異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
「どうやらさっきの奴等は毒消し丸を持ってなかったようだな」
「準備出来ていなかったのは彼等の落ち度です。
迷宮探索は自己責任ですので気にする必要はありません」
ロクサーヌは他の探索者にかける情けは皆無のようだ。
俺も同意見なので、少しほっとした。
彼女の言う通り迷宮探索は自己責任。下手に助けても感謝されるとは限らない。
全滅しかかっていたパーティーを助けたのに、「邪魔されたからメンバーが死んだ」などと言いがかりをつけられた。なんて話もよく耳にする。
迷宮内では他の探索者には関わるべきじゃない。
たとえ相手が死にかけてようが、無視するのが一番だ。
そう思って歩いていると、ロクサーヌが俺の顔をのぞき込んだ。
「ところでレオン様は薬はお持ちですよね?」
「そうだな、忘れてた。
ロクサーヌには薬をいくつか渡しておく。いざとなったら遠慮なく使ってくれ」
「ありがとうございます」
俺はそう言って、歩きながらアイテムボックスを開き、中から滋養丸と毒消し丸を取り出して彼女に渡し、服のポケットにしまわせた。
俺自身は禰宜のスキルがあるので、今は必要ないものとなっていたが、アイテムボックスに入れたまま忘れていたものがあったので、お守り代わりに渡しておいた。
「まあ、使うことは無いと思うが、一応持ってれば安心出来るだろう」
「ふふっ♥ レオン様。迷宮では過信は禁物ですよ♥」
ロクサーヌはクスッと笑いながら、俺を嗜めた。
ただ、尻尾がワサワサ動いてるので、一度言ってみたかっただけのようだ。
でも、勘違いは正しておいた方が良いな。
「あー、そういう意味じゃなくて、俺は全体治癒と状態回復のスキルが使えるから、薬は要らないんだよ」
「えっ?そのようなスキルがあるのですか?」
「ああ。禰宜のスキルだ」
「ネギ?...お野菜の?」
「いや、そんなわけないだろう」
ロクサーヌの天然ボケに思わず笑って突っ込んでしまったが、気を取り直して話を続けた。
「神官の上位ジョブだ」
「えっ? 神官の上位ですか?
神官の上位ジョブは神官長とか司祭とかではないのですか?」
「そうだ。勘違いしてる人が多いけど、神官長とか司祭っていうのは神殿の役職であってジョブではないんだよ」
「そうだったのですね。それは知りませんでした」
「まあ、神殿の偉い連中は、自分たちが上位ジョブだと勘違いされていることが分かっていても権威を守るために否定しないから、知らなくても仕方がないよ」
「そうでしたか。レオン様は神殿がお嫌いなのですか?」
「別に神殿が嫌いというわけではないが、あそこの偉い連中と関わりたいとは思わないね」
俺はそう言って少し笑うと、ロクサーヌも微笑んでくれた。
どうやら彼女も信心深くはないようだ。
「話を戻すが、全体治癒は巫女や神官が使う全体手当ての上位版のようなものだ。
但し効果は5倍くらいあるから、部位欠損でなければ大抵の怪我は治る。
それから、状態回復は一人にしか使えないが、睡眠、毒、麻痺、石化の4つの状態異常を回復するスキルだ。
なので、“薬いらず”というわけなんだ」
「そうだったのですね。
それにしてもレオン様は凄すぎます。私の常識からは外れすぎていて、もう、どう驚いたらいいのか分かりません」
「あははは。
なんか済まないが、取り急ぎ全て内密にしておいてくれ」
「かしこまりました」
話が一段落すると、前方に待機部屋が見えてきた。
全く気を抜いて歩いていたわけではないが、ロクサーヌがいると魔物と鉢合わせをする可能性がほぼ無いので、精神的にも非常に助かる。
そう考えると、これからは本当に探索が楽になるな。
そんなことを考えながら、俺は待機部屋の中を覗き込んだ。
「どうやら 誰もいないみたいだな」
「そうですね 。先ほど追い抜いた3人は撤退したようです。それと、周りに他のパーティーもいません」
「そうか。上手くすれば、またボスマラソンが出来るかも知れないな」
「そうですね。今はこの扉が早く開くことを祈りましょう」
そう言いながら俺たちは床に座り、扉が開くまで休憩した。
ロクサーヌには、座っている間に10階層のボスはパーンという半獣半人のヤギの怪物で、打撃攻撃と強力な全体攻撃魔法を使う魔物であること。
魔法を使う際は後ろに飛んで距離を取る癖があることを説明した。
そして、魔法はフラガラッハで詠唱中断出来るので、出現と同時に2人で囲んで逃さないよう煙になるまでゴリ押しする。という戦い方をレクチャーした。
5分後、ゴゴゴゴッという音を立てながら、ボス部屋の扉が開いた。
立ち上がると、隣のロクサーヌはスンスンと匂いを嗅ぎ始め、顔がほころんだ。
「レオン様。近くに探索者はいません」
「よし。ボスマラソン開始だ!」
俺たちは頷き合い、ボス部屋に飛び込んで一気に中央まで駆け寄った。
ボス部屋の扉が閉まると、部屋の中央に煙が集まりボスが出現した。
次の瞬間、ロクサーヌが右から、俺が左から斬りかかり、戦闘態勢が取れずに戸惑っているパーンをタコ殴りにした。
すると、1分も持たずにボスは煙になってドロップアイテムに変わった。
ロクサーヌがヤギの肉を拾っている間に俺はボス部屋の壁にワープゲートを開き、彼女と一緒に待機部屋に戻った。
そして、俺がアイテムボックスにヤギの肉をしまっている間にロクサーヌが索敵した。
「レオン様。近くに他の探索者はいません」
「よし。第2ラウンドだ!」
俺はそう言うと、再び開いたボス部屋の扉に向かってロクサーヌと駆け出した。
そうして10階層もボスマラソンを行い、パーンを5回(最初の一回と合わせて6回)倒した。
そして他の探索者が索敵にかかったので、最後の1回は11階層に上がり、そこからダンジョンウォークを使って17階層に移動した。
◆ ◆ ◆
ゲートを抜けて17階層のボス部屋に一番近い小部屋に移動した。
「ロクサーヌ。初めに話した通り、この階層からは俺は魔法主体で行く。
昨日と同様ロクサーヌには、前で盾役になってもらうので、よろしく頼む」
「お任せください」
俺はキャラクター再設定でジョブを組み換え、武器をロッドに持ち替えて、鋼鉄の盾を装備した。
そして近接戦への対応のため、ロクサーヌとお揃いのレイピアを佩剣した。
更に遊び人の効果設定を勇者の知力大上昇、スキル設定を魔道士の下級雷魔法に設定し、キャラクターを後衛魔法使い仕様に変更した。
俺が自分のキャラクター仕様を変更している間に、ロクサーヌは俺から受け取った17階層の地図でボス部屋の方向を確認し、匂いを嗅いで索敵した。
「レオン様。この先に魔物がいます。魔物は3種類で、2匹、1匹、1匹の合計4匹です」
「うむ。この階層の魔物はマーブリーム、16階層はビッチバタフライ、15階層はグラスビー、14階層はハットバットだ。
マーブリーム以外は飛ぶ魔物なので動きが速く、後衛にいても前衛の魔物を飛び越えて突っ込んでくるから注意が必要だ。
それと、マーブリームは水弾、グラスビーは毒針を飛ばしてくる。
あと、ビッチバタフライに体当たりされると麻痺する場合がある。
以上がこの階層の注意点だ」
「えっと...... レオン様。もしかして、17階層は22階層よりも大変なのでは?」
「そうだな... 注意点は多いし魔物の動きも速い。
ただ、魔物のレベルが5も低い。
その分能力も低いから、少ないダメージで倒すことができる。
それに、飛行タイプの魔物は風魔法に弱いから、たぶん2回目の魔法で倒せるはずだ」
「えっと、魔物にもレベルがあるんですか?」
「人と同じで魔物にもレベルがある。魔物のレベルは階層の数とイコールだ。
つまり22階層の魔物はレベル22、17階層の魔物はレベル17ということだ」
「もしかして、魔物のレベルも鑑定できるのですか?」
「出来るが名前とレベルしかわからないから、あまり役に立つ情報ではない」
「それでもすごいです」
「はははは。ありがとう。
22階層と同じように、ロクサーヌは魔物の引き付けと回避。あと、遠距離攻撃を弾くことに専念してくれれば問題無いはずだ」
「わかりました。やってみます!」
ロクサーヌから力強い返事が返ってきたので、俺たちはボス部屋に向かって歩き出した。