異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
「ふむ。何から説明するかな......
ロクサーヌ。探索者はレベル30で武器商人、防具商人、料理人にジョブチェンジ出来、レベル50で冒険者にジョブチェンジ出来ることは知ってるか?」
「はい」
「では、戦士が騎士に、商人が奴隷商人に、魔法使いが魔道士に、それから獣戦士が百獣王に、それぞれジョブチェンジ出来ることは知ってるか?」
「えっと... 戦士と獣戦士が上位ジョブにチェンジ出来ることは知ってます」
「では、後者はどれくらいでジョブチェンジできると思う?」
「えっと... わかりません」
「実は、探索者と同じなんだ」
「えっ?」
「そもそもレベルって何かわかる?」
「アイテムボックスの使える個数がレベルです」
「その考えは間違いだね」
「えっ... でも...」
「常識って思ってるでしょ」
「はい」
「はははは。みんなそう言ってるからそれが事実だと思うよね。
でも、それは常識なんじゃなくて、真実を知らないだけなんだよ」
「真実ですか?」
「ああ。みんなレベルっていうのは探索者の強さの基準ってことは理解してる。
でも、探索者はアイテムボックスが使えるから強いんじゃなくて、強さの分だけアイテムボックスが使えるジョブってことなんだよ」
「えっと... 考え方が逆ってことですか?」
「その通り。例えば料理人はジョブチェンジした瞬間からアイテムボックスが30個使えるけど、探索者で言うところのレベル30の強さは無いよね。
でも、迷宮探索で経験を積むと、アイテムボックスを使える個数は変わらないのに、どんどん強くなるんだよ」
「うーん...... 私は料理人のジョブのことはよく知りませんので......」
「まあ、武器商人や防具商人。冒険者でも同じことが言えるんだけど、これってアイテムボックスを使える個数と強さの基準、つまりレベルは別物っていうことなんだよ」
「そうなんですね」
「そう。そして、強さの基準をレベルという以上、それは全てのジョブに当てはまることなんだ」
「えっと...... もしかして、レオン様はレベルがわかるのですか?」
「正解だ。
さっき、ボーナスポイントで特別なスキルが使えるって話をしたけど、そのスキルの中に“鑑定”というスキルがあるんだ。
このスキルを使うと、人だったら名前、性別、年齢、ジョブ、ジョブレベル、装備品がわかり、物だったら名称がわかる。
その物が装備品の場合は、名称、装備品の種類、付帯スキルの名称、空きスロットの数がわかるんだ」
「えっと...... レオン様は鑑定を使えるから全てのジョブにレベルがあることがわかったのですね」
「まあ。そうだな」
「あと、空きスロットってなんですか?」
「装備品にスキルを融合するための枠のこと。
装備品は、その空いている枠の数だけスキルを融合できると思ってるんだけど、残念ながら鍛冶師の仲間がいないので、これには確証がないんだよね」
「そうなんですか...... それなら鍛冶師の奴隷を仲間にするのは?」
「鍛冶師の奴隷って、殆ど居ないんだよ」
「そうなんですか?」
「モンスターカードの融合って失敗が多いんだ。
聞いた話だと、腕の良い鍛冶師でも、成功するのは3回に1回。腕が悪いと10回やっても1回も成功しないらしい。
そして、失敗すればモンスターカードは消えてしまい、装備品は壊れてしまうらしい」
「失敗が多いという話は聞いたことがあります」
「モンスターカードの融合を失敗した鍛冶師が依頼者の恨みを買い、殺されたなんて話がいくつもある。
その為、通常鍛冶師は自分が奴隷落ちするとなった時、ジョブを探索者に変えてしまうんだ」
「そうなんですね」
「奴隷じゃない鍛冶師も、失敗して依頼者の恨みを買うことを避ける為、よほど良い条件を出さない限り、モンスターカードの融合は請け負ってくれないんだ。
だから、空きスロットの検証は当分お預けだ」
「それは残念ですね。
ところで装備品を買った時にレオン様が選んだ物って...」
「ああ。全て空きスロットのある物だ。
まあ、検証は当分先だろうが、一応、将来的に鍛冶師の仲間ができた時への布石だ」
「先のことまで考えてるなんて、さすがはレオン様です」
「いや。そこまで考えてるわけじゃないけど」
「でも、やっぱりレオン様はすごいです!」
「はははは。ありがとう。
まあ、俺は貴族を目指しているわけじゃないから、鍛冶師に関しては機会が来るまで気長に待つよ」
「え...... そうなんですか......」
「ん?どうかしたか?」
「いえ、その...... レオン様は迷宮を討伐して、貴族になろうとは思わないのですか?」
「全く思わない。
いい機会だから話しておくけど、貴族や有力者というものは、利用できるものは利用して使い潰し、周りのものは蹴落として成り上がろうと考えている連中ばかりだ。
個人にどんなに能力があったとしても、たとえ迷宮を討伐しても、彼らとの駆け引きに勝てなければ貴族にはなれないし、仮に貴族になったとしても、他の貴族や有力者との権力闘争に明け暮れなくてはならなくなる」
「そうなんですか...... 迷宮を討伐すれば領地がもらえて貴族になり、平穏無事に暮らせるようになる。
なんて単純なことではないんですね」
「そうだね。
だから、貴族や有力者から目をつけられて悲惨な末路を迎えないためにも、彼らとは、可能な限り距離を置きたいと思ってる。
そして、最終的には親父の後を継いで、平穏無事に暮らしたいと思ってるんだ」
「わかりました。それでは今後は目立たないように頑張ります」
「はははは。まあ、今はそれくらいの認識でいいよ」
「はい。それと、今の話は全て内密ということですね♪」
「そう。それが一番大事だ」
「はい♪」
「では、そろそろ探索を再開しよう」
「かしこまりました」
ロクサーヌは返事をすると、スンスンと鼻を鳴らして匂いを嗅ぎはじめた。
「レオン様。先ほど前にいた探索者パーティーですが、停まっているので、たぶん待機部屋にいるようです。
それと、たぶん6人です。
あと、ここからボス部屋の間には魔物はいません」
「まあ、低階層だから仕方がないな。待機部屋ではロクサーヌは俺の後ろにいるように」
「はい」
それから俺たちは5分ほど歩き、待機部屋に到着した。
しかし、探索者パーティーはおらず、ボス部屋の扉が閉まったままなので、彼らは一足先に、ボスに挑戦しているようだ。
仕方がないのでそのまま休憩し始めたけど、すぐにロクサーヌがスンスンと匂いを嗅ぎ出して、訝しそうな顔をした。
「レオン様。先ほどとは別のパーティーがこちらに近づいているようです。
多分5分もしないうちに、こちらに到着すると思います」
「分かった。そのパーティーが来るまでは座って休憩する。来たら立って扉の前に並ぼう」
「かしこまりました」
5分後、ロクサーヌの索敵通り探索者パーティーが待機部屋に到着した。
男6人のむさ苦しいパーティーだ。
俺はさりげなくロクサーヌを扉の前に移動させ、男たちから遠ざけた。
彼女の後ろに俺が立ち彼らの視線を遮ると、俺の後ろから「チッ!」という舌打ちする音が聞こえた。
無視して並んでいると、「アレは揉み応えありそうだ」とか「狼人族の女は激しいらしいぜ」とか「一発やらしてくんねーかな」などと言って、後ろのパーティーは俺たちを挑発してきた。
しかし、すぐにボス部屋の扉が開いたので、俺はロクサーヌの肩を押して入室を促した。
そして、俺自身は振り返って後ろのパーティーを見回して、「フッ」と鼻で笑ってから入室した。
次の瞬間、馬鹿にされたことに気づいた男たちが喚き出したけど、扉が閉まったので聞こえなくなった。