異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
午前中の迷宮探索を終了した後、予定通りクーラタルの商人ギルドに移動した。
そして、受付でライザさんの呼び出しを頼んでいると、見覚えのある男がニヤニヤしながら近づいてきた。
あの品の無いヤツは...... ローレルだったか。
確か、仲買人だがジョブが色魔だったオヤジだな。
「よう兄さん。4人も奴隷を引き連れて、随分と景気が良さそうだね」
「......」
話したくもないので無視していると、ヤツは肩をすくめて勝手に会話を続けた。
「無視するなんて酷いな......
ところでセーブルの小娘はどうだい?
頼んだもんが手に入らなくて不満があるんじゃないのか?」
「どういうことだ?」
思わず返事をすると、ヤツはニヤニヤしながら俺に近づいて声を低めた。
「いや、なにね。
俺はあの小娘がオークションで競り負ける姿をよく見てるのよ。
ちょっと強気に高値をつけられると、すぐ日和って札を降ろしてたからね。
だから、兄さんが困ってるんじゃないかって、心配してるんだよ」
「そりゃあ相手がいることだし、資金の都合もあるから競り負けることはあるだろう。
別におかしなことじゃないと思うけど」
「そうでもないんだな。
あらかじめ入札予定者の情報を掴んでいれば、話を通しておくことも出来るんだよ。
まあ、あの小娘には無理だろうけどな」
「話を通す?」
「あらかじめ落札価格を決めといて、競り合って値段が上がっても決めておいた価格で買取るのさ」
「それじゃ、売り手にメリットが無いのでは?」
「初めから売り手の利益は確保してあるから大丈夫だ。それに、値が吊り上がったうえで俺が競り負ければ、売り手は大儲けだしな」
つまり、談合と詐欺の融合技か。
そして、気に入らない仲買人を嵌めると......
堂々と言うことじゃないだろう。
それともこの世界では常識的に行われていることなのか?
そして、コイツはライザさんはそのメンバーに参加できない。つまり、実力がないと言いたいのか。
談合することが常識か否か、その辺はよくわかんないけど.....
取り敢えずコイツは駄目だな。
どうやらコイツは自分の実績では勝負せず、相手を貶めてマウントを取るタイプみたいだ。
今までもそうやって自分の顧客を増やしてきたんだろうな。
だけど、こういうヤツは信用できない。
どうせ自分に都合のいいことしか言わないだろうし、客を騙して儲ける気なのがバレバレだ。
ついつい会話をしてしまったけど、これ以上は話を聞くだけ無駄だな。
それに、カエデたちをチラチラ覗き込もうとしてるのも気に食わない。
フードで顔を隠してるとはいえ、正面から見ただけでも超絶美少女たちだから、かなり気になっているんだろう。
ムカつく!
さっさと会話を終わらせよう。
「あんたさあ、自分が“売り手と結託して価格操作して、顧客に損させている”って言ってることに気づいてるのか?
それとも俺からなら、口八丁で適当に誤魔化して、価格を引き上げた上積み分で儲けられるってバカにしてるのか?」
「へっ?」
「悪いけど、詐欺まがいの行為をひけらかしながら、他人を貶めて自分の方に引き込もうとするあんたは信用出来ないんだよね。
それに、あんたには前にも言ったと思うけど、俺は商人系のジョブ以外の仲買人とは取引しないって決めてるんだ。
だから、今後、二度と近づかないでくれ」
完全拒否すると、ローレルは顔を真っ赤にして俺のことを睨んだ。
「なっ!こっちが下手に出てりゃ、舐めやがって!
テメェみたいなガキ、簡単に潰せるんだぞ!」
「そうか。
それならあんたから“売り手と結託してオークション出品物の価格操作してるから、言うことを聞かないと潰してやる”って脅されたことを商人ギルドに訴えるけど、いいのか?」
俺が一歩も引かずにいると、根負けしたのかローレルは俺から目をそらした。
「チッ!生意気な!
せいぜい経験不足の小娘と仲良くやるんだな!」
ローレルは捨て台詞を履くと、商人ギルドの奥に戻っていった。
すると、ヤツと入れ替わるようにライザさんがやって来た。
彼女は一瞬ローレルを睨んだあと、俺に話しかけてきた。
「また絡まれたんですか?」
「ああ。ただ、今回はかなりキツく言ったから、もう絡まれることは無いと思うけど」
「それなら良いんだけどね......」
「それより、ちょっと聞きたいことがある......」
俺がそう言うと、ライザさんは素早く周囲を確認して小さく頷き、俺たちを商談室に案内した。
どうやら俺の表情を見て、受付の前では話しづらいことだと察したようだ。
商談室で席につき、俺は先程ローレルが口走った詐欺まがいの行為のことについてライザさんに聞いてみた。
すると、彼女は少し申し訳なさそうな表情をしながら口を開いた。
「価格操作ですか......
表立って行えば、商人ギルドから処分されます。
何故なら自分たちの利益を確保するためにお客様に損をさせる行為ですので、容認したら顧客離れにつながりますからね。
ですので、そのような輩に対して商人ギルドは容赦はしません」
「それなら......」
「ですが、単なる雑談とか個人間の取引だとか言って、裏でこっそり事前交渉している仲買人はいます。
残念ながら、明確な証拠が無ければ訴えることが難しいのです......」
「うーん。アイツを排除するのは難しいのか......
まあ、何度絡まれてもライザさんからアイツに鞍替えすることなんかあり得ないんだけどな」
「ありがとうございます。
ローレルのことは私の方からギルトに報告しておきます。
明確な証拠は無くてもアイツには前科があるので、クレームがあったことを報告しておけば商人ギルドは監視対象としてマークするでしょう」
「マークする?」
「アイツの行動に目を光らせるということです。
訴えることは出来なくても、商人ギルドから目をつけられていたら動きづらくはなるはずです。
そうすれば、あなたのことを疎ましく思っていても、表立っての嫌がらせや、接触してくることはなくなるでしょう。
あくまで表立ってということですが」
「表立って?裏では何かあるってこと?」
「大したことは出来ないでしょうけど、オークションで無駄に競り合ってくることくらいはあるでしょうね」
「なるほどね。
こちらとしては表立ってアイツが絡んでこなくなればそれで十分です。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願い致します」
その後、依頼しているモンスターカードの相場を確認し、牛と蝙蝠のカードを1枚ずつ受け取ったので、追加のカードを依頼してから帰宅した。
帰宅してから少し休憩し、リリアにカード融合を行わせた。
今回作成させたのは詠唱中断のスキルをつけたレイピアと、身代わりのミサンガ。
どちらもミリアの装備だ。
リリアは俺が装備品のスキルスロットを確認出来て、100%融合出来る物にカード融合を行わせていることにすっかり慣れたようで、レイピアとカードを2枚受け取ると、一瞬の躊躇もなくカード融合の呪文を唱えた。
そして、彼女の発した光が収まると、当たり前のようにそこには無傷のレイピアが鎮座していた。
彼女はレイピアは俺に返し、残ったミサンガと芋虫のカードもあっさり融合した。
「今日はこれで融合は終了だ。
もう少し竜革が入手出来たら、後でカチューシャとかブーツを作ってもらうので、よろしく」
「それは良いのですが、ドライブドラゴンを狩りに行くのですか?」
「ミリアのレベルアップしだいだけど、夕方行けたら27階層に寄るつもりだ」
「わかりました」
俺はリリアから身代わりのミサンガを受け取ると、ミリアを呼んで彼女の足首に巻き付けた。
彼女はなぜミサンガをつけるのか不思議そうにしていたけど、カエデから身代わりのミサンガであることを聞くと、ピシッと固まった。
しかし、カエデやリリアが自分たちの足首に巻かれている身代わりのミサンガを見せると、困惑しながらもつけることを受け容れたようだ。
そして、全員の準備が完了したので、俺はリビングの壁にワープゲートを開いた。
行き先はターヘラの迷宮21階層だ。
ゲートを通り抜けて21階層の入口小部屋に出ると、カエデがスッと目を閉じて索敵をはじめたので、リリアたち3人に午後からのフォーメーションを指示した。
午前中はリリアとクレアが前衛でミリアには少し後ろから2人が魔物と対峙する様子を見させていたけど、今からリリアが前衛の真ん中で、左右にクレアとミリアが並ぶ。
しばらくはこのフォーメーションで戦って、前衛3人の連携が良くなったら、ミリアには魔物の間をすり抜けて後の魔物を翻弄するよう動き回る訓練をする。
そして、余裕をもって動けるようになったら、更にそこから攻撃を当てる訓練をして、行く行くは後衛の魔物の魔法詠唱を中断出来るように育てよう。
ただ、十分動き回れるようになったとしても、左右どちらかの魔物と相対しているときに反対側の魔物の魔法詠唱を中断することは厳しいだろう。
そう考えると......
彼女とは反対側に、もう1人遊撃出来るメンバーがいると完璧だな。
ミリアが入ったばかりだけど、最後の1人も素早く動けそうなタイプとするか......
それとも、以前考えたようにゴリゴリの盾役を配置して、魔物の突撃を完全ブロックするタイプとするか......
資金がないのでメンバーの追加は当分先になりそうだけど、後でカエデに相談してみるか......
そんなことを考えながらカエデに視線を送ると、彼女はこちらを見て微笑んでいた。
どうやら索敵は終えていて、俺が思考の海から戻るのを待っていてくれたようだ。
軽く頷くと、彼女は索敵結果を話し始めた。
「左に進むと魔物の群れがいるわ。
グラスビーとフライトラップ、あと、ビッチバタフライね。
正面に進んでも魔物がいるみたいだけど、そちらからは少しだけど他の探索者の匂いもする。
だから、やめておいた方がいいと思うわ」
「分かった。他の探索者との鉢合わせは極力避けたいから左に進もう」
そう言いながら左の通路に向かって歩きはじめると、すぐに他のメンバーも俺を囲うような配置で歩きはじめた。
それから4時間ほど21階層で魔物を狩り続けると、ミリアの剣士レベルが20になった。
だいぶ戦ったし、そろそろ今日の探索は終了しても良いかもな。
カエデたちがドロップアイテムを拾っている間に、俺は今後のことについて少し考えた。
前衛3人の連携はだいぶスムーズになり、ミリアは何度か魔物の間をすり抜けて後衛の魔物に斬りかかっていた。
まだまだ動きにぎこちなさを感じるけど、それでもこの調子なら、明日は22階層より上の階層に行っても大丈夫だろう。
ただ、34階層以上の階層で戦うには、今の装備では心もとない。
だから、ミリアのレベルがもう少し上がったら、ドライブドラゴン狩りに行って竜革を拾ってパーティーメンバーの装備のアップグレードを図りたいところだ。
だが......
正直なところ、剣士の派生ジョブが気になる。
ジョブ名の響が和風だから、派生ジョブは侍とか忍者とか......
大名?将軍?さすがにそこまで日本寄りじゃないよな?
だからといって、上級剣士なんて安易なジョブ名だったら、ちょっとガッカリだな。
転職すればレベル1になるけれど、派生ジョブであっても迷宮で5日も鍛えれば、ドライブドラゴンと戦えるくらいまでレベルを上げることが出来るだろう。
たぶん明後日か明明後日には、ミリアの剣士レベルは30に届くだろうから、有用そうなジョブだったら転職させて、そうでなければ上位ジョブが取得できるまでレベル上げを継続させる。
とにかくパーティーメンバーの装備品を竜革装備で固めるのは後回しにして、直近の目標としてはミリアの剣士レベルを30まであげて派生ジョブを確認することにしよう。
明日からの目標を決めたので、俺はカエデたちに声をかけた。
「今日の探索はここまでにしよう」
「そう?わかったわ」
「かしこまりました」
「わかりました」
「か、かしこまりました」
4人が了承したので帰宅する為、俺は迷宮の壁にワープゲートを開いた。