※この作品はR-18です。

異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる   作:龍いち

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第1章 レオンとロクサーヌ【Side レオン】
プロローグ


俺はレオン。

あと3日。冬の1日目に20歳になる。

 

俺が10歳のとき、何処かの町に向かうため、家族と数名の護衛奴隷とで馬車で旅をした。

旅は順調だったけど、町まであと半日というところまで近づいたとき、街道で盗賊に襲われた。

 

その際、護衛奴隷や父親と一緒に俺も剣を取って戦い、未熟ながらも幼いときから習っていた剣術を駆使して何人かの盗賊を倒したけど、戦闘後に生き残っていたのは自分と父親だけだった。

 

母と弟は馬車の中に隠れていたはずだったけど、何故か二人とも外に出ており、馬車の近くで血を流して倒れていた。

 

二人を見つけたとき、俺はその場にへたり込んでしまったけど、親父は二人に駆け寄ると、冷静に状態を確認しはじめた。

 

俺は冷静に対応する親父を見て、“もしかして生きている?”という思いが頭に浮かび少しだけ心を持ち直したけど、すぐに親父が肩を震わせて涙を流しはじめたので、地の底まで心が沈んだ。

 

その後、親父は母と弟の遺体を丁寧に寝かせていたような気がするけど、それから二人をどうしたのか、俺がどうやって家に帰ったのか、全く記憶が無い。

あまりにも辛い状況だったので、きっと俺の心が自分を守ろうとして、記憶を消してしまったのだろう。

 

それ以来、血の繋がりのある家族は父親だけとなってしまったけど、幸い家は代々奴隷商館を経営していて、多くの使用人を雇っていた。

そして、傷付いた俺にみんなが優しくしてくれたので、何とか立ち直ることが出来た。

 

父親との関係も良好で、俺に期待して後継者として育てると公言してくれているので、もうすぐ20歳になる今は、表向きは奴隷商人として商館を継ぐべく修行中の身だ。

 

表向きと言っていることには理由がある。

それは、俺には普通の人にはない能力があり、探索者としても超一流だからだ。

ただ、俺の能力は他人には明かせないので、インテリジェンスカードに表示される職業は奴隷商人にしているのだ。

 

実は、盗賊との戦いのあと、俺は前世の記憶を取り戻した。そして記憶の中の世界は、こことは異なる世界だった。

前世の最後の記憶は、“俺はごく普通の高校生で、朝通学しているときに、突然何かにぶつかられて目の前が真っ暗になった”というものだったので、たぶん不慮の事故で死に、異世界に転生したんだと思っている。

 

異世界転生なんて小説の中ではありふれた話だったけど、まさか自分の身に起こるなんて思いもしなかったので、当時はかなり戸惑った。

前世の記憶では、今いる世界は[異世界迷宮でハーレムを]という小説で語られた世界らしく、主人公は確か“ミチオ”という青年だったと思う。

 

表現が曖昧になってしまったが、これには理由がある。

 

先ず、俺が取り戻した前世の記憶は断片的なものだった。

なので[異世界迷宮〜]の記憶も曖昧なものだったのだ。

 

ただ、この世界は[異世界迷宮〜]の小説に世界感が似ていて、いくつかの町の名前も一致していた。

さらに、俺の親父はアランという名前の奴隷商人で、ベイルという町で商館を営んでいる。

これも[異世界迷宮〜]の小説と合致していた。

 

他にも、この世界には迷宮があったり、魔物がいたり、魔法があったり、人間以外の種族がいたり......

 

そんな感じでいくつかのことが前世の記憶にある小説で語られていたことと一致していたので、今いるこの世界は[異世界迷宮〜]という小説の中の世界なのだと推察出来た。

だが、親父以外の小説に登場していた人物とは出会えていないので、記憶が戻った当時は“全てが同じではない。たぶんこれからの自分の行動により、未来は変わってしまうだろう”と、漠然と考えていた。

 

とは言っても突然前世の知識なんておもちゃを与えられた10歳の子供が我慢することなんて出来るはずはなく、親父に隠れて色々と試すようになったのは、必然だった。

 

はじめは、この世界には無い料理を作ろうとしたけど、前世の俺は食べる専門だったらしく、完成品のイメージはあっても作り方なんて全くわからなかった。

それでも前世の味を再現しようとしたけれど、食材も調味料も前世とは異なり料理スキルもない俺には、食材を無駄に消費して、不味い料理を作ることしか出来なかった。

 

四苦八苦しながらも料理を作ろうとしていた俺に同情して、商館の料理人が手伝ってくれたこともあったけど、しばらくすると、「申し訳ないけど料理は俺たちに任せて、坊っちゃんは遊びに行ってください」と言われて厨房からつまみ出されてしまった。

 

仕方がないので料理は諦め、この世界にはない便利グッズを作ろうなんて考えたこともあったけど、結局材料が揃えられず、便利グッズの構造も分からなかったので、それも早々に諦めた。

 

結局何も出来なかったので、前世の記憶なんて[異世界迷宮〜]の主人公のように魔物を倒して強くなるのに多少役に立つくらいの意味のないものだったと、少しがっかりした。

 

そう考えてたいした期待もせずに身体を鍛えはじめたのだけど、そこではじめて自分にはこの世界の常識ではあり得ない能力があることに気が付いた。

 

 

[異世界迷宮〜]の小説の世界では、主人公は魔物や盗賊を倒して身体を鍛え、特定の条件を達成して多くのジョブを獲得していた。

そして、そのレベルを上げて上位ジョブに転職し、どんどん強くなっていった。

さらに、自分以外のパーティーメンバーを全て女性奴隷で揃えてハーレムを作り、毎日楽しそうに暮らしていた。

 

自分に特別な能力があることに気が付いたとき、“俺もあの小説の主人公のようになれるのでは?”と考えた。

なので、親父に内緒で剣術の訓練をしたり、時々森に入ってスローラビットなどの魔物を狩ったり、少し強くなってからは迷宮で魔物を狩ったりして密かに身体を鍛えていた。

そして、多くのジョブを獲得し、それを組み合わせてさらなる強さを求めるようになっていった。

 

 

この世界の常識では、人が就けるジョブは1つだけだ。

ギルドで修行すれば、そのギルドが斡旋しているジョブに転職出来る可能性があるし、転職後に経験を積めば、さらに上位のジョブに転職出来ることもある。

しかし、どこまでいっても就けるジョブはどれか1つだ。

 

だけど、俺は同時に複数のジョブに就くことが出来た。

特別な能力があることに気が付いたときに分かったのだが、[鑑定]や[キャラクター再設定]、[獲得経験値上昇]などのスキルが使えるようになっていたのだ。

 

むしろ、それが使えたから特別な能力があることに気が付いたのか?

その辺りはよく覚えていない。

 

いくつかのスキルと同時に[ワープ]や[メテオクラッシュ]、[ガンマ線バースト]などの魔法も使えるようになっていた。

それに、[異世界迷宮〜]の主人公と同様に、ボーナスポイントの振り分けが出来て、ボーナス装備を出すことまで出来たのだ。

 

だから最初は剣や魔法、そしてスキルを駆使してどんどん強くなり、それが楽しくて仕方がなかった。

結果、今ではかなりの強者になれたと思っている。

 

但し、王族や貴族がいるこの世界では、力を持った平民の末路なんて火を見るより明らかだった。

だから、出る杭になって打たれることが無いように、自分の能力についてはひたすら隠し通している。

 

しかし、目指すところのない強さの追求なんて飽きがくるものだ。

なぜなら身体を鍛えてどんどん強くなっても、自分の能力は公言できず、活かすすべも無いからだ。

なので、いつの間にか強くなることへの熱は冷め、自分を鍛えることはやめてしまった。

 

そして、この世界に染まってしまったからか、前世の記憶を取り戻してからもう10年も経っているからなのかはよくわからないけど、取り戻したはずの記憶も印象的なこと以外は再び忘れてしまった。

 

今では[異世界迷宮〜]の主人公のようになりたいという気持ちはすっかりなくなってしまい、親父のあとを継いで立派な奴隷商人になりたいと思っている。

その為、商館の運営助手として、奴隷の仕入れや取り扱いかた、売却に関するノウハウについて修行を重ねているのだ。

 

ただ、実は2年前から商館の運営助手と並行し、親父のパーティーメンバーを引き連れて、迷宮に潜っている。

 

本当は今さら経験を稼がなくても奴隷豪商のジョブを獲得しているので、スキルの面では商売に困ることはない。

だけど、俺に期待して経験を積ませようとしている親父にも、自分の秘密を打ち分けることは出来ずにいたので、力を隠して自分を鍛えているふりをしているのだ。

 

そうやって、前世の記憶がありながらもこの世界にすっかり馴染み、このまま平穏に暮らしていこうと思っていた俺に、突然転機が訪れた。

 

親父が仕入れてきた奴隷の中に、1人の少女を見つけたからだ。

 

あの娘は...... ロクサーヌ?

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