異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
帝都の冒険者ギルドからワープで帰宅し、装備をはずしながらロクサーヌを鑑定すると、獣戦士のレベルが17まで上がっていた。
おお。
たった5時間でレベルが11も上がったか。
まあ、5、6分に1回は魔物と戦ってたから、5時間と言っても50回以上は会敵している。
一人で戦ってたときの会敵回数は1時間に3回か、いいとこ4回だったから、同じ時間で3倍は戦えてるはずだ。
普通の探索パーティーは魔物を倒すのに10分はかかるので、会敵回数は1時間に2回程度のはず。
更に獲得経験値20倍のボーナススキルの恩恵もあるから、実質の成長速度は一般的な探索者の100倍だ。
そのうえ22階層で戦ったのだから、レベルが11上がったと言ってもおかしなことではないだろう。
明日からは1日3〜4時間しか迷宮探索が出来ないけど、順調に行けばLv30になるまで20日はかからないだろう。
「ロクサーヌ。今日はどうだった?」
「レオン様はすごかったです!
魔法だけでも伝説的な強さなのに、接近戦でも信じられないほど強かったです!
私が今まで見た探索者の中では、間違いなく一番強いと思います!」
「お、おう。そうか」
俺は彼女自身の戦った感想を聞こうと思ったのだけど、どうやら彼女は俺の戦いぶりに相当興奮したようで、目を輝かせて話しはじめた。
「はい!すごく速く動かれるので、何度も見失いましたし、魔物も一撃で斬り伏せていました。
私、こんなに強い人がいるなんて、想像したこともなかったです♥」
ロクサーヌは興奮しながら言い切ると、何故かうっとりした瞳で俺を見つめてきた。
よく見ると、彼女は両手を胸の前で組んで少しだけ前傾姿勢になり、上目遣いで俺を見つめている。
これは商館で習った男にお強請りするときの仕草だな。
うっ!可愛い。
あざといとはわかっていても、この破壊力を防ぐのは...... 無理だな。
俺はあっさりと陥落し、ロクサーヌの唇に吸い付いた。
そして、しばらく彼女と舌を絡ませて口づけを堪能すると、唇を離してから彼女の頭をコツンと叩いた。
「話が進まないから、いちいち誘惑しないように」
「ふふっ♥ すみません♪」
口では謝ったけど、彼女はイタズラっぽい笑顔を浮かべたままだ。自惚れかも知れないけど、すごく愛されてる気がして、俺は幸せを感じている。
照れ臭いけど、このまま本能に任せてベッドに連れてくと朝まで止まれなくなりそうなので、俺はフッと息を吐いて話を本題に戻した。
「俺のことは置いといて、ロクサーヌ自身の感想が聞きたいんだが」
「私ですか?
えっと...... はじめは22階層の魔物なんて、私の力では対処出来ないって思ってたのですけど、レオン様の言う通りにすると、意外と出来ることがあって正直驚きました。
それに、段々魔物の攻撃スピードとかにも慣れてきて、帰る頃にはかなりスムーズに動けるようになれた気がします」
「うむ。明日からも、しばらくはクーラタルの迷宮22階層で経験を積むことにする。
スムーズに動けるようになったのは良いことだが、くれぐれも油断しないようにしてくれ」
「はい。気を引き締めて戦います。
ですけど、探索階層はもっと上の階層でも大丈夫なような気がします」
ロクサーヌはよほど手応えがあったのか、もっと上の階層でも戦えると思っているようだ。
自信をもつのは悪いことじゃないが、過信は禁物だ。
今の彼女が22階層より上の階層に行くことは、死にに行くようなものなのだ。
やはりここは、一度しっかり諌めておかないとダメだろう。
俺は心を鬼にして、少し強めに注意することにした。
「ロクサーヌ。過信は禁物だ。
今の君では22階層より上の階層は通用しない。
ハッキリ言って、死にに行くようなものだ」
「えっ!」
ロクサーヌは俺から注意されたことに相当驚いたようで、口を開いたまま固まった。
「23階層からの魔物は22階層までの魔物に比べて格段に強くなる。
だから倒し切るまでは今まで以上に時間がかかる。
それに、22階層までの魔物は単体攻撃魔法しか使わないが、23階層から上の魔物は全体攻撃魔法を使う。
全体攻撃魔法は放たれたら避けられないから、必ず喰らうのだ。
たとえ回復魔法や滋養丸があっても、体力が無ければ耐えられない。
つまり、魔法を数発受けても耐えられるくらい、挑戦するパーティーメンバー全員が強くならないと、死人を出すことになるんだ」
「......」
「だから23階層より上の階層に行くのは、君自身が強くなって、尚且つ後衛の魔物にも対応出来るだけの人数が揃ってからとする。
これは決定事項だ」
「......はい。
私、考えが足らずに舞い上がっていました。
申し訳ありませんでした」
彼女は十分反省したようだな。
しかし...... ちょっと強く言い過ぎたか?
ロクサーヌを諌めるためにも少し強めに上の階層に挑戦しない理由を説明したつもりだったけど......
彼女は自分の軽はずみな言葉を恥じているようで俯いてしまい、見るからに落ち込んでしまっている。
よく見ると、彼女の目には涙が滲んでいる。
そんな彼女を見続けるのがつらくなり、思わず抱きしめてしまった。
すると彼女もギュッと抱きしめ返し、俺の胸にグリグリと顔を押し付けてきた。
ああ。俺もまだまだだな。
もう少し上手い言い方が出来れば、彼女を泣かせることはなかっただろう。
俺は自分の語彙力の無さを反省しつつ、彼女の頭を優しく撫でた。
「ロクサーヌ。君はまだまだ強くなれる。
だから今は低い階層で戦って、経験を積むことが大切なんだ」
「レオン様。
私、レオン様の期待に応えられるよう頑張ります!」
彼女に慰めの言葉をかけると、顔を上げてしっかりとした口調で返事をした。
その瞳には決意が灯っているような気がする。
「ロクサーヌ。一人で頑張るんじゃない。
一緒に頑張ろうな」
「はい♥」
俺の言葉に、彼女は今日一番の笑顔で返事をした。
その笑顔に救われた気がしたのは、言うまでもないだろう。
その後、俺たちは装備品の手入れを始めたけど、10分ほどするとロクサーヌが自分のお腹をさすりはじめ、物欲しそうな視線を俺に向けてきた。
「ロクサーヌ。お腹空いた?」
「そうですね。そろそろ」
俺たちは夕食の材料を買いに出かけることにした。俺たちは今日引越してきたばかりなので、家に食べ物が何もないからだ。
家から3分も歩けば常設の食材屋がたくさんあるし、調味料やちょっと変わった食材を売る店もある。
飲食店なども多数あるので 自分で料理ができなくてもこの辺りなら生活するには困らないけど、いざという時のために、ちゃんと自炊できるようにしておかないとダメだろう。
とはいうものの 、俺は全く料理ができないから、ロクサーヌ頼りとなってしまうけど......
少し後ろめたい気持ちはあるけど、そこは主人としての威厳を示して彼女に頑張ってもらおう。
そんなことを考えながらも、日が暮れる前に買い物して帰宅したいので、ロクサーヌに声をかけた。
「取り敢えずパン屋からまわるか」
「はい」
俺たちは玄関の扉を開けて 夕暮れ時の帝都の町に繰り出した。