異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
向かいのソファーに座った親父は、鋭い眼光で俺を見つめている。
この顔をした親父を誤魔化すことは出来ないだろう。
俺は10歳のときに自分に起きたことについて、当時のことを思い出しながら、一つずつ説明することにした。
「彼女を知っていた理由を説明する前に、10歳のときに俺に起こったことを話そうと思う。
但し、誰にも知られたくないので、ここだけの秘密にしてほしい」
「うむ...... まあ良いだろう」
親父がうなずいたので、先ずは俺の能力について説明することにした。
能力については黙っていることも可能な気がするけど、頼みごとをするなら隠し事は無くしておくべきだと思うから、ちょうど良い機会だろう。
最初、親父はこの世界の常識から逸脱した俺の能力について「そのような話は聞いたことがないが...」と、訝しそうな表情で説明を聞いていたけど、無詠唱でウォーターボールを浮かべたり、ボーナス武器を出したりすると、その表情が驚愕に変わった。
そして、何度かファーストジョブを入れ替えてインテリジェンスカードに表示させると、俺に特別な能力があることを認めてくれた。
すると、親父は真剣な表情になり、少し考えてから有力者に能力を知られた際の危険性について説明してくれた。
俺も同じことを懸念していたけど、親父はさらに深い考えをもっていた。
なので、俺は素直に忠告を受け入れることにし、親父のいう通り、自分に一生仕えさせる奴隷以外には決して能力を明かさないようにすることにした。
能力についての説明は済んだので、次に前世の記憶についての説明と、この世界でこれから起こるいくつかの出来事を知っていることの説明をはじめた。
しかし、この世界が前世の記憶の中で描かれていた小説の中の世界ということについては「荒唐無稽過ぎていてにわかには信じられない」と言われてしまった。
仕方がないので、小説には親父や先ほど俺が見惚れてしまった娘が登場していたこと、彼女の名前がロクサーヌであることを告げると、親父は目を見開いて驚いた。
さらに、彼女は狼人族には売らないという条件付きで仕入れていること。
彼女は性奴隷となることを了承していること。
今後、彼女を購入しようとする怪しい客が何度も訪れるようになること。
90日くらい後、ソマーラという村を襲った20人以上の盗賊をほぼ1人で全滅させ、更にベイルまでの街道でもグミスライムを倒したというミチオと名乗る青年が、ビッカーという商人と一緒に犯罪奴隷を売りに現れ、親父はロクサーヌを販売するための条件に合致した人物だと判断すること。
ミチオはロクサーヌを購入する資金を持っていなかったけど、彼の功績を高く評価した親父は、資金を用意出来るまで5日間の猶予を持たせ、彼女の売却を仮決定すること。
ミチオは盗賊を殺して懸賞金を稼ぎ、5日後にロクサーヌを購入しに現れる。そして、ミチオに購入された彼女はベイル亭に連れて行かれ、その日の晩に純潔を散らされること。
ミチオは迷宮探索や貴族相手の商売で資金を稼ぎ、どんどん奴隷を購入してハーレムをきずくこと。
ここまで話すと親父は片手をあげて俺の話を止めた。
そして、彼は少し考えてから、「これから起こることはともかく、まだ誰にも伝えていないことについてお前は知っていた。つまりお前には、いくつかの未来に起こる事象について知識がある...... と、いうことか......」とつぶやいた。
「分かった。一先ずお前の言うことを信じよう。
それで、お前はこれからどうしたいのだ?」
「俺は親父の後を継いで平穏に生きていきたい。
自分や家族を守る為に力は必要だけど、俺の能力は隠し通したいと思っている」
「うむ。迷宮を討伐して貴族になろうとは思わないのか?お前の力が有れば可能かも知れないぞ」
「そんなギャンブルをするつもりはないよ。貴族に目をつけられたら大変だしね」
「そうか...... それなら良いが」
「ただ、親父にお願いがある」
「言ってみなさい」
「ロクサーヌを奴隷の身分のまま身請けしたい」
「.....つまり、あの娘を生涯のパートナーにしたいということか」
「はい」
「あの娘は狼人族だが」
「それでも彼女がいい」
「そうか...... 理由は?」
「一つはさっき親父からも言われた通り、俺は自分の能力を隠す必要がある。そのためには身近に置く者は自分の奴隷でなくてはならないと考えている」
「うむ。だがそれならわが家の戦闘奴隷でも構わない気もするが」
「次に、彼女は獣戦士として非常に高い戦闘力。とりわけ魔物の攻撃を回避する能力に長けている。さらに鼻がよく索敵能力が非常に高い。
手放すには惜しい存在だ」
「うむ。確かに家内奴隷としてだけでなく、戦闘奴隷としても使えるなら価値は高いが。
それだけか?」
「その、俺も男なんで、そろそろパートナーが欲しいかなって......」
恥ずかしさを抑えながら何とか言い切ると、親父は少し嬉しそうに微笑みながら「ふっ」と短く笑った。
そんな親父の顔を俺は10年ぶりに見た気がした。
「レオン。器量良しで戦闘力もある。そんな彼女がどれほど価値があるのか、分からないお前ではあるまい」
「はい。しっかり教育してオークションに出すなら、100万ナールの値はつくと考えます」
「ふふっ。そこまで評価しているのか。
なら、対価はどうする?」
親父はニヤニヤしながら質問してきた。
雰囲気からして俺の願いを断ることはないだろう。
そう確信できているけれど、ここは真剣に今俺が考えていることを話すべきだと考えた。
「先ず、俺は将来的には親父の後を継ぐことを約束する。だから商館の運営助手として、今まで通り仕事を手伝うし、その上で空いた時間に彼女と迷宮を探索して資金を稼ぎ、対価を返済するつもりだ」
「うむ...... 分かった。但し、彼女には先ず教育が必要だ。だから、お前と行動をともにさせるのはそれが済んでからだ」
「はい。ありがとうございます」
俺は深々と頭を下げた。
そんな俺を楽しそうに親父が見つめていたことは、言うまでも無いだろう。