異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
カエデに労いの言葉をかけていると、向こうのパーティーメンバーが死んだ女に近づこうとしたので、俺は「お前ら、そこで止まれ!」と言って奴等を制止した。
「な、なにを......」
「お前ら近づいて何をするつもりだ?
まさか装備品を回収しようとしてんじゃねえだろな?」
「......」
図星だったのか、奴らは言葉につまり俺を睨んだ。
「ゴスラー殿。
あの女が着けていた装備品はこちらのものだ。
もし、奴等が盗んだら、奴等は盗賊ということになるから始末しても問題ないんだよな?」
「向こうのパーティーメンバーは、決闘の前に装備品の引き渡し条件に承諾しております。
それを奪うということは窃盗ということになりますので、問題ないでしょう」
「と、いうことだ。
お前らのような常識がなく、身の程も弁えず、意地汚い連中は世の中の害悪だ。
バラダム家だかなんだか知らないが、さっさと片田舎のスラムに帰らないと、お前らもこういう最期を迎えることになるぞ」
相手のパーティーに向けてシッ!シッ!と手を振ると、向こうのリーダーは顔を真っ赤にした。
「貴様!俺に勝ったわけでもないくせに!」
ヤツはそう吐き捨てると、剣を抜いて俺に向かってきた。
しかし、直ぐ近くにいた騎士団長から、「私闘を仕掛ける気なら犯罪者として捕縛することになるぞ」と言われると、その場でピタッと立ち止まった。
ヤツは騎士団長を睨みつけると、「いいだろう。ならば正式に戦うなら文句はないということだな」と低い声で言い放ち、こちらに向き直った。
「おまえたちは我がバラダム家に恥辱を与えた。
我が家の名誉を守るため、俺はお前に決闘を申し込む!」
「断る!」
「な、なんだと!」
ヤツは決闘を断られることなど思いもよらなかったのか?目を丸くして驚いている。
しかし、こちらは奴等の理不尽な要求に応えて一度は戦ってやったんだから、対価もなしに2度目に応えるなんてまっぴらごめんだ。
「なんで負け犬の要求を飲まなきゃいけないんだ?
地に落ちた家名のお前に勝ってもこっちには何のメリットも無いんだよ!」
「貴様ッ!更に侮辱する気か!」
「侮辱?事実だろ」
「チッ!クソ野郎が!
それなら勝ったら俺の装備品を全てくれてやる!」
ヤツはそう言うと、俺を嘲るような表情を浮かべた。
これなら断らないと思っているのだろうか、さっきの女と一緒の条件だ。
こいつ、俺のこと舐めてんのか?
ムカつくからふっかけてやろう。
「それで、俺が勝ったら次は後のヤツが自分が着けている装備品をかけて決闘を申し込んでくるのか?
悪いが俺はそんな暇じゃねえんだよ!
どうしても俺と決闘したかったら“後のパーティーメンバーの装備品も全て差し出す”くらい言ってみろ!」
そう言い返してニヤリと笑うと、なんとヤツもムカつく笑顔で言い返してきた。
「いいだろう。俺が負けたら俺の装備品と、残りのメンバーの装備品を全てくれてやる。
それに加えて俺たちの持ち金も全てくれてやるぞ。
それなら十分だろう」
ヤツは自分が負けるはずはないと考えているのか?
自分だけじゃなくメンバーの分も全て差し出すと条件を付け加えたくせに余裕の表情だ。
ムカつくけど煽った手前、そこまで言われたら断われない。
でも、それなら徹底的にやってやる!
「わかった。それなら決闘を受けてやっても良い。
但し、お前が言った条件を、後の奴等がちゃんと守る保証がない。
だから、後の奴等の装備品と有り金、それにお前の有り金を決闘の前に騎士団に預けてもらう」
「いいだろう」
俺が了承すると、向こうのリーダーは騎士団長に向けて左手を差し出した。
しかし、騎士団長はリーダーを無視して俺の方を向くと、ジッと俺を見つめてきた。
“ん?どういうことだ?”
騎士団長が何を考えているのかわからずに黙っていると、彼がフッとため息を吐いた。
「ミツオ殿。決闘に負けた側からの再戦要求は受け付けません。
それでも再戦したい場合は、勝った側から決闘を申し込んでいただく必要があります 」
そうだったのか。
確かに、負けた側からの再戦を認めてしまうと、勝った方はずっとつけ狙われることになりかねないからな。
騎士団長の態度に向こうのリーダーは怒り心頭のようだけど、いつの間にか周囲を騎士団で固められており、下手に動けないみたいだ。
「では、そこの男は決闘に負けたバラダム家の者にも拘らず、自分たちの装備品と有り金の全てをかけるから再戦したいと言い出した。
本来こちらに決闘を受ける義理などないのだけど、そのような者にいつまでもつきまとわられる不快を排除するため、今回に限りその条件で、そこの男に決闘を申し込む」
俺が左手を差し出すと、騎士団長は騎士を呼んでインテリジェンスカードを表示させた。
そして、俺のカードをしげしげと見つめると、負け犬扱いされてプルプル震えている向こうのリーダーに対峙した。
「ハルツ公領騎士団のゴスラーである。 彼が自由民であることを確認した。
彼はそちらのパーティーメンバーが身に着けている全ての装備品と金銭をかけての決闘を要望しているが、異議はないか?」
「ない!」
ヤツは短く返事をすると、その目で射殺さんとするくらいの目つきで俺を睨んだ。
今にも飛びかかりたい衝動を、必死に抑えているようにも見える。
「双方が条件を了承したので、自力救済の原則にのっとって決闘を認める。 被指名者に誰か保護する者がいれば、代理の者とすることが出来る。 代理の者をたてるか?」
「必要ない」
「わかった。では、先ずパーティーメンバーの4人は装備品を全て外して、あそこのシートの上に置け。
それと、金銭も全て出して、あそこの騎士の持つ袋にしまうこと。
そして、貴君は装備品は身に着けたままで良いが、金銭は全て出してあそこの騎士の持つ袋にしまうこと」
「わかった」
「因みに決闘のあとで隠し持っている装備品や金銭が見つかった際は、決闘を侮辱した罪により問答無用で斬り捨てる。
くれぐれも出し忘れがないよう、身体の隅々まで確認すること。
それと、決闘後にアイテムボックスの中も確認させて頂くので、それを持つジョブの者はそちらからの出し忘れにも注意すること」
「......」
「理解したな!」
「「「「は、はい!」」」」
騎士団長の容赦ない言葉を受けると、向こうのパーティーメンバーは今更ながら事の重大さに気付いたようで、顔を真っ青にした。
そして、シートの前に移動して、言われた通り装備品を外しだした。
そんな4人とは胆力が違うのか?それともガチ切れ状態で既に正常な判断が出来ないのかわからないけど、向こうのリーダーは騎士に金銭を渡すと、すぐに戻って決闘開始の位置についた。
そして、ギラついた目で再び俺を睨みつけながら叫びだした。
「俺はサボー・バラダム。狼人族一強い男だ!
決闘を開始したら瞬殺してやるから、精々今のうちに遺言を伝えておけ!」
サボー・バラダム ♂ 34歳 獣戦士Lv99
装備 いかりのバスタードソード、頑強の竜革鎧、耐土の竜革グローブ、耐風のダマスカス鋼額金、駿馬の竜革ブーツ、身代わりのミサンガ
獣戦士Lv99か。
狼人族一というのもあながち間違ってはいないのだろう。
まともに戦うならかなりの強敵だけど、Lv99というのは都合がいい。
まだ使ったことはないけれど、ボーナススキルにLv99デスというスキルがあるから、負けることはないだろう。
ただ、獣戦士、Lv99、それに駿馬の竜革ブーツか。
かなり素早く動けるはずだから、開始と同時にオーバードライブで一度横移動して、それからLv99デスだな。
「さっさと始めるがいい」
ヤツの宣言を無視して作戦を考えていると、その態度が気に食わなかったのか?ヤツは騎士団長に決闘の開始を促した。
それを受けて騎士団長は奴等のパーティーメンバーの装備品を監視している騎士に状況を確認した。
そして、準備が整ったと判断したのか、「では、異議がないのであれば決闘を認める。始めてよいか」と俺たちに確認した。
「おう」
「構わない」
「それでは両者前へ」
騎士団長は2人の返事を聞くと、3歩ほど後ろに下がり片腕を振り上げた。
ヤツは剣を構えて体勢を整え、小声でブツブツと何かつぶやいているけど、その眼光は先ほどよりも鋭さを増している。
俺は一息吐いてアルマスを構え、正面からヤツの眼光を受け止めた。
空気が張り詰め、一瞬全ての音が消えた気がした。
「はじめ!」
騎士団長が腕を振り下ろした瞬間、恐ろしいスピードでヤツが突っ込んできた。
しかし、俺も開始する瞬間にオーバードライブをかけていたのでギリギリのところでヤツが振り下ろした剣を横っ飛びで躱し、Lv99デスと念じることが出来た。
しかし、俺も体勢を崩してしまったためヤツには突っ込めず、数歩離れた位置で一度剣を構えなおして息を整えた。
正直ヤツを舐めていた。
一瞬でもオーバードライブが遅れていたら、あの一撃をまともに食らっていた。
そして、それは俺の命を奪っていたかも知れない。
そう考えると心拍数が上がり、どっと汗が吹き出してきた。
殺られる前に殺る!
怯んでいる場合じゃない!
考えを整理しているうちにオーバードライブの効果が切れて、ヤツはこちらに向けて剣を構えなおした。
しかし、ヤツは驚愕の表情を浮かべて俺を凝視したままこちらに斬りかかってこない。
一瞬ヤツは必殺の一撃を躱されてしまい、攻めあぐねているのかと思ったけど、数秒するとまた小声でつぶやきはじめたので、ハッとした。
アレはスキルを唱えているんだ。
唱え終わる前にヤツを殺さなくては!
次の瞬間、俺は再度オーバードライブと念じてヤツに突っ込み、すり抜けざまにヤツの首を薙ぎ払った。
しかし......
浅かったか。いや、届かなかったのか......
俺はヤツから離れて再び剣を構えなおし、今の攻撃を思い返した。
先ほどの一撃が頭に残っていたせいか?それともオーバードライブを使って超速で接近したにもかかわらず、ヤツの目が追いついていたことにビビってしまったのかは自分でもわからないけど、ギリギリのところをすり抜けることが出来ず、半歩ほど離れた位置を抜けてしまった。
そのため少し離れて剣を振ってしまうことになり、首を斬り飛ばすことは出来なかった。
それどころか斬った感触もない。
クソッ!このままでは......
そうだ、もう一度Lv99デスを使うか。
そう考えたところでオーバードライブの効果が切れると、ヤツの首から盛大に血が噴き出した。
どうやらアルマスが片手剣であったことが幸いしたようで、その切っ先は何とかヤツの首筋には届いていたようだ。
ヤツは自分の首に手を当てながらこちらに振り返ったけど、次の瞬間血まみれになった手のひらを見つめて動かなくなった。
そしてすぐに、ドシャッと音をたてて、ヤツの身体は血溜まりに崩れ落ちた。