異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
私がベイルの商館にきてから60日経ち、奴隷としての全ての教育が終了した翌日のこと。
その日、突然主人が決まったと知らされてひどく落ち込んだけど、なんとその方は憧れのレオン様だった。
自分のインテリジェンスカードに彼の名前を確認し、安堵感と幸福感に浸っていると、アラン様とレオン様の会話が耳に入ってきた。
「レオン。今さら言わなくてもわかっているとは思うが」
「ああ。彼女は大切に扱うし、衣食住と税金も俺が保証する」
「!」
いま、大切に扱うって...... 私、性奴隷なのでは?
それとも、性奴隷として大切に扱うってこと?
私、レオン様に何をされちゃうの?
うぅ、もしかして... 恥ずかしいこと... されちゃったり?
妄想に浸りそうになったけど、今後の話と聞こえたので意識を現実に戻した。
私は黙って聞いているだけだったけど、決まったことはだいたい...
・私は商館を出て、レオン様と生活すること
・毎朝レオン様と商館に通い、午前中は使用人として裏方で働き、午後はレオン様と迷宮探索を行うこと
・レオン様のパーティーは私を筆頭に、今後、奴隷をメンバーとして増やしていくこと
他にも細かい取り決めをしてたけど、私に関係するのはこのくらいだったと思う。
あと、レオン様は私を購入した形になっていて、代金は給金から天引きで返済するとのこと。
私は探索者が自分の天職だと思っているので、商館付きの使用人として働いてもらうと聞かされたときは少し気持ちが沈んだけど、その後にレオン様のパーティーメンバーとして迷宮に入ることを聞かされたので一気に気持ちが昂ってしまい、「戦闘はお任せ下さい」と言って胸を張ってしまった。
その後、話が一段落した時に私の売値を聞くと、何と100万ナールと言われた。
私は驚いて、「わ、私にそんな価値はないと思います!」と言ったんだけど、レオン様から「ロクサーヌは自分の評価が低すぎるよ。俺にとって、君は100万ナールの価値があるんだ」と真顔で言われてしまった。
レオン様から見た私は、容姿端麗で性格も良く、家事が出来て戦闘もこなせる希有な人物で、恥ずかしいけど、彼からすると、私は理想の女性とのこと。
私にとって理想の男性であるレオン様からそんなことを言われてしまい、もうどうしていいかわからなくなって、ジッと彼を見つめていると、彼も真剣な表情で私を見つめ返してきた。
「ロクサーヌ。改めて、今後は俺に従って行動してくれ」
「かしこまりました」
彼の命にしっかり返事をすると、横で私たちを見守っていたアラン様が手を叩いて祝福してくれた。
すると、ほどなくして部屋に家令のシモンさんと奴隷世話係のサビアナさんが入ってきた。
シモンさんはレオン様の前にいくと、「坊ちゃま。立派になられて......」と泣きながら声をかけていた。
そして、サビアナさんは私の前に来ると、にっこりと微笑んだ。
「ロクサーヌ。黙っていてごめんね。でも良かったでしょ」
「はい。すごく驚きましたけど、本当に良かったです」
「ふふふふ。おめでとう。しっかりやりなさいね」
「はい!頑張ります」
◆ ◆ ◆
皆さんから祝福してもらった後、レオン様は残った事務仕事を手早く片付けた。
私も少しだけ手伝ったけど、戦力になったかどうかは正直微妙なところだと思う。
その後、レオン様と新居を探すことになった。
住みやすい所について心当たりを聞かれたので、クーラタルや帝都ならと答え、レオン様と色々話しながら思案した結果、帝都の南区か南東区の外側の居住地区で新居を探すことになった。
その際、レオン様が移動魔法を使える旨の発言をしたので、不思議に思って質問したのだけど、その時は話をはぐらかされてしまった。
しかし、実際に移動する時に信じられないことが起こった。
最初に驚いたのは、レオン様がパーティー編成を使ったのだ。
しかも 彼が私を見つめただけでパーティー加入要請が頭に浮かんだのだ。
常識では考えられないことなので、黙っていられずレオン様に質問した。
「あの、ご主人様。ご主人様は奴隷商人ですよね?
どうしてパーティー編成が使えるのですか?
それと、いま詠唱しなかったような」
矢継ぎ早に質問すると彼は少し思案し、そして、決意を込めたまなざしで自分の秘密を語り始めた。
「うむ。そうだな...... ロクサーヌ。俺はいくつか常人にはない能力を持っている。その一つに“同時に複数のジョブに就ける”というものがあるんだ」
「複数...ですか?
そのような話、聞いたことはありませんが......」
「信じられないかも知れないけど、今はファーストジョブは奴隷商人。セカンド以降は冒険者、勇者......」
えっ?勇者?いま勇者って言った?
「貴族や王族、有力者などに知られるとろくなことにならないので、全て内密にしてくれ」
「......かしこまりました」
返事はしたけれど、レオン様の言っている意味が理解出来ない。
言っていることが事実なら、確かに常人にはない能力だし、たったいまレオン様は奴隷商人なのにパーティー編成を使ったのだから、それだけでも常人にはない能力だ。
でも、7つのジョブ?本当に?
それと、いま勇者って何?
よく分からなくなってきたけど、とにかく内密にしなくちゃいけないことは間違いないわね。
その後、レオン様から勇者のジョブについて教えて頂き、彼が自らジョブチェンジして、インテリジェンスカードの表示を勇者に替えてみせた。
「ほ、本当に勇者! 先ほどは奴隷商人でしたのに。
それに、ご自分でジョブを変えられるのですね!
ご主人様。すごいです!」
常識ではありえないことだけど、この目で見てしまった以上、彼が言っていることを信じるしかない。
レオン様はただ格好良いだけでなく、とんでもない人なんだ!
私は驚き過ぎて、彼のインテリジェンスカードと彼の顔を何度も見返して確認してしまった。
「はははは。内密にね」
「かしこまりました♥」
興奮しすぎて思わず弾んだ声で返事をしてしまった。
すると彼から呼び方を変えてほしいと言われた。
どうも彼はご主人様と呼ばれることに抵抗感があったようなので、今まで通り名前で呼んでほしいと言われた。
「では......レオン様」
「ああ。それで頼む」
「ふふっ♥」
私が名前で呼ぶと彼は嬉しそうな顔をしたので、思わず微笑んでしまった。
すると 彼は恥ずかしかったのか、「先ずは帝都の冒険者ギルドに移動するぞ」と言って移動魔法のゲートを開いた。
また無詠唱だったのでちょっと驚いたけど、レオン様は実は勇者ですごい力を持っている人だということを教えていただいたばかりなので、なんとか声に出さないで我慢できた。
その後、ゲートをくぐって帝都の冒険者ギルドに移動し、そこから帝都の街中に出た。
そして、帝都の街並みを見て驚いた。
「えっ! なっ! なんっ!............はぁ はぁ」
私は叫びたくなるのを必死に抑えた。
すごい!大きい建物ばかり!
半年くらい前にクーラタルに行った時、“こんなに大きな町があるんだ”と、その時すごく驚いたけど、帝都はその比では無い。
クーラタルの何倍、いや、何十倍も大きい気がする。
道幅もクーラタルの2倍以上あるし、すごくたくさんの人が行き交ってる。
あまりの街の大きさに圧倒されて冒険者ギルドの前から一歩も動けずに固まっていると、レオン様はクスッと笑って、「ロクサーヌ。ついてきて」と言って、私の手を引いてくれた。
私はキョロキョロと周りを見回しながら、彼に手を引かれて帝都の街を歩いた。
そうしてしばらく歩くと、目の前に大きな壁と立派な門が見えてきた。
レオン様に聞くと、「あれが帝都の第1外壁で、あそこの門が南門だよ」と優しく教えてくれた。
その南門をくぐって堀を渡ると、レオン様は迷わず目の前の大きな金物屋に入った。
レオン様はこの店の店員に、この地区の世話役の所在を確認するつもりなのね。
そう思いながら、私も続いて金物屋に入った。