※この作品はR-18です。

【小宮果穂とちょいワル男子のオトナ甘くてコドモ苦い】ぷらすえっくす!   作:形のない者

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pSR【ハクタイ放クラ大企画! ジムまで行けるかなチャレンジ!!▼】放クラ

 

 夜の帳が降りたプチパレス。

 夕飯後、ゴールデンタイムを迎える食堂では、全住人と客人、そして放クラ、さらに多種多様なポケモンが勢ぞろい。

 

 廊下を飛び交う兄弟のヒノヤコマとヤヤコマ。

 食堂の端っこに設けられた小さなポケモン広場では、マメ丸と追いかけっこして遊ぶコリンク、ムックルが頭の上に乗ることを許すカトレアはゼブライカと並んで丸くなり休息、ドッコラーの筋肉自慢を見たヨーギラスは瞳を輝かせ、ケーシィとコダックは背中を合わせて睡眠中。

 食卓では、食後のデザートを食べる園田智代子の頭上にはアブリボンがホバリングしつつ、園田智代子の膝の上ではマリルが抱かれるように座っている。そして照明の当たらない食卓の下ではゴースが暗闇を好んでおり、ヤミカラスは光り物を探して食卓の下から別の食卓の下へと歩き通す。

 食堂の裏口近くに置かれた植木鉢には、スボミーが収まって満足げ。

 食堂の壁には大型液晶画面が取り付けられており、そこにロトムが入り込んで特定のチャンネルを表示させた。

 

『午後七時になりました! 毎度恒例『ジムまで行けるかな?』のこの番組! 今回はなんと、放クラ企画!! 日本中のゴールデンタイムを大人から子供まで騒がせる放課後クライマックスガールズがゲスト出演! そして個性大爆発の五人が挑む街は、あのハクタイシティでお送りしまーす! それではさっそくVTRどうぞ!』

 

「よっ! 待ってましたっ!」藤田ことねが合いの手を打つ。

 

『舞台はシンオウ地方! 都会っ子アイドル・放課後クライマックスガールズが、ポケモンと共に二週間の旅に挑む!』

 

「樹里。ホントに二週間も旅したの?」 月村手毬は首をかしげる。

「ああ。もうテント張るの上手くなっちまったよ」 西城樹里はおかしそうに、されど自信満々に笑う。

 

『ルールは簡単! 捕まえられるポケモンは三匹まで! 出発地点はコトブキシティから! そして目指すはハクタイジム制覇! さらにジム戦後はお楽しみのエキシビションマッチ、つまり仲間同士の総当たり戦だ! はたしてジムバッジの栄光とエキシビションマッチの勝利を掴むのは誰だ!』

 

 ルール説明も終わり、放クラの紹介コーナーが始まる。

 

『こんばんは! 放課後クライマックスガールズのレッド! リーダーの小宮果穂ですっ! 実はあたしたち、ポケモンをゲットするのは、今回で初めてとなります! なので、正しくポケモンとふれあえるように、『講師』の人から、たっくさんのレクチャーを受けましたー!』

『どうも。ご紹介にあずかった『講師』こと、ポケモンレスキュアー・マスターランク隊員の天道唯我です。ある時は救助隊員(レスキュアー)、ある時は見習いポケモン博士、ある時はトレーナー、ある時はアイドル! 今回は私のマルチな才能を買われて、この企画の『講師』として選ばれました。──では放クラとスタッフのみなさん、今回はよろしくお願いいたします』

 

『はい! よろしくお願いします!!!!!』

 

「ハナワカだ! なんでハナワカが出てるの?」 芹沢あさひが席を立って身を乗り出す。

「緊急時にアイドルを救助できるよう、283さんのプロデューサーさんから直々にご指名を受けたんですよ」 天道唯我ことアルファは頬杖をついて、ちびちびとオレンジジュースを飲んでいた。

 

 

 

『DAY1~3:旅立ちと初捕獲!▼』

『まずは旅に慣れるため、初日は安全第一でお送りします! 講師先導のもと、放クラはコトブキシティのポケモンセンターから204番道路に入り、実際に講師が草むらでポケモンバトルとポケモンゲットをする場面を見て、サバイバル料理の作り方やテントの張り方なども学びます!』

 

「わお。意外と本格的だった……わたしには無理そう」 篠澤広はワクワクしながら言う。

「明日には『プロデューサー、わたしもアレやりたい』とか言って、先輩を困らせてそうですね……」 アルファは学園プロデューサーのために、なんの胃薬を買ってあげようかと考え、通販サイトを検索する。

 

『無邪気に204番道路・南部を駆け抜ける小宮果穂! 年相応の元気ぶりが実にかわいい! ──おっと! ここで果穂ちゃん、草むらから飛び出てきたコリンクを発見! しかし彼女はポケモンを持っていない! ですがご安心を! 初ゲットの時は、講師の人がお手伝いします!』

 

『天道さん! あたし、あのポケモンを捕まえてみたいですーっ!』

『それでは私が代わりに戦います。小宮さんはモンスターボールの準備を』

 

 講師はラルトスを繰り出した。コリンクが逃げる先にテレポートして道を塞ぎ、逃がさない。そしてサイコキネシスの攻撃によってコリンクは瀕死に追い込まれる。そこで小宮果穂が投球の構え。

 

『いっけぇ! あたしの電気ヒーロー!』

 

『果穂ちゃんボールを投げる! コリンクに当たった! ────ゲットぉぉぉぉっ!! 初めてポケモンをゲットしたのは果穂ちゃんです! これは幸先の良いスタート! 他のメンバーも拍手しています! さっそくコリンクをボールから出した果穂ちゃんは、講師の人にコリンクの回復を頼みます! やさしい! しかしコリンクはぷいっとそっぽを向いた! 講師の人は認めても、まだ果穂ちゃんの実力を認めたわけではない模様!? これからの旅路で絆が試される!』

 

「ハクタイは草ジムだから、電気タイプは有利な選択ね。相性的に負けることはないわ」 花海咲季の冷静な分析が光る。

 

『そしてポケモンを手持ちに加えた果穂ちゃんは、ここで見習い隊員から卒業! ここからは新米トレーナーとして、果穂ちゃんとコリンクのチーム旅になります! 放クラの四人とスタッフたちに見送られて、手を振る果穂ちゃんはコリンクといっしょに、元気に駆け出した! 果穂ちゃんの専属カメラマンも必死に追いかけていきます! みんながんばれー!』

 

「えっ! 捕まえたばかりのポケモンと、いきなり一対一で旅!? か、果穂、大丈夫だったの……!?」 風野灯織がオロオロと心配する。

「大丈夫だったかどうかはぁ……テレビを見て確かめてくださいっ!」 小宮果穂は早口で言った。ワクワクしているのか上半身をくねくねとさせている。

 

『続いて園田智代子! 草むらから出てきたスボミーを見つけて思わず駆け寄る! にこっと微笑むスボミー! 智代子ちゃんは『かわいい~!』と心臓を射抜かれたのか、なんとスボミーを抱き上げた!』

 

『天道さん! 私、この子にします……っ!!』

『なんと智代子ちゃん、見た目で即決! 戦力よりビジュアル重視に走ったー!』

 

「いや~。だって本当に可愛かったもので~!」 園田智代子は小っ恥ずかしそうに頬をかく。

「でも、毒技を覚えれば草対策になります。わたしはイイ選択だと思います、智代子センパイ!」 葛城リーリヤはガッツポーズを取って自信満々に言う。

 

『そして驚いたことに、智代子ちゃんが笑顔でボールを見せると、なんとスボミーも即決で自らボールに頭突きして捕獲されたー!? これはポケモンたらしの智代子ちゃん! 新米トレーナーとして早々に旅立つー!』

 

『天道講師と残る放クラの三人は204番道路を歩いていきます! そろそろ『荒れた抜け道』で有名な洞窟が近づく。その時! 突として森の奥からムックルの群れが飛び込んできた! 彼らの行く手を阻む位置に立ってしまった我々は、戦闘民族の二つ名を持つムックルの群れに襲われて大ピンチ! アイドルたちと撮影陣の悲鳴がこだまするー!』

 

「わわ、大変……!」 大崎甜花がびっくりする。

 

『しかし天道講師はこんな時でも超冷静! すかさずメタグロスを繰り出し、とてつもない大きさのリフレクターを張った! 透明な壁に激突していくムックルの群れが少し可哀想だが、さもなくばこちらがコテンパンにやられていた! なぜならムックルの翼で撃たれた部位は、一週間も痛み続けるという! どんなに可愛く見えても、やっぱりポケモンは怖い生き物! それだけはどんなポケモン好きでも忘れずにね!』

 

「それはそう。おっしゃるとおり」 篠澤広はこくりとうなずく。

 

『透明な壁に倒されたムックルの群れはピーチクパーチクやかましい鳴き声を上げながら飛び去っていく! そこで一匹のムックルが取り残されていた! どうやら翼をケガしたようで動けない模様! 近くにいた有栖川夏葉が駆け寄って抱き上げる!』

 

『天道さん。この子……』

『安心してください。支給品として渡したキズぐすりの使い方は覚えていますか?』

『! ええ! しっかり覚えてるわよ! ……さぁムックル。ちょっとごめんなさいね?』

 

『慈愛の女神・夏葉ちゃん! 襲われて怖い思いをしたにも関わらず、レクチャー通り傷ついたムックルの手当てを始めた! 傷が治って翼を大きく広げられるようになったムックルは、じっと夏葉ちゃんを見つめている! もしやこれは……!?』

 

『あら? あなた、仲間のところに行かないの?』

『キュルー!』

 

『見つめ合う夏葉ちゃんとムックル! そこで天道講師がメタグロスを収納したモンスターボールを見せて目配せ。ハッとした夏葉ちゃんはすぐにボールを取り出し、ムックルが逃げてしまう前に、優しくムックルのおでこにボールを当てた! そして────ムックルをゲットー! すぐにボールから出てきたムックルは勇ましい鳴き声を上げて、夏葉ちゃんと見つめ合う! これは明らかに、絆の友情ゲットだー!』

 

「あら……ステキですわぁ……!」 倉本千奈は目を輝かせる。

「うふふ! ありがとう千奈。──あの時は、なんだかムックルと心が通じ合った気がするのよね! カトレアと仲良くできそうな子だとも思ったし!」 有栖川夏葉は振り返って、カトレアの頭の上で羽を休めるムックルを見つめる。そんな彼女の顔は慈愛に満ちていた。

「スゴいです夏葉さん!! みなさんが自分のポケモンをどうやってゲットしたのかずっと気になってたけど……今日の放送を見て知ることができてうれしいし、楽しいですーっ!」 小宮果穂は大興奮。そのために放送日の今日は、みんなでひとところに集まろうという話となり、283の寮かプチパレスの寮かで相談した結果、現在に至るという訳である。

 

『ここで夏葉ちゃんも新米トレーナーとして旅立つ! 残る放クラメンバーは西城樹里と杜野凛世! ふたりは天道講師とともに、先に夏葉ちゃんが入っていった洞窟『荒れた抜け道』に入っていくー!』

 

「今のところはみなさん順調ですね! 草タイプに弱くないポケモンを揃えてます!」 花海佑芽が言った。

 

『荒れた抜け道に入ると、我々は小宮果穂を目撃! 果穂ちゃんとコリンクは、なんとヨーギラスとバトル中! タイプ相性は不利のはずだが、ヨーギラスは威嚇された上にコリンクの闘争心を受けて怯んでいるのか動きが鈍い! それによってタイプ相性の不利を帳消しにした果穂ちゃんとコリンクは、抜群の気合で押し切る! そしてボールを投げた! ────ヨーギラス、ゲットだぜー!!』

 

「ふわ……たしかヨーギラスって、じめんタイプだよね……?」 櫻木真乃が問いかける。

「はいっ! でも、カッコよくて、かわいかったので……! ちょこ先輩とおんなじですっ! つい捕まえちゃいましたー!」 小宮果穂は明るい笑顔で答えた。

 

『そして時刻は夜に! 荒れた抜け道にテントを張って休息です! 近くでは園田智代子が、いわタイプの野生ポケモン相手にスボミーのレベル上げ中! 有栖川夏葉は一足先に北部へ向かい、トレーナー戦で三連勝! しかし四連戦目で負けてしまい、すぐにポケモンセンター……あるいはカメラマンの案内のもと、天道講師のところに急ぎます!』

 

「……なんで天道さんのところに行くの?」 緋田美琴が問いかける。

「一応レスキュアーなんで。ポケセン替わりの役割を担うよう番組側から言われたんですよ。要するに時短っすね。いちいちコトブキシティのポケセンまで戻ってたら、それこそ日進月歩。牛歩どころか亀の歩みなんで」 アルファが答えた。

 

『こうして放クラは勢ぞろい! 一日目はメンバーのうち三人が合計4匹のポケモンをゲットして終了しました!』

『しかし夜遅く、謎の声が洞窟に響く! その時、撮影陣も眠っていたので気づきませんでしたが……杜野凛世は気づいていた! テントから抜け出して、声のする方向に歩いていく!』

 

「ひとりで……大丈夫だった……?」 幽谷霧子が心配そうに問いかける。

「はい……危険な香りはせず、ただ……寂しげな声色、でしたので……」 杜野凛世は静かにうなずく。

 

『撮影陣は残念ながらカメラに収めることができませんでした! しかし天道さんがテントから出てきて、メタグロスに番を任せながら、スマホで撮影してくれていました! その動画をお見せします!』

『謎の鳴き声に誘われるようにして凛世ちゃんが向かった先は、荒れた抜け道の洞窟を抜けた先にある崖! そこには一匹の鳥ポケモンが鳴いていた! 月光を浴びて、月に向かって鳴くポケモンの正体とは────!?』

 

『……もし。なぜ、泣いていらっしゃるのですか……?』

『……クエーッ!』

『…………────凛世には、とんと見当も付きません……ですが、もしも、寂しい思いをしているのであれば……しばし凛世と、旅をするというのは、いかがでしょうか……?』

『……クエー?』

『……ふふ。では、凛世との勝負です……よろしいですか?』

『……クェエエー!!』

 

『杜野凛世に漆黒の鳥ポケモンが襲いかかる! それと同時に凛世ちゃんはモンスターボールを投げた! しかし鳥ポケモンは大きく羽ばたいて回避! 凛世ちゃんも間合いを見切ってカギ爪を躱した! なんという攻防だ!! 撮影者の天道さんは見守っているが、これは介入しなくて本当に大丈夫なのか……!?』

 

「ハナワカ! なんで助けに行かないの!」 芹沢あさひが問い詰める。

「別に、ヤミ……あの鳥ポケモンから人間を傷つける意思は感じませんでしたし、杜野さんのフィジカルなら事故もないだろうと判断したまでです」 アルファは淡白に答える。

 

『杜野凛世と漆黒の鳥ポケモンは静かに見つめ合い……そして一球入魂! 豪速球のボールがポケモンを捉えて────ゲットだー! まさか手持ちポケモンがいない状態で捕まえるとは! 強い! 強いぞ、杜野凛世! でも良い子はマネしないでね!!? 本当に危ないから!!』

 

「ふふっ……本当に危ないので、マネしてはいけません……」 杜野凛世は反省しているのかしていないのか微笑む。この件について後にプロデューサーから叱られて慌てふためいたものの、どうやら今回は大丈夫だという確信があった模様。

「俺思うんすけど。たぶん杜野さんポケモンに慣れてますよね? 実家がポケモン屋敷だったりします?」 アルファが問いかける。

「はい……兄様たちや姉様の手持ちとなる……たくさんのポケモンがおり……」 杜野凛世は郷愁に耽り、思い出すように語る。

 

『翌朝! 一同はテントから出てくると、杜野凛世のテントから、なんとヤミカラスが出てきた! これには放クラ一同、撮影陣も含めてびっくり仰天(マッギョデンリュウ)! 昨夜の顛末を説明した杜野凛世は、楽しげな鳴き声を出すヤミカラスとともに旅立った! 残る放クラメンバーは西城樹里ひとり! これには樹里ちゃんもちょっと焦ってきたようす!』

 

『ま、マジかー……! アタシがビリっけつかよ……』

『西城さん。大丈夫です。まだあと十三日もありますので。……それに、実は作戦通りなことも見抜いていますよ』

『っ!?』

 

『おっと作戦通りとはなんのことかー!? 天道講師は何を見抜いたのかー!』

 

「作戦ってなんすか樹里ちゃん!!」 芹沢あさひが問い詰める。

「あー……まぁ見てれば分かるから……や、でも、割と姑息っつーか、卑怯系のやつだから、ちょっとなー」 西城樹里は卑下する。

「だとしても、企画の仕組みを逆に利用した、実に戦術的な狙いです。そういうの、俺は大好きですよ」 アルファがフォローした。

「そうね。言われてみれば目からウロコだったもの……」 有栖川夏葉は感心する。

「だよね夏葉ちゃん! 樹里ちゃん、割とずる賢いというか、競技になると頭がいいと言いますか……!」 園田智代子も心の底から感心する。

「っ……なんだよチョコ。それだと競技以外なら頭が悪いみたいに聞こえるじゃねーか……!」 西城樹里は照れ隠しに文句を言う。

 

 わちゃわちゃとする園田智代子と西城樹里。微笑む有栖川夏葉と杜野凛世。

 一方の小宮果穂は焦っていた。

 

「えっ! 樹里ちゃんの作戦ってなんですかぁっ!? みなさん分かってるんですか……?!」 小宮果穂だけが見抜けていない。そのため彼女は腕を組み、テレビそっちのけで記憶を掘り起こし、うんうんと唸って答えを探す。

 

『荒れた抜け道の洞窟を抜けて、一行は204番道路の北部に出る! 高原だ! 今まで歩いてきた南部と、その先に広がるコトブキシティが見下ろせる絶景! つまり一日中登山してきた放クラだが、一睡したことで元気いっぱい! 園田智代子だけちょっと目の下にクマがあって眠そうだが、ソノオタウンまですぐそこだ! 花畑でお昼寝するのも乙だぞ! 最後のもうひと踏ん張りだ!』

 

「いや~。我ながら、よくあの高さまで登ってこられたなーと……スボミーとの出会いが感激すぎて、気づいたら洞窟の中で坂道を登りきっていたから良かったものの……」 園田智代子は今思い出しただけでも疲れる道のりだったと肩を落とす。ハードな山登りだった。正しく言えば洞窟登りだが。

 

『アイドル達は道路でトレーナー戦を繰り返す! ぐんぐんとレベルを上げて急成長! やがてソノオタウンに到着! ここで一旦休憩タイムです! 園田智代子に食レポのマイクを手渡して、いざソノオタウン名物のデザート店めぐりに直行!』

 

『どうも! 放課後クライマックスガールズのピンク! 園田智代子と申します! コトブキシティからソノオタウンまでの道のり……いやー大変だった! あれだけの道のりを一日で! ……一(・)日(・)で(・)!! 一日ですよ!? たった一日で歩き通してしまったものですから、もうふくらはぎがぱんっぱん! というわけで、乳酸ほぐしにソノオタウンを練り歩き、登山の疲れを癒しにデザートを頬張りたいと思いまーす!』

『スボー!』

 

『智代子ちゃん! ふくらはぎがぱんぱんなのに練り歩いたら、余計乳酸が溜まるんじゃないかな!? そんなツッコミよりデザート第一! 花より団子の園田智代子は花畑を後回しにして、さっそく『フラワーアレンジ・マホイップ亭』に目をつけたー!』

 

「いやいや! カットされてるけど、みんなでソノオタウンに着いた時、最初にみんなで花畑を見に行ったからね!? 花より団子は事実だけど、別に花は無視してないからね!?」 園田智代子は必死の弁明を行う。

 

『う~ん! マホイップのホイップが聞いたハチミツ味のチョコケーキがたまらなく甘い! うまい! 爽快! ほっぺがとろけ落ちるおいしさ……店員さん! 同じの五箱、お願いできますか!?』

 

『なんと智代子ちゃん! 放クラの分と天道講師の分まで買い占めたー! ……と思いきや、五箱は放クラ用で、天道講師の分ではなかった! まさか二個食いする気かー!? これについてどう思われますか天道さん!』

『え? いえ、自分は甘いの苦手なので……割と有名なんで知ってたんじゃないっすかね? それはそれとして二個食いはやばいっすね。マホイップのカロリーを甘く見ないほうがいいっすよ。甘いだけに』

 

「……ねぇ智代子ちゃん。こうして食レポしてる間にも、ほかの放クラはレベル上げをしてるんだよね?」 大崎甘奈は、天道講師のギャグを無視して問いかける。

「そうなんだよー甘奈ちゃんー! でもお仕事だから仕方ないよね……ハクタイまで競争する。デザートの食レポをする。どっちもやらなきゃいけないのが、チョコアイドルの宿命なんですよ……」 園田智代子はうなだれながらも、割と満更でもないのか、カッコつけてうんうんとうなずく。

 

『ここで天道講師のギャグが滑ったところで、滑るといえば氷! シンオウ地方は雪国なだけに氷タイプが多く、氷使いのトレーナーが多い! 氷タイプに弱いヤミカラスやムックルが倒されて、杜野凛世と有栖川夏葉がソノオタウンのポケセンに走り戻る! 草ジム対策に飛行ポケモンをゲットしていたのがここで思わぬアダとなったー! そして小宮果穂が大きくリードするー!』

 

『そして三日目! 園田智代子とスボミーは、なんと花畑で爆睡していたー!?』

 

「あー! やっぱりココ使われたー! ちょっとごろんと横になっただけなのに、すっごく気持ちよすぎて眠っちゃったんだよー!」 園田智代子は気恥ずかしそうに照れる。

 

『マイペースな園田智代子! 一番遅れているが問題ないのか!? と思いきや、花畑のお姫様に幸運が舞い込んできた! 甘い香りが漂い、智代子ちゃんとスボミーの嗅覚が刺激される! うんと背筋を伸ばして目覚めた智代子ちゃんは、スボミーを抱いて甘い香りのする木に惹きつけられる! そこで智代子ちゃんの甘いものを目覚める強い感情に呼応したのか、目の前にアブリーが現れたー! 智代子ちゃんのスボミーとアブリーのバトルが始まる!』

 

「相性的に不利ね。戦術性が問われるわ……」 花海咲季は冷静に分析している。

「アブリー、かわいいな~」 郁田はるきが反応した。

 

『相性不利だがスボミーのすいとるわざで耐え抜き、隙を見てしびれごな! せいちょうわざで特攻を上げつつ、さらにすいとる! 弱ったところでボールを投げた! ────ゲットぉー!』

 

「虫タイプだから……草に有利だね!」 今まで熱中していた八宮めぐるが、熱いバトルを見終えて一息ついたのか感想を言う。

 

『そして園田智代子がソノオタウンで一日を潰しているあいだに、ほかの放クラメンバーは205番道路・南部を冒険中! 谷間の発電所にお邪魔した有栖川夏葉は、そこで電気タイプの野生ポケモンの集団と遭遇! このあたりを縄張りとしているようで、谷間の発電所の研究員は時々襲われて困っているようす。そこで有栖川夏葉が解決に乗り出した! 手持ちはムックル一匹だが大丈夫なのか!?』

 

「まぁ! 競争中なのに即断即決で人助けなんて……夏葉さんはヒーローみたいですね!」 根緒亜紗里が褒める。

「うふふ。ありがとう、亜紗里! だって困ってる人は放っておけないもの!」 有栖川夏葉は笑顔で感謝する。

「夏葉さん……カッコいいですーっ!!」 小宮果穂は瞳を輝かせてはしゃぎ出す。

 

『有栖川夏葉のムックルとシママ&ロトムのバトルー! 谷間の発電所の縄張りをかけたこの大事件は、今回の企画とは異なるため泣く泣くカットですが……ご安心を! 放クラのハクタイチャレンジ大企画における長旅の記録は、ディレクターズカット版で配信されています! 気になる方は本番組の専用サイトにアクセス! 今から一週間だけ無料アーカイブ化されている貴重な冒険の記録映像が見れちゃうぞ! ぜひお手元のデバイスで、番組終了後にアクセスアクセスー!』

 

「えっ! アーカイブ版あるんですかぁ!? ……二週間分のぉ?!」 藤田ことねが驚いて問いかける。

「みたいだなー。正直どんだけヤバい長さなのか分かんないけど……とりあえず夏葉が『解決に数日もかかって大変だった』って言ってた谷間の発電所事件は、とりあえず見ておくかな~」 西城樹里は遠い目をしながら答える。

「それでも数日分よ? ある程度は編集されているだろうけど、全部見るのは大変だろうから少しネタバレしておくわね。いいかしら? ──最初は、相性不利のムックルに無理をさせたくないから、周囲のポケモンをゲットしようとしたのよ。でも周りはブイゼルにカラナクシ、ニョロモにポッチャマと、水タイプのポケモンばかり……だから正面対決は避けて、谷間の発電所の中に立てこもって罠に掛けることにしたの。その作戦は途中までうまくいって、群れのリーダー格のシママは倒せてゲットできたんだけど……トリックスターのロトムが手ごわくてね……あらゆる家電の中に入り込むから、本当に大変だったわ……申し訳ないことに、谷間の発電所の家電製品は、すべて私とムックルが破壊してしまうほどの激闘になってしまったし……」 有栖川夏葉は顔を覆って猛省する。

 

 そこで大崎甜花が顔をぶんぶんと縦に振るって猛烈に賛同した。

 

「そう! そう……! ロトムは、すごく手ごわい……!! いつもいたずらばっかで、甜花を困らせてた……」

 

『一方、まだポケモンをゲットしていない西城樹里といえば! ハクタイの森に入った小宮果穂より遅れて、205番道路で氷使いに苦戦している杜野凛世より先に進んで、天道講師とともにタタラ製鉄所へ訪れていた! そこでヒノヤコマ率いるヤヤコマの群れに襲われる! どうやら縄張りを犯してしまったようだ! 怒ったヒノヤコマがわざを繰り出す! ほのおタイプのわざは非常に危険だ! すかさず天道講師はホエルオーを繰り出してあまごいわざを発動! しかしヒノヤコマが飛ばした火球が、あまごいの範囲を超えて、なんとハクタイの森に激突して着火! 森林火災だ! まずい!!』

 

「ええ! た、大変ですわ~~~~!!」 倉本千奈が口元を手で覆う。

 

『ポケモンレスキュアーの天道講師は、ルカリオを繰り出して西城樹里の護衛を任せ、サンダーを繰り出してその背に跨り、エンペルトとカイオーガを繰り出して消火活動に当たる! さらに火災で逃げ惑う森の野生ポケモンを逃がすために、ウルガモスやゴルーグを繰り出した! ちなみにポケモンレスキュアーのマスターランクは、六匹以上のポケモンを保有することが特別に認められているぞ!』

 

「そうなんだ! なんかズルいですプロデューサーさん!」 花海佑芽が不思議な文句を言う。

「ズルいってなんすか……正直12匹でも万全な救助活動には足りないくらいですよ……」 アルファは呆れ返る。

 

『一方、西城樹里はルカリオとともにヒノヤコマの群れとバトル中!』

 

『ルカリオ! 頼む! こんな時に言ってる場合じゃないかもだけど……アタシ、ヒノヤコマをゲットしたい!』

『ガウ!』

『サンキュ! それに倒せば、これ以上、森に火災が広がることはなくなる! とにかくほのおわざを撃たせないでくれ!』

『ガルル!』

 

 ルカリオは神速わざを発動。さらに神速中にストーンエッジを重複発動。瞬く間にヤヤコマたちを撃ち落としていく。そしてヒノヤコマとの一騎打ち。駆け出した西城樹里は、ある地点で立ち止まり、モンスターボールを構える。

 

「あの位置、あの角度……! ルカリオとヒノヤコマが激突する瞬間にボールを投げる気ね……!」 花海咲季が言い当てる。

「は? ルカリオは神速を発動中だよ? 人間の動体視力じゃ捉えきれないよ」 月村手毬が訝しむ。

「いやでも、テレビの中の樹里ちゃん……ヒノヤコマの方をガン見してるぞ!」 藤田ことねが気づいた。

 

『ルカリオの姿がカメラでも捉えきれない! 次の瞬間、ヒノヤコマが大きく吹き飛ばされたー! すると西城樹里、この混乱の中でボールを投げるー!』

 

『いっけぇー!』

『ヒット! まさかヒノヤコマが突き飛ばされる位置を分かっていたのか……!? そしてボールは────カチンと鳴った! ゲットぉぉぉぉ────!!』

 

「すごい。どうしてヒノヤコマの位置がわかったの?」 篠澤広は耳を向けて問いかける。

「や、どうしてって聞かれても……あの時は無我夢中だったから、勘としか……」 西城樹里は困った顔で答える。

 

『樹里ちゃん! この火事は……!』

『え、果穂!?』

 

『ここで小宮果穂が、ハクタイの森から出てきた! 火事の騒ぎで心配して戻ってきたようす! さらにベイビィポケモンを抱っこして背負っており、少々黒焦げだ! さすがヒーローアイドル! 消火活動はできないが、避難活動は率先して手伝っていた!』

 

『ヒノヤコマの群れに襲われて、ほのおわざが森に引火しちまったんだ!』

『え! それは大変です!』

『でも大丈夫だ。天道さんが消火中だし、ヒノヤコマはアタシが捕まえた!』

『っ!! スゴいですーっ!』

 

『西城樹里と天道講師の活躍で事態は沈静化……! したかと思われたが、まだ終わってない! 一匹のヤヤコマが起き上がる! 西城樹里に向かって突っ込んだー!』

 

『────っ?! あぶない、樹里ちゃん!! コリンク、スパーク!』

『キュアーッ!!』

 

『コリンクのスパークとヤヤコマのたいあたりの激突! しかしこのヤヤコマ、強い! 相性不利のわざを受けても起き上がってきたー! すると小宮果穂はボールを投げる! ヤヤコマは避けようとするが、体が痺れて動けない! マヒ状態だ! そして────ゲットー!』

 

『果穂……! サンキュー、助かった!』

『はい! あぶないところでした……!』

 

「────ほっ……し、心臓が、持ちませんでしたのぉ~~……!」 倉本千奈はホッと胸をなでおろす。

「ほわっ……わたし、息を忘れちゃってた……」 櫻木真乃も安堵した。

 

『ポケモンバトルで森林火災! あまり珍しいことではないとはいえ、今回は肝を冷やしました! 天道講師も消火活動を終えて戻ってくる! そしてラルトスを繰り出し、ルカリオと合わせて、二匹のポケモンがいのちのしずくのわざを振りまくことで、ケガしたポケモン、やけど状態のポケモンを治癒! ハクタイの森に返しました!』

 

『これで一件落着ですね。西城さん、無事でしたか? ヒノヤコマをゲットしてくれてありがとうございます。どうやら気性が荒いようなので、使役する際は気をつけてください』

『わかった。それと……みんなを助けてくれてありがとな!』

 

「ちなみにここで新情報。あのヒノヤコマと、ちょっと強かったヤヤコマは、たぶん兄弟だ」 ふいにアルファが言った。

『────えぇっ!?』 西城樹里と小宮果穂が同時に目を見開いて大きく驚く。

「ヤヤコマがああも必死だったのは、兄をゲットされたからだろう。西城さんに取られまいと立ち向かって行ったんだ。そこで果穂に捕まえられたのは幸運だったな。あまり離れ離れにならずに済んだんだから」

「そ……そう、だったのか……や、なんか、やけに果穂のヤヤコマと仲が良いとは思ってたけど……」 西城樹里はうつむく。

「あ、あたしもです……同じ群れだから仲間なのかな? としか思っていませんでした……そうだったんですね……」 小宮果穂もうつむく。

「まぁポケモンを一目見て、それのどれとどれが兄弟かなんて早々わかることじゃありませんから。あまりお気になさらず。それにヒノヤコマも、ヤヤコマの独り立ちには賛成のようですし。だから気性が荒いという当時の俺の判断は間違いで、あれは単なる兄弟愛だったんすね。現にあのあとは割とおとなしかったですし。俺も兄弟だと気づいたのは企画の終わりごろで、ちょっと試しに遺伝子検査したら兄弟関係だと判明した感じなので」

 

 アルファは人の心が分かる。それは人だけでなく動物やポケモンまで分かるらしい。

 

「……あのとき任された遺伝子検査って、このヒノヤコマとヤヤコマの細胞だったんだ……」 篠澤広がぼつりと言った。

 

 

 

『DAY4~10:二匹目・三匹目の捕獲とトレーニング!▼』

『西城樹里も新米トレーナーとして単独行動を初めて四日が経過。有栖川夏葉が谷間の発電所の事件を解決して、遅れを取り戻すべく205番道路を爆走。ハクタイの森に入って、ようやく放クラはハクタイの森に揃う。しかし四日前からハクタイの森に入っていた小宮果穂は、既に三匹のポケモンが揃っているためハクタイシティに着いてもいいはずだが……実は放クラは全員、奥深い森の中で迷子になっていた!!』

 

「ほわっ……!」 櫻木真乃は身を揺らす。

「みんな。森の中で迷子になるとな? ……死ぬほど不安でキツいぞ……」 西城樹里は伏し目がちに苦笑する。

「でもポケモンがいるおかげで恐怖は薄かったよね。食料が尽きても木の実を集めてきてくれるし……」 園田智代子は光のない瞳でつぶやく。その声には生気というものがなく、何も実感がこもっていなかった。

「あれは……まごうことなきサバイバルだったわね……!!」 有栖川夏葉は思い出すだけで戦慄していた。

「はい……しかし凛世は幸運にも、森の洋館のベッドにて日々を過ごし……」 杜野凛世は同意しているが、明らかに余裕そうである。

「はいっ! ポケモンといっしょに、草だらけ擦り傷だらけ泥だらけになりましたーっ! あと森の小川でも遊びましたっ!! そして木のてっぺんに登ってハクタイシティを見つけて、そっちに行ったら出られたんですーっ!」 瞳を輝かせる小宮果穂は楽しかったと無邪気に語る。

「ひぃん……!」 大崎甜花は想像しただけで瀕死に陥っていた。

 

 そこで篠澤広が聞いた。

 

「カメラマンさんは食べ物どうしていたの?」

 

「私の前で手持ちのヤドンの尻尾を食べていた時は、さすがに殺意が湧きましたね……甘い香りがこっちまで漂ってきて……」 園田智代子は色のない瞳で返す。

「アタシんとこのカメラマンさんも、ヤドンに木の実食わせて尻尾再生させながら食ってたなぁ……」

「私のところのカメラマンさんはモンジャラというポケモンのツルを切って焼いて食べてたわよ。切ったツルはその場ですぐ生えてくるの! あれはサバイバルに最適の野菜よ! すごいわ!」

「あたしのカメラマンさんは大量のパンの耳を持ってきてて、マホイップのホイップを塗って食べてましたー! パンの耳がなくなるとニャースに木の実を拾ってもらって、やっぱりホイップを塗って食べてましたっ!」

「凛世のカメラマンさまは……ジグザグマに木の実を拾わせ……生で直接……豪快でございました……」

 

「わお。甘い系の食べ物が多いね? まるで雪山で遭難した時のチョコみたいな食べ方。毎日それしか食べてないとしたら味気なかったはず。カメラマンさんも命懸けなんだね……」 篠澤広は青ざめる。

 

 そこでアルファが言った。

 

「ゆーて差し入れ有りの企画設定にすれば、俺が毎日三食はテレポートで届けてましたよ。まぁ番組側の『放クラはサバイバルが似合う』という理由で差し入れ無しになりましたけど。それにはみなさんだって同意したじゃないっすか」

「うんそうなんだけどね!? さすがに森の中で一週間も迷子になるのは想定していなかったと言いますかぁっ!!? つまり自業自得なんですぅぅぅぅっ!!!」

 

 園田智代子は限界まで目を見開いて、わなわなとやり場のない思いを天に叫ぶしかない。

 

『しかし放クラも迷子になった甲斐はあった模様! 森の奥に迷い込むほど強力なポケモンが増えてきて、バトルに次ぐバトル! 連戦連勝! 時に強すぎるポケモンに対しては戦略的撤退! 天道講師がいるとはいえ、迷子中にポケモンが瀕死になれば、それすなわち絶体絶命を意味する! ぶっちゃけ死ぬぞ!! そのため逃げるが勝ちだ! そうこうしてぐんぐんとレベルを上げてきた! そしてここで西城樹里に連続ゲットのチャンスが到来するー!』

 

『うわっなんだ!? ケーシィ!?』

 

『西城樹里の目の前にテレポートしてきたケーシィは、またテレポート! 逃げるのかと思いきや、樹里ちゃんの周りに連続テレポートしておちょくってくる! これはケンカを売られているのかー!? クスクスと笑っているケーシィ! やはりケンカを売られているー!』

 

『んなっ……!? ──いいぜ、その勝負受けて立つ! 出てこい、ヒノヤコマ!』

『コマァアア!』

 

『しかし西城樹里とヒノヤコマ、何度攻撃してもケーシィを捉えきれず! そこで樹里ちゃんは作戦を閃いた様子だ!』

 

『ヒノヤコマ! アタシの肩に乗って背後を見張れ! アタシはお前の後ろだ!』

『ヤコマァ!』

 

『西城樹里とヒノヤコマは、お互いに背後を守り合う! そしてヒノヤコマが叫んだ! 叫ぶ先にケーシィがテレポートしていた! すかさず樹里ちゃんは振り返ってボールを投げる! しかしケーシィはテレポートで逃げた!』

 

『ヒノヤコマ! 電光石火ぁっ!!』

『なんとヒノヤコマは西城樹里の後ろ側に突撃! すると突撃先にケーシィが出現! 樹里ちゃんが振り返った時には轟音! 攻撃されたケーシィが地面に倒れこむ!』

 

『今だぁー!』

 

『ボールを投げて、ヒット! ────ゲットしたぁぁぁぁっ!! 西城樹里とヒノヤコマの完璧な連携プレーで、捕獲難易度の高いケーシィを見事にゲットしてしまったー! これはすごいぞー!』

 

「スゴいですーっ!!」 小宮果穂は大興奮する。

「ふーん。やるじゃん」 腕を組む月村手毬はなぜか上から目線で、さりとて嬉しそうにニヤついていた。

 

『ケーシィを捕獲して一息ついた西城樹里の前に、一匹のポケモンが姿を現す! ドッコラーだぁぁぁぁー!』

 

「連戦! さっき司会進行の人が言ってた『連続ゲットのチャンス』って、これのことだったんだね!」 八宮めぐるが驚く。

 

『ケーシィとのバトルで疲弊している西城樹里! ここは退くが正解か!』

 

『……すげぇ筋肉だな。よし、気に入った! 強そうだから……捕まえる!』

 

『西城樹里、なんと連戦を選んだーっ! 相手が格闘タイプと見て、飛行タイプのヒノヤコマを繰り出す! その判断は正しいが、ヒノヤコマもケーシィとのバトルでパワーが落ちている! 大丈夫か、樹里ちゃん!!』

 

『ヒノヤコマ! 高速移動! からのアクロバット!』

 

『樹里ちゃんがハクタイの森で身につけたお得意の戦術! 圧倒的なスピードと軽やかさで翻弄する空中殺法が出たー! これにはドッコラーも身動きできない! みるみると体力が削られていく! しかしドッコラーここで、起死回生のいわなだれ! ヒノヤコマに効果抜群! 瀕死状態になってしまったー!』

 

『ヒノヤコマ! 戻れ! 出てこい、ケーシィ!』

『ケシィーッ!』

『ケーシィ! 得意技のテレポートで撹乱してやれ!』

 

『ドッコラーの周囲にテレポートを繰り返すケーシィ! いわなだれなんかには当たらない! するとドッコラーはいわなだれを頭上に展開! するとケーシィはテレポートで退避!』

 

『ドッコ!?』

 

『ドッコラーの頭上にいわなだれが激突ー! 自分の技で大ダメージを受けてしまったー! しかしドッコラー、最後の力を振り絞って岩石の山をどかし、自力で脱出! だがとき既に遅い! 駆け出していた樹里ちゃんが投球フォーム! 投げたボールがヒット! ────ゲットしたぁー!!』

 

「いやー。あんときは無茶したなぁ……」 西城樹里は苦笑する。

「ほんとっす。もしやられていたら大変だったっすよ」 芹沢あさひが言った。

「まぁ、そんときは天道さんが来てくれるって思ってたから……」

 

 そこで小宮果穂が思い出した。

 

「あっ! そういえば、樹里ちゃんの作戦ってなんだったんですか!? 火事のことですっかり忘れてましたっ!」

「え? ああ、それは……──最初の一匹は、天道さんに頼んで捕まえてもらえるだろ? だから最初のポケモンは進化後とか、強いポケモンにしてもらおうと思ってたんだ」

「……!! な、なるほどです……っ!!」

 

「なんだ。そういうことだったんすか。でも納得っす! それで樹里ちゃんは進化系のヒノヤコマを捕まえられて、進化後のドッコラーとも互角以上に渡り合えてゲットできたっす! まだ勝負は分かんないけど、今のところは作戦勝ちっすね!」

 

 芹沢あさひは「面白い!」と楽しがる。

 そこで月村手毬が言った。

 

「樹里。せこいね」

「だから卑怯系寄りだって言ったろ……」 西城樹里は苦笑い。

(……でも、そういうのも実力のうちだから……) 月村手毬は口に出さない。

 

『一方、杜野凛世! ハクタイの森で迷った末、森の洋館を拠点に出口を探索すること数日! 実は目の前にあるのだが、なぜか紫色のガスのような瘴気に阻まれて出口に行けない! 上空から放クラを見守る天道講師によれば、ゴーストタイプの仕業らしく……もしや杜野凛世! 森の洋館で何かに呪われたかー!?』

 

「の、呪われたんですのぉー!?」 倉本千奈が戦々恐々と問いかける。

「ふふ……さて……当時の凛世には、とんと呪われた自覚はございませんが……ともすれば、はい……」 杜野凛世はにっこりと微笑むばかり。

 

『今日も森の洋館で宿泊する杜野凛世! 明らかに怪しい洋館なのに怖くはないのか!? むしろどんどん探索していく! カメラマンの悲鳴ばかり音声に入ってるぞ! しっかりしろカメラマン! そして杜野凛世は、なんとポルターガイストに見舞われる! カメラマンは気絶してカメラが倒れてしまった! しかし天道講師がテレポートしてきて、カメラマンを介抱しながら杜野凛世の活躍をスマホで撮影していた! 今回講師として採用して本当に良かった! では天道講師の撮影したVTRをどうぞ!』

『杜野凛世が遭遇した怪異の主は、なんとゴースだった! 凛世ちゃんとヤミカラスのコンビは、ゴースが巻き起こす恐怖現象の数々に臆することなく立ち向かう! か、かっこいいぞ! 凛世ちゃんにヤミカラス……!! そして激闘を制したのは凛世ちゃんとヤミカラス! ここでボールを投げた! ────ゲットぉー! ここで凛世ちゃん、二匹目のポケモンをゲットしましたー!』

『それから凛世ちゃんは、ゴースの案内でハクタイの森の出口に到着! しかしほかのメンバーは迷子中! 残り期間も少ない! ここで番組チームは信号弾を打ち上げることに! 夜に打ち上げた信号弾を頼りに、出口まで誘導する作戦だ! その役目を天道講師が買って出てくれた! サンダーを繰り出した天道講師は、夜空で大放電! 電撃が『EXIT』の形を取っている!! これは良く育てられているサンダーだー!』

『この大放電信号弾に気づいた小宮果穂と西城樹里、園田智代子と有栖川夏葉は、全員、示し合わせたかのように徹夜しての強行軍! 朝日が昇る頃にはハクタイの森を突破! 杜野凛世のテントを見つけて、凛世ちゃんが起床してテントから出てきた瞬間、ボロボロの放クラメンバーが凛世ちゃんの近くに倒れこむ! 周囲は草地のため、そこで寝てもあまり汚れませんが……凛世ちゃんは風邪を引くことを心配して、川の字で眠る四人に毛布をかけた! そして凛世ちゃんもかたわらに寝そべり、五人は草原で川の字となり、すやすや……なんとも可愛い場面を切り取ることができました!』

 

「アタシら、こんな感じだったのか……森から出た瞬間の記憶、あんまなかったんだよなー……」 西城樹里はまじまじと、テレビに映る自分たちの寝顔を眺めている。

「私もだよ樹里ちゃんっ……脱出と再会の喜びと睡魔にやられて、立ちながら寝落ちしたあの瞬間……そしてまさか凛世ちゃんが毛布をかけてくれていて、しかも川の字で五人揃って寝ていたなんて……」 園田智代子は全面的に同意する。

 

 

 

『DAY 11~12:ハクタイシティ到着!?▼』

『過酷なサバイバルの末、ハクタイの森を突破した一行。朝方に起床した五人だが、ここで幾人かに再び試練が降りかかる! 目の前にハクタイシティが見えているというのに、なんと! 三匹のポケモンを揃えないうちは街に入ることができないルールなのである! そのため小宮果穂と西城樹里と有栖川夏葉は街に入り、一足先にポケモンセンターで完全休養を取る! しかし未だ三匹目をゲットしていない園田智代子と杜野凛世は、205番道路・ハクタイ側で通行止めを食らったー!』

 

『うぇぇえ!? ハクタイシティに入れないんですかー!? そんなーっ! もう森には入りたくないですよー!?』

『ならば……この道路でポケモンを、ゲットするしか……、……はて? もし、そこの人……何を釣っておられるのでしょうか……?』

 

『園田智代子と杜野凛世は一時共闘して、三匹目のポケモンの情報がないか、釣り人に声をかける! すると優しい釣り人のおじさんがボロの釣竿を分けてくれたぞ! 園田智代子と杜野凛世は、ハクタイの森で集めた木の実を食べながら、のんびりと釣りをする一日! しかし釣れるのはコイキングばかり!』

 

『ぐぬぬ……いっそコイキングを釣ってハクタイシティに入ってポケセンで休むか……でもそれだとジムもエキシビションも勝てない気がする……っ!!』

『先ほどルールを再確認しましたが……早めに街に入れば、13日目までは自由に街中でポケモンの特訓が可能とのこと……もしコイキングを捕獲した場合、残り二日でギャラドスに進化できるか、そこが肝要となります……』

『どう考えても無理そうだね……なら、いいのが釣れることを願うまで!』

 

「か、過酷……!! ここまで来たのに、街にも入れないなんて……」 葛城リーリヤが青ざめる。

「北海道は試される大地って言われてるみたいだから」 緋田美琴はどういうつもりで言ったのか。まさか七草にちかに言われて覚えたのか。真顔でそんなことをつぶやいた。

 

『そんなこんなで今夜もテント! ハクタイシティに到着しなければならない期限は、残り一日! まさかここでリタイアすることは避けたいぞー!? ──と、ここで杜野凛世! コダックを釣り上げたー! ゴースを繰り出し、圧勝! ボールを投げて────ゲットぉー! 凛世ちゃん、一足先にハクタイシティへ入ったーっ! ポケモンセンターで完全休養を取りますっ!!』

 

『まずい……! あとは私だけっ……!! おねがい! コイキング以外ならなんでもいいからぁーっ!!』

 

『そんな智代子ちゃんの願いが届いたのか! 夕暮れにマリルを釣り上げたーっ!』

 

『ふぉぉぉぉ!? か、かわいいぃぃぃぃ~~~~!!』

 

『これには智代子ちゃん大興奮! スボミーを繰り出してバトル! 隙を見てボールを投げた! ──ゲットぉーっ! しかし喜んでいる暇はない! 急げ急げ! 走れ走れ! 制限時間は残り一時間! 日没までにハクタイシティへ到着できないとリタイア扱いだぁーっ!』

 

「……! がんばえー! ──か゛んでないよ゛っ!!!」

 

 机を叩くいろはちゃんはテレビに向かって激励を送り、突然ひとり勝手に激怒してキレ散らかす。

 そんな自由人たる三歳児にほんわかした一同は、壮大なBGMが流れ始めたテレビに向き直った。

 

『必死に走る智代子ちゃん! ボールから勝手にアブリーが出てきた! 智代子ちゃんの手を引いている! まさか引っ張っているのか!? アブリーは相手の感情を感知できる能力を持ちます! 智代子ちゃんの必死さが伝わって、思わずボールから出てきたのか! これは感動的な場面! そして智代子ちゃんは、アブリーの助けを借りて────ゴォォォォォーーーーッル!! 日没ギリギリ!! ハクタイシティに到着しましたー! 走り疲れた智代子ちゃんはその場で崩れ落ちる! ううっ、おめでとう智代子ちゃん! 今夜はポケセンのふかふかおふとんで、ぐっすり眠ってくれぇー!!』

 

「うぅ……これは涙なしには見られませんわぁ……!」 倉本千奈はハンカチーフで目元を拭う。

「よく頑張ったね、智代子」 風野灯織は、画面外でも相当の苦労があったのだろうと思いを忍ばせ、静かにねぎらう。

「ありがとうみんな……私、もし次があるなら、もう少し難易度の低い企画にするよ……!!」 園田智代子はキリッと宣言した。食堂に涙ありの笑いが生まれる。

 

『一方その頃! この二日間を使って、小宮果穂・西城樹里・有栖川夏葉の三人は、街中のトレーナーとバトルして育成に尽力! 番組側が用意したクイズに正解したり、ミッションを達成することで、天道講師からハクタイジムの攻略情報を聞き出すことができます! その情報の中には、自分のポケモンの効率の良い育成法まで! 遅れて到着した杜野凛世は、ハクタイジムの攻略情報より、自分の手持ちポケモンの育成方法を天道講師から聞き出す! 最後に到着した園田智代子も、簡単なクイズをこなし、奇しくも凛世ちゃんと同様の選択肢を取った!』

『かくしてハクタイジムチャレンジはあすから始まる! ルールは一発勝負! 泣いても笑っても、決着は明日で決まりますっ!!』

 

 

 

『DAY13:ハクタイジムチャレンジ!▼』

『ハクタイジムに挑戦する順番は、先にハクタイシティに到着した順番となります! 朝に一回、昼に二回、夕に一回、夜に一回の順番です! つまり小宮果穂、西城樹里と有栖川夏葉、杜野凛世、園田智代子の順番に挑戦権が与えられました! ではさっそく、ハクタイジムのジムリーダー・ナタネさんにインタビューしましょう!』

 

『こんにちは! わたしはハクタイジムリーダーのナタネ! 草タイプ専門よ! 今日は都会っ子のかわいこちゃんが五人も来てくれたって話だから、それはもう全力でお相手するわ! わたしは逃げも隠れもせず待ってるわよ! 放クラとの勝負、楽しみにしてるわ!!』

 

「なんだか強そうな人ですねぇ~」 根緒亜紗里は持ち前の経験から、なんとなく相手の力量を見抜く。

 

『まずは小宮果穂の挑戦! まずはジムトレーナーを突破してレベル上げ! ジムリーダーとの戦いの前に、天道講師のもとでポケモンを全回復! そんなこんなでジムチャレンジも終盤戦となってまいりました! バトルは3on3で二ポイント先取! いざバトルスタートですっ!』

 

『いけ! ヤヤコマ!』

『コマァー!』

『どんと構えて咲き誇れ! ハヤシガメ!』

『シャガー!』

 

『小宮果穂はヤヤコマを! ナタネはハヤシガメを! 相性は果穂ちゃんのヤヤコマが有利だが……!』

 

『ハヤシガメ! ステルスロック!』

『っ! これじゃあ、とんぼがえりが使えない……っ!!』

 

『ここで環境技を使用! さすがジムリーダー! 容赦なく小宮果穂を追い詰めていくーっ!』

 

「……ハヤシガメはスピードが遅いので防御タイプだと思います。けれどジムリーダーの訓練で反応速度は上がっていると予想して、カウンタータイプに仕上がっているかもしれません。一方、ヤヤコマは興奮すると体温が急上昇して攻撃的になりますっ」

 

 ふいに小宮果穂は、天道講師の口調で解説する。

 

『ヤヤコマ! 全力全開! アクロバット!』

 

『小宮果穂の元気爆発な指示を受けたヤヤコマは、美しいさえずりを上げて鋭い一撃! ハヤシガメに大ダメージ!』

 

『やるわね! ならハヤシガメ、うちおとす!』

 

『ハヤシガメのいわタイプわざが炸裂! ヤヤコマに大ダメージ! しかしヤヤコマは一撃瀕死をまぬがれた! スゴい根性だー!』

 

『なんですって!? ハヤシガメの威力で倒れないなんて──、──はっ! まさか……!』

『ヤヤコマ! もう一度アクロバットでトドメ!』

『──……ハヤシガメ! リーフストーム!』

 

『おっとナタネちゃんは、ここで相性不利の草技を選択!? 身軽なヤヤコマは天高く舞い上げられていく!』

 

『っ……! なら────ヤヤコマ、ダブルウイング!』

『ハヤシガメ! 近づかせないで! リーフストーム全開!!』

 

『ヤヤコマはアクロバットな飛行で葉っぱの嵐を躱していきますが、暴風に乗ることが精一杯でハヤシガメに近づけない! 猛烈な激闘が続いています! これは根気のいる戦いになってきたーっ!』

 

「……プロデューサー。なんでナタネはリーフストームを打ったの?」 ふいに篠澤広が問いかける。

「ハヤシガメはやけど状態に陥って攻撃力が低下しています。そのためハヤシガメはタイプ一致かつ特攻力が肝となる特殊技かつ相性不利でも押し切れる高威力の草技を選んだ。それがリーフストームだった、という訳です」 アルファが淡々と答えた。

「え? でもヤヤコマ、一度も炎技を使ってないですけど……」 藤田ことねが首をひねる。

「それは……ヤヤコマの発熱のせいなんですっ!」 小宮果穂がしめしめと言いたそうに、さりとて元気いっぱいに答える。

「……なるほどね。さっき果穂は『ヤヤコマは興奮すると体温が急上昇する』と言っていたけれど、これのことだったの……」 花海咲季は感心するように言い当てた。

 

 かくて、ほのおわざを使わないやけど状態の解説は、またのちほど。

 

『強烈な木の葉による一陣の風! ヤヤコマは一枚目の翼でリーフストームの木の葉を打ち叩く! そしてリーフストームの範囲外に飛び出し、ハヤシガメに急接近! 鈍重なハヤシガメは、先ほどばら撒いたステルスロックを使って、すかさず撃ち落とそうとするが────ヤヤコマの方が早い! 二枚目の翼がハヤシガメを切り裂いた! 木の葉の嵐を制して、疾風のような翼で勝利を舞い上げたのは────ヤヤコマだーっ!』

 

『やったー! ヤヤコマ! ありがとう!! よくやったね!!』

『コママーッ!!』

『よく頑張ったわハヤシガメ。──仇討ちよ、ロズレイド!』

『ロォォォズ!』

 

 そこからバトルは、ややダイジェストに展開していく。

 

『小宮果穂のヤヤコマは、ロズレイドの鞭を受けてしまい、即効性のある猛毒にやられてダウン! 代わりにコリンクを繰り出します! しかし小宮果穂はコリンクに技を指示せず、その場で足踏みするよう指示! これはどういう作戦だ!?』

 

「コリンクは前足の筋肉を伸縮させることでたくさん発電するんです! つまり充電技が要らなくて────その状態でほかのわざを繰り出せば、実質『じゅうでん』と『そのわざ』の複合技になるんですっ!」 小宮果穂は、またも天道講師の口調を真似て解説する。

 

『コリンク! にどげりで発火!』

 

『ロズレイドの攻撃に対し、コリンクは格闘わざのにどげりで応戦! するとどうしたことか! コリンクの前足から火花がスパークする! そして猛毒を持つロズレイドの刺の鞭を、前足のにどげりで弾いていく! 接触したはずなのにコリンクは毒状態になっていない!? むしろロズレイドの刺の鞭が焦げている! こ、これはどういうことだーっ!?』

 

 そこで篠澤広が閃いた。

 

「ポケモンの生態と技を組み合わせた戦術スタイル……アルファの得意戦法だね。さすがポケモンバトル博士。みんなに伝授した、の?」

「ええまぁ。ただしこれは基本戦術ですよ。初級です。中級以上は教えていません」 アルファは淡々と答える。

「えっ! あれで初級!? 私は上級者の戦術だなーと思って、天道講師のお話を聞いておりましたが!?」 園田智代子は目を見開く。

「言われてみればたしかに、まだ教え足りないって顔してたもんなぁー……」 西城樹里は目を上向けながら当時のことを思い出す。

 

『ここでロズレイドは距離を取って、ミサイルバリ! 対するコリンクは前足の電撃と発火、そしてにどげりによる格闘エネルギーを組みわせたトリプルエネルギーで難なく焼き払う! さらに先程より前足の電撃が強くなっているような……!? ど、どれだけ電気を発電して強くすれば気が済むのか! ここで小宮果穂は『突進スパーク』を指示! とっしんとスパークの合わせ技だとぅ!? その威力、スパークと前足の発電量を換算すれば、ワイルドボルトに匹敵する一撃となり────ロズレイド、一撃でノックダーウン! 二ポイント先取で、勝者! 小宮果穂────!!』

 

『や……やったー! コリンク、よくやったね! がんばった!』

『コリー!』

『……ありがとうロズレイド。戻って。──それにしても、あの戦術……まったく、容赦がないのはどっちだか……タイプエネルギーの専門家・アルファ博士の仕業ね? ──フゥ……おめでとう、小宮果穂選手! これがハクタイジムのジムバッジ・フォレストバッジよ! 受け取りなさい!!』

『わぁ……! ありがとうございますーっ!!』

 

 テレビの中にいる小宮果穂の胸元には、フォレストバッジが光っている。

 テレビの前にいる小宮果穂の胸元にも、フォレストバッジはよく磨かれて光り輝いていた。

 

「キラキラー!」 いろはちゃんが指差す。

「ヤミィーッ!」 ヤミカラスがそれをくれと鳴きわめき、ついばみに飛び立つ。

「わ、わ! ヤミカラス、だめだよ……!」 小宮果穂はフォレストバッジを守る。

「ふふ……ヤミカラス。凛世のもとに……こちらに寄る際、百貨店で光り物を買いました……どうぞ……」 杜野凛世が声をかけると、ヤミカラスは杜野凛世の膝の上に落ち着いて、光り物のキーホルダーを咥えながら、嬉しそうに羽を休めた。

「ヤミィー!」

「ありがとうございます、凛世さん!」

 

 ヤミカラスと小宮果穂が喜び感謝する頃。

 

 

 

 テレビ画面では、西城樹里とナタネのジムチャレンジが映し出されていた。

 

『ヒノヤコマ! 五回目のニトロチャージ!!』

 

『西城樹里とヒノヤコマの圧倒的な猛攻! 目で追えないほどの高速戦闘!! 草ジムに炎の翼が舞う! しかしニトロチャージは主に回避だけに使用! そのまま順当にチェリンボとロズレイドをトドメのアクロバットで倒して、難なくフォレストバッジをゲットしたーっ!』

 

「樹里はあっさりダイジェストだね」 篠澤広は残念そうにうつむく。

「せこいマネしたからじゃない?」『モット ジュリノバトル ミタカッター!!』 月村手毬は容赦なく文句を言う。

「しゃーねーよ。ほんとに圧勝だったからな……それもこれも天道講師のおかげだ。もちろん番組映えを意識したら、苦戦したほうが良かったんだろうけど……でも、やっぱり勝負事で手を抜くのは、こう、なんか、やっぱなぁ~……!」 西城樹里は葛藤している。

 

 そこでアルファが解説した。

 ほのおわざを使わないやけど状態の解説である。

 

「ヒノヤコマは腹部に炎袋があり、そこが発熱するたび加速力を上げます。先ほど果穂が仕掛けたやけど状態は、この発熱を利用したものですね。接触するだけで低確率ですが、やけど状態を付与できます」

『……!』

「そして西城さんは、ここからさらなる戦術を追加しました。──全身を炎で包む技を繰り返していれば、みるみる体温が上がって加速していく。さらに炎技のニトロチャージは発動すると必ず素早さが上がるので、加速力の上昇率はピカイチとなります。また、ポケモンは平均して六段階しか能力値のギアを上げられませんが、それは技(・)に(・)限(・)っ(・)た(・)話(・)です。生態の炎袋は例外ですので、六段階以上にスピードのギアを引き上げて、ヒノヤコマの内臓が浮くほどの加速力を得る。そのままアクロバットを繰り出せば、内臓が浮いたぶん身軽になっていますので、スピード×身軽=超パワーとなり、恐るべき飛行タイプエネルギーを繰り出すことができる。とどのつまり大抵の相手はワンパンという訳ですね」

「それって最強じゃないですかーっ!?」 花海佑芽は驚愕する。

「最初にナタネさんがハヤシガメかロズレイドを繰り出していれば、思いっきり歯止めをかけることはできていましたよ。つまり勝てたのは運の要素もあった。作戦と幸運、両方で自分の戦術に引きずり込み、完璧な勝利をもぎ取った西城さんの大勝利ですね」 アルファは素直に賞賛する。

「やっぱり樹里ちゃんはスゴいですーっ!!」 小宮果穂は、そういうことだったんだと今しがた気づき、大興奮の様子。

「そ、そんな褒めんなよ……! ただのゴリ押し戦法なんだし……!!」 西城樹里は照れ隠しにそんなことを言う。

「でも正直、そのゴリ押し戦法を破るのは難しそうね……初動をミスれば、加速の調子に乗ったヒノヤコマを止められなくなるし……」 花海咲季は冷静に感心して分析していた。

 

 

 

『続いて有栖川夏葉のジムチャレンジ! 先日ハクタイデパートで何かを購入したそうだが、その正体とは────!? 夏葉ちゃんが繰り出したるは、フロストロトムだーっ! モーター付きの冷蔵庫を購入して、ロトムをフォルムチェンジしていた! 氷タイプのロトムで、草タイプを凍りつかせる作戦かー!』

『有栖川夏葉はフロストロトムに吹雪を指示! 屋内が猛吹雪に覆われるー!』

 

『ロズレイド! そろそろあなたの真価を発揮して魅せなさい! ──“固定戦術”!』

『ロォオオッズ!』

 

『おぉーっとここでロズレイド! 『ねをはる』と『グラスフィールド』を立て続けに発動! 根を張って地面から栄養を吸い取り回復しつつ、グラスフィールドで地面にいるポケモンはさらに回復していく! ロトムは特性浮遊を持っているためグラスフィールドの回復効果は受けられないー! そして固定砲台と化した『ミサイルバリ』がロトムを襲うー!』

 

『ロトム! リフレクター! そしてボルトチェンジ!』

 

『物理技に強い結界を張ったロトムは電撃的な体当たりを仕掛けた! ロズレイドに大ダメージ! ロトムがボールに戻って、夏葉ちゃんが次に繰り出したのは────シママ! シママは電磁波を発動! ロズレイドが連射するミサイルバリはリフレクターによって弾かれている! シママ無事! そしてロズレイドはマヒ状態となるが、すかさず日本晴れで吹雪を打ち消したー! ここでシママ、ニトロチャージを発動! ロズレイド躱せない! ──と思いきや速射型の反撃ソーラービーム!? シママのニトロチャージと大激突だー! しかし日本晴れの効果でニトロチャージの威力も上がっている! ソーラービームを突破したシママはロズレイドに激突! しかしロズレイド倒れない! 回復効果を受けてしぶとく生き残る! そして至近距離の刺の鞭がシママに突き刺さった! シママ猛毒状態! 即効性と遅効性の猛毒がシママの体力を奪っていくー!』

 

『その前に仕留めて、シママ! ニトロチャージ!!』

『シマァーッ!!』

『なんですって!? 即効性の毒でもう動けないはず────いえ、まさか、リ(・)フ(・)レ(・)ク(・)タ(・)ー(・)っ!?』

 

『おぉっとー!? ここでロトムが残したリフレクターが、ロズレイドの即効性のある毒の刺を防いでいたー! シママのニトロチャージが炸裂! ロズレイド戦闘不能!』

 

「す、すげぇ……怒涛のバトルじゃん……」 藤田ことねは口を開けたまま画面に夢中。

「うふふ! 実はロトムはポケモンの中でも知力が高いほうだから、ロズレイドの即効性のある毒の刺が右手にあるのか左手にあるのか、あらかじめ判断してリフレクターを付けてもらうよう頼んでいたの。さらにリフレクターの発動の仕方は、あらかじめ特訓して、場に張る設置型じゃなくて、体に張る装甲型に変えていたのよ! これも天道講師のヒントのおかげね! 我ながら素晴らしい戦術を閃いたわ!! ────ふふ、ポケモンバトルって面白いのよっ!!」

 

 有栖川夏葉は嬉しそうに、そして楽しそうに解説する。

 

『ナタネはハヤシガメを繰り出す! その後も夏葉ちゃんは、フロストロトムに交替してリフレクターと光の壁を張り、ボルトチェンジでムックルに交代! ステルスロックでダメージを受けて、さらに『うちおとす』で大ダメージ受けたものの、『がむしゃら』と『でんこうせっか』を発動! しかも電光石火はムックルの腕力で翼を打つように叩いた! ハヤシガメ戦闘不能! 二ポイント先取で有栖川夏葉の勝利────ぃっ!!』

 

『やったわ! みんな出てきて! よくやったわね……!! あなたたちは最高の仲間よっ!!』

『キュルルァー!!』

『シマー!』

『ロトー!』

 

「ほわっ……すごい……“我武者羅”に頑張って、“電光石火”でトドメ……」 櫻木真乃は感心する。しかし何かを微妙に誤解しているようだった。

「たしかに真乃の言う通りね! でもそれだけじゃなくて、ポケモンの技としての『がむしゃら』は、相手の体力が相手より少ないほどダメージを与えるの! 瀕死寸前だったムックルが我武者羅を放つことで、相手も瀕死に追い込んだ。さらに電光石火は超スピードで先制を取れる技だから、先に攻撃することで、どちらが先に瀕死になるかの戦いに大手をかけたってわけね! しかも追い打ちと言わんばかりに、ムックルの高い生態的腕力を活かして攻撃! ……ただしムックルは知力が低めだから、本当の意味で『つばさでうつ』と『でんこうせっか』を組みわせた複合技を習得することは難しくて、完璧ではなかったのだけれど……それでも作戦通りに勝てたのよ!」 有栖川夏葉は満面の笑みで解説した。

「ほわっ……そうなんですね……すごい……」 やはり櫻木真乃は感心する。どうやらポケモンバトルは奥が深いようだ。

 

 

 

『続いて杜野凛世の挑戦! お互いヤミカラスとハヤシガメを繰り出す! ヤミカラスの怪しい光がハヤシガメを混乱させる! 自分で自分に技を出してしまいハヤシガメは自傷ダメージ! そこへヤミカラスのダメ押し攻撃! 特性『きょううん(強運/凶運)』が発動したのか、急所に命中! ハヤシガメ、ダウンー! その調子で凍える風と熱風を繰り出し、ロズレイドを執拗に追い込んできっちり仕留めたーっ! これは鮮やかなり幽玄の華! 杜野凛世はヤミカラス一匹でフォレストバッジをゲットしてみせたーっ! 凛世ちゃん、謎のポーズで手を天に掲げているーっ!!』

 

「スゴいですーっ! カッコいいですーっ! 群青(あお)き導火線・斬(イグニッション)のポーズですーっ!!」 小宮果穂は両腕を振るって大興奮。

(凛世センパイって、静かにはっちゃける時あるけど……あれって、やっぱり陽キャ側の行動なのかな……?) 葛城リーリヤは内心なんとなくそう思った。

 

 

 

『最後は園田智代子のジムチャレンジ! 手持ちのタイプ相性的に不安が残るが、無事に放クラ全員でフォレストバッジゲットなるか! いざラストバトル、スタート!!』

 

『おねがい、アブリー!』

『出てきて、チェリンボ!』

『いきなり『すりかえ』! そして────』

『しんぴのまもり! からの日本晴れ! 葉緑素で倍速してから、丸くなって転がる!』

 

『ナタネは先刻の戦いを警戒してか、混乱技を防ぐしんぴのまもりを発動! さらにチェリンボは防御力を上げて転がり始めた!』

 

『────アブリー! 花粉団子を貯蔵! 感情感知で一回目だけ全力で躱して! おねがいっ……!!』

 

『チェリンボの高速のころがるに対し、アブリーは智代子ちゃんの思いに応えて完璧に回避したーっ!』

 

『よしっ! そして二回目のころがるが来る頃には、5ターン経過で神秘の守りが途切れているはずだから────今だ! むしのさざめきで誘爆!』

『ブュリー!』

 

『おぉーっと!? 突然チェリンボが爆(・)発(・)したーっ!!?』

 

『よしっ……! アブリー、花粉団子貯蔵!』

『ブリィー!』

 

『チェリンボのころがるが止まってしまった! しかしナタネは再びしんぴのまもりを張って、さらにころがるよう指示! そこで園田智代子は、またもすりかえを指示! そしてチェリンボのころがるが命中────しない!? チェリンボ、突然動きを止めてしまったー!』

 

『なんですって!? ──っ! まさか……! チェリンボ、交代! いけ、ハヤシガメ!』

『アブリー! しびれごなを花粉団子にかけて! そしてハヤシガメに『すりかえ』!』

 

『そういうことかー! チェリンボの動きが止まったのはマヒ状態だったからだー! 最初の『いきなりすりかえ』の時点で、あらかじめ智代子ちゃんは『しびれごな入りの花粉団子』をアブリーに作らせて持たせておいていたんだー! そして神秘の守りが切れると同時に、同じ虫タイプエネルギーで、チェリンボが持たせられていたしびれ花粉団子を誘爆させた! 大ダメージとともにマヒ状態となったチェリンボは、再び神秘の守りを張ったところで、その時すでにマヒ状態! なんということかー! これは策士っ! 恐るべきチョコアイドル! ビリっとくる隠し味には、さすがのナタネも困惑しているーっ!!』

 

「すごい。智代子はクレバー。わたしは気付けなかった」 篠澤広は心から感心する。

「いやー! それほどでもー……! というか、ほぼ天道講師のヒントのおかげなのですが……!! 改めてありがとうございます! 天道講師っ……! いえ、師匠!!」 園田智代子は感謝する。

「いえいえ。私の『今の技構成なら、嫌な物を食べさせることができますね』というヒントから、きちんと自分なりの戦術に辿り着けるのも、ひとえにトレーナーの才能ですよ」 アルファは首を横にも縦にも振る。

 

『ハヤシガメはステルスロックで場を整える! しかし時間経過で神秘の守りが解かれたら、虫のさざめきで花粉団子の誘爆が来るため悠長にはしていられない! ハヤシガメは透明化した岩石(ステルスロック)を逐次発射してアブリーを撃ち落とそうとするが、アブリーは感情を感知する能力を活かして回避していく! ──ここで豆知識! 智代子ちゃんは暇さえあれば甘い木の実を食べながら、スマホにインストールしてあるポケモン図鑑とにらめっこして、手持ちポケモンの生態や技構築を研究していた! 右手に木の実、左手にスマホ! これが都会っ子の修行法!? その努力が今ここで実っているー!』

 

「あれ? この映像って、ハクタイの森で迷子になっていた頃よね。智代子先輩はさっき、地獄みたいな顔で辛かったって話してたけど、意外と平気そうじゃない」 花海咲季は首をかしげる。

「地獄なのは地獄だったよ!? それはそれとしてオレンのみやモモンのみは美味しくて……裏を返せば、その幸せな食事時間以外は、常に歩きっぱなしだったわけなんですが……ああ、何度、何度! 同じところをぐるぐる回る羽目になったか……! 百時間も迷子になったのに意外と平気そうに見えるのは、もう心が死んでいたからじゃないですかね……」 園田智代子は目をそらす。

「ご、ごめんなさい……そういう意味で言ったんじゃなかったのよ……! 今度花海咲季特製スイーツを作るから許してください……!」 思いのほか落ち込まれて驚いた花海咲季は、先輩に対して礼儀を尽くす。

「え、それほんと!? うわー楽しみだなー! 咲季ちゃんのスイーツ料理だけは本当においしいからー!」 園田智代子は元気百倍。ウキウキとし始めた。

 

 その感情を感知したアブリボンもウキウキと空中で小躍りする。

 

『その後も花粉団子誘爆戦法は効果てきめん! ハヤシガメを倒してロズレイドを引きずり出すー! しかしロズレイドは手ごわい! 刺の鞭は感情感知をもってしても躱しきれない! もはや戦闘不能一歩手前! スボミーやマリルでロズレイドを突破できるとも思いにくい! 万事休すか、園田智代子! ────その時、絆の奇跡が起きた! アブリーの体が光り輝く! こ、これは……進化の兆候だーっ!?』

 

『アブリー!?』

『────ボォオォォォォォン!!』

 

『アブリーがアブリボンに進化したーっ!! すかさず智代子ちゃんはスマホをかざす! ナタネは一転、自らの窮地を察知したのか日本晴れを発動! 速射ソーラービームだーっ!!』

 

『っ────ならこっちも! アブリボン! 『こうそくいどう』で躱しながら『しびれ花粉団子すりかえ』────!!』

 

『ロズレイドのソーラービームが連射されていくー! それを四度も躱したアブリボンだが、高速移動による回避で精一杯! 虫のさざめきによる誘爆を狙えない! どちらもあと一発ダメージを受けたら危険域! まだ勝負はわからないーっ!!』

 

『ロズレイド! 影分身プラス根を張るからの多方向ミサイルバリ!』

『感情感知で本体を突き止めて! 虫のさざめき!!』

『そう来ると思ったわ! ──ロズレイド、『やどりぎのたね』────!』

『っ!? あ……アブリボン! やっぱり『ついばむ』────!!』

 

『急な命令チェンジ! これにアブリボンは即応できるのか!? 即応────できた! 感情感知で園田智代子の心変わりを感知していたからか!? アブリボンは虫のさざめきを中断して、多数いるロズレイドの本体を突き止めて突進! その代わりロズレイドのバラから射出されたやどりぎのたねを受けて体力を吸われてしまい瀕死寸前だが、なんとか攻撃はロズレイドにヒット! 大ダメージ! しかしロズレイドは根を張って体力を回復中! アブリボンだけがダウンしたー!』

 

『ロズレイド、よくやったわ!』

『ロォオオッズ!』

『……────』

 

『……? 智代子ちゃん、アブリボンを交代しません! ま、まさか────!?』

 

『今だ! アブリボン! トドメの『かふんだんご』ぉ────っ!!』

『ボォォォォォン!!』

 

『アブリボンは戦闘不能になっていなかったーっ!? ロズレイドの顔面に花粉団子が爆発ぅーっ!! 倒れたロズレイドは目を回している! ロズレイド、戦闘不能! アブリボンの逆転勝利! よって勝者────園田智代子ぉーっ!!』

 

『や────ったぁあああー! アブリボン! ほんとにありがとぉぉぉぉ────っ!!』

『ボォォォォォン!!』

 

「は? 何が起きたの?」 月村手毬は訳が分からないと言いたげに質問する。

「えぇーっと……あの時ロズレイドには『しびれ花粉団子』を持たせていたと思うのですが……それをつ(・)い(・)ば(・)む(・)こ(・)と(・)を(・)し(・)た(・)ら(・)ど(・)う(・)な(・)る(・)の(・)か(・)な(・)?(・) と思いまして……結果、アブリボンがしびれ花粉団子をついばむことで、自分でマヒ状態になる代わり、回(・)復(・)したようでして……おかげでやどりぎのたねを耐えることはできたのですが、ロズレイドの背後を取ったのに麻痺ですぐ動けなかったわけです。して……おそらく私が、今(・)な(・)ら(・)ア(・)ブ(・)リ(・)ボ(・)ン(・)が(・)動(・)け(・)る(・)!(・) と判断した瞬間に、トドメの指示をしたことで、運良くマヒにならず、奇襲が叶った……。──結果的にですが、そういうことが起きていたのでは? と思います……はい……!」 園田智代子は、自分のことなのにあやふやな感じで語る。それくらいバトル中は熱中状態で、自分が何を考えてなぜその指示を出したのか、その理由をよく覚えていない様子だった。

「いや素晴らしいですね。もし焦ってすぐ奇襲を指示していたら、マヒって攻撃が止まり、すかさずロズレイドの反撃を受けて倒されていました。熱中しながらも冷静に我慢して、アブリボンの状態をよく見て、マヒが弱まった瞬間に指示ができたのは……トレーナーとして文句なしの行動です」 アルファは最大限の賞賛を送る。

 

『────そんな……負けたわ。これはトレーナーとして称賛するべき戦果ね……おめでとう、智代子ちゃん! このフォレストバッジ、胸を張って受け取りなさい!!』

『ナタネさん……! あ、ありがとうございます……!!』

 

『園田智代子もバッジをゲットー! なんということだ! 放クラ全員がハクタイジムで勝利してしまったー!! 実にハイレベルの戦いを見せてくれてありがとーっ!! かくしてハクタイ放クラ大企画は、大勝利の大団円で完走しましたっ!! みんな、ほんとにおめでとーっ!! ──そしてメインは終わりましたが、まだ番組恒例のエキシビションマッチが待っている! 放クラ総当たり戦で、番組の優勝メダルをゲットできる猛者は誰か! 乞うご期待! 続きもバトル盛りだくさんでお送りするぜー!』

 

「……ふぅ。すごい熱量だね。この番組はバトルが人気なの?」 篠澤広が問いかける。

「そうらしいっすね。それでベストバウトの絵が欲しいから、きっとバトルを多く撮影するために総当たり戦とか始めたんでしょう。現にもう放送時間ないですし、思いっきりダイジェストで進むと思いますよ」 アルファが淡白に返す。

「あ、ホントだ」 篠澤広は時計を見上げて納得した。

 

 

 

『DAY14:放クラ総当たり戦! 仁義なきエキシビションマッチ!!▼』

『全部映したいけど尺がないのでダイジェストでお送りするぜ! 全部見たい人はアーカイブ版を見てくれよな!』

『ルールはフルバトル! まずは小宮果穂ちゃんの総当たり戦! 相性有利で園田智代子に圧勝し、西城樹里とはスピードとパワーの勝負に負けて僅差の敗北! 杜野凛世とは戦術の差で惜しくも敗北! 有栖川夏葉とは互角の勝負を繰り広げて、最後の最後で気迫の辛勝! 元気いっぱいな果穂ちゃんらしいバトルだったぜ!』

『続いては園田智代子ちゃんの総当たり戦! 相性不利で西城樹里に負けてしまうが、杜野凛世とは互角の戦いを繰り広げて戦術的勝利を収める! だが有栖川夏葉には完敗! 相性が不利すぎた! こんなこともあるさ!』

『そして西城樹里ちゃんの総当たり戦! 杜野凛世をパワー&スピードで圧倒し、相手の戦術を戦略でねじ伏せて勝利を収める! 有栖川夏葉とは互角のバトルを繰り広げるが────ここでベストバウト!』

 

『西城樹里が有利な戦況で、なんと有栖川夏葉のシママがゼブライカに進化! その勢いで無敗のドッコラーに黒星をつけたー!』

 

『最後に有栖川夏葉ちゃんの総当たり戦! 杜野凛世ちゃんと戦術的な技の応酬を見せるが、最後は知略の女王・有栖川夏葉が勝利をもぎとったー!』

 

『結果は下記の表を見てくれ!』

 

 / │果│智│樹│凛│夏│

 果 │/│○│✖│✖│○│

 智 │✖│/│✖│○│✖│

 樹 │○│○│/│○│✖│

 凛 │○│✖│✖│/│✖│

 夏 │✖│○│○│○│/│

 

『順位発表! 三勝で1位タイの西城樹里ちゃん・有栖川夏葉ちゃんには、番組特製の金メダルを授与ー! 二勝して2位となった小宮果穂ちゃんには、銀メダルを贈呈! 一勝で3位タイとなった園田智代子ちゃん・杜野凛世ちゃんには、銅メダルが授けられます! みんな素晴らしい冒険とバトルの数々だった! 楽しんでくれたら、また番組に出演してくれよな!』

 

『ちなみに本番組でゲストがゲットしたポケモンは、責任を持ってゲストが引き取るか、番組が提携しているポケモン牧場に預けられるぜ! 観光できるから、あのゲストのポケモンが観たい! というかたは、ぜひ牧場に足を運んでくれ! ゲストも手持ちとして正式に迎えたポケモンの情報は、よくSNSにアップしているから、それぞれのSNSを覗くのも一つの楽しみだぜ!』

 

『そんなわけで『ジムまで行けるかな?』の次回は、なんと初星学園のアイドル候補生!? 楽しみになってきたね~! そんな次回は来月を予定しているぜ! そして来週は、また別のコーナー『ポリゴンとミミッキュはでんきねずみの夢を見るか?』だ! 楽しみだな! それもこれも全部、実況と解説を兼ねる司会の情熱イキリンコがお送りするぜー! んじゃ、シーユーアゲイン!! また来週ぅ~!』

 

『────この番組は、シンオウ地方観光協会、コトブキテレビ、ハクタイテレビ、ほかご覧のスポンサーで、お送りしました────』

 

 食堂で小さな拍手が上がる。倉本千奈や風野灯織などの拍手だ。

 

「いやー。濃い一時間でしたねー」 アルファは席を立って水を飲みに行く。

「面白かった! わたしもあれやりたい! 今度プロデューサーさんに頼む! 冬優子ちゃんと愛依ちゃんに勝つぞー!」 芹沢あさひは興奮気味に言い出す。

「次回は初星学園……? そういえば咲季が妙に分析していた気がする……」 篠澤広は感づく。

「ええ。プロデューサーが取ってきた仕事でね。今度は『Re:IRIS(リイリス)』でホウエン地方あたりのジムチャレンジをするようなの」 故に花海咲季はテレビを見ることで研究していた。

「はぁ!? なにそれ知らないんですけど!! まーた咲季だけ学園プロデューサーとイチャイチャしていち早く情報手に入れちゃってさ~! ってか、ホウエン地方って暑いとこじゃん! うっそだろぉ!?」 藤田ことねが叫ぶ。

「ふっ……うちの学園プロデューサーは『わかってる』ね……こんな面白い企画、アイドル業界で流行らないわけがない。後追いが増えてファンが萎える前に、いち早く流行を追いかけて話題に乗るつもりなんだ。いいね、それじゃあライバルは咲季とことねか……やろうよ、ポケモンバトル。ま、私の圧勝で番組の場面、全部かっさらっちゃうけどね」『アツイノ イヤダァアアアア!! サバイバルダケハ イヤダァアアア!! タマムシシティ トカガイイヨー!!』 てまりインコは泣き叫ぶ。

「……手毬。今度一緒に、日焼けスプレーや虫刺され対策のグッズを買いに行きましょうか……」 花海咲季は呆れながら手を貸す。

「それあたしも同行するわ。今だけは手を組んどいたほうがいいと思うし……」 青ざめる藤田ことねもその手を取った。

 

 そこでイルミネと放クラが応援する。

 

「ほ、ほわっ……! テレビ、楽しみにしてる、ね……!」

「が、頑張ってください! リイリスのみなさん……!」

「あたしも放送日は、またここで応援するね!」

 

「咲季さんたちも……!! 楽しみですーっ!」

「三人とも……森だけは、ほんとにキヲツケテ……ッ!!」

「あー……あとテントの中に虫除けとか置いといたほうがいいぞー? 目が覚めたらスマホにバチュルが付いててさ……充電残量が全部吸い取られちまってて……」

「ふふ……お三方は、いったいどのようなポケモンと、絆を育むのでしょうか……」

「私も楽しみにしているわ! ファイトよ!」

 

 かくしてリイリスのホウエン地方ジムチャレンジは、また別の過酷さを極めた旅路となったとか、なんだとか。

 そして放クラ企画とリイリス企画が立て続けに人気を博したことで『アイドル×ポケモンの旅路』ブームが大流行したとか。他のアイドル達もその流行に乗っかることで、一時期は社会現象と化し、あらゆるSNSを席巻したとか、なんだとか。

 

 それはまた、別のお話。

 

          §

 

 

 





 あとがき

 下記の能力値の詳細は、次回「pSR【パルデア編/駆け出し合理熱戦】黛冬優子・樋口円香・鈴木羽那」のあとがきを参照。

【小宮果穂】
『コリンク♀』 賢さ:反応力A 記憶力B 学習力B 応用力C 協調力B 習得技:にどげり・スパーク・とっしん・ほのおのつめ・げんわくのひかり 生態技:筋肉伸縮で電気生成・危機感知で体毛から閃光 複合技:疑似ワイルドボルト(前足筋肉伸縮電気生成+突進+スパーク)
『ヨーギラス♀』 賢さ:反応力C 記憶力B 学習力C 応用力C 協調力C 習得技:???? 生態技:土食 複合技:????
『ヤヤコマ♂』 賢さ:反応力A 記憶力B 学習力B 応用力B 協調力B 習得技:アクロバット・とんぼがえり・ダブルウイング 生態技:興奮で体温倍加=火傷級 複合技:????

『スボミー♀』 賢さ:反応力C 記憶力B 学習力B 応用力C 協調力B 習得技:???? 生態技:毒の花粉 複合技:????
『アブリー♀』 賢さ:反応力A 記憶力C 学習力B 応用力B 協調力B 習得技:しびれごな・かふんだんご・すりかえ・むしのさざめき 生態技:感情感知 複合技:‐ 戦術:「しびれ花粉団子すりかえ虫のさざめき誘爆戦術」
『アブリボン♀』 賢さ:反応力A 記憶力B 学習力A 応用力A 協調力A 習得技:しびれごな・むしのさざめき・こうそくいどう・ついばむ 生態技:感情感知・花粉団子作成・花粉団子は濡れると爆発 複合技:‐ 戦術:「しびれ花粉団子すりかえ虫のさざめき誘爆戦術」「花粉団子すりかえついばむ」
『マリル♀』 賢さ:反応力B 記憶力B 学習力B 応用力B 協調力B 習得技:???? 生態技:水を弾く体毛・弾く力で潜水加速 複合技:‐

『ヒノヤコマ♂』 賢さ:反応力A 記憶力B 学習力B 応用力B 協調力A 習得技:でんこうせっか・ニトロチャージ・こうそくいどう・アクロバット 生態技:嘴炎粉・腹部炎袋の点火加速 複合技:‐
『ケーシィ♀』 賢さ:反応力B 記憶力A 学習力A 応用力A 協調力C 習得技:テレポート 生態技:18h睡眠・超能力 複合技:‐
『ドッコラー♂』 賢さ:反応力B 記憶力B 学習力B 応用力B 協調力B 習得技:???? 生態技:角材 複合技:‐

『ヤミカラス♂』 賢さ:反応力B 記憶力B 学習力B 応用力B 協調力C 習得技:つばめがえし・あやしいひかり・だめおし・こごえるかぜ・ねっぷう・でんじは 生態技:‐ 複合技:‐
『ゴース♀』 賢さ:反応力B 記憶力C 学習力B 応用力A 協調力C 習得技:???? 生態技:有毒ガス包囲or皮膚吸収で気絶判定or弱体化・風で本体縮小化 複合技:‐
『コダック♀』 賢さ:反応力C 記憶力C 学習力C 応用力B 協調力C 習得技:みずのはどう・かなりばり・しねんのずつき 生態技:頭痛の超能力 複合技:‐

『ムックル♀』 賢さ:反応力B 記憶力C 学習力C 応用力C 協調力B 習得技:つばさでうつ・がむしゃら・でんこうせっか 生態技:強靭腕力・喧鳴 複合技:疑似ブレイブバード(翼で打つ+電光石火)
『シママ♀』 賢さ:反応力A 記憶力B 学習力B 応用力B 協調力B 習得技:???? 生態技:発光の信号で会話 複合技:‐
『ゼブライカ♀』 賢さ:反応力A 記憶力A 学習力A 応用力A 協調力A 習得技:でんじは 生態技:稲妻と雷鳴の如し瞬発疾走 複合技:‐
『フロストロトム‐』 賢さ:反応力A 記憶力A 学習力A 応用力S 協調力B 習得技:ふぶき・リフレクター・ひかりのかべ・ボルトチェンジ 生態技:電化製品の憑依 複合技:‐

   ◆

『平均的なハヤシガメ‐』 賢さ:反応力B 記憶力B 学習力C 応用力C 協調力B 習得技:‐
『ナタネのハヤシガメ♂』 賢さ:反応力A 記憶力A 学習力B 応用力B 協調力A 習得技:ステルスロック・うちおとす・リーフストーム

『平均的なチェリンボ‐』 賢さ:反応力C 記憶力C 学習力C 応用力D 協調力B 習得技:‐
『ナタネのチェリンボ♀』 賢さ:反応力B 記憶力B 学習力B 応用力C 協調力A 習得技:にほんばれ・しんぴのまもり・まるくなる・ころがる

『平均的なロズレイド‐』 賢さ:反応力A 記憶力B 学習力B 応用力A 協調力B 習得技:‐
『ナタネのロズレイド♀』 賢さ:反応力S 記憶力A 学習力A 応用力S 協調力A 習得技:ねをはる・グラスフィールド・ギガドレイン・やどりぎのたね・ミサイルばり・にほんばれ・ソーラービーム・かげぶんしん 生態技:毒刺のムチ(右は即効性・左は遅効性)・マント 複合技:‐ 戦術:「固定戦術」

          §


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