【小宮果穂とちょいワル男子のオトナ甘くてコドモ苦い】ぷらすえっくす! 作:形のない者
まえがき
鳥について調べながら書きました。
大いに間違っているかもなので鵜呑みにしないでください。ウッウだけに。
夏休み。朝方のアルファ邸。
小宮果穂は、夏の自由研究について悩んでいた。
それについてアルファに相談。すると思いも寄らない返答が返ってくる。
「バードウォッチングはどうだ? つっても俺が小六の頃にやった自由研究なんだけどさ。ま、そこそこ楽しいと思うぜ?」
「バード……ウォッチング……ですかぁ!?」
「やるか? ならまずは準備が必要だな。モールにでも行くか~」
「はいっ!」
§
昼前のショッピングモール・衣服店。
小宮果穂は試着室で装備を整えていく。
「紅白のキャップ、装っ着! 真紅のサングラス、装っ着!」
帽子はメッシュキャップ。通気性抜群で蒸れにくく、真夏の炎天下における長時間の観察に向く。
眼鏡は偏光サングラス。フレーム色はレッド系。レンズ色はグレー系のため色再現性が高く、鳥ポケモンの羽毛が肉眼に近い見え方となる。さらに偏光は、水辺や逆光の反射を軽減。サングラスは直射日光や紫外線から目を保護。どちらも眩しさを抑えることで眼精疲労を軽減し、集中力を維持する効果が期待できる。
「ラッシュガード風Tシャツ、装っ着! ハーフパンツ、装っ着!」
トップスは紅白の半袖ラッシュガード風Tシャツ。それはUVカットかつ速乾素材。袖や脇に豆柴の足跡が刺繍されている。
ボトムスは水色のハーフパンツ。それは虫除け加工されており、ポケットは多め。動きやすく双眼鏡や小型図鑑を入れやすい。
「トレッキングシューズ、装っ着! リュックサック、装っ着!」
靴は、軽量トレッキングシューズ。赤いシューレースの差し色が特徴的。
背中には、赤色の小型リュック。黒や黄色がアクセントで入っている。サイドポケットに双眼鏡と水筒入り。
「アルファさん! いますかぁ?」
「おう。いるぞー」
ならばと小宮果穂は、試着室のカーテンを「バサッ……!」と開けて、ヒーローポーズを取った。
「変っ身! ヒーローアイドル・レッド! 小宮果穂! 第二形態バードウォッチング・モード!!」
「おー。カッコイイし、カワイイぞ!」
「えへへっ……!」
ほかにも日焼け止めや虫よけスプレー、数日分の飲食物などを購入した。
§
アルファはモンスターボールを取り出す。
「出てこい、ブロロローム。フワライド。フロストロトム」
「ブロロー!」
「フワワーン!」
「フロットー!」
「今日は休暇だ。バードウォッチングに出かける。一緒に来てくれるか?」
三匹はもちろんだと、にこやかにうなずく。
「果穂、乗れ」
「はいっ!」
アルファは運転免許を取得できない年齢だが、ブロロロームが自ら走ってくれるため免許は不要である。
冷蔵庫に憑依したロトムの中に、購入した飲食物を収納。ブロロロームの後部座席に座らせる。
フワライドは長い触手をブロロロームの体に巻きつけて、自ら気球のように浮上を始めた。
「わぁ……! 空を飛んでますーっ!」
「はは。これで鳥ポケモンと出会いやすくなるし、観察もしやすくなる。──っと、さっそく見つけたぞ。果穂、用意はいいな?」
「……! はいっ!」
小宮果穂は、スマホと双眼鏡、筆箱とクレヨン、自由帳を挟んだスケッチブックを開く。
スマホには、動物の野鳥図鑑とポケモン図鑑のアプリがインストールされている。
双眼鏡は遠くを見るため。
筆箱は自由帳に知識を書くため。
クレヨンはスケッチブックに鳥ポケモンを描くため。
「パトォーッ!」
『パトォー!!』
『ポッポルー』
マメパト。こばとポケモン。その群れが公園に降り立っている。
動物の
「ハトとマメパトが、仲良く食べてます……!」
「ドバトとマメパトだな。どちらも群れで食べる習性があるから平和に共存できている。ただし……」
アルファは時機を待つ。果穂の目の前で、実際にその出来事が起きない限り、余計な解説はしないよう努めている。
小宮果穂は双眼鏡を持って観察中。そこで一羽のハトが、周囲のハトとマメパトを小突いて軽い争いを始めた。
「……あっ! あそこのハトが、周りを攻撃してます! どうしてでしょう……?」
「あんなに仲良く食べてたのになぁ……なんでだと思う?」
「う~ん……」
小宮果穂は腕を組んで悩む。なかなか思いつかない様子。
しかし思考を回したならば教えても良いだろうと、アルファは解説する。
「ドバトは餌場で順位争いをする文化を持つ。餌場が狭かったり、餌の量が少ないと、くちばしでつつき合うんだ。なぜかは知らない。もしかしたら、おれが先に食べるぞ、ぼくが一番偉いんだぞ、と競っているのかもしれない」
「ほぉ~……」
「一方、マメパトは人懐っこくて温厚な気質だから、あまり反撃しない。本気で攻撃されてるわけでもないからな。だからドバト側が慣れてくれば、まぁまぁ平和的に共存は可能だ。もちろん……」
突として、ドバトにつつかれた一羽の大柄なマメパトの側頭部に、怒りの筋が浮かび上がる。反撃のつつく攻撃。“わざ”ではない。ただの“ふつうのつつく”らしい。
軽く小突かれたドバトは順位争いに負けて逃げ出した。おかげで、今までつつかれていたドバトとマメパトの集団は、新たに老人が振りまいた豊富な餌を分け合うことで仲良く食べ始める。
一方、追い出されたドバトも、群れが気づいていない食べ残しにありつくことで、一羽だけ少し遠く、黙々と餌を食べ始める。
すると、そのドバトの近くに、先ほど勝利した大柄なマメパトが近寄った。つい数秒前にケンカしたことをお互い忘れているのか、食べ残しを分け合い始めた。
「わぁ……! スゴいですーっ! 大きなマメパトが、『ケンカしちゃダメだよ』って、くちばしでつつきまくるハトを叱りました! おかげでみんな仲良く食べています! そしたら大きなマメパトが、一緒に食べようって思ったのかな……? 二羽とも仲直りして、一緒に食べていますっ! あの大きなマメパトは、誰も見捨てない! まるでヒーローみたいですーっ!!」
小宮果穂は大はしゃぎ。
アルファは純粋な眩しさのあまり、これからどうすればよいのか、自嘲気味に苦笑する。
(────果穂は、本当に純粋だなぁ……さて、どう解説したものか……ロマンを持つのは素晴らしいことだが、リアルを知るのも大切なことだ。それに果穂の言う通り、本当に仲直りしたのかもしれない。それはあのドバトとマメパトしか分からないことだ。つまり、その可能性は否定せず、さりとてもうひとつの可能性も提示しよう)
「果穂。ポケモン図鑑を開け。マメパトについて調べてみろ」
「はいっ!」
小宮果穂はスマホを開く。ズームしてマメパトをカメラに収める。するとスマホのAIがマメパトを認識して図鑑説明を読み上げた。
『マメパト。こばとポケモン。エサをまくと何百匹も集まってくるので注意。従順で真面目な性格だが、記憶力や理解力は低い。むずかしい指示はすぐ忘れる』
「とまぁ……もしかしたら大きなマメパトは、仲直りをしに行ったんじゃなくて、単にケンカしたことをすぐに忘れた可能性も存在する。それはドバトの方も同じだったかもしれない」
「! そうだったんですか……!」
「でも俺たちは、ドバトとマメパトの頭の中は覗けない。もしかしたら果穂の言う通り、覚えているうちに仲直りできたのかもしれない。──……そういう、生態的な事実と、果穂が思った感想を合わせて書くと、とても果穂らしい研究ノートになるかもな。個性が出るから、非常にイイと思うぞ?」
「!! それじゃあ、あたしも忘れないうちに……!!」
さっそく小宮果穂は自由帳に、見知ったことを記録していく。
それも終わればスケッチブックを開いて、ドバトとマメパトの群れを描く。
最後は、大きなマメパトとおこりんぼのドバトのつつき合いを描いたあと、その横に二羽が隣り合ってエサを食べる絵を描いて、ひとまずの完成を見る。余白には、自由帳に書いた記録を、あとで別の紙で添削して、セロハンで貼っつけて載せるつもりである。そうすればスケッチブックそのものが、記録と絵を合わせた一枚の研究ノート完成版になる予定だ。
§
ブロロロームとフワライドによる多気筒気球は、ふわふわとオフィスビル群の中層を渡っていく。
やがてアルファのマンションが見えてくる。タコ型ドームの公園も見えてきた。
「あっ! また公園にハトやマメパトがいます! 少しだけどヤヤコマも! エサは……自分で探してるみたいです!」
「そうなると……フワライド、上空を見たい。俺のマンションの屋上に着地して、真上を開いてくれ」
「フワワーン~」
高層マンションの屋上に着地。フワライドは周辺を浮遊していく。
「さて、果穂。双眼鏡でよく観察するんだ」
「はい!」
「────上空を」
「……えっ?」
「太陽は見ないように気をつけろよ。そしてマメパトたちと交互に見比べてみろ」
それを聞いたフワライドは、小宮果穂の視界からちょうど太陽が隠れる位置に浮遊する。命令していないため自発的な行動だ。訓練の成果で、その手の救援行動が染み付いているのだろう。アルファは「ありがとなー!」と感謝する。
「上空……?」
小宮果穂は見上げる。そこには赤っぽい鳥ポケモンが飛んでいた。すかさずポケモン図鑑で確認する。
『ヤヤコマ。コマドリポケモン。人懐っこい性格。美しいさえずりを持ち、尻尾を振る動きで仲間に合図を送る。興奮すると体温が二倍まで上がる』
鳩やマメパトは地面からエサを探している。バサバサと翼をはためかせて土砂を払い、虫やパン屑を舞い上げる。するとビル街の上空まで虫は飛行して逃げるが、それをヤヤコマがキャッチして捕食する。
「今の見えたか?」
「? いえ……」
さすがに羽虫は肉眼では捉えきれない。高解像度のスローモーションカメラなどが欲しいところだ。しかしそんなものは手持ちにない。
だがアルファは、こんなこともあろうかと。小宮果穂のリュックにドデカバシカメラを入れておいた。それを取り出して、もう一度同じことが起きるまで待つ。そして起きた。連射。今度は確実に撮影する。
「よし撮れた。果穂、これ見てみろ。そんで次はお前が撮れ」
「はい!」
「……今、ハトやマメパトが虫を舞い上げたろ? で、その虫は上空まで逃げたけど……それをヤヤコマが捕まえた」
ドデカバシカメラの連射写真をまじまじと見つめる小宮果穂は、アルファの言う通りであることに心底おどろく。
「──……っ!! ほ、ほんとですーっ! ──でもこのカメラ、スゴいです! なんであんなに遠くの小さな虫を、ちゃんと撮れるんですかぁ……!?」
「ドデカバシは遠くの獲物を正確に視認できる鋭い視力を持つ。それを研究して作られたカメラだからな。まさにバードウォッチングには最適のカメラってわけだ。ちなみに十万円した」
「じゅ……っ!?」
「これでも最安なんだぜ? 果穂のために奮発したんだ。使いこなしてくれよ。欲しかったらくれてやる」
「──……は、はいっ……!」
ちなみに今回のコーディネートもアルファが支払っている。そのほかの道具や飲食物もアルファ払いだ。どうもアルファは貢ぎ癖がある。かつて小宮果穂に(玩具の宝石と言い張って本物の宝石の)アクセサリーをプレゼントした時からその兆候はあったが……それはともかく。
小宮果穂は双眼鏡で公園を集中観察しているが、アルファはその反対側の空を見上げていた。
そこにはオオスバメとスバメの群れが飛んできている。別の方角からはウォーグルも飛んできていた。
「果穂。あれ見ろ。オオスバメとウォーグルだ」
「!」
「そんで上空のヤヤコマを観察しろ。そいつが鳴いたらすぐに公園を観察だ」
「……!」
ヤヤコマは、接近する猛禽類──オオスバメやウォーグル──を目撃。ちなみにオオスバメは猛禽類的な狩猟方法を取るため、ヤヤコマからすれば猛禽類となんら変わらない脅威である。
そしてヤヤコマは天敵の接近に際して興奮。体内が発熱して高温となり、周辺に微かな
「コマァーッ!!」
『────ッッ!!!!!』
地上でエサを探していたヤヤコマの群れは、警告音を聴いて一斉に興奮。体内が発熱する。高温となり周囲に陽炎が生じた。
鳩やマメパトの群れもまた、ヤヤコマの鳴き声を聴いて警戒態勢に移行。特に鳩は視力・聴覚ともに優れているため、ヤヤコマの体表に生じる陽炎──すなわち紫外線や微妙な空気の揺らぎ──を目にして、異変を察知。いつでも飛び立つ準備を始める。
そして一斉に、ヤヤコマが飛び立った。バサバサと赤い鳥の群れが曲線を描いて舞い上がる。それに合わせて、鳩やマメパトも『何かが起きたのだ』と判断。一羽が飛び立つと他の鳥も飛び立つ習性があるため、実際にどのような危険が迫っているのかは理解できずともとにかく飛び立つ。
「わわ……っ!?」
小宮果穂の眼前に、大量のヤヤコマとマメパトと鳩が続く。鳥の群れという名の壁が地上から連綿とせり上がる凄まじさを感じてならない。なお飛行速度は、動物よりポケモンの方がはるかに上だ。
「オースバーッ!」
「ウォーーグッ!」
オオスバメとウォーグルは、小鳥ポケモンの群れを追いかける。
天敵二匹に挟み込まれた鳥の群れは、必死に鳴き声を上げながら旋回して逃げ場を探す。
オオスバメ率いるスバメの突進わざ。それに当たったマメパトや鳩が墜落。すかさずオオスバメの急降下。獲物を咥えて飛び去っていく。スバメたちは群れの激突を避けながら、飛び去った親分たるオオスバメを追いかける。
一方のウォーグルは、勇敢にも群れの中に突撃。すべからく逃げられていくが、一部のヤヤコマたちはニトロチャージわざを一斉に使う。ウォーグルの体に火傷と切り傷が付いていくが、ウォーグルは負けじとばかぢからわざを繰り出した。二匹のヤヤコマを撃ち落とし、くちばしに咥えて飛び去る。巣で待つ子供のワシボンたちに届けるのだろう。
そして小鳥の群れは、遠く遠く飛び去っていった。
『…………』
あっという間の出来事だった。
またたく間に起きた出来事だった。
「さて、果穂。解説いるか?」
「! はいっ!」
「まず『
小宮果穂は自由帳にメモを取りながら「ふんふん……」と真剣に耳を傾ける。
「さて、マメパトの群れが地面から獲物を探す流れで、たまたまか狙ってかは知らないが、虫やパン屑などのエサを舞い上げる。そして上層のヤヤコマが、それを捕食する。代わりに上層のヤヤコマは、上空から天敵の接近を察知して警戒音を落とす。そうすることで群れ全体の安全度と
「サイジ……」
「エサを摂る効率って意味だ。──では、この関係は、互いに得をしていると思うか?」
「……────はいっ! ヤヤコマが公園で食べている鳥たちを守ってくれているから、安心してエサを食べられるし……食べられたくない虫は空に逃げるから、それをヤヤコマが食べることができますっ! お互いに得していますーっ!」
「では、つまり、この関係は、なんと言うべきか?」
小宮果穂は大きく息を吸い込んで、決めゼリフのように吐き出す。
「────『相利共生』……ですっっ!!」
§
昼頃。繁華街の真上を浮遊中。
アルファと小宮果穂は、フロストロトムの冷蔵庫から食べ物を取り出す。アルファはヒートロトムを繰り出して、冷凍食品をレンジでチン。あったか弁当を『はふはふ』と熱いまま、『ふーふー』と冷まして、美味しく食べる。
そしてアルファはポケモンフーズを取り出して、四匹のポケモンに食べさせた。
「──お? フワライド、あそこの路地裏が見える位置に着地してくれ」
「フワワ~ン」
繁華街の小ビルの屋上に着地する。
小宮果穂は双眼鏡で、薄暗い路地裏を覗き見た。
「ヤミー!」
「ニャアースッ!」
そこでは、野生のヤミカラスとニャースが仁義なき戦いを繰り広げていた。
「あっ! ヤミカラスとニャースがケンカしてます!」
「飲食店の路地裏のゴミ箱に捨てられた残飯を漁りに来たんだな。そこで出くわしちまったんだ。たぶん縄張り争いかな?」
ヤミカラスは特性の強運が発動したのか、ニャースのみだれひっかきわざを物ともせず、つばさでうつわざで突き飛ばす。ニャースは情けない鳴き声を上げて逃げ出した。
「ヤミカラスが勝ちました!」
ヤミカラスは天地左右を警戒。器用にくちばしで青いゴミ箱のフタを開けて、ヘリをカギ爪で引っ掛けて倒す。地面に散らばった残飯。それをついばむ。やがて満腹になったのか、敵を警戒して早めに逃げようと思ったのか、ヤミカラスは残飯を残して飛び去った。
興奮する小宮果穂はアルファの横顔を見やる。
「……アルファさん!」
「まだだ。観察を続けろ」
「!」
小宮果穂は双眼鏡で見直す。
すると残飯の周囲に数匹のポッポが集まってきた。ヤミカラスのおこぼれに預かって腹を膨らませている。
「……!」
「さて、お次は
「ヘンリキョウセイ」
「どちらか一方が得をして、もう一方は損も得もしないって意味だ。今回の件に当てはめて、ちょっと考えてみろ。誰が得をして、誰が得も損もしなかった?」
小宮果穂は数瞬考える。ピコンとアホ毛が立って閃いた。
「ポッポが得をしました! ヤミカラスは……残飯をゆっくり食べて満足したから帰ったんだろうし、ポッポからなにかされたわけじゃないので……損も得もしてないと思います! ──ニャースには襲われちゃったけど!」
「はは、そうだな。この片利共生は、あくまでヤミカラスとポッポの、お互いの関係を表した話だ。ニャースは関係ない。もしこれにニャースの件が加わると、まったく別の話になる。単なる生存競争や生態系の話だな。そのためニャースを除くことで、この場合の片利共生の話は成立する。つまり主役はヤミカラスとポッポってわけだ」
「……じゃあ、バードウォッチングだから……ニャースの話は書かないほうがいいですか?」
「そこは果穂の好きにしろ。……ただし、見たものをそのまま記録するのが研究だろう? 片利共生の話にニャースは関係ないってだけだ。生態系の話をしたいなら、ニャースでもなんでも出せばいい。たとえば、ヤミカラスとニャースと、また別のポケモン同士で縄張り争いとかあるかもしれない。そういうのも想像してみると面白そうだ。題して『路地裏の決闘ポケモンたち』……とかな!」
「わぁ……! ──はいっ! ニャースについても書きたいので、鳥ポケモン以外のことでも、ちょっと考えてみますーっ!」
「そうなると、今年の果穂の夏の自由研究は……超大作になりそうだな!」
「……っ!! 超・大・作……!」
小宮果穂の瞳は、しいたけの形のようにキラキラと光り始めていた。
§
夕方。
気づけば都心部まで降りてきていた。フワライドは川に沿って海側に向かう。
その道中、アルファは背もたれを倒して仰向け。足を組み、うたた寝していた。
一方、双眼鏡を覗き込む小宮果穂は「あっ!」と声を上げる。
「アルファさん! あそこの川! たくさんの鳥ポケモンがいます!」
「どれ……」
都会の小川。蛇のようにくねくねと続く。やけにきれいで、陽の光に反射してキラキラと輝く。
その両端に小道。管理用の通路である。垂直の壁はねずみ色で、むき出しのコンクリートがそそり立つ。その上には柵があり、並木が植えられて、遊歩道が存在する。
本来、業者以外は立ち入り禁止の水路。地上の並木通りの樹木から枝がしなだれかかり、通路の頭上にかかる。シダ植物などもコンクリートの壁に繁茂しており、大量の羽虫が飛び交っている。
それを食べるために訪れたのか、大量の小鳥ポケモンが集っていた。
ポッポにマメパト、スバメにヤヤコマなど。
一方、樹木の天辺にはムクホークが座っていた。上空と周囲を常に警戒している。
ムクホークは食事を取らないらしく、小鳥たちは虫を食い尽くす勢いで食べていた。
「……あのムクホークは、なんでみんなといっしょに食べないんでしょう……?」
「さて、なんでだろなぁ……?」
小宮果穂は首をかしげる。ポケモン図鑑にムクホークをかざす。
『ムクホーク。もうきんポケモン。群れから離れて一匹で生きていく。自分の体が傷つこうとも攻撃をやめない』
その時、ムクホークは首を伸ばして鷹の目となった。
遠方からアーマーガアの襲来を目視。
「ムクホォーーーーーークッ!!」
『……ッッ!!!!』
ムクホークは威嚇のため鋭い鳴き声を発する。それに呼応して小鳥ポケモンたちが一斉に警戒態勢に入った。
ムクホークが大きな翼を広げて飛び立つ。向かってくるアーマーガアは特性いかく持ちのため攻撃意欲が減退したが、こちらも腹を空かせている。ここは意を決して羽の一部を鋼に変え、攻撃開始。
インファイトわざとはがねのつばさわざの激突。
次の瞬間、小鳥ポケモンたちが一斉に飛び上がり、ムクホークの援護として甲高い鳴き声を上げ始めた。アーマーガアの後方や側面から、数に物を言わせた威嚇を繰り返す。
「ガラァーッ!?」
とんでもない数の小鳥ポケモンたちの鳴き声は、耳を塞ぎたくなるほどのけたたましさとなって町の一角を騒がせる。
これに面食らったアーマーガアは、再び突撃してきたムクホークに背中を見せて逃げおおせる。
敵の撤退を確認したムクホークは、悠然と定位置に戻った。樹木の上で羽を休める。
そして小鳥ポケモンたちも、わらわらと定位置に戻った。水路の上を飛んで水中の虫を食べたり、通路の上を飛んで植物の周りを飛び回る羽虫を食べたりする。
その一部始終を目撃した小宮果穂は、瞳を輝かせつつ、純粋な感想を口にした。
「わぁ……! スッゴくスゴいですーっ!! あれって、ムクホークがみんなを守ってたってことですよね!? ヒーローみたいですーっ!」
「…………」
アルファは苦笑を隠す。世の中は善意だけでは回りにくい。
しかし研究ならば真実を伝える必要がある。それが善意説を否定する根拠にはならないため、きっと彼女のロマンを潰すことにはならないだろう、と判断して伝える。それはそれとして、多少の気まずさや後ろ髪を引かれる思いはあった。
「……果穂。解説するか?」
「はいっ!」
「まず、今のは『モビング』と言う。それによって『捕食圧』を低下させたんだ」
「……モビング。ホ食圧……」
「まずムクホークは、おそらくこのあたりを縄張りとしている。そのためムクホークは、アーマーガアという外敵を見つけて、それを追い払おうとした。ここまでは予想だけど、これを前提として話す。いいな?」
「はいっ!」
「一方、小鳥ポケモンたちは、自分たちより強いアーマーガアに襲われたらたまったものじゃない。そこで、群れを作らないムクホークの習性を利用したのか、はたまた偶然なのか。ともあれムクホークは、自分ひとりで戦う戦士の鳥ポケモンだ。そのため真っ先に外敵へ立ち向かっていく。すると小鳥ポケモンたちは、その外敵に狙われるリスクが低くなる。……わかるか?」
「えっと……はい! ムクホークとアーマーガアが戦っているあいだは、小鳥ポケモンたちは安全ってことですよね!」
「その通りだ。しかし小鳥ポケモンたちは、そこでムクホークが負けてしまうと非常に困る。そのため加勢するんだ。ムクホークがそれを望んだのか、望んでいないのかに関わらず、自分たちの安全を守るために鳴き声をあげたり、時には突撃する。そうすると、外敵は多勢に無勢に驚いて、逃げていく。というわけだ」
「なるほど……!」
「さて、この『小型鳥が捕食者に対して集団で威嚇する行動』を『モビング』と言う。そして『捕食者が与える脅威度の強さ』を『捕食圧』と言う。この言葉を使って、さっきの状況を説明してみろ」
小宮果穂はあごに手を置いて考える。
「えっと……小型鳥ポケモンたちは、モビングをすることで、アーマーガアを追い払いました! そしてムクホークと小型鳥ポケモンたちがいっしょに追い払ったから、アーマーガアが与えるホ食圧は、弱くなりましたー!」
「そういうことになる。そして、これが分かることで、ここに関係性の合理化が見える」
「……『関係性の合理化』……」
「つまり、ムクホークは自分の縄張りや採餌場を守るために行動しているだけで、特定の小型鳥を助ける意図はないんだ。群れから離れて生きる習性があるため、ほかの弱い小型鳥ポケモンは眼中にない。しかし結果的に、アーマーガアを追い払う行為が、他種を助けることになっている。それを知ってか知らずか、小型鳥ポケモンたちは利用している、あるいは恩恵を受けている。これを『
「……! そうだったんですか……!」
小宮果穂は心の底から感心する。
一方のアルファはバツが悪そうに後頭部をかいた。
「……なんか、ごめんな」
「え?」
「ヒーローみたいって喜んでたのに……冷めるようなこと言っちまって」
「……! い、いえっ……! ……──その、あたし……ちゃんと、本当のこと、知りたいですから……! だから、気にしないでくださいっ!」
「……! ──そうだな。ちゃんと研究したいんだもんな。じゃ、この調子で行くか」
「! ……はいっ!」
それはそれとしてアルファは、こういう時のフォローを欠かさない。
ヒーローを志す者として、掛けるべき言葉がないという状況は避けたい。それは小宮果穂を泣かせてしまった時から心得ていることである。
「でも、ムクホークの心の中までは分からない」
「!」
「もしかしたら果穂が思ったように、あのムクホークは『せいぎのこころ』を持っていて、小型鳥ポケモンたちを守ろうとしたのかもしれない。──果穂のおかげで、俺もその手の可能性に気づかされたよ」
「……! ほんとですか……? なら、うれしいですっ!」
小宮果穂は、樹木の上で威厳を漂わせるムクホークを眺める。
そして、ぽつりとつぶやいた。
「────……ほんとに、そうだったらいいなぁ……」
あの孤高で気高いムクホークは、正義の心を持っているのだろうか。仮に持っていなくても、小型鳥ポケモンたちにとってはヒーローのようなものである。ならば、やはりカッコいい。そして、もしも持っていたら……やっぱり、それはカッコいいのである。
§
夕暮れの港町。海岸付近ではキャモメの群れが砂浜や川沿いで羽を休めている。
「アルファさん! あそこ! キャモメがたっくさんいます!」
「おー。……そういやもう夕方か。ならしばらくキャモメを観察してみるといい」
「何かあるんですか?」
「ああ。そして、それで何が起きたのか俺に説明してみろ。今まで俺が教えたことで説明できるぞ」
ならばと小宮果穂はキャモメの群れを観察する。
するとキャモメの群れは一斉に羽ばたいた。キーキーと甲高い鳴き声を上げながら、地上から低空へ、低空から高空へ。
大空をキャモメの群れが覆い尽くす。
「めっちゃ目立ってるなー」
アルファがそう言うと。
小宮果穂の真横に、ケンホロウ率いるハトーボーやマメパトの群れが横切り始めた。
「わぁ……! 急にケンホロウの群れに囲まれました……! 地上から飛んできたんでしょうか……?」
ケンホロウは、今までキャモメが集まっていた川沿いや砂浜に降り立つ。
ハトーボーやマメパトは、その手前の河川敷や橋下に降りて集合。
全員、地上採餌を開始。砂浜や河原で虫や種子を探す。河川敷や橋下で流れてきた餌を拾う。
「行動が同期しているな。おかげで採餌効率を大きく高めている」
続けてアルファがたずねた。
「さて、果穂。何が起きた?」
「……キャモメの群れが空を飛んだら、ケンホロウの群れが来ました!」
「では、これは『相利共生』か? 『片利共生』か? それとも別の何か……たとえば『
「……むむぅ……?」
小宮果穂は腕を組んで目を閉じ、やや顔を上向けながら喉を唸らせる。
大きく首をひねった。
「ここでヒント。カモメは潮位を正確に把握していて、餌が露出する時間帯に集中して活動する生き物だ。つまり潮の満ち引きに合わせて、飯を食う場所を移動する。そしてケンホロウは地上採餌型で、河川敷や
「……────!」
小宮果穂は思いついた。
「もしかして、キャモメが空を飛んだから……それが
「おお! と、いうことは……?」
「……えっと、相利共生は、お互い得をすることで……でもキャモメは得をしてないと思うから……じゃあ片利共生? キャモメは損も得もしてないし、ケンホロウは得をしてる……! つまり……!」
「……。……ファイナルアンサー?」
「はいっ! 答えはぁ……『片利共生』──ですっ!」
アルファは採点する。
「────惜っしい!! 完全正解でもいいんだけど、今回は半分正解で半分不正解!」
「ええっ!? な゛ん゛で゛で゛す゛か゛ぁ゛ー゛っ゛!!」
「はは! ちょっと厳しい採点だが────というのも、これはファシリテーションでもある。別に片利共生とファシリテーションは両立する。矛盾しない。現に……促進において、キャモメの行動は間接的に他種の採餌効率を高めた。片利共生において、その促進効果によって利益を得るのは他種だけで、キャモメは影響を受けない。つまり今回のケースは『促進型の片利共生』と言えるはずだ」
「はっ! たしかに……? むむ……むずかしいですぅ……!」
「なら俺も教え方を変えるよ。俺は分類の構成で自由研究を進めたけど、果穂がもっと別の構成にしたいなら俺もそうしたい。どうする?」
「……ほかの構成…………今は思いつかないので、このままでいいですっ!」
「そうか。ま、ゆーて俺らは学者じゃないから、実際のポケモン生態学の用語なんてものは知らない。自分なりの造語でもいいから、好きに考えて決めて作ってもいいと思うぞ!」
「そうなんですか?」
「ああ。新しい発見や考え方があるのは、絶対に面白いことだからな!」
§
それから小宮果穂は昼夜を問わず、様々な鳥ポケモンの生態を目撃した。
河口・湾口にて、主に地上で活動するマメパト、低空のヤヤコマ、高空のキャモメは、同じエリアでも高度で獲物が異なる。そのためお互いの干渉が減り、競争や衝突を回避できる。さらに捕食者の接近時、同エリア内の一羽でも鳴いたり逃げたりすれば同種全体が同様の行動を起こすため、同エリア内ゆえ他種も察知しやすく逃げやすい。そのため警戒情報を全体で共有できる利点が存在する。
これをアルファは『垂直分割』と呼んでいた。そして小宮果穂は考える。警告音は仲間のために警告を発しているのであって、高度別の他種に警告を発しているわけではない。しかし他種は、その警告音を明らかに利用している。つまり、これもキャモメとケンホロウの時と同じく、間接的な促進と判断。加えて、今回は全員が得をする構図なので、これを『間接的促進型の相利共生』と判断した。
最終的な答え合わせをアルファに任せると、彼は何も言わず太鼓判を押す。つまり大正解である。というよりアルファの解釈と合致した、というのが正しい。小宮果穂は大層、はしゃいで喜んだ。
夜の帳が降りる頃。巣からムクバードが飛び立った。すると同じ巣にホーホーが留まる。気になった小宮果穂は、今夜はその巣を観察できる位置に着地。アルファはフロストロトムやヒートロトムをボールにしまい、ブロロロームの上で毛布を敷いて就寝準備。頭上にはフワライドが浮かんでいるるめ、雨が降っても屋根代わりとなる。そして小宮果穂は録画用三脚を立てて巣の録画を開始。就寝した。
翌朝。起床すると、巣からホーホーが居なくなっていた。その代わり同じ巣にムクバードが帰ってくる。同じ巣を共有しているのか。
これをアルファは『時間的ニッチ分割』と呼んだ。昼行性と夜行性の鳥ポケモンが時間ごとに交代制で見張り番を努めている。さらに今回は移動が大変であるため検証を実行しないが、実はホーホーやムクバードは同じような巣を街のあちこちに持っている。そしてお互いの巣材や羽毛、糞の匂いを学習することで、両者は『この巣はあの種のだから安全』などと覚える。そして巣を探す手間が省けるため、移動コストを節約できる。
小宮果穂は、これを『間接的促進型の相利共生』と判断した。といっても、この手の区分はあくまで学説の用語を引用しているに過ぎない。例外はこれからいくらでも出てくるだろう。それはポケモンに限らず、どんな生き物でもそうなのかもしれない。
朝方の街中。救急車のサイレンが
これはアルファも知らない動きとのこと。ただし推察は可能。おそらくペラップがモノマネしたサイレン音は、異種混群にとって『大型捕食者接近』の合図として事前に共有されていた可能性が高い。
つまりペラップは、同族のペラップに警告を発した。それを他種が記憶していたので、一緒に逃げることができた。そのペラップに“警告の合図を他種と共有したい”という意思があったかどうかは不明だが、小宮果穂は本件を『直接的促進型の相利共生』と判断した。なぜならペラップは、きっと意図して共有したのだ。他種と共同すれば自分の警戒効率も上がる。現にペラップが先導したことで全員それに続き、なんとか逃げ切れた。故に思う。もしペラップが小型鳥ポケモンではなく、かつ進化するポケモンだった場合、他種を利用する効率は低くなると考えられるため、おそらく『間接的促進型の片利共生』と位置づけていたかもしれない。そのような生態だったら、他種を利用しようとは思わないだろうから。
故に小宮果穂は、ジャスティスⅤにおけるジャスティスブラックのセリフ『弱者は弱者を利用する……悪は弱いから弱者を利用して強者に勝とうとするのだ。プライドの欠片もない』『だが強者はプライドの塊だ。故に弱者どころか誰も利用しようとは思わない。──私のことだ』などという数々の名シーンを思い出していた。といっても今回の件で、別にペラップを悪役とは思わないけれど。
そこでふたりは、さらに気になるものを発見する。ビルの屋上でアオガラスが旋回しているのだ。特に赤色に点滅する非常灯の下を旋回している。すると周囲のココガラだけでなく、近辺の他種も大慌てで周囲の警戒を始めた。
これについてアルファは推測する。おそらくアオガラスも、ペラップの合図を理解していた。そしてアオガラスは別の混群に所属しており、そこでは『赤色点滅=警戒態勢』という文化が定着していた。動物の鳥は色覚が発達しているため、色や光による条件付け行動は得意である。それは鳥ポケモンも例外ではなかったのだろう。
これについて小宮果穂は『間接的促進型の片利共生』と判断する。キャモメとケンホロウの関係と似ていると判断したためだ。アオガラスも他種のために警告を発したわけではない。むしろ他種が生き残ることで採餌競争が増える可能性があるため邪魔にもなる。それにアオガラスだけでもオオスバメとは戦えるだろう。そもそもアオガラスは他種に眼中がなかったように見える。そのため他種がアオガラスを利用しており、他種だけが利益を得る構図だと考えた。それゆえの判断である。
最後にふたりは高空まで浮上。そこでアーマーガアとキャモメのペアを発見。主に山間に住むアーマーガアと水辺に住むキャモメに共通点はない。そう思う小宮果穂に対して、アルファが語る。むしろ共通点がないからこそ、生態的に多様性が生まれて生存が有利に働くのである。
キャモメの群れは一斉に移動を開始。干満に合わせて水辺の最大採餌効率を得る。一方のアーマーガアは普段水辺に詳しくないため、キャモメの群れに追随することで、その最大採餌効率にあやかることが可能。
やがてキャモメの群れは飛び立つ。アーマーガアも飛び立つ。しかしキャモメはしばらく中空を旋回し、アーマーガアが高空へ上がった頃を見計らった時に急上昇を再開。先陣を切るアーマーガアの後方にキャモメの群れが続く。アーマーガアは高高度を飛行することに慣れており、広域の気流情報を熟知している。そのためアーマーガアの飛行の仕方は、キャモメに対して気流情報を共有する貴重な情報源となる。おかげでキャモメは効率的に目的地へ到達できて、エネルギーの消費を抑制できた。
アルファは『このあたりの地理を見るに、ここはピンポイントで気流と水辺が交差するエリアだ』と語る。それゆえの最適なペアリングが自然と生み出されたのだろう。そのように考える。
これに対して小宮果穂は『間接的促進型の相利共生』と判断した。
そして小宮果穂とアルファは、ほかにも様々な鳥ポケモンの共生を目撃した。
大工オニドリルと居候ホーホーによる巣の共有場面を目撃。
オニドリルは主に虫を食べるため、他の鳥ポケモンはあまり襲わないらしい。ホーホーはムクバードの時のように昼夜ごとの見張り番を務めることができるため、かつ同居となると相利共生のようにも見える。ただしオニドリルの様子を見るに、あくまで自分の営巣のために作業しているため、ホーホーを助ける意図はないように見える。ならば片利共生に近いのだろうか。なぜならオニドリルは得をしていると考えておらず、ホーホーはオニドリルによる結果的な見張り番や巣の共有という一方的な利益を得ているためである。
アオガラスが背中を差し出して、ヤヤコマが外寄生虫をついばむ場面を目撃。
これは相利共生か片利共生か。ここで小宮果穂とアルファの意見が割れた。
小宮果穂によれば、アオガラスは自ら背中を差し出しており、寄生虫の除去という利益を得ている。そしてヤヤコマは寄生虫を食べることで腹が膨らむ。これは明らかな相利共生である。
しかしアルファによれば、アオガラスの寄生虫密度が低い場合の可能性を話したく、その場合はアオガラスの得る効果は薄いため、結果的にヤヤコマだけが利益を得る構図が発生する時がある。そのためケースバイケースと言えるのだとか。これをアルファは『条件付き共生』と語る。この場合は、アオガラスの羽毛に寄生する虫が多いか少ないかで、相利共生と片利共生の位置づけが変わるという。といってもこれは相利共生と片利共生の両概念だけで考えた場合の解釈と言える。
それに納得した小宮果穂は、何事も一概には言い切れないことを学び、何事も中間的なものや流動的なものがあるのだと、自由帳に記録した。
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かくして小宮果穂は、夏休み終わりの初登校で、上記の自由研究『鳥ポケモンウォッチング!』の成果を提出した。その研究成果の素晴らしさと面白さが評価されたのか、学内ナンバーワンの自由研究として体育館で表彰されたのは、また別のお話。
さらに、その表彰記事が偶然、パルデア学園のクラベル校長の目に止まり……林間学校の一環として小宮果穂がパルデア学園に招待されるのも、また別の話で語られるかもしれない────夢と冒険の物語。
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