異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
ハルツ公爵領の迷宮探索に勧誘された翌朝、俺は約束通りクーラタルの商人ギルドの受付でルークを呼び出した。
因みに商人ギルドには俺は一人で来ていて、カエデたちは家で待機させている。
先ず俺が迷宮や冒険者ギルドを回ってから、一度帰宅して彼女たちを連れて目的地に連れて行くつもりだ。
受付の前で3分ほど待つと、ギルドの奥からルークが出てきた。
ヤツは後ろに男を引き連れて来ているので、あの男が案内役なんだろう。
耳が尖っているのでエルフか。
確かライザさんが北方は住民の8割がエルフって言ってたから、たぶんそうなんだろうな。
そう思いながら後の男を鑑定してみた。
キース ♂ 29歳 冒険者Lv21
装備 ダマスカス鋼の剣、硬革の鎧、硬革のグローブ、硬革の靴、身代わりのミサンガ
冒険者か。
まあ、俺を連れて移動するんならそうなるわな。
「お待たせしました。
こちらはミツオ様を案内するハルツ公領騎士団のキースさんです」
「は?騎士団?
おい!貴族絡みは面倒だから勘弁って言っただろ!」
「ハハハハ。彼は単なる案内役です。
ミツオ様が気にするようなことはありません」
「それなら良いが」
「キースです。宜しく」
「ミツオだ。こちらこそ宜しく」
キースに挨拶を返すと、ルークが「では、こちらを」と言ってワッペンを差し出した。
俺は特に何も考えず半ば反射的に受け取ると、彼は一歩後ずさり、「それではミツオ様。宜しくお願いいたします」と言って頭を下げた。
えっ?ルークはついて行かないのか?
一瞬そう思ったけど、すぐに彼の役目は“眼鏡にかなった探索者の勧誘”までで、以降の案内は役割範囲外ということに気が付いた。
しかし、騎士団に案内されるのか。
ほんとに面倒なことにならないんだろうな?
「それでは、パーティー申請をしますので、加入して下さい」
「ああ」
「友に応えし信頼の、心のきよむ誠実の、パーティー編成」
キースがパーティー編成の呪文を唱えると頭の中に加入可否のボタンが浮かんだので、了承した。
パーティーに加入すると、彼はフィールドウォークの呪文を唱えてゲートを開いた。
そして、「では、参りましょう」と言って先に入っていったので、その後についてゲートを抜けると、「リーン」という鈴のような音が響いた。
「何だ?鈴か?」
慌てて周りを見回すと、そこは何処かの建物の中で、やけに広いロビーのような場所だった。
何だここは、城か?
冒険者ギルドってことは無いよな?
なんかヤバい気がする......
後ろを振り返ると壁にエンブレムが垂れ下がっており、そこにはいま抜けてきたフィールドウォークのゲートが開いていた。
いっそのこと商人ギルドに戻っちまうか......
次の行動を決めかねて一瞬躊躇してしまうと、目の前にあったゲートが消失した。
う、遅かったか..... 仕方がない。
そう思ってもう一度前を向くと、ロビーの反対側の方に奥に延びる通路があり、その前の左右には甲冑を身に着けてハルバードを構えた騎士が立っていた。
あんなのが居るってことは、やはりここはどこかの城なんだろう。
そう思いながらキースに「ここは何処だ?」と尋ねると、彼はさも当たり前のように、「ここはボーデ城です。いま騎士団長が参りますので、そのままお待ち下さい」と言い放った。
何だ?俺は嵌められたのか?
困惑しながらも、「冒険者ギルドと迷宮に案内するんじゃなかったのか?」と彼に聞くと、「そうですが、その前にハルツ公領で活動する際の注意事項がいくつかありますので、それについて騎士団長の方から説明させて頂きます」と言って視線を通路の方に向けた。
彼の向いた先に視線を向けると、いつの間にかエルフにしてはやけにガタイの良さそうな男がこちらに向かって歩いてきていた。
アイツが騎士団長か?
そう思いながら鑑定すると、
ゴスラー・ノルトブラウン・アンハルト ♂ 46歳
魔道士Lv61 装備 ひもろぎのスタッフ 身代わりのミサンガ
と表示された。
チッ!コイツが説明すれば済むことだろう!何で騎士団長なんかに面通ししなくちゃいけねーんだ!
しかもあの長ったらしい名前は貴族じゃねえか!
ルークのヤロー騙しやがって!
今度会ったら一発殴ってやる!
騙されてムカついたので、せめてもの腹いせでキースを睨むとヤツは全力で顔を逸らした。
このヤロー!顔を逸らすってことはオマエも共犯か!
思わず怒鳴りそうになったけど、騎士団長の目の前で揉め事を起こすわけにはいかないので必死に我慢した。
「ご苦労様です。
私はハルツ公領騎士団長のゴスラーと申します。
この度は迷宮討伐に御助力して頂けるとのこと、誠にありがとうございます」
騎士団長はそう言うと、軽く会釈した。
高い地位のわりに横柄な態度じゃないところをみると、この人は排他的なエルフじゃないんだろう。
しかし、御助力だと?
俺は情に訴えられて、絆されてここに来たわけじゃねえぞ。
相手は騎士団長だけど、その点は最初にしっかり言っておいた方がいいな。
「ミツオです。
ドロップアイテムを通常の倍額で買い取って頂くことを条件に、無理のない範囲で迷宮探索を行うことを了承しました。
自由にやらして頂けるとのことですが、なにぶん力量不足故、どれほどお力になれるのか分かりません。
ですが、本日から迷宮に入るつもりですので、宜しくお願いいたします」
態度こそ謙ってはいるけれど、そちらの言いなりにはならないということを伝えると、騎士団長の目が一瞬でスッと細まった。
そして、チラッと隣のキースに視線を向けて、すぐに俺に向き直った。
「ええ。その条件で問題ありません。
現在ハルツ公領には3つ迷宮があります。
一番攻略が進んでいるのはハルバー。
次に攻略が進んでいるのはターレ。
最近発見されて、まだほとんど攻略が進んでいないのが、ここ、ボーデの迷宮となります」
「3か所か......」
「こちらとしては、どの迷宮に入って頂いても構いません。
また、迷宮入口に控えている探索者にお渡ししているワッペンを見せれば、無料で攻略中の最上階に案内させます。
それと、ボーデの冒険者ギルドでは、ワッペンを見せると通常のドロップアイテムの買取額に加えて、同額の特別協力金を支払う手筈となっておりますので、買取はそちらの方でお願いします」
「了解した」
「あと、申し訳ないのですが、売却するドロップアイテムは公領の迷宮で拾った物のみとして下さい」
「まあ、当然だな」
「それと最後に一つ。
お恥ずかしい話なのですが、ハルバーやターレには排他的な者が多くおります。
揉め事を起こされても困りますので、住民たちとの接触は控えて頂けると助かります」
「わかった。
食事や物品購入が必要な場合は、ボーデの町を利用する」
「ご配慮頂き、ありがとうございます。
それではミツオ殿。
こちらの者が冒険者ギルドと各迷宮まで案内します。
あとは宜しくお願いいたします」
騎士団長が話し終わると、彼の後ろからキースとは別の騎士団員が歩み出た。
「スレイと申します。
私が案内しますので、宜しくお願いします」
「ミツオだ。
こちらこそ宜しく」
領内の案内はキースじゃないのか。
コイツだったら後でしこたま文句を言ってやろうと思ったのに......
なんだかムカついてもう一度キースを睨みつけると、ヤツはサッとお辞儀をして騎士団長と一緒に後ろに下がっていった。
残念ながら、もうヤツに文句を言える機会は無さそうだ。
その後、スレイと名乗った男のパーティーに加入して、3迷宮を順番に案内してもらった。
そして、最後に冒険者ギルドに送ってもらい、そこで彼と別れてからワープで帰宅した。