「あ~保坂健人よ、死んでしまうとは情けない!」
美青年は両手を広げて高らかに言った。
それを言われた彼…保坂健人は真っ白な空間にいた。
「いや~一度やってみたかったのよね、これ」
ノーリアクションの健人に対して美青年は笑いながら言った。
「RPGとかで王様とか神父が言うやつ?一回死んだ人にしか言えないからねこれ」
美青年はお喋り好きなのか話し続ける。
「それにしても君、リアクション薄いね~」
「…まあ、死んだのは自覚してるので」
健人はそう言った。
ちなみに彼も顔立ちはそれなりに整っている。
「そうだよね~君、刺されて死んだんだもんね~あ、僕の名前はロキっていうんだけど知ってる?もちろん知ってるよね?そう神様」
「…それでその神様が私に何か?」
健人は生前社会人だったのでプライベート以外では一人称を私と名乗っている。
「いやね、知っての通り俺も昔はやんちゃしたわけよ。父上や兄上に喧嘩売ったり、人間に化けて引っ掻き回したり…で色々やり尽くしてもう飽きたから今度は人間を転生させようと思ってね。それで君を選んだってわけさ」
「なるほど…ということはここは死後の世界や天国ではなく」
「正確にはその狭間ってところだね」
「そうですか…」
「ちなみに今の君の年齢だけど死んだときの24歳じゃなくて16歳にしてあるよ」
ロキはどこからか鏡を取り出して健人に見せる。
「若い方がいいでしょ。かといって赤ん坊や幼少期からっていうのもめんどくさいしね。転生ものにはありがちだけど」
「それで私に何をしろと?」
「君には異世界に転生してもらう。天国か異世界の二択を迫る神もいるけどそんなのつまらないから異世界一択!そして、異世界に転生するにあたって君には特典を授けよう!なんと3つ!すごいでしょ!他の神なら1つだけど僕は格が違うんだ!ドラゴンボールの地球の神龍の常連特典みたいでしょ!そこに落ちてるリストから選んでもいいし、口頭でもいい。さあ、願いを言え!」
散らばってる紙を指差した後、正面に向き直って最後だけ神龍風に言い放ったロキ。
「質問いいですか?」
「いいよ。あ、質問で願いを消費したなんてセコい真似はしないから安心してね」
「その世界にレベルとかはありますか?」
「あるよ。レベル、ステータス、スキル、魔法とかファンタジーものが詰め込まれてるよ」
「レベルの上限は?」
「999。いった奴はいないけどね」
「では1つ目の願いは、私の成長限界をなくしてください」
「つまりレベルやステータスに上限をなくすってことか~あちらの世界には冒険者カードっていうのがあってレベルの表記がエラーになる可能性がある。ならレベル999以上のステータスは+aということでいいかな?」
ロキは顎に手を当てながら考えを口にした。
「構いません」
健人は即答した。
「それで2つ目は?」
「元の世界の知識や技術を使うことはできますか?」
「できるよ。神によっては限度があるけど僕なら大抵のことは叶えられる」
「ではハリー・ポッターの世界の呪文や魔法を使えるようにして欲しい。段階的に」
「つまりレベルに応じて使える魔法が増えるってことか…ポケモンみたいだね」
ロキは面白いことを考えるなぁという目で健人を見た。
「できますか?」
「もちろんできるよ…3つ目は?」
「あちらの世界での通貨はどうなっていますか?」
「エリスっていう女神の名前と同じエリスになっている。価値はまあ円と同じと思ってくれていい」
「では1ヶ月生活に困らない最低限の資金をください」
「慎重だね~」
「何事も元手がなければ始められません」
「さすがビジネスマン。さて、これで3つの願いは聞いた訳だが、僕からのサービス情報だ。まず言語だが会話は日本語で大丈夫だ、原理は聞かないでくれ、ただし文字はあちらの文字だ。けど頭で何が書いてあるのか理解できる。たまに他の転生者が書いた日本語もあるけどね。そして、最後に1つだけ。あちらについて冒険者登録したら街を出て東の森にダンジョンがある。そこに僕が君のために作ったダンジョンがある」
「随分と至れり尽くせりですね」
ロキのサービスに健人は警戒する。
「ただのものは怖いって?その感覚も大事だけど僕は単純に君が気に入ったんだ。おっと恋愛的な意味じゃない、人間的な意味さ」
「…分かりました。今はあなたの言葉を信じます」
「いいね。であちらの世界には魔王ってのがいてそれを倒すのが目的なんだけど…」
「…それは即決しかねます」
少し考えた後、健人はそう答えた。
「…どうしてかな?」
ロキは目を細めて訊いた。
「善悪というのは主観で印象が変わってしまう。だからその魔王に会って話してそれから判断します」
「いいね~やっぱり君は面白い。いいよ、君に任せる。あと最後に1つだけ」
「さっき最後と言ってませんでした?」
「これが本当に最後だよ。僕からのささやかなお願いさ。あちらの世界でもし神と同じ名前の子供に出会ったらその時はどうか力になってあげてくれないかな」
「それも会って判断します」
「今はその言葉だけで十分だよ」
そう言うロキの表情は先程までとは違って穏やかで慈しむようなものだった。
彼は一歩下がると、
「保坂健人よ、君の新たな人生に幸あれ」
ロキが送ったその言葉と共に健人の体は光に包まれたのだった。
保坂健人。
生前の年齢は24歳、転生後は16歳。
顔立ちは整っていて、社会人だったので慎重な傾向がある。