異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
午前中でバラダム家の奴等からの接収品の検分と整備が完了したので、不要な装備品を売却するため昼休憩のあとターヘラの武器屋と防具屋をまわった。
装備品としては中級なものばかりだけど、数があるからそれなりの金額にはなるはず。
そう思っていたのだけど、はじめに寄った武器屋で武器を売ったところ、買取価格三十パーセント上昇のスキルを使っていたのに思っていたよりも売却金額が安かった。
同行していたカエデも少し首を捻っていたので、防具屋で装備品を出しながら「もしかして買い取り金額って変動するのか?」と店主に尋ねると、「休日の前は売却が増えるから、買取額は1割ほど下がるな」との答えが返ってきた。
休日の前?
奴隷オークションにむけての資金作りか?
俺は奴隷オークションに参加するつもりで装備品を売りにきたのだけど、もしかすると同じことを考えているヤツが多いのかも。
そこそこ数があったので、売却金額の合計は1万ナールを超えている。
あとは以前ライザさんに預けたスキル付きの武器が売れていれば、入札合戦になってもそれなりには戦えるだろう。
あとは売却用のスキル付きの装備品と指輪が2つだけど......
これは奴隷オークションの前に売れることは無いだろうな。
そんなことを考えながらフィールドウォークでクーラタルの商人ギルドに移動して、受付でライザさんを呼び出した。
そしてその場で待っていると、後から「ミツオ様。少し宜しいですか?」と呼びかけられた。
俺を見つけて走ってきたのか?
後にいたのはルークで、公爵になにか言われたのか、騎士団の誰かから何か話を聞いたのかは分からないけど、受付で仲介人を待っている客に声掛けすることはマナー違反だったはずだから、ヤツは見た目よりも焦っているのだろう。
「なに?」
「お話があるのですが」
「俺はないけど」
「いえ、その。ここではなんですので、商談室の方で」
「悪いけど、今から商談だから時間はない」
「そうですか。
ですが、決してミツオ様に損をさせるお話ではないのですが」
「はあ?あんた、しつこいな。
ハッキリ言ってやるよ。
人を騙すようなあんたとは取り引きしないって言ってるんだ」
「えっ!騙すですか?」
なんだコイツ!すっとぼけるつもりか!
瞬間的に頭に血が上ったけど、脇腹をチョンチョンと突かれて気が逸れた。
さすがカエデだ。
俺の性格を熟知してるから、怒鳴らせないようにしたのだろう。
俺は心を落ち着かせる為、深呼吸をしながら後ろ手で彼女の胸をツンツンしようとしたけれど、パシッと叩かれ願いは叶わなかった。
「はぁ...... 自覚もないのか。
あんたに騙されたせいで、ハルツ公爵に絡まれてえらい目にあった。
忘れたわけじゃないよな」
「それは私のせいではないと思いますが」
「はあ?
俺は貴族絡みの面倒ごとは勘弁って言ったはずだぞ」
「すみません。あの時点ではミツオ様が公爵閣下の気を引くほどの強者だとは知りませんでしたので」
「なんだ?俺のせいって言いたいのか?
だけど、あの時点で公爵が粘着質だとかハルツ公領にも盗賊が進出してきているということも聞いてない。
それも知らなかったって言うのか?」
「それは......」
ルークが答えづらそうにしていると、すぐ近くから若い女性の声が響いた。
「アシッドさん。
人のお客様にちょっかい出すのはマナー違反ですよ」
「せ、セーブルさん。
いえ、決してそのようなことは」
「それなら貴方からミツオ様に声をかけることは控えて頂けますか?」
「......」
俺には屁理屈をこねることが出来ても、同じ仲買人のライザさんに反論することは出来ないのか、ルークは表情は殆ど変わらないものの、僅かに目が細まった。
そして、少し冷静になったのか?
それとも周囲の注目を集めていることに気が付いたのかは分からないけど、ヤツは自分の非を認めるように一歩下がった。
「そうですね。失礼しました。
取り引き先の方からミツオ様への仲介を要請されていましたので、直接声をかけてしまいました。
今後はセーブルさんに相談させて頂きますので、宜しくお願いいたします」
素直に謝罪するのかと思ったけど、ルークは公爵からの要請の取り次ぎをライザさんに仲介するよう誘導してきた。
周囲の目もあるし、このような言われ方をしたらライザさんとしては断りづらいだろう。
ルークはしてやったりと思ってるのか、あからさまにニヤけたりはしてないけれど、口の端が上がってやがる。
俺が散々貴族絡みはNGだって言ってんのに、まだ諦めない気か!
ムカつく!
俺はライザさんが返事をしようとするのを制して、ルークに言葉をぶつけた。
「ルーク・アシッド!
あんたは客をなんだと思っているんだ?
俺は散々貴族絡みの面倒ごとは勘弁しろって言ったよな。
それなのに、直接取り合ってもらえなかったら、今度は他の仲買人を巻き込んででも言うことを聞かせようとするのか?
まさかとは思うけど......
クーラタルの商人ギルドなら、客や他の仲買人に不利益をもたらすようなことをしていても、注意されることはないと考えているわけじゃないよな?」
俺はそこまで言ってから、受付の方に振り返った。
「お客様。
商人ギルドは故意にお客様に不利益を与えるような行為を容認してはおりません。
そのような行為が行われた場合には、厳格に対処させていただきます」
俺の視線を受けた受付嬢は微塵も動揺せずに言い切った。
話を大きくされてさすがに焦ったのか、ルークを見るとヤツは目の端がヒクついていた。
ヨシ!これなら反論出来ないだろう。
「あんたとは取り引きしないし、あんたの紹介する客との仲介は全て断る。
それを破ったら商人ギルドに訴えるので、そのつもりで」
「......失礼しました」
さすがにヤバイと思ったのか?
ルークは一礼すると、そそくさと仲買人たちの控え室の方に戻っていった。
ここまでこっ酷く拒絶されれば今後は絡んでくることは無くなるとは思うけど、あの公爵と同じでルークのヤツも大概粘着質な気がする。
だからしばらくの間は、ここに出入りするときは気を抜かないようにしておこう。