【小宮果穂とちょいワル男子のオトナ甘くてコドモ苦い】ぷらすえっくす! 作:形のない者
まえがき
本話には、有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチの著作物である『メタリックガーディアンRPG』の二次創作物が含まれております。
ピンク色の空。裏世界のプチパレス邸。
玄関先の広間では、マザーAIから念話で説明を受ける葛城リーリヤが佇んでいた。
『とどのつまりカクカクシカジカで────現世界を守るため、この裏世界を守り抜いてほしいのです。ご理解ご協力のほどはよろしいでしょうか?』
「────はい。完璧に理解しました。つまりわたしは今、まるで現実のような夢を見ていて、今から
『……そのような認識でも、あながち間違いではありません。──それではプチパレス地下にある格納庫ハッチを開きます。アルファ様が鹵獲して改造したガーディアンを選択し、リンケージとして乗り込んでください。また、詳しい異世界の情報につきましては、アルファ様が独自に蒐集してまとめた『機甲世界辞典』のルルブを読み通してください。ご希望であれば基本知識は脳内に直接インストールします』
ふいに赤い警報音のアラートが鳴り響く。地響き。敷地内の地面が真っ二つに切り開かれたかと思えば、地中から鈍色の大空間が顔を出す。その暗闇に陽光が射し込むと────様々なロボットが直立姿勢でバンカーに取り付けられている光景がお目にかかれた。
「ロボットだぁ……!」
葛城リーリヤは噛み締めるようにつぶやくと、ふしぎと脳内に各ガーディアン機体の基本知識がよぎる。
カバリエ級。細身ながらも洗練されたシルエット。白銀の装甲をまばゆく光らせる姿はまさしく戦場の貴公子。
スーパー級。寸胴のようなシルエット。黒い鋼鉄の巨躯に三原色が程よく上塗りされた姿はまさしく古代の守護神。
クラッシャー級。格闘家のようなシルエット。軽量装甲ながら巨大武器を振り回す姿はまさしく戦場の破壊者。
ディザスター級。ロマン。それ以外に説明不要。両肩両腕に山のようなキャノン砲を背負う姿はまさしく戦場の女王。
ファンタズム級。魔法ロボ。それ以外に説明不要。壮麗なる月光の翼はルーンの魔法陣を描く。其は精霊の騎士。
ライトニング級。小型高速機動ロボ。細身のフレームに流線型の装甲。脚部ローラーで戦場を疾駆する。
ユニオン級。合体変形ロボ。それは絆の機構的具現。鋼鉄よりも熱き血潮で魂を語る意志のシステム。
ベテラン級。量産型歴戦機。ミーレス。其はいぶし銀の成れの果て。現実的なロマンしかない希望の鉄塊。
ぶっちゃけ、ガン●ムやらゲ●ターやら、パイルバンカーやらタンクやら、レイア●スやらナイ●メアフレ●ムやら、トラン●フォ●マーやらメガ●ン級ム●シやら、何やらかんやら。あらゆるロボット系作品を詰め込んだような機体が勢揃いのそろい踏み。
しかし葛城リーリヤの視線は、自然と或る機体に吸い込まれていった。
「あのロボットは……?」
『当該機体は非推奨です』
「非推奨……!」
『アルファ様が既存のガーディアン技術体系を越境的に融合させる研究を行い、完成させた試作機です』
「試作機……!」
『基盤技術として、ユニオン級の変形合体機構をベースに、『
「変形合体……! ポリモーフ・ドライブ……っ!! アセンブル……! 実験機……! 不安定……! 暴走……! リスク……!!」
『何より設計段階からして独自理論に依存した、量産不可の一点もの。およそ初心者が手を出すべき機体ではありません』
「量産不可の一点もの……っ!! つまり選ばれし者だけが乗れる機体……!!」
『たしかに設計段階では人類の希望とも言える素晴らしい思想でしたが、未だ完成していないのであれば無用の長物』
「────人類の、希望────無用の、長物────っッ!!」
「そのため基本クラスのガーディアンを選択しましょう。その上で、いかがいたしますか?』
葛城リーリヤは瞳を光り輝かせながら即答した。
「一点もので!」
『────なんて?』
「あれの名前はなんて言うんですか!?」
『──……未だ無名です』
「え? じゃあ知らないんですか? あれは白銀の守護機────『シルヴェスタ
『……………………はい。ご随意になされてはよろしいかと』
知らないも何も勝手に命名しておいて何を鼻高々と。……などとは指摘しないマザーAIであった。
§
ピンク色の空。
深緑だった密林は赤く焼け焦げている。
全長5mもない小型量産機ライトニング・ミーレスを駆り出すパイロット・アルファは、数百を超す恐竜型機体を相手に一騎当千を演じていた。
〔密林の
戦闘中に何千回何万回と障害物に激突し、敵機に打撃されて歪みきった機体の表面板。
戦火に焼けた密林で煤け切った黒鼠色の表面板。
背骨に突き刺さる金属棒は、元は自らのライフルだったのか、あるいは敵に打ち込まれたパイルなのか、もはや傍目には見分けが付かない。
撃鉄機構は故障し、弾丸を自動で撃ち続けるマシンガンと化したエラーウェポン。
ほかにも上げればキリがない機体の違和感は、
(さて……かれこれ九時間以上の長期戦……残弾尽きれば敵の兵装をパクってるとはいえ、さすがに厳しくなってきた……とっくの昔に集中力なんざ手放してるよ────!)
両手持ちの機関銃で狙いを研ぎ澄まし、木立の合間を縫ってくる俊敏な敵機に一発の無駄なく、適宜弾幕を張り続けて破壊を繰り返す作業工程。
銃撃を浴びた木の幹は砕け散り、大破した機体の爆発を浴びた草木は燃え広がっていく。密林のいたるところで黒煙が上がり、瀑布のごとし銃声と爆音が街まで轟く。
〔マシンザウルス軍団〕
密林の奥で待ち構える恐竜軍団。
彼らは徒党を組んで襲ってくる。
決して単騎で突出する事はない、よく訓練された兵士達だ。
(数だけ揃えやがって……しかもまだ本命が控えているはず。そろそろ応援を呼ぶか? なら適した人材は……既にマザーAIが召喚してるか。ならば頼むぞ、我が同好の士よ! ──ぐっ?!)
左翼から轟音。小さき稲妻の鋼から悲鳴が立ち上がる。被弾した機体は火花を散らし、雷火の雄叫びを轟然と上げながら、密林を貫く渓谷の奥底へと転がり落ちていった。
§
裏の世に青空は亡く。
原初の灯火はかき消される寸前にある。
この世界に
ビル群を音叉とするように反響する警鐘。
それは自軍が劣勢であることを知らせる、終末の
ならばと白亜の機甲騎士は、
〔白亜の
超音速衝撃波。
蒼穹はいともたやすく、
世界を切り裂く白亜の名は。
その鋼鉄こそ、
頭部カメラ一面に表示される空一面の
『NO.0 Disruptor.稼動限界間近 五四三秒後に自爆します』
「──ええっ!? でで、でもっ!
『距離500 敵機複数 光点・赤でマップに表示します』
「
右手にアサルトライフル。左手にシールド。
右肩に追尾ミサイル。左肩にブレード。
背部は無搭載で機動力を確保。
さらに青と橙、二種の燃料を搭載。
電磁的エネルギーフライトと燃焼的クイックアクセルによる機動の切り換えを実現。
「熱源センサー起動!」
密集の葉に隠遁する敵機の影。レーダー上の光点だけでは高低差等の地形までは読み取れない。故にディスプレーを熱源探知に切り替えた。焼け野原はどこまでも赤く。画面上には多種多様な橙色の獣型がくっきりと映り、照準合わせ、一瞬の躊躇、引き金を引く。
「は……はいだらー!」
敵を攻撃する恐怖。
敵を殺す恐怖。
敵に恨まれる恐怖。
それに屈しまいと。
前提に打ち勝つために。
もっと怖いことを想起する。
「地球のみんなは殺させない! 葛城リーリヤの名に懸けてっ!」
発射された反動は命を奪う重み。
黒煙を裂く一発の弾丸に手応え。
甲高い金属音の断末魔が上がる。
「うおおおっ! わたしなら、できるっ! わたしにも、できるんだっ! 戦うことが────ッ!!」
前方数キロ圏内に光点を70は確認。
地上から波状的に火砲が撃ち上がる。
攻撃される恐怖。
被弾する恐怖。
殺される恐怖。
それで動きが鈍らない為にも。
前提に打ち勝つべく。
がむしゃらに動き出すしか方法を知らない。
(いつも頭の中でイメージしていた高機動トレーニングを、今ッ!)
ブースター噴射。等間隔のジグザグ軌道で弾幕を躱す。躱しながら撃ち込むが命中せず。噴射軌道で慣性が死にきったタイミングを掴んで引き金を引く。ビートを体に刻み込んで攻防一体を逐次学習。随時回避と回避後の反撃を両立させていく。
しかし敵もまた学んでくる。ブースター噴射の間隔を掴んで、回避後の減速を狙い撃ちしてくる。胴体に砲弾が掠るたび、若干リズムをズラして拍子を外す。
被弾は最小限に。
命中は最大限に。
白亜の騎士の機動は、お世辞にも熟練している動きとは言えなかった。
筋のいい素人が素人なりに考えて、敵もまた素人であることを願うような、付け焼刃の攻防工夫。
さながら生まれたての仔猫が、短い手足、拙い身のこなしで、他の猫との駆け引きに興じるかのような機動戦法。
それもいずれ限界が来る。
轟音。
コックピットが震撼した。
「ぐぅっ……!!」
『左脇に被弾 損壊一割 戦闘行動支障ありません』
「まだ……まだぁ!」
葛城リーリヤは戦いの中で戦い方を学習していく。
その時、ピンク色の空が割れた。暗黒たる時空の割れ目から真紅の機体が降臨する。
〔真紅の
「あれは────!?」
『カバリエ級の派生機体と推定 機体名はクラウド級バイオレット
「くっ……! 敵主力の兵装は!?」
右手にシールド。左手にアサルトライフル。
右肩に索敵兵装。左肩にロケットブースター弐筒。
背部兵装無し。
脚部に炉心融解級のブースター。既にブースター埋め込みの影響で左脚内部が融け落ち孔が空いている。
単眼の紅き戦士は、白亜の騎士めがけて急降下。
「く────来るっ!! ファンタズム級ウイング展開! 回避盾で挑むっ!」
『両翼展開完了 御武運を』
背部から精彩な青き粒子を噴き出し、翼の形状を象らせる。
脚部からロケットブースターを起動。高機動で引き撃ちする。
交差するアサルトライフル。
真紅の弾丸は全命中するが、白亜の弾丸は全回避される。
(ぐっ?! そんな……! アレが本物の動き……!?)
ならばアサルトライフルを収納。左肩のブレードを展開。青き粒子がロングソードの形状を象る。
(行けるか! イチかバチか……!! 射撃では勝てない! ならどのみちこれしか、ないっ!!)
『────渓谷の上に誘い込め!!』
「っ……?!」
突如、通信装置からぶつ切りの音声が飛び込む。
その声色は────
「(青髪の)センパイ!?」
『ブレードはそれからだ────!!』
判断する時間も惜しい。渓谷を探す。見つけた。逆噴射で急行。真紅の機体は猛追してくる。
白亜の騎士は渓谷の真上を通り過ぎた段階で『位置取り』を行いつつ急減速。更に『シールド防御』を展開しつつアクセル全開、ブースター点火、フルスロットルで急接近。
真紅の戦士が渓谷の真上へ至った瞬間。
一発の光線が真紅の胴体を撃ち抜いた。真紅の戦士は『デッドマーク』を付与される。
(レーザー式のスナイパーライフル……!)
『今だッ!!』
「────うおおおおおおおおおっ! 『急降下』からの『オーラ斬り』ぃっ!!」
カバリエ級とファンタズム級のポリモーフ・ドライブによる多相戦法。
真紅の戦士は迎撃すべくアサルトライフルを連射してシールドを展開。
白亜の騎士は弾幕をシールドで払い除け、青きオーラブレードを以て敵シールドごと真っ二つにすべく吶喊、一刀両断。
空に一文字の青が薙ぐ。
命運分かたれた真紅の鋼は、閃光と共に爆発四散した。
〔真紅の撃墜、白亜の掠傷〕
決着を目にした敵軍は総撤退を開始。
その時、爆発四散した爆焔の中から加護が発動。奇跡の光が一条を描き、敵軍の只中に逃れていった。
「あれは!?」
『おそらく敵エースパイロットがベイルアウトしました』
「……そっか……死んでなかったんだ……良かった、って、言っていいのかな……」
『……状況終了。アルファ様、葛城リーリヤ様。今宵も地球の命運を守ってくれて感謝いたします』
かくして葛城リーリヤの意識は、まどろむように闇の底へと沈んでいった。
§
早朝の女子寮。
葛城リーリヤと紫雲清夏の相部屋。
「リーリヤ、起きて~。遅刻しちゃうよ~?」
「────……むにゃ…………あれ……? 清夏ちゃん……? 恐竜将軍は……?」
葛城リーリヤはまぶたをこすって起床する。
「きょ、恐竜将軍……? アニメの夢でも見たん? なら起こさない方が良かったかな?」
「う、ううん……! スッゴく怖い夢だったから……起こしてくれて、ありがとう……!」
「ありゃ、そうなの? 大丈夫……?」
「う、うん……あ、そうだ! 今見た夢、忘れないうちにセンパイに電話しないと……!」
「えぇ……?」
呆れる紫雲清夏のかたわら、葛城リーリヤはスマホを取り出してアルファに電話をかける。
「────あ、もしもし!? センパイ! 実は今スゴい夢を見たんですっ!! わたしが地球を守る白亜の騎士となって、スナイパー使いのセンパイと一緒に、裏世界で戦う話なんですけど────!!」
『あー……』(マザーAIの記憶処理が不完全だな。やっぱり殺し合いなんてストレスがヤバすぎることに巻き込むと、そりゃあ深層心理には深く刻まれちまうよなぁ……)『それで?』
「また夢の世界に戻りたいですっ!!」
『あ~……』(これ割と問題ないやつだな?!)『そうですかー』
葛城リーリヤの歓喜に満ちた声が部屋に響き渡る。
しかし、それは夢だからこその喜びだろう。
「はいはいリーリヤ、話しながらでもいいから着替えて~。あたしが手をつないで食堂まで連れてくから、そのまま話してていいよ~」
「ありがとう清夏ちゃん! ──それでね、センパイ……! わたしがカスタムした『シルヴェスタ Mk.Ⅱ』は、とにかく凄いんですよ……!! 本物のシルヴェスタには遠く及ばなかったんですけど、まずマザーAIさんにFCSとジェネレーターのアセンをお願いして────────!」
§
AIの絵は粗が多くて難儀しますが、その粗に意味を用意すると、途端に面白くなりますね。
いわゆる間違い探し+辻褄合わせの複合遊戯。単に脳内補完とも言う。