異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
帝都の家から商館に戻ってきた。
そして、親父に今日で帝都の家が整ったことを報告し、予定通り明日2人で引越すことを告げた。
と言っても毎日商館には通うのだけど、一応のけじめだ。
今後、午前中は商館で事務処理と客への対応。
午後は親父が出かけるときはそのまま執務を続け、予定が無いときはロクサーヌを連れて迷宮探索を行う。
因みにロクサーヌは午前中は洗濯と昼食作りの手伝い。
午後まで商館にいるときは、奴隷教育の補助と夕食作りの手伝いを行うことになっている。
親父への報告を終え、俺たちは食堂で夕食を摂った。
俺は食べながら、ロクサーヌに明日からの予定を話した。
「ロクサーヌ。明日は朝食のあと、帝都の家に引越す。
そして、荷物をしまったあとは、迷宮に行こうと思う」
「かしこまりました。戦闘はお任せ下さい」
「ああ。俺は後衛だから、頼りにしてるよ」
「はい」
「ところでロクサーヌは、何階層まで行ったことがあるんだ?」
何気なく聞いてみると、「4階層です」と彼女は胸を張って答えた。
「そうか...... ふむ......」
4階層か......
確か彼女は獣戦士Lv6だったはずだから、もう少し上の階層に上がれていてもおかしくはないのだが、ソロで戦っていたのだろうか。
話す雰囲気から迷宮を怖がる感じではなさそうだし...
フッ、これは鍛えがいがありそうだな。
今は特段強いという訳ではないが、俺が育てるんだ。
彼女なら必ず強い探索者になれるだろう。
俺はパーティージョブ設定でロクサーヌのジョブを確認する。
今のジョブは獣戦士Lv6。
それ以外の獲得ジョブは、村人Lv8、農夫Lv1、戦士Lv1、剣士Lv1、探索者Lv1か。
ふむ。そのまま獣戦士のレベルを上げるか、それとも探索者か戦士、剣士のレベルを上げて、派生ジョブを獲得させるか、上位ジョブを獲得させるという手もあるな。
うーん、どうするか......
俺と同じように複数のジョブに就けるなら、探索者や戦士、剣士のどれかをLv30まで上げて、派生ジョブを獲得させるのも良いと思うけど、今はその方法がわからない。
つまり彼女に対して、複数のジョブレベルを上げても今の時点では意味が無い。
それなら、種族固有ジョブは強力だと言われているし、やはり獣戦士で経験を積ませて上位ジョブを獲得させるのが一番だな。
と、すると......
あとはどの階層で鍛えるか、か......
「一度低階層で戦ってみて、様子を見てから何階層に行くか考えるか。それとも... うーん、どうするかな......」
ロクサーヌがどれくらい戦えるのか分からないので、鍛錬する階層選びで悩んでいると、彼女は俺の言葉に思うところがあったようで、少し不安そうに聞いてきた。
「あの、レオン様は何階層まで行ったことがあるのですか?」
ロクサーヌに答える前に、俺は周りを見まわした。
そして、誰もいないことを確認してから彼女の耳元に唇を寄せてささやいた。
「ロクサーヌ。驚いても声を出すなよ」
少し身体を引いてみると、彼女は黙ってうなずいたので、俺は少しだけ小さな声で続きを話した。
「34階層だ」
「!」
「まあソロだったから、他の探索者に会ったとき、そいつらにはかなり驚かれたけどな」
「!!!」
ロクサーヌは約束通り黙っていたけれど、口に手をあて、これでもかというくらい目を見開いて驚いていた。
“目は口ほどに物を言う”ということわざがあるけど、彼女の驚いた顔はまさしくその言葉を体現しているようだ。
それにしても、驚いている仕草も正直可愛過ぎる。
そう思っていたらすぐに表情が翳ってしまった。
そして少し俯くと、彼女はポツリとささやいた。
「あの、私程度の力では...... やはりダメでしょうか......」
そう言いながら肩を落としてしまったので、どうやら俺の探索到達階層を聞いて、自信を無くしてしまったみたいだ。
「大丈夫。ロクサーヌならすぐに強くなれる。いや、俺が強くする。
そのかわり、明日からビシビシ鍛えるから、ついてこいよ」
「はい。頑張ります!」
ことさら前向きな言葉をかけると、ロクサーヌの表情が一気に明るくなったので、これでいいだろう。
その後、食事を終えたので、軽くキスして彼女を部屋に返した。
因みにうちでは、一般奴隷の男は本館2階の大部屋。女は本館3階の大部屋。
戦闘奴隷の男は別館2階の大部屋。戦闘奴隷の女は別館3階の大部屋で団体生活をさせており、鍛冶師や魔法使い、見目麗しい元貴族令嬢などの高級奴隷と売却が決まってから引き取りまで日がある奴隷がいる場合は、別館4階の個室で生活させている。
ロクサーヌは本来は一般奴隷だが、商館にきた日に俺に引き取られることが決まったので、最初から別館4階の個室が与えられていた。
その部屋とも今晩でお別れなのだが、彼女は淡々としていてあまり感傷的な雰囲気ではなかった。
サバサバしてるな。
なんて少し考えたけど、そういう俺も長年暮らした部屋を出ることになる。
だけど、明日からもここに来ると思うと、やはり感傷的になることはなかったので、明日は何とも言えない門出になりそうだ。
翌日。
朝食後に執務室に行き、親父と家令のシモンに挨拶した。
明日も朝から会うのだけど、一応ケジメというやつだ。
その後、ロクサーヌの希望で奴隷世話係のサビアナおばさんにも挨拶し、改めて「明日からもロクサーヌをお願いします」と頼むと、「ふふ。お任せ下さい。坊ちゃまの奥様に相応しい女性となるよう、しっかり教育させて頂きます」と言われてしまった。
俺は照れ笑いしながら「はははは。まだ気が早いですよ」と言ってはぐらかしたけど、ロクサーヌは「お、奥様なんて畏れ多いですっ!」と言って、手をぶんぶんと振っていた。
但し、顔は真っ赤で尻尾も盛大に揺れていたので、満更ではないようだ。
そんな俺たちの姿を見てサビアナおばさんは微笑んでいたけど、スッと真顔になると俺とロクサーヌの手を取って重ね、自分の手で包み込んだ。
そして、俺たちを見る瞳が慈愛のこもったものに変わり、「坊ちゃま。ロクサーヌ。2人のこれからに幸が多いことを祈っております」と言って、快く送り出してくれた。
それから俺たちは商館内の俺の部屋に行き、フィールドウォークで帝都の自宅に移動した。
奴隷たちや使用人がいる場所。ましてや客が来る場所に フィールド ウォークのゲートを出して移動するわけにはいかないので、俺の部屋を出入口にするのは仕方がないことだけど、何とも締まりのない門出となってしまったのは残念だ。