異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
本日は春と夏の間の休日。
奴隷オークションの開催日だ。
ワープでクーラタルの商人ギルドに移動すると、ホール内は人でごった返していた。
どうやらホール内が細かくパーテーションで仕切られており、それぞれのブースでは奴隷商が本日のオークションに出品する予定の奴隷のお披露目をしているみたいだ。
奥の会議室や2階の商談室の方にも人が出入りしてるので、そちらの方でも奴隷のお披露目をしてるのかも知れない。
しかし、すごい状況だな......
よく見ると妙に盛り上がっているブースとそこそこ人が出入りしているブース。 そして、ブースの前に人は行き交っているけど、なんとなく出入りが少ない気がするブースもあるけど、全体的に見てかなり盛り上がっているみたいだ。
会場の熱気に呆気に取られていると、ホールの端の方で魔法使いがどうとか白金貨がどうとか怒鳴っているオヤジが見えた。
どうも周りを威嚇しているみたいだから、あの男は魔法使い狙いなんだろう。
手の内を晒すなんてアホの所業だとは思うけど、俺は魔法使いを探しにきたわけじゃないから、騒いでいるヤツは無視して先ずは2階の商談室のある場所に向かった。
1階のブースからまわった方が効率よく見て回れるのかも知れないけど、なんとなく2階を先に見た方がいいと思ってしまったのだから仕方がない。
決して他の客の勢いに怯んだ訳では無いと言っておきたい。
2階に上がると、思った通り普段商談室として使ってる部屋の扉が開け放たれ、そこも商館のブースになっているみたいで、ホールと同様にかなりの人でごった返していた。
取り敢えず盛り上がっているブースのひとつを確認すると、目の前で見知った女性が出入りしている客に挨拶していた。
そして、彼女は俺に気がつくと、手を挙げて声をかけてきた。
「ミツオ様。おはようございます」
明るく丁寧に挨拶してきたのは、ターヘラの奴隷商館のフレア嬢だった。
なんとなく緊張していたので、彼女の方から声をかけてくれて助かった。
「フレアさん。おはよう。
この前はありがとう。おかげで希望通りの女性を仲間にすることが出来たよ」
「それは良かったです。
彼女は決して悪い娘ではありませんので、可愛がってあげて下さいね」
「ああ。大事にしてる。
って言うか、すぐにメンバーに溶け込んだし、なんなら最初からいたみたいになってるよ」
「あら?そうなると、ご自宅では4対1という状況なのですね」
「へ?」
「先日お越しになられたとき、ミツオ様はカエデに頭があがらない感じがしましたので、てっきり肩身が狭い思いをしているのかと」
「そ、そんなことないよ。
みんな俺に従順だし、毎晩楽しく......
あ、いや、とにかく家では5対0だから」
「ふふっ♥ そうなのですね」
思ってもみないことを言われて少し焦って返事をすると、不意にフレアさんの顔がニヤけた。
思わず不適切な発言をしそうになった自分が悪いんだろうけど、肩を震わせて笑いを堪らえるなんて、ちょっとあからさまじゃないか。
別に競っているわけじゃないけど、なんとなく負けてる気がするので反撃しておこう。
そう思って帝都の商館でのユグドの様子を引き合いにフレアさんのことをからかったけど、逆に惚気られてしまった。
「ふふっ♥ 私たちは相思相愛ですから♪」
「はははは。婚約の件は正直驚いたよ。
でも、フレアさんがなんで他の商館の奴隷を紹介したのか、実はイマイチ納得出来てなかったんだけど、その点については腑に落ちたね。
ただ、帰り際に彼には迷惑かけたから、申しわけない」
「そうでしたね。
そのことはユグドから聞きましたけど、彼は怒ってないですよ。
むしろ訳あり奴隷を快く引き受けてくれたので、感謝してるって言ってました」
「そうだったのか。でも、俺としては一言詫びは入れておきたいとこだな」
「それなら彼は帝都の商館ブースにいます。
1階の会議室が帝都の商館のブースになっていますので、声をかけてあげて下さい」
「わかった。後で寄ってみるよ。
ところでフレアさんのところはどんな奴隷を出品してるんだ?」
「今回うちは3人出品するのですけど、2人はミツオ様と面談したことのある娘です」
「それってカエデたちと面談したときの誰かってこと?」
「はい。一人はエリザベート、もう一人はユリです」
「エリザベートとユリ......
確かエリザベートは亡国の元貴族の令嬢で、ユリは10種族の言葉が話せる巫女だったかな?」
「ふふっ。ちゃんと覚えていたんですね♪」
「はははは。そりゃあ覚えてますよ。
あのときは購入する、しない、でかなり迷ったしね」
「そうでしたか。
ミツオ様。今度こそ、どちらかを購入する気はございませんか?」
「うーん。あのときならともかく、今日のオークションで高級奴隷を競り落とすのは、資金的に厳しいかな。
それに、回復役はクレアがいるし、そもそも迷宮探索出来ないメンバーは求めてないから申し訳ないけど彼女たちに札を入れるつもりはないね」
「そうですか。それは残念です。
私としては多少競って頂くだけでも助かるのですけど♪」
フレアさんは口では残念とは言ってるけど、笑顔だから社交辞令なんだろう。
まあ、その後の競ってほしいというのは本音だろうな。
それよりも、確か出品は3人って言ってたはずだから、もう一人は俺が知らない奴隷ということになる。
ちょっと気になるので、この際だから聞いてみるか。
「あの2人に声がかからないなんてあり得ないと思うけど、スタート直後に誰も応札しなかったら、出来る範囲で協力するよ。
それよりもう一人いるんだよね?」
「ふふっ♥ 期待してますよ♪
それと、もう一人は猫人族で19歳。ジョブは暗殺者です。
残念ながら♂ですし、かなりイケメンですので、ミツオ様が興味を持つことは無いでしょう」
「あははは。暗殺者には興味はあるけど、フレアさんの言う通り、♂とイケメンは勘弁してほしいね」
「ふふっ♥ そうですよね。
残念ですけど、仕方がありません。
もし本日のオークションでご希望の奴隷が手に入らなかったら、そのときは来店をお待ちしてますね」
フレアさんはそう言うと一礼して自分のブースの方に戻っていった。
中を覗いても良かったけど、購入する気もない奴隷を見ても仕方がないので、俺は彼女を見送ってから他の商館のブースに足を向けた。
そして、近くのブースから順に出品予定の奴隷を流し見ながら1階に降り、そのままホール内のブースを見て歩いていると、とある商館のブースで身長が2m近くもある赤髪ショートカットの娘を見つけた。
なんとなく見覚えがあったので鑑定しながら記憶を辿ると、その娘がこちらの世界に転移する直前にネットの画像で見たことを思い出した。
確か主人公を囲んでいた娘たちの一人で、一番背が高い娘だったはずだ。
ベスタ ♀ 15歳 村人Lv2
ベスタっていうのか......
っていうか、なんだあの胸!めちゃくちゃでけえ!
スイカくらいあるんじゃねえか?
それなのに垂れ下がってないって反則だろ!
それに、腰がキュッとくびれていて、スタイルも抜群じゃねえか。
身長が高いからジトッと見下されている感じがするし、正直自分好みの華奢なタイプではないけれど、紅玉の瞳は大きくて優しそうな顔立ちで......
ハッキリ言ってめちゃくちゃ可愛い。
案内している奴隷商に聞いたところ、彼女は竜人族で力強く、迷宮探索パーティーの前衛タンク役として最適の人材であるとのこと。
パーティーメンバーとして求めている役割の人材であり、正直悩むところだ。
ベスタ本人に「前衛として迷宮に入り魔物と戦ってもらうことになるが、大丈夫か?」と問いかけたところ、
「迷宮探索の経験はありませんが、村を襲ってきた魔物とは戦ったことがあります。
その時はちゃんと戦えましたので、大丈夫だと思います」と返事がかえってきた。
戦うことを忌避する感じはなく、かと言って戦闘狂のようなギラつきもない。
なんとなく感情が希薄なような気がするけど、一先ず主人の命令には従順に従いそうだ。
しかしどうするか......
取り敢えず一旦保留として他を見てまわろう。
そう考えて、その後もいくつかの商館のブースをまわったけど、結局全てのブースをまわる前にタイムアップになってしまい、ベスタ以外に条件に見合う奴隷は見つからなかった。
さて、本当にどうするか......
参加せずに帰るのもなんだし、まわれなかったブースに掘り出し物の奴隷がいる可能性もあるから、それを期待して一応オークションには参加しよう。