異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
4人を連れてワープゲートを抜け、ボーデの冒険者ギルドに着いたので、どの迷宮に入るか決めるために、先ずは各迷宮の探索状況を確認することにした。
俺たちは各迷宮の情報を書き写すため三手に分かれてメモ書きする予定だったけど、進捗状況の掲示板を確認すると、ハルバーは44階層まで進んでいるものの、ターレは13階層、ボーデに至っては2階層までしか探索が進んでいなかった。
「随分偏ってるな......」
「うーん...... これって......
騎士団はハルバーの迷宮討伐に全力を傾けて、先ずは1つ潰すつもりなんじゃないかな?」
「確かにそう見えるな」
「騎士団がハルバーに全力を注いでいるあいだターレとボーデに手が回らなくなるから、ここの領主は探索者をスカウトしてたのでしょうね」
「だろうな。
そうすると、ハルバーの迷宮が討伐されたら俺たちはお払い箱になるのか?」
「うーん、そこまではわからないけど、そのつもりでいた方が良い気がする」
「わかったよ。
そうすると......
あの騎士団長はターレかボーデの迷宮探索を進めてほしいのかも知れないけど、別に仲良くしたいわけじゃないし、向こうの事情に付き合う義理もない。
ここは、11階層まで安全宣言が出ているハルバーにしようと思うんだけど、どうかな?」
「それでいいと思うわ」
「私もご主人様の意見に賛成です」
「私も賛成です」
「私はよく分からないので、ご主人様にお任せします」
「それじゃ、早速ハルバーに向かおう」
みんなの賛同を得られたので、俺たちは冒険者ギルドからハルバーの迷宮入口のすぐ手前に建ててある衝立に移動した。
以前は300mほど離れた大木をフィールドウォークの出入口にしていたらしいけど、俺を各迷宮に案内した騎士から聞いたところによると、公爵閣下の「不便じゃな」の一言により衝立の設置が決まったそうだ。
そういう意味ではグッジョブと言いたいところだけど、逆に考えるとたった一言の我儘で周りを動かせるような貴族となんて、金塊を積まれても付き合いたくはない。
今朝は騙し討ちされて騎士団長に面通しするはめになってしまったけど、今後は間違っても騎士団なんかと鉢合わせしないよう慎重に行動しよう。
そう考えていたのだけど......
迷宮の目の前には大勢の騎士団員がタムロしていた。
100人くらいいるんじゃないか?
一体何があったんだ?
唖然としながらもよく見ると、その一団の中には騎士団長がおり、ゲートを抜けてきた俺を見ていた。
あっ!ヤバッ、目が合った!
マジか!こっちに向かってきやがった!
「おお。ミツオ殿も来られましたか」
「えっと......も?」
騎士団長の言葉に若干違和感を覚えていると、俺の態度で察したのか、彼はこの場の状況を説明してくれた。
どうやらここ数日、ハルバーの迷宮に入った中堅どころの探索者パーティーが戻らないことが続いているらしく、隣のセルマー伯爵領に蔓延っていた盗賊団の一部がハルツ公爵領に流れてきている疑いがあるらしい。
そこで、今からこの迷宮に盗賊が巣くっていないか確認する為、騎士団の総力をあげて探索を行うとのこと。
総力をあげるのは、もし盗賊が見つかったら必ず殲滅するよう公爵閣下から厳命が下ったからとのことだった。
更に、腕に覚えがあるパーティーには是非参加してほしいと今朝方冒険者ギルドに緊急依頼を出しており、既に2パーティーが先行して迷宮に入ったとのこと。
俺たちは依頼を受けてハルバーに来たわけじゃない。
ここは面倒ごとに巻き込まれないうちに他の迷宮に行った方が良いだろう。
そう思って騎士団の前から退散しようとしたところ、騎士団長の後ろから一人の騎士が進み出てきた。
「申し訳ありません。
公爵閣下から、迷宮に入ろうとした者は見知った者でも必ずインテリジェンスカードを確認するよう言われておりまして......」
チッ!長々と話を聞いてるうちに、いつの間にか騎士団に囲まれてる。
俺たちを逃さないつもりか?
それに、コイツは絶対に断われないと思っているのか?
ニヤニヤしながらこちらを見ている。
まだ若そうだけど、どうやらコイツは他種族を見下すタイプのようだな。
お前たちから声をかけてきたのに、いい度胸じゃねえか!
「俺たちはアンタたちに頼まれて公領の迷宮探索にきてるのに、有無を言わさないつもりか?
アンタたちの事情はわかったが、だからと言って俺たちのジョブを開示するつもりは無い」
「そう言われましても、こちらにも引けない事情がありまして......」
「だから何で俺たちがアンタたちの事情に付き合わないといけないんだ!」
「そこをなんとか......」
「なんともならんな」
インテリジェンスカードを確認させてくれと進み出てきた騎士と揉めていると、俺たちのやり取りに堪りかねてか?騎士団長が口を挟んできた。
「申し訳ないがミツオ殿。
話が進まないので、インテリジェンスカードを見せては頂けないか。
その代わり、騎士団の名誉にかけてカードの情報を漏らさないことを誓おう」
「......足りないな」
「なんだと!」
「......」
俺の言葉に若いエルフは怒りの形相を浮かべた。
コイツは感情がストレートに顔に出るな。
それに比べて騎士団長は困ったような表情を浮かべているけど、何を考えているのかよくわからない。
さて、どうするか......
チラッと後のカエデたちを見ると、彼女たちは4人でかたまってこそこそと何かをしているみたいだった。
一瞬疑問に思ったけど、俺や彼女たちのインテリジェンスカードを見られるのは色々とマズイ。
「名誉なんて曖昧なものでは困る。
情報が漏れたら騎士団長とお前の命を頂く。
それを飲むなら俺たちのインテリジェンスカードを開示してやる」
「ふざけるな!この場で捕らえて強制的に確認してもいいんだぞ!」
「あのなあ。もう一度言うが、俺たちはアンタたちに頼まれて公領の迷宮探索にきてるんだ。
パーティーの戦力の開示が必須なら、こんな話は断ってるところだ。
それなのに、いざとなったらこの仕打ちか。
エルフが全員傲慢な性格とは思わないけど、あんたらは度し難いな」
「き、貴様!騎士団を侮辱するつもりか!」
プッツン 来たのか、若いエルフは剣の柄に手をかけた。
「いいだろう。そっちがその気なら、けっ......」
決闘と言いかけたその時、勢いよく袖を引かれて言葉を止められた。
振り返ると、目の前に真剣な顔のカエデが立っていた。
「ご主人様。相手は騎士団だから、これ以上はダメです!」
彼女はそう言いながら俺に抱きついてきた。
いつもと違う言葉遣いに驚いていると、彼女は俺だけに聞こえるような小声で「大丈夫にしたから」と囁いた。
カエデは俺からスッと離れると、「情報を漏らさないなら見られてもいいです」と言って左手を差し出した。
すると、イキリたっていた若いエルフは勝ち誇ったようにニヤリと口端を吊り上げて、「アハハハ。主人と違って奴隷の方は常識を弁えているようだな」と言いながらカエデの左手に向けて手を翳した。
「もし情報を漏らしたら、お前たち二人の命を頂く。
約束だぞ!」
「良かろう」
ムカついたのでもう一度脅しをかけると、若いエルフが反論する前に騎士団長が了承した。
若いエルフは何か言いたそうだったけど、騎士団長に目で制されたのか、諦めて呪文を唱えた。
カエデ ♀ 15歳 妖狐 奴隷
所有者 加藤満男
カエデのインテリジェンスカードを見ると、若いエルフは「ん?」と一瞬疑問顔になった後にカードと彼女を何度か見返した。
そして、騎士団長に顔を向けて口を開きかけた。
「団長。よう、ヒッ!」
「殺すぞ!」
ヤツが騎士団長に顔を向けた瞬間に、俺は剣を抜き放ってヤツの顔に突きつけた。
おかげで機先を制すことが出来、ヤツの言葉を止めることが出来た。
「ミツオ殿。部下が失礼した。
この通りだ。剣を納めて頂きたい」
騎士団長はそう言うと、深々と頭を下げた。
「わかった。だが、次は剣を止めないぞ」
「わかりました。
次にその者がインテリジェンスカードの情報を口走ったら、未遂の段階でも斬り捨てて頂いて構いません」
騎士団長はそう言うと、剣を突きつけられて顔を青くしていた部下に向き直った。
「この大馬鹿者っ!
命を賭した約束をした直後に破ろうとするとは、何たる失態!
サンデス!貴様はハルツ公領騎士団の名誉を貶める気か!
処分は追って伝えるが、この上情報が漏れるようなことがあれば、処分は貴様の家族にも波及するものと心得よ!」
「も、申し訳ありませんでした」
クッ!なんて圧力だ!
空気がビリビリ震えた気がする。
これが騎士団長の本気ということか。
騎士団長の迫力に少しビビっていると、彼は部下に向けて話を続けた。
「わかったら仕事を続けよ」
「へ?」
「但し、貴様はカードを見るな。
呪文を唱えたら、私が許可するまで目を瞑っていろ」
「か、かしこまりました」
騎士団長の一喝で、サンデスと呼ばれた騎士は従順になった。
そして、今更ながらヤツが目を瞑ると、騎士団長はカエデのカードを確認して黙って頷いた。
そして、カエデにインテリジェンスカードを収納させると、俺に向き直った。
「では、次の方を確認させて頂けるか?」
「わかった。ミリア、来てくれ」
「はい。ご主人様」
ミリアは剣士だから見られても問題ない。
でも、あとは......
今のうちにジョブを変えるか。
しかし、変えてる途中に順番が回ってきたら......
そう思いながら騎士団長を観察すると、彼はミリアのインテリジェンスカードをサッと確認して頷いた。
速すぎる。
いや、見るだけなんだからこんなもんか。
そう思いながら次を誰にするのか悩んでいると、カエデが「次はクレア、その次はリリアね。最後はご主人様だから、こっちに並んで」と言ってミリアの後にクレアとリリアを並ばせていた。
いや、潔すぎるだろ!
そう思って焦っていると、ミリアはカードを仕舞って左にズレ、後からクレアが進み出た。
仕方がない。腹をくくるか。
そう思ってクレアの手から出てきたインテリジェンスカードを見ていると、なんと彼女のジョブが巫女となっていた。
「えっ?」
思わず声を出してしまうと、次の瞬間視線を塞ぐように目の前にカエデが現れた。
「さあ、ご主人様も並んで下さい♪」
彼女はそう言うと、俺の袖を引いてリリアの後に俺を並ばせた。
おかげで俺が驚いた理由は、カエデに袖を引かれたからというように見えていそうだ。
そして、二人の後に並ぶと、直後にクレアが横にズレてリリアが進み出た。
彼女が左手を差し出すとサンデスが手を翳して再び呪文を唱えたので、気になって覗き込むとリリアのジョブは探索者だった。
さすがカエデだ。
俺が揉めはじめた瞬間に状況を察して、みんなのジョブを組み替えたんだな。
ということは... さっきかたまっていたときは、リリアのアイテムボックスの中身をカエデのアイテムボックスに移していたということか。
じゃないと隻眼を外せないからな。
それなら... 俺のジョブは冒険者になってるということだな。
そう思いながら自分のステータスを確認すると、魔法使い、魔道士、遊び人のジョブが外されてファーストジョブが冒険者になっていた。
ボーナスポイントの割り振りを確認すると、獲得経験値上昇20倍と必要経験値減少5分の1が外されているけど、ジョブ数はセブンスのままで、ポイントが余ってる。
魔道士のジョブを外すためには、先にボーナスポイントの割り振りを変えないといけないはずだから、カエデはかなり慌てて変えてくれたのだろう。
ふふっ。彼女の慌てっぷりを想像すると、グッとくるものがあるな。
ほんと、カエデがいてくれて良かった。
ステータスを確認し終えて前を見ると、ちょうどリリアがインテリジェンスカードを仕舞ったところだった。
これで俺たちは、冒険者、探索者、巫女、剣士、妖狐というバランスのとれた中堅のパーティーに見えるはずだ。
先ほどジョブの開示に抵抗した理由も、カエデの妖狐というジョブを隠したかったのだと思ってくれるだろう。
そう考えながら騎士団長に俺のインテリジェンスカードを確認させると、彼は「ミツオ殿のパーティーに盗賊がいないことを確認しました。ご協力、感謝します」と言って、もう一度頭を下げた。