※この作品はR-18です。

この素晴らしい世界に保険を   作:kuroto xanadu

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教育って難しい

 昼食を終えた午後。

ケントが子供達を連れてやってきたのは家の地下室であり、いくつかある部屋の中でまるで大学のような教室で前の席に座っているのはクロノス、ダグザ、フレイ、フレイヤ、ティアマト、イシュタル。

主にアークウィザード中心で、他の子供は後ろの席に見学している。

机の上には長さ30cmほどの杖、魔法の教本と白い羽根が置いてある。

 

「今日から魔法を教えていくよ。その杖は俺からプレゼントだ」

 

イシュタル達は机の上の杖を取って目を輝かせる。

 

「皆がこれから社会で生きていくためには自分の身を守る術が必要だ。魔法やそれ以外のこともこれから丁寧に教えていくよ」

 

「「「「はい!」」」」

 

イシュタル達4人が返事をし、クロノスとダグザは無言で頷く。

 

「よし。では今日は一番簡単な浮遊の魔法を教える。見本を見せるね」

 

ケントは机の上の羽根にニワトコの杖を向ける。

 

「ウィンガーディアム·レヴィオーサ」

 

呪文を唱えると羽根がフワフワと宙に浮かび始めた。

 

「うわぁ~!」「すごい!」と子供達から感動の言葉が聞こえる。

 

「呪文は正しく発音すること。振り方はこう。ビューン、ヒョイっと」

 

ケントは羽根を机の上に着地させた後で杖を振って指導し、イシュタル達も杖を持つ。

 

「ウィンガーディアム·レヴィオーサ」

 

すると、最初に杖を振って詠唱したイシュタルの目の前にある羽根がフワフワと浮かび出す。

 

「あ…」

 

自分で出来たことに驚くイシュタル。

 

「(まさか1回目で出来るとは凄い才能だ)」

 

ケントも内心で驚いている。

それから1時間行って上手に出来たのはイシュタル、ダグザ、ティアマトの3人。

他は10cmほど浮いたがまだまだ練習が必要だろう。

 

 

◇◇◇

 

 

 午後2時。

次に集まったのは同じ地下室だが、先程の教室に比べてかなり広く天井も数十メートルある。

そんなに天井が高ければ本来地上まで吹き抜けになっているがケントが部屋そのものに空間拡張魔法を施している。

 

「次はこれ」

 

ケントが見せたのは、

 

「箒?」

 

ティアマトが疑問を口にする。

 

「ただの箒じゃない。空を飛べる魔法の箒だ」

 

「魔法の箒!?すげぇ!」

 

オーディンが目をキラキラと輝かせる。

ケントはその反応にフフッと笑みを浮かべた後、イシュタル達6人に向き直る。

6人の足元にはそれぞれ1本ずつ箒が置いてある。

『ニンバス2001』。

ケントの『ファイアボルト』の次に速い箒だ。

それが6本ある。

 

「質問です」

 

ダグザが挙手した。

 

「どうぞ」

 

「何故箒なんですか?飛行魔法とかあるのに…」

 

「いい質問だ。飛行魔法でも空は飛べるし制御によってはスピードも出せる。箒を使うのは魔力効率の問題だ」

 

「魔力効率?」

 

ダグザが聞き返す。

 

「飛行魔法は飛行中も魔力を使うが、この箒は魔法適性さえあれば魔力を消費せずに済む。こんな風にね」

 

ケントが『ファイアボルト』に跨がると宙に浮かび出して猛スピードで飛び回る。

「おおっ!」とテンションが上がる子供達。

三周ほど周回を終えたケントは床に着地する。

 

「ウィザード系やそれに準ずる職業なら乗れる。練習は必要だけどね」

 

ケントは『ファイアボルト』を床に置く。

 

「それじゃ始めようか。まずは床に置いてある箒に手をかざしてこう言うんだ。『上がれ!』」

 

ケントがそう唱えると床の『ファイアボルト』がブワッと浮かび上がり手の中に収まる。

 

「上がれ!」

 

イシュタルが唱えると箒が浮上し手の中に収まる。

 

「出来た…」

 

自身の成果に喜ぶイシュタル。

初めてこれが出来るのは素晴らしい才能である。

 

「上がれ」

 

ダグザが淡々と唱えると同じように箒が手の中に収まる。

 

「上がれ…上がれ…上がれ!」

 

フレイヤは苦戦しているようで箒が床の上で転がってなかなか浮上しない。

 

「上がれ!」

 

フレイが大声で唱えると箒がまるで剣道の面打ちのようにおでこを叩いた。

 

「いってぇ!」

 

痛みで悶絶するフレイ。

 

「アハハ!」

 

「笑うなよ…」

 

爆笑するフレイヤにそう返すフレイ。

 

「それじゃ、箒に跨がって」

 

ケントの指示で6人が箒に跨がる。

 

「合図をしたら上に飛んで…」

 

「え、あっ…うわわっ!」

 

ケントが合図をする前にイシュタルが急に浮いた。

 

「ちょ、とまっ…止まって~!」

 

そのまま勢いよく前進したイシュタルは壁に激突しようとしてしまう。

ケントは『ファイアボルト』に跨がると猛スピードで壁とイシュタルの間に入り、イシュタルを受け止めた。

 

「大丈夫か?」

 

「は、はい…///」

 

腕の中で顔を赤くして縮こまるイシュタル。

彼女を抱いたまま地上に着地したケントはそっと彼女を下ろす。

 

「ありがとうございます…///」

 

イシュタルの顔はまだ赤い。

 

「どういたしまして。皆も慌てずにゆっくりやっていこう」

 

ケントは他の子供達にも声をかける。

それから6人は少しずつ飛べるようになり上達した。

 

「社長、退屈してきた!俺も特訓したい!」

 

「私も!」

 

見学に飽きてきたトールとフェンリルが手を挙げた。

他の子供達も同様の反応を示している。

 

「そうだね。魔法の次は戦闘訓練といこうか」

 

 

◇◇◇

 

 

 やってきたのは玄関の内側。

 

「外でやるのか?」

 

トールが両手を頭の後ろで組みながら訊く。

 

「いや、この扉には仕掛けがあってね」

 

ケントはドアノブについているダイヤルを回す。

ダイヤルの部分には赤、緑、黒、白の4色がルーレットのように分けられており、上には矢印がある。

ケントはダイヤルの黒を矢印に合わせる。

ドアを開くとそこにはアクセルの街ではなく闘技場のような空間が広がっていた。

広さは東京ドームくらい、照明は魔力が込められた石…魔導石によって灯されている。

 

「トールとフェンリルには主に近接戦闘の訓練をしてもらうわけだけど筋トレとランニングは毎日してもらうとして…その他は俺と模擬戦形式で戦ってもらう」

 

「マジ!」

 

「ご主人様と?嬉しいのだ~!」

 

トールとフェンリルが喜び、他の子供達から「ずるい~」と不満が漏れ出す。

 

「皆にもチャンスはあげるよ。それでまずトール」

 

「おう!」

 

トールが前に出る。

ケントは収納魔法で小槌を取り出して地面に落とした。

地面は小槌の重さで何と小さなクレーターを作り出した。

その衝撃に一同が驚く。

 

「これを持ち上げてみなさい」

 

「…ああ」

 

トールが一瞬戸惑いつつ小槌を握って持ち上げようとする。

 

「ふんっ!ん…ふぎぃぃ!うおぉぉぉ!」

 

しかし、どんなに力を入れても小槌は持ち上がらない。

 

「頑張れ!」

 

「男を魅せろ!」

 

「気合いを入れろ!」

 

他の子供達から応援される。

 

「この!1㎜も上がらねぇ!」

 

「うん。だってそれレベル100を超えないと上げられないからね」

 

「ふざけんな!やり損じゃねぇか!」

 

ケントの一言に小槌から手を離してツッコミを入れるトール。

 

「そのハンマーの名は『ミョルニル』。俺が鍛冶スキルで作ったハンマーでレベル100以上でないと扱えないように設定してある」

 

「何でそんなことを…」

 

「未熟な者が強すぎる力を持つと扱いを間違えて自分だけでなく周りの人間も傷付けてしまうからだ。力を持つ者にはその責任がある」

 

「…分かった」

 

頭を掻いた後に納得した答えを出すトール。

 

「トールにはこれを使ってもらう」

 

ケントがまた収納魔法で小槌を取り出してトールに渡す。

 

「軽い…」

 

「そのハンマーのステータスは君のレベルに合わせてある。君のレベルが上がるとハンマーのステータスも上がる。つまり君が強くなるとハンマーも強くなる。ハンマーのステータスが上がるのはレベル99まで。レベル100になってミョルニルを手にした時がそのハンマーの卒業というわけだ」

 

ケントがなぜここまで的確に指導できるのか。

それは彼の『鑑定』スキルが対象の適性も分かるからだ。

 

「ハンマーと一緒に強くなる…俺とハンマーは一心同体ってわけか…ありがとう社長!俺、強くなるぜ!」

 

トールはケントの眼を見て言った。

 

「ちなみにそのハンマーもミョルニルも大きさを自在に変えられるよ」

 

「どうやるんだ?」

 

「頭の中でイメージするだけでいい」

 

「イメージ…」

 

トールは目を閉じてイメージする。

すると、小槌だったハンマーがトールの2倍の大きさの大槌に変化した。

 

「うおっ!お、おっととと!」

 

バランスを崩しかけるトールの大槌をケントが片手で支える。

 

「サイズが変わるとバランス感覚も変わるから気をつけて」

 

「お、おう…」

 

「次は戻してみて」

 

「分かった」

 

トールは再びイメージしてハンマーの大きさを元に戻す。

 

「フォームは前に教えた通りに、あと素振りは欠かさないように」

 

「分かった」

 

ケントの言うことを素直に聞くトール。

トールにとってケントは憧れの存在なのだ。

 

「次は…」

 

ケントはフェンリルに視線を移す。

 

「ご主人様、私なんでもやるのだ!」

 

フェンリルは嬉しそうに尻尾をブンブンと振っている。

 

「フェンリルはスピードを活かした戦闘スタイルと変身魔法を覚えてもらう」

 

「「「変身!」」」

 

ケントの言葉にアポロン、ホルス、マリナの3人が反応する。

 

「変身って何?」

 

「仮面ライダー?」

 

「ウルトラマン?」

 

「そういう変身じゃない」

 

「「「え~!」」」

 

3人の問いにケントは否定し、3人はがっかりした声を出す。

 

「変身魔法は後で説明するけど…フェンリル、君のスピードは俺を除けばこの場で1、2を争うくらいだろう」

 

「本当!?」

 

「ああ、本当だ」

 

ケントはフェンリルの頭を撫でる。

 

「わふ~!」

 

気持ち良さそうな顔をするフェンリル。

その光景を羨ましそうに見つめるイシュタル。

 

「イシュタルも撫でてもらう?」

 

ティアマトが横から囁く。

 

「え、べ、別に私は撫でて欲しいなんて思ってないから」

 

「そう?お願いしたらしてくれると思うけど」

 

「いいんです!」

 

プイッとそっぽを向くイシュタル。

 

「(あらあら…)」

 

イシュタルの態度に苦笑するティアマト。

それからケントVSトール&フェンリルの模擬戦が始まったのだが結果は当然ケントの圧勝だった。

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