行を懇願した。もちろん邪魔にならないよう、足でまといにならないよう、自分に出来る範囲でサポートしようと努めてきた。
それはきっと、ほかの全員も同じことだろう。もし果穂や広がこのような冒険をしていると知れば、夏葉や千奈たちは、必ず手伝うと言うはず。その気持ちは痛いほど分かる。ならば────
「────みんなで挑めばいいんですっ!」
「果穂の言う通り。仲間で協力し合えば怖いことは起こらない。それに剣のかけらを取り込めば対抗手段を得られる」
「じゃ、その方針で行きましょう。ちなみに俺は真語魔法の【テレポート】を常に持つようにするので、誰かがピンチになったらすぐ助けに行けるようにしておきますね」
§
ピンク色の空。裏世界のプチパレス邸。
玄関先の庭では、ベースキャンプが築かれていた。石で囲んだ焚き火。木を切った丸太を椅子代わりにして焚き火の周囲に配置。テントを張って寝床を確保。剣のかけらから様々な冒険道具類──主に『蛮族探知機』や『夜警の彫像』──を生み出して、周辺警戒を怠らない。
そこで小宮果穂が、篠澤広に相談する。
「あのっ広さん! もし……魔剣がプチパレスのゲートを通ったら、あたしたちの世界はどうなってしまうんでしょう……?」
「分からない。──マザーAIに聞いてみようか?」
マザーAIは推測する。
『二通りの可能性が考えられます。一つ目は、我々の軍事と魔剣の軍事が激突します。二つ目は、
『……マージドワールド……??』
ふたりは首をひねる。
『合世界とは、現世界と異世界が融合した、まったく新しい世界のことです。現世界とは、我々の世界のことです。そして────仮に現世界と異世界ラクシアが融合したとしましょう。すると現世界では、ラクシアの魔物は、現世界の動鉱植物と同じ扱いを受けます。エルフやドワーフ、ゴブリンやトロール、魔剣や魔法……それらが当たり前のように、現代社会に矛盾なく存在し、人々は『元々そんなものはなかったはずだ』という認識を改ざんされ、両世界が融合したという事実に誰も彼もが気づきません。その認知の変質もまた、合世界の特徴です』
とんでもない話になってきた。
篠澤広は首をかしげる。
「現代社会に矛盾なく存在……本当にそんなことが……?」
『太陽系の拡大および地球の地表拡大、かつネモ・ポイントあたりに異世界ラクシアの諸大陸が浮上し、そのあたりに偏重して異世界ラクシアの文明・文化が根付く……そのような世界観になる可能性があります』
加えてマザーAIは補足する。
『なお今回は明らかに攻撃的な侵略行為ですので、私は
「そうなんですね……」
『ただしアルファさまは、
その時、アルファが小一時間の冒険から戻ってくる。
「それはないな。合世界を放置すれば、また別の異世界と融合して闇鍋状態となる。その先に待つのは多重世界の飽和破滅だ。この理論が正しい可能性がある以上、放置はありえない。……といっても、俺は耐性があるだけだ。認識改ざんを100%受けないわけじゃない。もしかしたら初星学園だって、俺も認識できないうちに、
そこで小宮果穂と篠澤広が目を見開いた。
「えっ! それって広さんたちが、あたしとアルファさんの世界には、いなかったかもしれなかった……ってことですかぁ!?」
「それに加えて、もしかしたら俺だって、果穂や広とは別の世界の人間だったかもしれないぞ?」
『……っ?!』
異世界×異世界=合世界。それは哲学的ゾンビに対する命題と言えるかもしれない。
というのもアルファという存在は、
しかも、その別の世界が、
さらに、この世界は現在進行形で、
そのようにアルファは語る。
「考え出したらキリがないぞ~。俺たちからしたら悪魔の証明だ。つーわけでほどほどに、気楽に行こうぜ!」
ほどほど、とは。
世界が破滅しない程度の融合に済ませよう、という意味か。
そう言って一笑に付したアルファは、さっそく大量の剣のかけらを倉庫に保管する。
「んじゃ、これでアイドル達の出撃準備は万端だな。俺は引き続き、現世界と裏世界を行ったり来たりして事態の解決を図る。まずは一番近い魔剣から破壊するよ。ほかの奴らは、比較的安全な魔剣から攻略してほしい。マザーAIにもそうするよう頼んである。んじゃ、そんなわけで────」
最後にアルファは、各地にそびえ立つ山嶺のような巨大魔剣に向かって、宣戦を布告する。
「────冒険開始だ!」
§