異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
「確か25階層の魔物はグミスライムだったよな?」
「そうです。物理耐性があるのでご主人様とカエデは魔法で倒しきって下さい。
それと、グミスライムには取り付く攻撃がありますので、クレアとミリアは体当たりしてきたら必ず躱して下さい」
リリアから25階層の魔物への対処を聞いたけど、ちょっと疲れたのかどうにもやる気が湧かない。
まだ夕方までは1時間くらいあると思うけど、無理する必要はないしそろそろ帰るか......
「取り敢えず1回戦って、今日の探索は終了しよう」
「まだ早いんじゃない?」
「いや、ボス部屋周回でちょっと疲れたから、今日はもういいかなって」
「飽きちゃった?」
「アハハハ。ぶっちゃけそんな感じ」
「そうね。それじゃ、つぎ戦ったら要らないドロップアイテムを売って帰りましょう」
「よしっ!最後の一戦頑張ろう!」
俺は気合いを入れ直し、カエデの案内で2分ほど進むと通路の先に魔物の群れが見えてきた。
その群れはグミスライム3匹とシザーリザード2匹だったけど、見えた瞬間に1回目の魔法を放つとその場で動かなくなった。
一瞬5匹とも麻痺したのかと思ったけど、よく見ると前衛の魔物が麻痺したようで、後にいたシザーリザードの1匹が前に出られずに右往左往していた。
ちょっと笑いそうになったけど、シザーリザードが全体攻撃魔法を使うことを思い出して、直ぐに2回目の魔法で全ての魔物を煙に変えた。
最後の一戦が終わったので、さっさとドロップアイテムを回収して迷宮を出た。
早く帰って英気を養おうと思っていたのだけど、迷宮の前には朝方揉めていた狼人族のパーティーが待ち構えていた。
こいつらずっとここにいたのか?
暇なのか?それとも馬鹿なのか?
そんなことを考えていたら俺たちに話しかけてきた。
「お前らが狂犬のシモンを倒したヤツらか?」
「狂犬のシモン?誰だそいつは?」
パーティーのリーダーなのか、一番ガタイのデカイヤツが一歩進み出た。
しかし、ヤツが言った名前に心当たりが無かったので、思わず聞き返してしまった。
すると、ヤツは目を細めて俺を睨み、不機嫌そうに言葉を足した。
「この迷宮にいた海賊だ。
ヤツはそれなりの手練のはずだ。覚えているだろう」
「手練の海賊? いや、そんな強そうなヤツに心当たりは無いな」
「チッ!ガセネタか!
まあ、お前みたいなヒョロい野郎がシモンを倒せるわけはねえか」
ヤツはそう言い放つと、ニヤニヤしながらカエデたちに視線を送った。
「ヒョロい割にはいい女を連れてるじゃねえか。
なあ、そこの女たち。譲ってくれねえか?
どうせお前みたいな弱っちいヤツじゃ、女の悦ばせかたも知らねえだろう。
ブハハハハハハハ!」
当てが外れた腹いせか?
ヤツは俺を見下して、喧嘩をふっかけてきたようだ。
「お前、バカだろう。
それとも相手の実力も見抜けない噛ませ犬か?
ああ、悪い。犬人族だったか」
「なっ!
てめぇ!死にてえようだな!」
「犬のくせに人語を話すなよ。
そんなにヤリたいんなら、犬どうし後のメスとヨロシクしてろ」
そう言い返してヤツの後でニヤついていた女に視線を送ると、その女はキッと俺を睨んだ。
そして、喧嘩をふっかけてきた男の隣に並んで、蔑むような表情を浮かべて口を開いた。
「アンタこそバカでしょ。
バラダム家のことを知らないの?」
「バラダム家?聞いたことないけど」
「あら、ごめんなさいね。
家畜を引き連れて意気がってるような田舎者じゃ、私たちを知らなくても仕方がないわね。
フフフフフフフフ」
家畜ってカエデたちのことか?!
この女。ふざけやがって!
頭にきたので言い返そうと思ったけど、俺よりも先にカエデが口を開いた。
「なんかキャンキャン吠えてる犬がいるみたいだけど、どこの野良犬なのかな?
そう言えば、ブサイクな犬ほどよく吠えるって聞いたことがあるけど、バラダムだっけ?どこのスラムのあばら家なのか知らないけど、犬の躾もろくに出来ないんだから、大したことはないんじゃない?」
「なんですって!」
「おばさん。カガミ見たことある?」
「なっ!おばっ!」
「あっ!ごめんなさい。カガミって自分の顔が映る板のことだよ。もしかして、知らなかった?」
「馬鹿にしてるの!」
「あー、そんなに怒るとシワが増えるよ。ふふっ♪」
「家畜の分際で生意気な!
いいでしょう。そこまで言うなら決闘で、家畜らしく挽肉にして差し上げますわ!」
「ふーん。おばさん。私に勝てると思ってんの?」
「当たり前ですわ!」
「やめといた方がいいと思うよ。おばさん弱そうだし。
それに、私には決闘を受けるメリットがないんだけど」
「フンッ!意地汚い家畜が!
良いでしょう。万が一にでも貴方が勝てたら、私の剣を持っていくといいわ」
「おばさん。あたま沸いてるの?
決闘の敗者の装備品は、全部勝者にあるんだよ。
もしかして、知らなかった?」
「なっ!」
カエデ、随分煽るなあ。
まあ、家畜呼ばわりされてるし、理不尽に喧嘩をふっかけられて、怒り心頭なんだろうな。
そう思っていると、リーダーの男が再び口を開いた。
「いいだろう。勝ったら装備品は全部持っていけ!
だが、お前たちはバラダム家に喧嘩を売った。
もはや決闘を受けないという選択肢はないぞ」
「喧嘩をふっかけてきたのはそっちだろう!
まあ、そこの女じゃ彼女には勝てないから、ここで土下座でもさせて謝らせないと、バラダム家とやらが恥をかくことになるぞ?」
「大した自信だな。
それならこちらはその女が負けたら性奴隷としてもらい受ける」
「なっ!ふざけるな!」
「何だ、その女が強いというのはハッタリか」
リーダーはそう言うと、俺の返事も待たずに仲間の女に振り向き、「そこの女はバラダム家の性奴隷にする。
手足の1、2本斬り落としてもいいが、決して殺すなよ」と、更にふざけたことを言い出した。
「あら?まだ後に3人いるじゃない」
「そうだな。じゃあ、なるべく殺すなよ」
「ふふっ♥ なるべく顔は傷つけないでおいて差し上げますわ」
女は半笑いでリーダーに答えると、その醜悪な顔をこちらに向けた。
嗜虐心が滲み出ているのか、顔が歪んでいる気がする。
どうやらこの女はカエデだけでなく、リリア、クレア、ミリアの3人も自分たちの性奴隷にするつもりらしい。
「それじゃ、ボーデの騎士団の所に移動するから、付いてきなさい!」
「お前ら、逃げるなよ」
奴等はそう言い残すと、迷宮前の衝立にフィールドウォークのゲートを開き、ニヤニヤしながら入っていった。
「はあー。面倒なことになったな。
それで、カエデは大丈夫か?」
「満男君。私が負けるなんて思ってないでしょ」
「まあね。
あの女は獣戦士Lv29だったから、先ず負けないだろう。
ってか、オーバードライブで瞬殺出来るじゃん」
「ふふっ♥そのつもり。
帰りが遅くなるのも嫌だし、一切慈悲はかけないわ」
カエデなら余裕で勝てると思って話していたら、リリアが「あの、ご主人様」と言って会話に割り込んできた。
「遅くならないうちに移動した方が良いと思います」
「ん?待たせておけばいいんじゃね?」
「いえ。たぶんあの人たちは、決闘をやり慣れてる気がします」
「そうなのか?」
「決闘となれば騎士団立ち会いのもとで命のやり取りとなりますので、普通は避けるものなのです。
それなのに、向こうから因縁をつけてきたうえ、少し言い合いになった途端に決闘を持ち出してきました」
「確かにそうだが......」
「それに、決闘する流れになった途端、勝手に話を進めてさっさと騎士団詰所に移動していきました。
それと、因縁をふっかけてきた男は、ゲートをくくるときにニヤついてたんです。
たぶん、決闘ならば大手を振って、弱者を痛ぶれるとでも思っているのでしょう」
「そういうことか。
言われてみれば、あのリーダーの男は直ぐにでも手が出そうな感じだったのに、わざと決闘することになるよう話を仕向けていた気もする」
「私は決闘について詳しくは知りませんが、し慣れている相手に準備する時間を与えることは、得策ではないと思います」
「リリアの言う通りだな。
わかった。さっさと移動しよう」
そう言って衝立の方に歩きだそうとすると、カエデに腕を掴まれた。
「満男君。ちょっと待って。
念のため、獲得経験値上昇20倍のスキルを外して、ファーストジョブを冒険者に変更して」
「そこまで...... いや、念のためそうしておく。
ところでリリアたちのジョブも変更しておいた方がいいか?」
「流石にそこまでは必要ないと思うわ」
俺はカエデに言われた通りキャラクター再設定でファーストジョブを冒険者に変更した。
これで急にインテリジェンスカードを見られることになっても大丈夫だし、万が一俺が戦うことになっても問題ない。
それに、ボーナスポイントが差し引き29pt余るから、それを全て敏捷上昇に振り分ければ、対人戦では負けることはないだろう。
俺は素早く設定を変更すると、迷宮前の衝立にフィールドウォークのゲートを開いた。