異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
ハルバーの迷宮に入りはじめてから10日が経った。
12階層から探索をはじめ、ついに本日昼前に、22階層を突破した。
本来なら午後から23階層の探索といきたいところだけど、ミリアのジョブレベルがまだ低いので、少し早いが迷宮探索はこれで切り上げて、装備品のアップグレードを図ることにした。
因みに初日に盗賊たちから接収した装備や宝飾品の売却益と懸賞金、それと日々のドロップアイテム売却益で資金的には潤沢な状態となっている。
なので、今日はいくつかの町の防具屋をまわり、空きスロットが多いものを買うつもりだ。
そう考えて出かけようとしたら、カエデから「満男君。リリアを連れてって」と指示された。
理由は“装備品のことを聞くならドワーフのリリアが一番詳しい”ということと、“詐欺師まがいの店員がいたときに、俺1人だと店員に騙されかねない”という2点からの判断とのことだった。
彼女たちはなんだかんだと理由をつけて、俺が出かけるときには必ず1人だけついてくるので、たぶん本当の理由は違うんだろう。
でも、実際に助かることは多いし、ふとしたときの話し相手にもなってくれるから、デートみたいでちょっと嬉しい。
だから、素直に従って「わかった。それじゃリリア、宜しく」と彼女に声をかけて2人で家を出た。
そして、ターヘラの防具屋で目的の装備品を探したのだけど、案の定必要な数量の防具が揃わなかったので、当初の予定通り別の町の防具屋に向かうことにした。
「それで、リリア的にはどこがいいと思う?」
「そうですね。竜革の装備品は帝都かクーラタル。ダマスカス鋼の装備品はドホナとかサボージャで探してみるのが良いと思います」
「その理由は?」
「えっと、先ずダマスカス鋼の装備品が作れるほど腕の良い鍛冶師は帝国中央部に多いらしく、その装備品は帝都より少し南の町で多く流通していると聞いたことがあります。
と言っても小さな町では常設の防具屋が無い可能性がありますので、それなりの大きさと聞くドホナやサボージャの町で探すのが良いと考えました」
「ふむ......」
「それと、竜革の装備品はそれなりに腕の良い鍛冶師なら製造出来るけど、竜革自体の流通量が少ないので装備品としての流通量はダマスカス鋼製の装備品とあまり変わらないと思います。
そうなると、竜革の装備品は、取り引き量自体が多い帝都かクーラタルで探すのが良いということになるのです」
「なるほどね。
ところでリリアの中で、ベイルやボーデはどういう評価になるんだ?」
「ベイルとボーデですか......」
俺が2つの町の名を出すと、リリアは苦笑いしながら口を開いた。
「ベイルは盗賊が巣くっている町ですよね。
でしたら竜革やダマスカス鋼製のような価格の高い装備品は期待出来ないと思います。
それと、ボーデはもっと期待出来ないと思います」
「はははは。まあ、そうだよな」
俺はリリアに返事をしながら、ベイルに関しては真っ当な見解だなと納得した。
そして、ボーデについては......
俺は、数日前に盗賊から接収した装備品を、ボーデの防具屋に売りにいったときの店主の言葉を思い出した。
「フンッ!人間族か。
そんな汚い物。どうせどこかで盗んできた物だろう。
うちは出どころのわからない怪しい物は引き取らない。
わかったらとっとと失せな!」
......取り付く島もなかったな。
あのとき一緒にいたのはクレアだったけど、帰宅直後にみんなの前で、「ほんと最低!あんなヤツがいるからエルフは排他的なんて言われるのよ!」って吐き捨てていた。
その姿を見ていたから、リリアの選択肢の中には初めからボーデは無かったのだろう。
「それじゃ、次はクーラタルに行ってみよう」
「わかりました」
その後、クーラタル、帝都、ドホナ、サボージャの順に防具屋をまわり、必要とする数の空きスロットのある装備品を探しまわった。
そうして本日購入出来た装備品は以下の通りだ。
空きスロットが3つある竜革のジャケット×1
空きスロットが4つある竜革のジャケット×3
空きスロットが4つある竜革の鎧×1
空きスロットが3つある竜革のグローブ×3
空きスロットが4つある竜革のグローブ×2
空きスロットが4つあるダマスカス鋼の額金×2
空きスロットが4つある竜革のブーツ×3
それと、融合売却用の装備品として、空きスロットが1つ付いたダマスカス鋼の剣を1本購入した。
必要なものとはいえ、かなり散財してしまった。
今日の買い物で盗賊絡みの臨時収入が殆ど吹っ飛んだ。
だけど今回のアップグレードにより、しばらくのあいだ防具の購入は必要なくなったから問題ないだろう。
◆ ◆ ◆
帰宅後、リリアに今までの迷宮探索で自己獲得していたモンスターカードとクーラタルの商人ギルドでライザさんに入手してもらったモンスターカードにより、本格的に迷宮の高階層で戦える装備品の製作をお願いした。
しかし、彼女に新装備品の融合計画を伝えると、少しばかり呆れたような顔をした。
そして、「ご主人様の指示には従いますが、少しずつにして下さいね。でないと......」と言って、彼女は上目遣いとなるよう俺を見上げた。
「でないと?」
ドギマギしながら聞き返すと、彼女は背伸びをしながら巨乳を俺の胸板に押し付け、耳元に口を近づけて囁やいた。
「また元気づけてもらうことになりますからね♥」
「!」
一瞬ムラッとしたけれど、視界の端に夕食の準備をしているカエデたちが見えた。
まだ夕食前だし自重しないと......
深呼吸して、先ずはリリアに空きスロット4つの竜革のジャケット3つと空きスロット4つの竜革の鎧、蟻とコボルトのモンスターカードを4枚ずつ渡した。
そして全て融合してもらい、耐毒の竜革ジャケットと耐毒の竜革鎧を作製してもらった。
因みに装備するのは俺、カエデ、クレア、ミリアの4人で、今回融合を見送った空きスロット3つの竜革のジャケットは、既に耐毒の鋼鉄盾を使っているリリアの装備とする予定だ。
これで、全員の装備品に毒耐性のスキルが付いたので、一先ずグラスビーやニートアントなどの毒持ちの魔物とは安心して戦えるようになった。
俺は自分たちのレベルなら十分安全に戦える階層で探索するよう心掛けている。
だから、今までパーティーメンバーが毒攻撃を受けたことは殆ど無かった。
しかし、探索階層が上がるほど、魔物からスキル攻撃を受けることが増えるので、迷宮の高階層に挑戦するなら状態異常対策は必須だろう。
だから今後、胴装備には、潅木、珊瑚、羊のモンスターカードにコボルトのモンスターカードを併せて融合し、麻痺耐性、石化耐性、睡眠耐性のスキルを付ける予定だ。
あと、腕装備と頭装備には、火、水、風、土の魔法耐性や腕力2倍とか知力2倍などのステータス上昇により間接的に戦闘力を上げるスキルを付け、足装備には移動力増強、回避力二倍、物理ダメージ削減のスキルを付けて戦力強化を図るつもりだ。
そうして一先ず高階層でも安心して戦えるようにした後は、攻撃力2倍やダメージ逓増のような直接的に戦闘力を上げるスキルの付与を考えることになると思うけど...... まだ先の話だな。
◆ ◆ ◆
翌日。
午前中に迷宮探索を行い、午後からリリアを連れてクーラタルの鍛冶師ギルドに移動した。
仲買人のライザさんからのアドバイスに従い、直接ダマスカス鋼を仕入れるためだ。
ギルドの会員ではないのですんなり販売してくれるのか心配だったけど、受付カウンターでダマスカス鋼の購入が可能か聞いたところ、問題なく販売してくれると回答された。
それを聞いて安心していると、受付の女性は一瞬リリアに視線を送り、首を傾げながら質問してきた。
「あの、失礼ですが......
そちらの方はドワーフ族とお見受けしますが、鍛冶師ではないのですか?」
「鍛冶師じゃないと問題があるのか?」
「いえ。鍛冶師になられた方は殆どギルド会員になられますし、会員なら素材は会員料金で購入出来ます。
会員でない方への販売もいたしますが、滅多にありませんので」
「そういうことか。悪いが彼女は会員ではないんだ。
それより会員料金なんてあるのか?」
「ええ。
ギルドは会員の生活を守るための互助会です。
会員の方と一般の方を同等に扱うことなどあり得ません」
「ふむ。考えてみたら当たり前のことか。
因みにどれくらい割安になるんだ?」
「素材は一般販売価格の3割引きになります」
「そうか......
ところで素材や完成品の買取もしてくれるのか?」
「鍛冶素材なら買取ります。
それ以外のドロップアイテムは買取しません。
買取価格は探索者ギルドや冒険者ギルドの1割増しとお考え下さい。
それから装備品の買取に関しては、鍛冶師ギルドでは行なっておりません。
但し、会員の方には提携している武器・防具店を紹介させて頂いておりますので、そちらで販売する限り1点のみの販売であっても不利益を被ることはありません」
「なかなか魅力的だな」
「会員になれば他にも色々特典がありますが、そちらの女性は鍛冶師ではないのですよね?」
「ああ。さっきも言ったが残念ながら彼女は鍛冶師ではない」
「そうですか...... それでは割引は摘要されません。
それでも購入しますか?」
「いや、彼女の知り合いから頼まれて仕入れに来ているので、ダマスカス鋼は購入したい」
「知り合いですか...... わかりました。
ダマスカス鋼は1つ1000ナールで10個単位の販売となり、一度に100個まで販売出来ますが、いくつにしますか?」
「40個だ」
俺は事前にリリアから聞いていた剣を作るために必要な数量を伝えると、彼女は「少々お待ち下さい」と言って奥に控えていた職員にダマスカス鋼を40個持ってくるよう指示をした。
そして自身は振り返り、おもむろに彼女の後ろに貼り付けてあった板に指を這わせはじめた。
カウンター越しにその板を覗き見ると、左上から左下に向けて素材の名前が並んでいて、左上から右上に向けて数字が並んでいた。
むっ!アレって計算の早見表か?
もしや......
俺は慌てて目の前の女性を鑑定すると、彼女のジョブは村人だった。
“ヤバッ!割引き効かないじゃん!”
冒険者ギルドや探索者ギルドのように3割引きが使えるものと思い込んでいたので、これはマズイ状況だ。
3割しか割り引かれないなら、会員になるメリットは殆どないと考えていたけど、考えが甘かった。
今から実はリリアは鍛冶師だと言って会員になるのは不自然だし......
どうするか......
慌ててアイテムボックスの中を確認すると、金貨は7枚あったので、ひとまずホッとした。
しかし...... 払えないことはないけれど、資金的にはかなり厳しい状況だ。
やはり会員に......
俺が悩んでいると早見表を見終わったようで、受付の女性から、「代金は4万ナールです」と言われてしまった。
時間切れだ。仕方がない。
俺は無駄な抵抗は諦めて、アイテムボックスから金貨を4枚取り出した。
残りの金貨は3枚か......
明日からは、しばらく質素倹約しないといけないな。
しかし...... これで必須な物は揃った。
かなり逼迫してしまったけど、しばらくは散財することはないから何とかなるだろう。
帰宅後。
購入してきたダマスカス鋼をリリアに渡し、硬革とブランチも渡してミリア専用の短目のダマスカス鋼の剣を2本製造してもらった。
試作で短目の銅の剣を作ってもらった時にも感じていたけれど、1本剣を作るだけでもかなり時間がかかった。
俺の体感でだけど30分くらいは手元が光っていたと思う。
リリアはキッチリイメージ出来れば多少変わった形の剣でも作れるとは言っていたけど、隻眼Lv33の彼女がこれだけの時間集中しないと出来なかったのだから、普通の鍛冶師がこの剣を作るのは不可能な気がする。
リリアは長いあいだ集中していたためか?
2本目の剣を作り終わると、盛大に息を吐いて机に突っ伏した。
数日前にも同じ光景を見た気がするけど、これは後でしっかり可愛がらないといけないな。
そう思いながら彼女の頭を撫で、今回リリアが作った剣を鑑定すると名称がダマスカス鋼の短剣となっており、何と1本は空きスロットが3つ、もう1本には空きスロットが4つも付いていた。
「マジか!リリア。すごいじゃん!」
「えっ?」
「これは空きスロットが3つ。こっちは空きスロットが4つも付いてるぞ!」
「本当ですか?」
「ああ」
俺はリリアを抱き上げて、彼女に口づけした。
そして、彼女を抱えたまま移動しようとしたら、目の前にカエデが立ち塞がった。
彼女の後ろには、クレアとミリアも控えていた。
「満男君。リリアをどこに連れてくのかな?」
「す、済まない。その......」
「ふふっ。抜け駆けはダメでしょ♥」
「わかった」
俺は全員引き連れて、風呂場に移動した。
そして、その後はみんなが満足するまで頑張ることになったことは言うまでもないだろう。