※この作品はR-18です。

【小宮果穂とちょいワル男子のオトナ甘くてコドモ苦い】ぷらすえっくす!   作:形のない者

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 まえがき

 本話には、「ワールドトリガー」の二次創作物が含まれております。

 ※独自設定・独自解釈有り。

 ※オリジナルトリガー有り。詳細はあとがきに記載。





pSR【裏界忍者(アザーフッドのニンジャ)①】対近界民(ネイバー)学園・初星遠征部隊〔合世界〕 ※裏合世界:ワールドトリガー

 

 ピンク色の空。白い雲。

 遠目にビル群。地表に住宅街。生き物の気配は皆無。

 

 そんな世界に一艇の遠征艇が空間着地する。

 空間位相の異なる星間座標にたゆたう遠征艇。

 

 その中から続々と、全15名のトリオン体が外界に転送されていく。

 ビル群の屋上に降り立つは、これから戦いの狼煙を上げるような漆黒(Howiling over the World)の隊服。

 

「────十王隊、現着」

「姫崎です。レーダーに反応はありません」

「有村で……──! ……ピンク色の空……本当に不気味だな。それに生物の気配も、聞いていた通りまったくない……」

「雨夜だ。全員の転送を確認。──有村ボサッとするな! ここは近界(ネイバーフッド)とは似て非なる、地球の裏側の世界……裏界(アザーフッド)だ! 何が出るか分からん。常に警戒して事に当たれ! 既に裏界民(アザーズ)は我々の接近に気づいているやもしれん!」

 

 そこで遠征部隊の隊長・十王星南が振り返る。

 

「そうは言うけれどね? 雨夜副隊長。あなたの言うことも尤もだけど、何も敵がいるという話でもないわ。今回はあくまでフィールドワーク。そういうわけだから、いつも通りの手順を踏みましょう。それでいいわよね?」

「……うむ。構わん」

「それでは各部隊の点呼を取るわ。──まずは死番(しばん)隊!」

 

「は、はいっ!! し……死番隊隊長・葛城リーリヤ、ですっ!」

「死番隊の隊員、紫雲清夏ー!」

 

「二人には斥候を任せるわ。くれぐれも気をつけて」

『了解っ!!』

「それでは──次は攻撃隊!」

 

「攻撃隊隊長・藤田ことねでっす!」

「隊員の月村手毬」

「同じく隊員の花海佑芽よ!」

 

「三人は通信トリガー〔ニュースボックス〕を中継点として、死番隊と後続隊の無線距離が途切れないよう常に意識して」

『了解!!!』

「イイ返事ね! ──では三番手に、中距離支援隊!」

 

「中距離支援隊、またの名を射手隊隊長・篠澤広」

「隊員の花海佑芽でーす!」

「隊員の倉本千奈ですわー!」

 

「あなたたち三人もオペレートトリガー〔ニュースボックス〕を使って、前線と遠征艇の通信が途切れないよう留意すること」

『了解!!!』

「そして私達が後詰部隊。隊長はこの私、十王星南!」

「副隊長の雨夜燕だ」

「隊員の姫崎莉波です♪」

「隊員の有村麻央だよ」

「私たちは部隊名の通り、基本的に後詰を務める。他の部隊のカバーやフォローを優先的に行うけど、だからって甘えないように」

 

 最後に十王星南は、残る三人を見やる。

 

「最後は────遊撃隊!」

「……隊長の賀陽燐羽」

「秦谷美鈴です」

「ま、真城優(ましろゆう)です……」(いやなんで私が……? そりゃ選抜されたからには頑張りますけど……)

 

「以上の遠征部隊で、裏界(りかい)……アザーフッドのフィールドワークに当たる。それでは────出陣!!」

 

 十王隊長の号令一下で、まずは死番隊が先駆けて、その背を攻撃隊が追い、一拍遅れて中距離支援部隊が追随していった。

 

          §

 

 死番隊はオフィス街の国道を駆け抜ける。歩道は使わない。横道から何かが来るかもしれない。遠方からは丸見えとなるが、故にこそ常に狙撃を警戒中。葛城リーリヤはメイントリガーのレイガストを収納状態で右手に持っており、紫雲清夏はメイントリガーの弧月を右腰に提げている。

 

「……清夏ちゃん。なんか……わたしたちが住んでる街と、見た目がそっくりだね?」

「そだねー。おもいっきし日本の街並みだコレ。しかも283さんとこの街じゃない? 天川駅も近そー。……鏡面世界って話も本当みたい。別に左右逆転とかはしてないけど」

 

 ふいに無線機からノイズ音が走る。

 

『っッ!?』

 

 死番隊は急ブレーキを掛けて身構える。

 

《もしもし? ……ことねちゃん? 清夏ちゃんも聞こえる!?》

《もしもーし? リーリヤ聴こえる? ──あーコレ、あたしらの無線機だけ妨害された感じ?》

「──無線機が壊れた……」

「いやいや。妨害っしょ!」

「ジャミングってこと?」

「そうそう。で、そうなると……やっぱ生き物がいるってことだよね? ここだけ電波やトリオンの流れが悪いとかじゃない限り」

「調べてみよう」

 

 周辺を目視警戒。至って普通の道路。マンホール。横断歩道の白線。信号機。ガードレール。並(・)木(・)。ビル群。日光を反射する窓ガラス。屋内は無人。

 

「……襲撃の気配は、なさそう……」

「隊長。一旦戻って攻撃隊に報告する?」

「……ううん。死番隊と無線が通じなくなったのは、攻撃隊も承知してるはず。このまま進もう」

「オッケー。レーダーも潰されてるけど、ま、これが死番隊の役目だもんねー」

 

 死番隊は駆け出す。速力は一般的な自動車と同速度。

 どこまでも続くビル群を駆け抜けていると、右手に拓けた空間が生じる。公園である。葛城リーリヤの視線の先には、人影が立っていた。人影との対角線に一本松の幹が過ぎ去った瞬間、黒い狐のお面を付けていた人影は消えていた。

 

「ッ!?」

「リーリヤどしたん!?」

 

 葛城リーリヤはレイガストを構えて急ブレーキ。

 すかさず紫雲清夏は隊長の背後を守るように滑り止め。居合の構えで弧月を持つ。

 

「今、公園の奥に人影が見えた! 黒いキツネのお面! 眉は青みがかってた!」

「──……今は、何も見えないけど……」

「本当にいたの! 見間違いじゃないよ!」

「分かってるって。あたしはリーリヤが嘘ついてるなんて思ってないよ。……それより、なんか嫌な予感しない?」

「……うん」

「どうする?」

 

 葛城リーリヤは公園を睨む。

 

「罠かもしれないけど……それは前提だから」

「先陣切って敵地に踏み込む役回り。それが死番隊だもんね~!」

 

 死番隊は公園に立ち入る。公園の外郭に植えられた木立を抜けて広い敷地に入る。足元は整地された茶色い地面と芝生の草地。

 葛城リーリヤは公園全週を見渡す。紫雲清夏は足元の影を見やる。木立の上に誰か立っているかもしれない。四方八方からの奇襲を警戒していた刹那────殺気。

 

(ッッ!!?)

 

 身の毛が弥立つ殺気を感じた。全身に鳥肌が立つ。首筋に怖気。数ミリ先に死神が舞い降りている直感。今更回避行動に入っても遅いと即断。スコーピオンを起動。それはトリオン体の内部を自由自在に動かせる上、刀身を伸縮自在に伸ばせる攻撃トリガー。それを首筋に伸ばした次の瞬間、甲高い音ががなり散らし、紫雲清夏の背中から三つの音が爆撃した。

 

 弧月のような斬撃音と、トリオンが噴射するような漏出音と、震脚のような着地音である。

 

「んなっ!?」(右肩から背中を斬られたッ!! しかも上から……?! 影はなかったはず! つまり透明化トリガー……〔カメレオン〕みたいなもの!!)

「清夏ちゃ──?!」

 

 二人が振り返ると、そこには黒い狐面を付けた長身の戦士が腰を深く落としていた。手元には抜刀済みの弧月。

 

(────弧月(こげつ)!?)

 

 なぜ自分たちと同じトリガーを有しているのか。死番隊は敵の正体に困惑しつつ全力後退。

 敵の性別は不明だが、体格的に男性を想起。音もなく影もなく急所を狙ってきた暗殺者。

 

 納刀した狐面は身を倒しつつ地を踏み抉り、爆発のごとく水平跳躍。頭突きのごとく突貫。抜刀の構え。

 

(レイガスト防御モード!)

 

 死番隊は声出しもなくアイコンタクト一つで阿吽の呼吸。紫雲清夏はバックステップで葛城リーリヤの背後に回り、レイガストの大盾に守られるよう立ち回る。仮に敵が旋空弧月を放ってきて、最悪レイガストが割られても……葛城リーリヤがベイルアウトした白煙を目くらましに使い、紫雲清夏のマンティスで仕留める算段。

 

 ────そんな死番隊の決死な表情を目にした狐面は、ピクリと反応して滑り止め。

 

(突撃をやめた!? なら反撃っ!! スラスター・オン! 大盾の突撃で吹き飛ば────)

 

 一歩前に踏み出そうとした葛城リーリヤはバランスを崩す。(えっ!?)理由は瞬時に判明。踏み出そうとした片足が、なぜか地面から離れず固定されていた。スラスターが起動。レイガストの持ち手部分からトリオンが噴射。このままではバイクがクラッチした時のように、葛城リーリヤの手の中でレイガストが暴れてしまう。

 

(────っ?!)

「リーリヤ!?」 彼女の様子がおかしいと察した紫雲清夏は何が起きたのかと心配を叫ぶ。

 

 すかさず葛城リーリヤはレイガストを手放した。次いでシールドを起動しつつ体を横に倒して、敵の旋空弧月による水平斬りを躱そうとする。

 対する狐面は高速抜刀。旋空弧月は、暴れて向かってくるレイガストを弾き飛ばしつつ、その奥にいる二名の胴体を両断せんと刃を拡張させた。すると葛城リーリヤの右肘から先が斬り飛ばされ、紫雲清夏の橙髪の先端が斬り飛ばされる。

 既に低姿勢で地を蹴り前進していた紫雲清夏はメインとサブのスコーピオンを連結してマンティスを奮う。射程二倍の拡張スコーピオンは蛇のようにうねり軌道を読ませず、抜刀後の硬直状態を突いて喉元に迫る。

 

 次の瞬間、予想だにしない早業が起きた。

 狐面の側面にグラスホッパーが瞬間生成。狐面の体を瞬発的に吹き飛ばすと同時、グラスホッパーの消滅と合わせて狐面の全身が徐々に透明化を始める。その時、紫雲清夏のマンティスは狐面の残像たる喉笛を貫いていた。そして狐面は、三メートルごとに何もない空間から────ザッザッ────という砂地の足音と砂埃を微かに立たせながら、一気に離れていった。もはや敵の居所は行方知れず。

 

『────────』

 

 考察する。狐面は、同時に四つのトリガーを起動していた。否、ほ(・)ぼ(・)同(・)時(・)に四つのトリガーを起動していた。

 葛城リーリヤは立ち上がりざまに駆け出してレイガストを回収。トリオンは少ないため再度生成するような無駄遣いはできない。落としたレイガストに罠を仕込まれた形跡も確認できないため安堵して装備する。一方、紫雲清夏は隊長の背後を守りながら考察した。

 

「──リーリヤを引っ掛けたスコーピオンのもぐら爪(モールクロー)。からの旋空弧月。そしてグラスホッパーからのカメレオン。……全部ボーダー製のトリガーとそっくり。だからこそ敵の正体は依然として不明。ただし今のトリガー技術のカラクリは見抜いた」

「え、ほんと?」

「うん。あれ完全に改造トリガーだ。たぶんだけど、グラスホッパーを起動したら自動的にカメレオンが起動するように設定してる。もしかしたら旋空弧月を起動したら自動的にスコーピオンが消えて、かつグラスホッパーを起動するようにもしていた可能性もある。……じゃないと今の早業はありえないっしょ! 明らかに人間の反応速度をはるかに超えていたし……」

「……! そういう……!」

 

 ならば敵のトリガー構成が、ある程度は透けて見える。

 あくまでボーダー製トリガーのカスタム性と同一規格であれば、という類推にはなるが────

 

 狐面のトリガー構成は────

 MAIN TRIGGER〔弧月〕〔旋空〕〔FREE〕〔FREE〕

  SUB TRIGGER〔蠍刀(スコーピオン)〕〔蝗板(グラスホッパー)〕〔隠蜥(カメレオン)〕〔FREE〕

 ────という考察が成り立つ。

 

「──うん。清夏ちゃんの考察は当たってると思う。でも……攻略法は?」

「んー……敵は強い! だから、ぶっちゃけ無理かも!! リーリヤも負傷させちゃったし!」

「あ、あはは……でも、まだまだこれからだよ。もっと敵の情報を引き出して、みんなのところに持ち帰らないと……」

「それもそだね。んじゃ────決死行と行きますか……!」

 

          §

 

 死番隊が最大警戒態勢で居たその時。

 攻撃隊は、ビル群の国道にて、ジャミングエリアの調査に当たっていた。

 

「ここで死番隊との無線が途切れたのよね? 同時にトリオン反応も消失した。どうやら電波センサー・熱センサー・トリオンセンサーの三種感知を妨害するジャミング型トリオンが一定区域に放射されていると見たわ」

「それでどうするの隊長? 死番隊は死番隊らしく罠に飛び込んだようだけど」

「とりま報告を待つしかないだろー。死番隊がベイルアウトすれば、死番隊が手に入れた情報をオペレーターのあさり先生が一瞬で圧縮して、一気に渡してくれるし。それまでは待機でーす! あまり戦線を伸ばすもんでもないし~?」

「一理あるわね。わたしは隊長の意向に賛成よ」

「つまらないけど私も賛成。やれやれ……死番隊、またみっともなく殺られてないといいけど……」

 

 三人は見合って囲む。頭上から見れば、それぞれ三角形の頂点に佇むような配置。その三角形の中心に────トンッ────と足音が鳴った。何かが着地したような音。音の出処からは、みるみると黒い狐のお面と影があらわとなり、腰を半回転するように身をひねっていた。

 

 すなわち、全週旋空弧月。

 

『なっ────にィッ!!?』

 

 花海咲季は右腰から弧月抜刀かつシールド生成。

 月村手毬は左腰から弧月抜刀かつシールド生成。

 藤田ことねも左腰から弧月抜刀かつシールド生成。

 それは規格化された訓練による、瞬発的な防御行動の結実。三人のシールドが両断されても弧月の刀身が敵の攻撃をガードする。狐面の拡張斬撃は三人のトリオン体を刀身ごと弾き飛ばし、甲高い音色が六度がなり散らした。割れたシールド。ヒビの入った刀身。たたらを踏む三人はすかさず前傾姿勢で即応する。反撃だ。

 

「いきなり目の前とか舐めた真似を……!!」(というか今の旋空弧月!?)

「囲んで殺すッ!!」『ビ! ビックリシタァアアアアアア?!』

「おい燐羽語翻訳機(てまりインコ)ビビってんじゃねぇぞ! あと伏兵警戒しとけ!!」(なんでボーダーの技術をコイツが!? なんで襲って来る!!)

 

 四重の剣戟が鳴る。狐面は攻撃隊三名に包囲されているというのに、一切の遊びのない質実剛健とも言うべき剣筋で二剣を弾いていなし、さらには狐面の肘や肩、膝や背中から突き出すスコーピオンで三本目の弧月斬撃を弾き逸らしていく。

 

「……っ!? ことね隊長!! コイツは……!」

「まるでうちのプロデューサーみたいな剣筋! ふざけないで!!」

「ダメだ手毬下がれ! コイツはヤバい!! おめーとは格が違う……っ!」

 

 花海咲季と藤田ことねはアイコンタクト一つで同時に下がったが、月村手毬だけは興奮して突出した。

 狐面はピクリと反応する。月村手毬の表情を見るに、何か狙いがあるようだ。バックステップしつつ納刀。

 

「っ!? 逃がすか!!」

「下がれって言ってんだろ手ま────」

 

 月村手毬の左手示指は、ホルスターから抜き放った拳銃の引き金を引く。それは事前に弾道パターンを選択して射出できるバイパーが込められていた。さらに鉛弾(レッドバレット)と組み合わせて起動済み。黒い弾丸は鉛弾の重さで低速化するが、そのデメリットを帳消しにするように、逃れがたい弾数まで分裂し、既定ルートを辿って標的に飛来する。

 そのルート上に存在する狐面の側面に、突として真四角のグラスホッパーが生成された。瞬間、グラスホッパーに肩から触れた狐面の体は大きく横っ飛びしつつ透明化を開始。コンクリートの道路の上を──タッタッ──と微かに鳴らしながら行方知れずになる、その間際。

 

「ハウンド!」

 

 花海咲季はキューブを生成、誘導弾をまばらに射出した。光学迷彩で姿を消してもトリオン反応までは消せない。誘導弾はトリオン反応を追尾するため、誘導弾の行先が狐面の位置を教えてくれる。

 すかさず藤田ことねはバックステップしながら、隊長として指示を飛ばす。

 

「咲季! ハウンドで可能な限り追え! 敵のトリオンを切らすんだ!」

「了解!」

「私も──!!」

「バカ! 手毬はあたしと下がって後続部隊に報告だ! ジャミングエリアから離脱するぞ!」

「──っ!? ことね隊長! ハウンドが……!!」

 

 花海咲季の狼狽声。それから──ドッドッドッ──とコンクリートを踏み砕く爆走音が近づいてくる。まさかトリオン体の速力で誘導弾の追尾性能を振り切るつもりか。狐面は一瞬、透明化を解除したらしく、おぼろげな影が揺らめいていた。その矢先、グラスホッパーを起動。こちらに高速飛来しつつハウンドの誘導半径を見切ったのか、追尾性能を完全に振り切って、放物線を描きながら透明化していく。攻撃隊が視認した限り、ちょうど三人の真上で、放物線は頂点に達すると見た。

 

「戻ってきた!」

(報告させない気か! ならあたしが相手だ!)「咲季、もう一発ハウンドで手毬を援護だ!」

「了解!」

 

 花海咲季はハウンドのキューブを生成・散弾に分割・速度は低速・射出の工程を踏むと同時に、隊長の命令意図を汲み取って役割を交代した。月村手毬の腕を取って全力後退を始め、ジャミングエリアからの離脱を試みる。

 藤田ことねは抜刀の構え。念のため体内にスコーピオンを生成してトリオン供給器官を守る。

 

(ハウンドの低速散弾は────直上に向かっている! 今だ────“旋空弧月”)

 

 射程15m。頭上への拡張斬撃。手応えは──ブチッ──と小さな音が鳴った直後、藤田ことねの胴体は袈裟斬りで切り落とされていた。

 

『──ことね隊長っ!?』

 

 後方で花海咲季と月村手毬の悲鳴が上がる。藤田ことねは冷や汗を垂らしながら、まだ戦えると判断。なぜなら両断はされていない。胴体は腰の皮一枚で繋がっている。敵弧月の切り落としを体内展開したスコーピオンが一部妨害してくれたおかげだ。

 

「────あんた何者だよ」(なんで旋空が当たってねぇんだ────!)《警告:トリオン漏出甚大:ベイルアウト寸前です》

「……」

 

 両者着地。地を抉って得物が交差する。

 藤田ことねは躍動した。彼女の得意技は弧月の斬撃に合わせてスコーピオンの奇襲を織り交ぜる特殊戦術である。抜刀を躱されてから、被弾を避けるため敢えて転倒、それを隙と誤解した敵に対して逆立ち。爪先からの蠍刀(スコーピオン)で急所を狙うが、なんと躱される。藤田ことねは、くるりと回転する肘や背中には二本の枝分かれしたスコーピオンを伸ばしており、さながら恐竜のトサカのようだが、これも紙一重で躱される。ならば垂直に降り立つ動作でスコーピオンの多連斬撃を織り被せつつ旋空の構え。

 旋空は射程限界であるほど威力を増す性質。故に敵は攻撃減衰を狙って向かってくるはず。その後、地中に潜り込ませたスコーピオンを敵の足裏に刺して固定化し、バランスを崩したところへ旋空弧月が定番戦術なのだが────

 

 狐面は両足を地面から離して、足裏同士をくっつけた。さながら忍者の身のこなし。藤田ことねが驚きの目を見開いた直後、狐面の足裏があったコンクリートからスコーピオンが突き出る。

 

(もぐら爪(モールクロー)が読まれていた……!?  これあたしの元プロデューサーに教えてもらった技だぞ!? あの青髪クソ中二男子の! ってことは、やっぱコイツ────いや、そんなまさか! ありえない……っ!! だってここは地球じゃないんだぞ⁉︎)

 

 狐面は納刀した直後、弧月の鞘を奮った。藤田ことねを横殴りで叩き飛ばす。

 地を転がった藤田ことねは、ガードレールに背中と後頭部を激突させた。

 

「づっ……!?」(クソッ! トドメを刺してこない……! 意地でもベイルアウトはさせないつもりか……! 情報を仲間に伝えさせないために……! なら────緊急離脱(ベイルアウト)!!)《エラー:ベイルアウトできません:トリオン接続が妨害されています》(──ベイルアウトできないタイプの妨害、だと────つまり、こっちの技術が完全に解析されてる証拠────なら死番隊は────)「咲季! 手毬! お前らにかなう相手じゃない! すぐジャミング圏外に出てベイルアウトしろーっ!!」

 

 その時、藤田ことねの頭上にキランと光る細い糸が舞い降りた。

 

(────? んだこれ……ワイヤー!? ────上から? そういえば……空中で無防備なのに、敵はあたしの旋空弧月を回避しやがったし、ブツッとした手応え、その後反撃までしてきた────まさか! スパイダーを地上から二メートル上に張り巡らしていたのか……!!)「お前ら気をつけろ!! スパイダーが頭上に張られている! 既にここは敵の得意領域だーっ!!」

 

 狐面は全力疾走中。

 それと同速度で花海咲季と月村手毬も全力撤退中。

 

「咲季! このままことねを置いてっていいの!? ベイルアウトできないんじゃない!?」 

「それを承知で残るって言ったのよことねは! わたしたちが情報を届けることが先決だから……!!」

 

 加えて剣戟勝負において、攻撃隊の中では藤田ことねが一番強い。その隊長が剣戟勝負で遅れを取ったのだ。今回のトリガー構成では分が悪い。

 

「くっ! 射手構成で来れば良かった……!」

「後悔しても意味ないでしょ咲季! どうするの!?」

「もうジャミングエリアから離脱してるはず────なのに無線が通じない……」

「逃げ続ければ千奈たちと合流できる!」

 

 それを聞いた狐面はピクリと反応し、真横に方向転換。

 ビルとビルの間にある路地裏に姿を消した。

 

「……──どう思う?」

「…………このまま撤退して千奈たちと合流するわ。……先を急ぐわよ」

 

          §

 

 三つのビル。

 それぞれの屋上に隠れ潜むは、中距離支援隊の三名。

 

《……死番隊はともかく、攻撃隊からの通信が来ない、ね。あそこのビル曲がったところにいるはずだけど……》

《お、お姉ちゃん、どうしたんだろう……いつも連絡は欠かさないのに……》

《……き、きっと大丈夫ですわ! 花海さん! きっと、何事もなく、フィールドワークを、続けていると────》

 

 一方その頃。風下のビルの屋上に身を潜めていた狐面は弧月を鞘ごと取り出し、鞘の両端を一本のスパイダーで付着。弓の弦のようにしてワイヤーをしならせると、スコーピオンを生成。形状を矢のように変えて、しっかりと矢尻も作る。そして弧月のスパイダーにつがえて────スコーピオンの矢を射った。

 

《────思いま──ザザザッ──》

 

 近辺でジャミングが起動すると同時、篠澤広の側頭部に矢が貫通した。

 

《警告:トリオン伝達脳破壊:トリオン接続妨害:ベイルアウト不可:戦闘体が解除されます》

『────っっッ!!?』

 

 トリオン体が解かれた篠澤広は戦場で生身を晒す。

 無線が通じず混乱した花海佑芽は、つい仲間の姿を肉眼で確認するため遮蔽物から頭を出した。その脳天に矢が飛来。

 

「どわぁ────っとォッ!?!」

 

 持ち前の身体能力で瞬発的な海老反りイナバウアー。後頭部を床にぶつけた。

 

「あいたた……! ってトリオン体だから痛くはないんだけどね! ──じゃなくて、た、大変だーっ!! 敵襲ぅぅぅぅ────!!」

 

 花海佑芽の絶叫が空に響く。

 それを耳にした倉本千奈は考える。三人ともバッグワームを起動したまま隠密中だった。だというのに、なぜ位置がバレたのか。ともあれ、こちらだけ見つかっており、あちらだけ見つかっていないというのは非常に危険な状況だ。これを打開する策を用立てる必要がある。

 

「────ハウンド!」(生成・最大分割・火力弾速射程割り振り無し・弾道垂直・追尾性能MAX・射出────!!)

 

 倉本千奈の誘導弾が天高く昇り、すぐさま風下のビルへ向かい、味方ではないトリオン反応を追い立てる。

 

(あれは千奈ちゃんのハウンド……! つまり敵はあっちにいる……!!)

(ヤバいヤバい……わたしがトリオン体じゃないこと千奈と佑芽は知らないはず……ボーダー製のトリガーは生身に命中してもスタンガン程度のダメージで済むけど、そもそもここは敵地だから敵のトリガーを喰らえば普通に殺されるし、そもそもわたしの位置は敵にバレているから死は秒読み……!! でも生身じゃ、わたしは絶対に逃げ切れない……あれ? わたしの人生、ここで終わった?)

 

 篠澤広は絶望する。その背後に人影。

 ビルの壁面を駆け上がってきたのか、狐面が柵を乗り越えて降り立つ。

 

「わ……っ────ち、千奈のハウンドは風下に向かったはず……もしかしてジャミング用トリオン兵を追いかけたのかな? それともわたしたちの位置を視認していた偵察用トリオン兵を追いかけたのかも? ……いずれにせよ、わたしは殺される、の……?」

「……」

 

 さすがの篠澤広も、この絶体絶命の状況で興奮することはできない。

 確実なる死の恐怖が胸の奥から轟いて、わなわなと、全身を大きく震わせる。

 

「っ……ッ────!!」

 

 狐面(しにがみ)が近づいてくる。

 篠澤広は震える両手を握り込んでうずくまり、覚悟して目を閉じた。

 

 ふいに腰を抱き上げられて持ち運ばれる感覚。

 

「────え?」

 

 狐面は跳躍。

 篠澤広は、十階建て以上のビルの屋上から落下して────目を回しながら青ざめた。

 

 ──ドンッ!!──と着地。コンクリートに亀裂が迸る。

 

「げぼっ……!?」

 

 篠澤広の腹部に強烈な大ダメージ。失神寸前。胸元からせり上がる吐き気。なんとか必死にこらえる。

 

(さ……さすがに吐瀉物を撒き散らすのは、かわいく、ない……わ、わたしにも、女の子の、意地が、ある……っっっ!)

 

 ある意味、別の死闘を演じていた篠澤広はさておき。

 物音を聞いた花海佑芽が、狐面の頭上へ飛び降りてきた。

 

「広ちゃぁあああああああん!!」

 

 しかしビルを登る際、国道の中空に張り巡らされたスパイダーの存在には気付かなかったのか。落下中に肘の関節や足裏が引っかかって大回転。

 

「うおわぁああああ!?」

 

 コンクリートに背中から激突。亀裂を入れながら、さりとてトリオン体に傷一つなく起き上がる。トリオン体はトリオンでしか傷をつけられない。

 

「ぐっ……!」(き、奇襲が失敗しちゃったぁぁ……!! 敵もジャミングの効果は喰らってるはずだから、別のビルに移動して飛び降りればワンチャンあると思ったのにぃ……!! なんでスパイダーが……!! 全然見えなかった! きっとカラクリがあるんだろうけど、今はそれどころじゃない! うぅぅ……!)「ひ、広ちゃんを返せっ! 人質に取って、どうする気だ……っ!!」

「……」

「っ……!!」(な、何も答えてこない……っ!! 敵の狙いは何!? なんで広ちゃんを殺さないの? ほかに狙いがある……? と、とにかく油断しちゃダメだ……ここは、あたしと千奈ちゃんで、なんとか広ちゃんを救出するしか……!)

 

 狐面は、丁寧に篠澤広を地面に下ろす。

 

「ぐふっ……!」

 

 丁寧に下ろしたのだが、それがトドメの一撃となったのか。

 スペランカー・篠澤広は、目を回して昏倒する。

 

「ひ、広ちゃーんっ!? ──っッ!!?」

 

 刹那、狐面は駆け出していた。空手の突進。花海佑芽は近接トリガーを持たない。グラスホッパーで瞬発後退。メイントリガーの突撃銃型(アサルトライフル)アステロイド二丁を、突撃銃型ギムレット(アサルトライフル徹甲弾)に合成。サブトリガーのハウンドを起動して、キューブを生成・最大分割・弾道放射状・追尾性能中途MAX・射出、といった工程を踏みながら突撃銃を連射する。

 

 怒涛の弾幕。仮に篠澤広に命中しても殺傷力はないため死ぬことはない。──否、虚弱体質の篠澤広のことだから、殺傷力がなくともスタンガンレベルの一撃で即死する可能性は無くはない。そのため路地裏から飛び出た倉本千奈が、フルシールドを展開しながら篠澤広を回収して道路を横断、路地裏に駆け込んだ。

 

(ナイス千奈ちゃん……!!)

 

 一方、怒涛の弾幕に対し、狐面は跳躍。スパイダーのワイヤーを伝って変則的な軌道を描きつつ飛び回り逃げ回る。さながらジャングルを飛び交う猿のようだ。

 

「このっ……!」

 

 花海佑芽は全てのスパイダーを断ち切る勢いで弾幕を展開。

 狐面も逃げ場をなくしたのかビルの屋上まで駆け上がって、倉本千奈が駆け抜けた方向へ姿を消す。

 

「くそっ!! グラスホッパー!!」

 

 大量のグラスホッパーで瞬時に屋上まで上がり瞬時警戒、迎撃はないと確認して、再び大量のグラスホッパーでビルを飛び越える。死角からの一撃を常に警戒しながらビルを飛び越えて、となりの大通りの上空に躍り出る。

 そこでは倉本千奈が巨大な二つのキューブを分割展開・一斉射出。アステロイドとハウンドの両攻撃(フルアタック)弾幕を、狐面に浴びせかけていた。

 

「挟み撃ちだーっ!!」

 

 落下中の花海佑芽は突撃銃を撃ちまくりながら、左肩の上に生成したメテオラのキューブを分割展開。雨あられと地表に射出する。

 これには狐面も後退一択。スパイダーも張っていないため全力疾走で路地裏に逃げおおせる。

 

 爆撃された大通りのビル群。窓ガラスや壁はむやみやたらに破壊されていく。

 炸裂弾による白煙が周囲を覆い、風吹かぬ裏界では砂塵が晴れにくい。

 

(あれ!? いつもならすぐ晴れるのに────まずい! この白煙を逆に利用されたら……! いやでもレーダーは互いに利かないはずだから────)

 

 花海佑芽、着地。

 その音で見当をつけたのか、スコーピオンの矢が花海佑芽の脇腹を貫通した。

 

「ヅッ……!? みんなごめん! 音を立てないでッ!!」

 

 花海佑芽は矢の飛来方向に対し、突撃銃とハウンドによる弾幕を展開。轟音を立て続けることで仲間の位置を気取らせない。

 次の瞬間、花海佑芽の副作用(サイドエフェクト)・強化嗅覚が反応する。だが遅い。

 

 彼女の背中は袈裟斬りに斬り下ろされた。

 

「────────」《警告:トリオン漏出甚大:ベイルアウト寸前です》

 

 花海佑芽は直感する。おそらく跳躍系と隠密系のトリガーで、路地裏から壁伝いに駆け上がり跳躍。上空からなら煙幕があっても丸見えに近い。そして、跳躍後の空中から半身ひねって花海佑芽の背後に降り立つと同時に斬り下ろしてきた。なんたる軽業か。いちいち行動に迷いが無さ過ぎる。戦い慣れすぎている。

 

 花海佑芽は突撃銃を手放した。振り返りざまに────

 

「全力パンチだぁぁぁぁ────!!!!!!!」

 

 ────嗅覚で顔面位置を把握。鍛え抜かれた腕力を頼りに、狐面の顔面を鉄拳で打ち抜いた。

 狐面は消し飛ぶ。アパレルショップのショーウインドウをブチ抜いてビル内の壁を何度もブチ破りながら最後、固い壁に激突する轟音が上がる。

 

「ハァ、ハァ……!!」

 

 自ら招いたメテオラの白煙が晴れていく。

 ビル内で起き上がっているであろう狐面は、おそらくまた仕掛けてくる。

 

「────花海さん!」

「っ! 千奈ちゃん! まだ下がってて! また敵がどこから来るか分からない……!!」

「そ、それなら────ハウンド! 低速散弾モード……!!」

「! なるほど! その手があったか……! ──いやでも! トリオン反応はほかにもあるみたいだから……!」

「それでも何もしないよりはマシですわ! 追尾設定は味方以外の無差別にしました! ハウンドが動く方向すべてを警戒するしか、あの恐ろしい狐面の忍者からは逃れられませんわぁ……!!」

 

 倉本千奈のハウンドは、予想通り四方八方に向かっている。

 一方、篠澤広は覚醒していた。彼女はハウンドの動きを観察して、ひとつ気になる疑問が生じていた。

 

(……ほとんどのハウンドが、並木通りの並(・)木(・)に向かっている……?)

 

          §

 

 遠征艇の周囲には、後詰部隊と秦谷美鈴が哨戒に当たっていた。

 そこで秦谷美鈴がポツリとつぶやく。

 

《────わたしと遠征艇の強化レーダー、双方に反応アリ。トリオン反応ひとつ。分析の結果、トリオン体と思われます》

『──っっ!!!』

《……さらにジャミングも感知。ただし、こちらの強化レーダーのほうが精度は上です。ご心配なく。──あ、ジャミングが切れました。お相手さんも、わたしと遠征艇の強化レーダーでは、ジャミングは無意味と悟ったようですね……判断が早いです》

 

《……先遣隊との通話が途切れ、中距離支援隊の地点で爆撃音……正直、どうなったと思う?》 十王星南が問いかける。

《……考えたくはないが、このトリオン体の反応ひとつに、殲滅されたと思うほかあるまい……》 雨夜燕は歯噛みする。

《ち、ちょっとまって! 相手はひとりだよ……? しかも攻撃隊と中距離部隊の連携なら、そうそう遅れを取ることなんて──まさか、ブラックトリガー使い!?》 姫崎莉波は恐怖する。

《……賀陽隊員が周辺に罠を仕掛けたから迎撃準備は万全だ。その後、賀陽隊員は『ジャミングが気がかりね』と言って、一人で先遣隊の様子を見に行った。何かあれば回収してくるはず。それに、もう撤退時刻だから死番隊も来た道を戻ってくる。無事なら帰ってくるさ》 有村麻央は朗らかにそう言うが、声の奥では震えていた。

 

 そこで十王星南が号令一下。

 

《────後詰部隊、戦闘準備。真城隊員は狙撃用意》

《──『了解っ!!!』──》

《りょ……了解ですっ!》 真城優は一拍遅れて息を呑む。

 

 十王星南は屋上の端に足を置いて地上を見下ろす。

 そこには姿を晒す狐面の忍者が佇んでいた。視線が合った気がする。

 

「私のサイドエフェクト『才能視』で見抜いたけど────彼の才能は既に限界値ね。あれ以上は成長しないわ。つまり技量は極限に達している。あの若さで大したものね……どれほどの修練を積み上げたのか。その上で、ああして佇立してるってことは……なに? まさか正々堂々の一騎打ちでもご所望なのかしら?」

「ならば私が行こう。先遣隊が帰還するまでの時間稼ぎにもなる」

「じ、時間稼ぎって……そんな、まるで負けるのが前提みたいな……燕ちゃんらしくないよ!」

「ボクも同行するよ。燕とタッグを組めば、ブラックトリガー使いでも少しは抑えられるさ」

「なら私と莉波は奇襲役ね。結局いつも通り。それなら目標は達成できるわ」

 

 雨夜燕と有村麻央は飛び降りる。コンクリートを砕き割って着地。

 その腰と手には、弧月が提げられており、レイガストが握られていた。

 

「……いざ、尋常に推して参る」

「そっちも何か仕込んであるんだろう? まさか二対一が卑怯とは言わせないよ。なんせこれは戦争だからね」

「……」

 

 狐面の忍者は無言。空手のまま仁王立つ。微動だにしない。

 そこで十王星南が無線機を使う。

 

《真城隊員。隙だらけでも今は撃っちゃダメよ。完全に釣りに来ている》

《っ!? わ、わかりました……!》

 

 ピンク色の空に雲が流れる。

 上空では風が吹いているのか、それとも機械仕掛けのように雲が動くさまを見せかけているだけなのか。

 

 ────狐面忍者の小指がピクリと反応する。

 

『──ッ!!』

 

 ────勝負は一瞬。

 

 狐面の背後にテレポーターで転移した姫崎莉波と十王星南の十字砲火が火を噴く。鉛弾入りアステロイドの拳銃射撃とギムレットの突撃銃が迫る。狐面はグラスホッパーによる水平移動の回避。一瞬で雨夜燕に接敵して両者旋空弧月。一方、有村麻央はレイガストを斬撃モードに切り替えてスラスターをオンにしつつ、自前のグラスホッパーの助けを得て高速斬撃。剣戟が高鳴る。さらに有村麻央は炸裂弾を分割せず生成と同時に射出して、すぐさまレイガストを防御モードに切り替えつつ雨夜燕を庇う。

 

 激発の攻防。爆煙が広がる。視界不良の中、有村麻央は雨夜燕を庇いつつ、雨夜燕はレーダーの光点に向かって旋空弧月。十王星南と姫崎莉波はレーダーの光点を頼りに十字砲火を繰り返す。そこへ真城優が光点座標に照準を合わせて、爆煙の向こうに立つ標的を狙撃した。屋上で戦いを見守る秦谷美鈴は、その猛攻を退ける狐面忍者の末恐ろしさを瞳に映す。

 

 というのも、まず狐面忍者は足裏にスコーピオンを生成し、マンホールを切り裂いて落下した。周囲から襲い来る旋空弧月も十字砲火も狙撃も、ただそれだけで躱しており、すかさずグラスホッパーでも使ったのかマンホールから飛び出し、爆煙のはるか上空に舞い上がっていた。

 

(レーダーは俯瞰図だから高低差までは見抜けない……!)《みなさん! 敵はノーマルトリガーです! さらに、こちらのトリオンの浪費が目的の模様! 制圧射撃は控えてください……!! 敵の思うツボです……!》

 

 ならば十字砲火だ。姫崎莉波は小出しの弾幕を張る。狐面忍者はスパイダーを展開して両側のビルにワイヤーを設置。猿のようにクルリとワイヤーを軸に回転して跳躍。十字砲火を回避する。そこへ真城優の狙撃。狐面忍者は斜めに傾けた一枚のシールドを張る。それにヒビが入ったものの、傾きを利用してイーグレットの狙撃を天に弾いた。

 

「むっ……」

「燕も分かったかい?」

 

 雨夜燕と有村麻央は剣を下ろす。十王星南と姫崎莉波も違和感を覚えて銃を少し下ろした。真城優は移動して狙撃ポイントを変更。秦谷美鈴は戦局を見守る。そこで十王星南が肉声で問いかけた。

 

「──……あなた、殺気が無いわね。敵意もない。なんのつもり?」

「────……フゥ……ようやく話の分かる奴らが現れたか……」

 

 狐面の忍者は、深々とため息一献。ようやく声を発した。

 しかし一同は、どうにもその声に聞き覚えがある。

 

「っ……? ──……どういうことかしら。殺意も害意もなく、なぜ襲ってきたの?」

「話すと長くなる。そもそもこの話を信じることも難しいだろう。だからとりま、全員が揃ってから説明会ってことで」

「…………」

 

 噂をすればなんとやら。遠方より篠澤広の両攻撃(フルアタック)バイパーが瀑布のごとく降り注ぐ。

 ハッとした十王星南は、慌てて無線を発した。

 

「っ!?」《──総員!! 戦闘行動中断っ!! ────戦闘行動を中断しなさーいっ……!!》

《えっ!?》 花海佑芽の動揺。

《あらっ!?》 花海咲季の驚愕。

《おっと。隙だらけだから撃っちゃった……ごめん》 篠澤広の謝罪。

 

 対する狐面の忍者は、足裏のスコーピオンで別のマンホールを切り裂き、自由落下。全てのバイパーがマンホールの頭上周囲をすり潰すように螺旋回転していく。芸術的な変化弾の軌道は美しいが、それは本当にただの芸術作品として終わりを告げた。バイパーは奮進剤が底を尽きて消滅。すると狐面の忍者はグラスホッパーで地上に跳び戻ってきた。

 

 それを目にした雨夜燕と有村麻央は勘づく。

 

「むっ……なるほど。先ほどの旋空弧月は回避された手応えすらなかった。別のマンホールも切り取られているのを見るに、地(・)下(・)に(・)向(・)か(・)っ(・)て(・)躱(・)し(・)て(・)い(・)た(・)のか……やるな」

「結構こっちをおちょくってくるような回避行動だけどね?」

 

 そうして先遣隊が戻ってくる。片腕を失った葛城リーリヤは、紫雲清夏とともに、トリオン体が解けて生身となった藤田ことねを護衛しながら慎重に帰還。花海咲季と花海佑芽、月村手毬と倉本千奈は、それぞれ狐面の忍者を挟み撃ちするつもりだったのか、両側の路地裏から出てくる。そして賀陽燐羽と行動する篠澤広は、トリオン体が破壊されたはずなのに、なぜかトリオン体に換装した状態でビルの屋上から飛び降りてきた。

 

 それについて狐面の忍者が問いかける。

 

「……なんで換装できてるんだ? まさかトリガーホルダーを二個持っていたのか」

「うん。わたしの組織では、上級隊員はトリガーホルダーを複数持つことで、戦闘体が破壊されても、すぐ別の戦闘体に換装できる体制が敷かれている」

 

 トリオン体は破壊されると、少しずつ時間をかけて修復されていく。たとえ本体のトリオンがどれだけ余っていても、トリオン体の構築は一定の速度で進行していく。そのため彼女達の組織では、戦場で生身となることはすなわち即死を意味するため、万が一トリオン体を失った場合に備え、即時換装できるよう、複数のトリガーホルダーを支給している。

 それは大規模な組織ならリソースの問題で不可能なこと。トリガーホルダーの数だけトリガーチップも支給する必要があるためだ。しかし彼女たちの組織は小規模なのか、少数精鋭ならではの救助体制が整っている模様。

 

 では篠澤広は、なぜすぐ二個目のトリガーホルダーを使い、トリオン体に換装しなかったのか。それはおそらく、あの場で換装してもすぐにトリオン体を破壊されて、どうせ殺されると判断していたからに過ぎない。ならば敵の出方をうかがい、殺してくるようならイチかバチか換装して脱兎のごとく遁走。あるいは相討ち狙い。そのつもりだったのだろう。しかし予想に反し、殺しには来なかったため、使いどころを失ったという次第である。

 

 そこで藤田ことねがツッコんだ。

 

「ちょ、篠澤さん!? なに機密情報を敵さんに漏らしてんの!?」

「わたしを殺さないでくれたお礼のつもり。ダメだった?」

「いやダメでしょ! ……まぁ、あたしも……なんで殺さないのかなー? とは思っていたけれどもっ!!」

 

 十王星南は二拍手。

 一同の意識がそちらに向く。と同時に真城優が戻ってきた。

 

「それで? 狐面の忍者さん。お話を、聞かせてくれないかしら?」

「その前に場所を整えよう。焚き火でも起こさないか? かなりの長話になるだろうからな。お互いの思い出話とか始めかねん」

「っ……?」

 

 狐面の忍者は、そのお面を外す。

 その素顔を目にしたアイドル候補生たちは、その全てが驚愕の表情で絶句していた。

 

 次いで、絶叫。

 

 

 

『あ────────青髪の、プロデューサーぁーっ!!?!?!?!?!?!!?!』

 

          §

 

 近くの公園で木を切り、石を集め、丸太を椅子にして焚き火を熾す。

 まずは狐面の忍者、もとい、その正体は青髪のプロデューサー。

 

 もとい天道唯我。

 もといアルファが、自らの世界の成り立ちを語り聞かせていた。

 

「────というわけで『現世界』『裏世界』『合世界』の説明は以上だ。一言でまとめれば、そちらはトリオンが根幹を握る世界だが、こちらはそんな根幹が存在しない世界だ。つまり互いに異世界同士。それが偶然たまたま繋がっちまった。有り体に言えば並行世界。故に旅人さんは元の世界にお帰りください。二度と元の世界に帰れなくなっても知りませんよ! ってことです」

『……………………』

「おやおや疑心暗鬼と理解不能が多数。これは説得の骨が折れますねぇ~」

 

 元から多数の世界を股にかけることが常識の異世界人ならば、この世界もまた自分たちの世界(ワールドトリガー)の一つだ、と考えてしまうのは無理からぬこと。

 しかし聡明なる篠澤広は本質を捉えて問いかける。

 

「つまり、ここはトリオンで構成された裏界(アザーフッド)ではない?」

「はい。マザーAIの超能力で構成された裏世界(リバースワールド)です」

 

 そこで十王星南が突いた。

 

「だから、私たちは今ここにいる場所を裏界(アザーフッド)と呼んでいて、あなたが今ここにいる場所は裏世界(リバースワールド)と呼んでいる。それだけの違いじゃない……ということ?」

「はい。その通りです。これは『互いの文化が異なるのだから、国や世界の名称も異なって当たり前だ』『日本と呼ぶかジャパンと呼ぶかの違いだ』という話ではなく!!! そもそも『技術体系が異なるのだから別の世界だ』という話です」

 

 最後にアルファは、ここまで理解を深めたのならば一発で響く言葉を選ぶ。

 

「もっと言葉を尽くせば────あなたたちはトリオンを求めて、トリオンの存在しない異世界に来てしまいました。さて、どうしますか?」

 

 それに篠澤広は即答した。

 

「ここにいても、なんの意味もない。だから帰る」

「そういうことです。ご理解いただけて助かりました。さすが篠澤さんですね」

「……でもひとつ気になる。こっちの異世界では、わたしは何をしていたの?」

「ごくごく普通の女の子でしたよ。──現在はアイドルをやっています」

「あ、アイドル……!?」

 

 篠澤広は目を点にする。

 次いで恍惚とし始めた。

 

「ふふ……こっちの世界では軍人をやってて、そっちの世界ではアイドルをやってる……」

「どっちもままならないことでしょう。どの世界でも楽しそうで何よりです」

 

 既にアルファと篠澤広は意気投合。

 おいてけぼりを喰らう一同だが、ともあれ隊長格の十王星南は、一応の納得を得た。

 

「────迅が言っていたのは、こういうことだったのね……」

「え? どういうことですか? 会長?」

「ことね。みんな。私たちが裏界の遠征に行くと決まった時、迅が言ったのよ」

 

 ────裏界に行ってもなんの意味もない。そう上層部に言ったんだけど聞き入れてもらえなかった。その目で確認するまでは信じられないんだとさ。というわけで、まぁ、修行感覚で行ってきなよ! 結構強い奴がいるからさ!

 

「────って」

「えーっ! なんだそりゃー! それだとあたしら、マジで骨折り損のくたびれ儲けってやつじゃないですかーっ!!」

 

 そこでアルファが問いかける。

 

「ちなみに迅さんは、俺のこと知ってる感じでしたか?」

「……いいえ? 『名前も顔も知らないけど強い奴がいる』とだけ……」

「なるほど。いや、実は迅さんとは何度かお会いしたことがありましてね。もちろん全て初(・)対(・)面(・)でしたが」

『……??????』

 

 一同は首をひねる。何度も会っているのに初対面とはどういうことか。

 それについて篠澤広は言い当てる。

 

「トリオンのある異世界には何度も行ったことあるんだ。そのたびに違う世界線だった?」

「そういうことです。なので、このあとまた、別の世界のあなたたちが、またこの裏世界に訪れるかもしれません。そのたび私は、あらゆる手を尽くしてまずは信頼を得て、また同じ説明をして、お帰り願わなければならない。……まったく面倒な話ですよネ!」

「……あれ、その口ぶりだと……まさか……二回目?」

「今回で九回目です」

『────っ!!?』

「だから誰がどこに潜んでいるかもある程度見当がつく。攻撃隊が合流するより早く中距離支援隊に急襲を仕掛けることができたのは、つまりそういうわけです。なんせ花海姉妹に組まれたら、俺としてはゲームオーバーなんでネ! さすがに援軍を一人、呼ぶ必要性が生じるところだった」

『……』

 

 一同は目を丸くする。

 しかしアルファからすれば、これもヒーロー活動の一環だ。放置すれば遠征部隊はプチパレスを突き止めて、アルファの現世界に侵入してくるかもしれない。そうなれば合世界化が進むかもしれないし、まかり間違って世界崩壊の危機とやらになっても困る。

 また、彼女たちが侵入してきた結果、遠征部隊が元の世界に帰れなくなっても困る。そして行方知れずとなった遠征部隊を捜索するため、ボーダーが総出で裏世界に侵略を仕掛けてきても困る。ほかにも色々と困ることが盛りだくさん。そのため面倒でも、毎度毎度、ほぼ同じメンツと戦うしかない。たまに全く違うメンツとも戦うハメになる。

 

「そちらのガロプラやアフトクラトルにも言ってやってください。もう何度撃退したか……まぁトリオンが存在しない世界と分かれば、あっさり興味を失って帰っていただけるので助かりますが……その代わり地球人は、トリオンがなくとも資源は豊富と見て侵略してくる可能性がありますのでね。ボーダーはそんなことしてこないとは思いますが、一応ね? なんせ、ここで友好的に追い返さないと、本当にボーダーがトリオン以外の資源を求めて仕掛けてくるかもしれない。そのため最初は威嚇行動で強さを見せて、平和的な話し合いに持ち込み、こっちに手を出すとロクなことはない、ということを覚えてもらって、あなたたちには帰ってもらう必要があった。そんな感じっすね!」

 

 アルファは深々とため息をつく。

 それは暗に────こちらは単騎で複数を追い返したのだ。もしそちらが総力戦で来るなら、こちらも総力戦で叩きのめす────そんな意味が言外に含まれていると、一同は感じ取った。

 

「んじゃ、俺そろそろ家に帰って一息つきたいんで。本気で帰ってくれません?」

「うん。分かった。──星南隊長」

「──……ええ。さっそく遠征艇に戻って帰路に就くわ。一日で帰還できるから、その間に彼の話をレポートしないと。そして今のボスに報告ね。きっとボーダーの城戸司令や学園長も分かってくれるわ」

 

 そこでアルファは気になった。

 どうやら彼女たちのボスは、城戸司令や十王邦夫ではないらしい。

 

「ん? ひとつ聞いていいかな? あなたたちのボスって……だれっすか?」

 

 すると怒涛の返答が返ってきた。

 

「青のプロデューサー、あなたよ」「目の前にいるけど」「目の前のプロデューサーですけど?」「目の前にいるじゃんっ!」「あなただ、よ?」「目の前のプロデューサーですわぁ!」「実はセンパイとそっくりな人がボスなんです!」「いやー、あたしたち初星学園からの派遣隊員でさー」「私たちは元々、弟くんにプロデュースされてる隊員なんだけど……」「今は天道教官に師事して鍛えてもらっているのさ。これも学園プロデューサーの命令でね」「そういう訳よ。あなたも驚いたんじゃなくて?」「故にビックリしたぞ。瓜二つの天道ボスが現れたのだからな!」「ふふ……燐羽ちゃん。びっくりしましたね?」「そうね」「えっと……私は真城優って言うんですけど、今回は学園プロデューサーの指示でいきなり派遣された新人でして……天道ボスともまだ面通りが叶っておらず……今の話には、正直かなり、おいてけぼりなんですけど……」

 

 なぜか全員一斉に話し出すため誰が何を言っているのか分からない。だが、それほど興奮しているのだろう。

 アルファは呆れ果てる。

 

「なるほど……今まで俺が教官だった世界線は、いくつかありましたけど……さすがにボスのパターンは今回が初めてっすね……ちょっと話を聞かせてもらっても構いません? 向こうの世界では俺って、どういう経緯で対ネイバー組織を立ち上げたのでしょう?」

 

 それについて篠澤広が一息に答えた。

 

「わたしと果穂はアルファの恋人だから知ってる。──こっちの世界のアルファは、五歳の時にネイバーにさらわれて、二年から三年ほど八つのネイバーフッドで育った。そこで地獄みたいな経験をしたらしく、八歳の誕生日に地球へ帰還することができた。その時はまだボーダーは発足していなかったから、アルファはネイバーフッドから持ち帰ったトリガー技術やトリオン兵を駆使して、研究と開発を重ね、ひとりでネイバーから街を守ってきた。……やがて対ネイバー組織・283に所属する果穂と知り合って、さらに対ネイバー組織・初星学園に所属する篠澤広ことわたしとも知り合って、両方と技術提携を結んだ。そして三年前に三門市で発足したボーダーとも技術提携を結び、今回は四組織合同で────近界(ネイバーフッド)とは毛色の異なる『裏界(アザーフッド)の調査』を城戸司令から依頼された。という、あらすじ。……ふぅ」

「万事理解しました。本当に一息のうちの解説ありがとうございます。それでは────さようなら! また会わないように!」

 

 かくして初星学園遠征部隊は帰路に就く。

 黒いポータルが光って稲光と轟音を上げながら、元の世界に帰還していく。

 

 大手を振ってそれを見届けたアルファの脳内に、マザーAIがねぎらう言葉をかけた。

 

『アルファ様。ミッション達成です。本当にありがとうございました』

「ホントだぜ。お礼を言うくらいならオレンジをくれ!」

『承知しました。最高級のジュースを用立てております。甜花様やいろはちゃんが先に冷蔵庫を開けて飲んでしまわれる前に、急ぎ食堂に向かい、思う存分おくつろぎくださいませ』

 

          §

 





 あとがき


《花海咲季》
 トリオン量7/4 技量A
 メイントリガー:〔ハウンド〕〔FREE〕〔シールド〕〔FREE〕
  サブトリガー:〔アステロイド:拳銃型(ハンドガン)〕〔弧月〕〔シールド〕〔バッグワーム〕
 改造:‐
 特殊戦術:〔左利き逆手持ち弧月+アステロイド:拳銃型のCQC〕〔アステロイド:拳銃型+ハウンドの制圧射撃〕

・副作用(サイドエフェクト)
 〔早熟体質〕:特殊体質Bランク。あらゆる技術を早期に習熟可能。
 〔覚醒体質〕:特殊体質Cランク。デメリット系サイドエフェクトのためランクは下降。〔早熟体質〕の反作用であり、それは代償とも言うべき代物。覚醒時はトリオンを大幅に低減してしまう。具体的には、睡眠時の計測でトリオン量は「7」の値を示すが、覚醒時の計測でトリオン量は「4」の値を示す。ただし極めて限定的だがメリットといえる瞬間は存在しており、たとえば完全休養日における突然の防衛任務で寝ぼけながらの戦闘中、または覚醒状態を超えたゾーン状態に突入している際、トリオン量は一時的に「7以上」もしくは「7の倍数」の数値を叩き出し、例年にない最大戦果を挙げた実績有り。なお当の本人は自覚がない模様。

《月村手毬》
 トリオン量6 技量C
 メイントリガー:〔弧月〕〔旋空〕〔鉛弾(レッドバレット)〕〔シールド〕
  サブトリガー:〔バイパー:拳銃型〕〔ニュースボックス〕〔シールド〕〔バッグワーム〕
 標準搭載:〔燐羽語翻訳機:てまりインコ〕
 改造:‐
 特殊戦術:〔バイパーの弾道設計図AorBorC+鉛弾+旋空弧月の必殺or封殺or包囲斬撃〕〔バイパーの弾道設計図DorE+旋空弧月の鶴翼or牽制斬撃〕

《藤田ことね》
 トリオン量5(ぐんぐん成長中) 技量B
 メイントリガー:〔弧月〕〔スコーピオン〕〔シールド〕〔FREE〕
  サブトリガー:〔旋空〕〔バッグワーム〕〔シールド〕〔スコーピオン〕
 改造:〔メイントリガーのスコーピオンON/OFF時、メイントリガーの弧月のON/OFFが自動的に切り替わる。逆も然り〕〔サブトリガーの旋空ON/OFF時、旋空弧月可能+メイントリガーのスコーピオンのON/OFFが自動的に切り替わる。逆も然り〕(つまり弧月と旋空のON/OFFのみでスコーピオンが自動で起動する。逆も然り。トリガー選択の高速性を上げつつ選択ミスの確率を下げるタイプの改造)(もっと言うと旋空を使っていない間は、常にスコーピオンが体内に展開しており、トリオン供給機関や伝達脳を覆って守っている感じ)
 特殊戦術:〔弧月+ダブルスコーピオンの疑似三刀流・舞刃術(ブレード・ダンス)〕(トリオン消費が大きい戦法。短期決戦型のトリガー構成)

   /

《花海佑芽》
 トリオン量12(まだまだ成長途中) 技量D+(銃系のみ技量B)
 メイントリガー:〔アステロイド:突撃銃型〕〔アステロイド:突撃銃型〕〔シールド〕〔グラスホッパー〕
  サブトリガー:〔ハウンド〕〔メテオラ〕〔シールド〕〔バッグワーム〕
 改造:〔トリオンに匂いを付けたスタアメーカー〕(※一点もの。今回は装備しておらず篠澤広に預けている)
 特殊戦術:〔徹甲弾(ギムレット):突撃銃+ハウンドの単体制圧射撃〕
 今回の反省:「メテオラを抜いてスコーピオンを入れますっ! スコーピオンはまだヘタですっ! 練習しますっ!!」

・副作用(サイドエフェクト)
 〔晩成体質〕:特殊体質Bランク。あらゆる技術の習得が致命的に遅い。その代わり大器晩成型で、伸び代はトリオン量によるとされる。※伸び代に関しては、若干眉唾の研究報告。
 〔強化嗅覚〕:強化五感Cランク。

《篠澤広》
 トリオン量9 技量A
 メイントリガー:〔バイパー〕〔メテオラ〕〔エスクード〕〔匂い付きスタアメーカー〕
  サブトリガー:〔バイパー〕〔ハウンド〕〔FREE〕〔バッグワーム〕
 改造:〔バイパーの威力・弾速の増加/射程低減〕〔エスクードの瞬間生成量増加〕
 特殊戦術:〔バイパー両攻撃(フルアタック)〕〔エスクード要塞乱立〕
‬
・副作用(サイドエフェクト)
 〔虚弱体質〕:特殊体質Cランク。※デメリット系サイドエフェクトのためランクは下降。自身のトリオン関連すべて脆弱化する。自身のトリオンで換装したトリオン体は耐久性や敏捷性などが著しく低下し、自身のトリオンで起動したトリガーは全性能が著しく低下する。たとえば、エスクードの防御性能はシールドと同等になる。バイパーの攻撃性能は通常のバイパーの約半分となる。ちなみに匂い付きスタアメーカーの臭力も半分以下となるが、花海佑芽の強化嗅覚はそれでも嗅ぎつけるため問題なし。

《倉本千奈》
 トリオン量10 技量C+
 メイントリガー:〔アステロイド〕〔ハウンド〕〔シールド〕〔FREE〕
  サブトリガー:〔アステロイド〕〔メテオラ〕〔シールド〕〔バッグワーム〕
 改造:‐
 特殊戦術:〔合成弾:ギムレット〕

   /

《葛城リーリヤ》
 トリオン量4 技量C
 メイントリガー:〔レイガスト〕〔スラスター〕〔シールド〕〔FREE〕
  サブトリガー:〔FREE〕〔FREE〕〔シールド〕〔バッグワーム〕
 改造:‐
 特殊戦術:‐

《紫雲清夏》
 トリオン量8 技量B
 メイントリガー:〔スコーピオン〕〔弧月〕〔シールド〕〔カメレオン〕
  サブトリガー:〔スコーピオン〕〔旋空〕〔シールド〕〔バッグワーム〕
 改造:〔旋空〕〔幻踊弧月〕(二つのトリガーを一つに合体させた複合トリガー。※最近開発に成功した最も性能の良い一点もの。よく藤田ことねと取り合っている。ただし、まだ習熟していないため実地任務(本話)では使わず)〔旋空弧月可能〕(幻踊弧月の状態で旋空が可能。先端を変形させてから旋空すると、受け手からすればわけわからん軌道で斬撃が伸びてくるため、別名:変幻弧月とも)
 特殊戦術:〔マンティス〕〔モールクロー〕〔ブランチブレード〕〔弧月+スコーピオンの変則二刀流〕

   /

《姫崎莉波》
 トリオン量6 技量B
 メイントリガー:〔アステロイド:拳銃型〕〔テレポーター〕〔シールド〕〔FREE〕
  サブトリガー:〔スコーピオン〕〔鉛弾〕〔シールド〕〔バッグワーム〕
 改造:〔拳銃:連射特化〕〔鉛弾:煙幕内蔵型〕
 特殊戦術:〔アステロイド:拳銃型+スコーピオンの体内刺突奇襲〕〔テレポート十字砲火〕〔アステロイド:拳銃型+鉛弾:煙幕内蔵型+スコーピオン:鉛弾を斬って煙幕を張る〕

《有村麻央》
 トリオン量6 技量B
 メイントリガー:〔レイガスト〕〔スラスター〕〔シールド〕〔グラスホッパー〕
  サブトリガー:〔メテオラ〕〔FREE〕〔シールド〕〔バッグワーム〕
 改造:‐
 特殊戦術:〔庇う相方にグラスホッパー:自分ではなくレイガスト後方の味方にグラスホッパーを踏ませて突撃支援〕〔スラスター+グラスホッパー:とにかくスピードに目覚めた少年系王子心〕〔メテオラ+グラスホッパー:パワー×スピード=超パワーの暴力を具現化した少年系王子心の隠し玉。グラスホッパーでメテオラを反射加速させて軌道変化をもたらす〕(ただしグラスホッパーと弾トリガーは干渉して消滅してしまう仕様を……純粋無垢な王子は、まだ知らない)(知った後は、グラスホッパーと干渉しても相殺しないように改造する可能性がある)

《十王星南》
 トリオン量10 技量A
 メイントリガー:〔アステロイド:突撃銃型〕〔アステロイド:突撃銃型〕〔シールド〕〔テレポーター〕
  サブトリガー:〔ハウンド〕〔スコーピオン〕〔シールド〕〔バッグワーム〕
 改造:‐
 特殊戦術:〔ギムレット:突撃銃型+ハウンドの制圧射撃〕〔テレポート十字砲火〕

・副作用(サイドエフェクト)
 〔才能視〕:超感覚Aランク。対象の現行潜在能力における限界値を見抜く。

《雨夜燕》 技量B
 トリオン量7
 メイントリガー:〔弧月〕〔グラスホッパー〕〔シールド〕〔ニュースボックス〕
  サブトリガー:〔旋空〕〔グラスホッパー〕〔シールド〕〔バッグワーム〕
 改造:‐
 特殊戦術:〔旋空弧月+ダブルグラスホッパーの超高機動立体斬撃殺法〕(まだ開発途中)

   /

《秦谷美鈴》
 トリオン量7 技量A-(大抵D~E)
 メイントリガー:〔弧月〕〔旋空〕〔シールド〕〔スパイダー〕
  サブトリガー:〔FREE〕〔強化レーダー〕〔シールド〕〔バッグワーム〕
 改造:〔強化レーダー:他レーダー連携型〕(今回は遠征艇の強化レーダーと接続して連携)
 特殊戦術:‐

・副作用(サイドエフェクト)
 〔睡魔体質〕:特殊体質ランクC。デメリット系サイドエフェクトのためランクは下降。とにかく眠くなる体質。日常生活が大変。トリオン体でも眠くなるふしぎ。

《賀陽燐羽》
 トリオン量8 技量A
 メイントリガー:〔スコーピオン〕〔シールド〕〔エスクード〕〔スイッチボックス〕
  サブトリガー:〔バッグワームタグ〕〔‐‐‐‐〕〔‐‐‐‐〕〔‐‐‐‐〕
 改造:‐
 特殊戦術:〔スイッチボックス+エスクード:罠の迷宮〕

《真城優》
 トリオン量5 技量C
 メイントリガー:〔イーグレット〕〔スタアメーカー〕〔エスクード〕〔ニュースボックス〕
  サブトリガー:〔バッグワームタグ〕〔‐‐‐‐〕〔‐‐‐‐〕〔‐‐‐‐〕
 改造:‐
 特殊戦術:‐

   /

《狐面の男α》
 蓄電変換トリオン量5 技量B
 メイントリガー:〔弧月〕〔旋空〕〔隠套(バッグワーム)〕〔欺信(ダミービーコン)〕
  サブトリガー:〔蠍刀(スコーピオン)〕〔蜘糸(スパイダー)〕〔蝗板(グラスホッパー)〕〔隠蜥(カメレオン)〕
 改造:〔旋空ON時、隠套自動解除〕〔盗聴機能付き欺信。欺信と盗聴は別途起動〕〔蝗板ON時、隠蜥自動起動。自動化は戦闘中にON/OFF可〕
 特殊戦術:〔土竜爪(モールクロー)→旋空弧月〕〔蝗板→隠蜥〕〔トリオン消費最小限殺法〕

《遠望盗聴用トリオン兵モノキュル》
 蓄電変換トリオン量4 隠密5 射程10 持続5
 機能:〔長距離遠望:イーグレット級〕〔長距離盗聴〕〔擬態:航空障害灯〕
 外観:ビル屋上で光る赤いランプに擬態した、単眼型トリオン兵。視界内の全ての音声を盗聴できるが、一度に盗聴できる方角は限定的。その代わり指向性が強く、どんな遠方でも微かな音まで拾い上げる。

《通信妨害用トリオン兵コーダッチ》
 蓄電変換トリオン量3 隠密5 射程5 持続5
 機能:〔トリオンセンサー妨害〕〔電波センサー妨害〕〔熱センサー妨害〕〔擬態:樹木〕
 外観:並木通りや公園の木立に紛れ込む樹木型トリオン兵。命令を受信すると強力なジャミングを発する。

《鋼線陣構築用トリオン兵グーモ》
 蓄電変換トリオン量1 隠密0 射程4 持続1
 機能:〔光学迷彩鋼線射出:スパイダー級〕〔電波探査無効:バッグワームタグ級〕〔休眠モード:トリオン消費抑制〕
 外観:全長0.1mの多脚型トリオン兵。光を反射しにくい体色で動き回り、ビルの壁面に張り付いて人知れず光学迷彩型スパイダーを射出。蜘蛛の巣を一つ作るとちょうどトリオンが切れるため、あとは跡形もなくトリオン体が崩れ去る。環境にやさしいタイプの使い捨てトリオン兵。
 補足:ボーダー製トリガーであれば、トリオン体の標準搭載レーダーの精度を高いレベルまで引き上げる・強化レーダー等の索敵トリガーを使う、などしてはじめて探知できるくらいの小型ぶり。にくいやつ。

  /

・通信用トリガー〔ニュースボックス〕────オペレーティングシステム搭載の箱型ノートパソコンを生成する。ボーダーのオペレーターが使用できる、全ての機能と機器が搭載されている。スイッチボックス同様、トリオン消費は大きいが、かなりべんりなしろもの。

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