異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
商館を出て馭者台に乗り込むと、「では、ミツオ様。次は騎士団に向かいましょう」と言って、商人は馬車を発車させた。
次の瞬間ハッと気がついた。
待て待て待て、自然な流れで出てきたが、俺、奴隷購入の話をされてないぞ?
てことは、後でもう一度この商館に戻るのは不自然じゃないのか?
そもそもなんで、あの奴隷商は俺が冒険者かどうか聞かなかったんだ?
う〜、わからんっ!何故こうなった!
漫画と違うじゃないか......
何故だ?何か会話におかしなところがあったか?
後でなんて言ってあの商館に戻ればいいんだ?
「ミツオ様。到着しました」
「へっ?着いた?」
「はい。ここがベイルの騎士団詰所でございます」
「そ、そうか」
俺が混乱しているうちに騎士団詰所まで来てしまった。
しまった。
道順を確認してなかった。
後でちゃんと、さっきの商館に戻れるのだろうか......
そんなことを考えながら、商人に連れられて騎士団詰所の中に入ると、一人の男が駆け寄ってきた。
ハッと我に返って思わず鑑定すると、[ソジュン 男 22歳 騎士Lv4]と表示が出た。
「何用だ!」
「盗賊を倒したので、インテリジェンスカードをお持ちしました」
「そうか。それなら先ず盗賊のカードを見せてもらおうか」
「かしこまりました」
「さ、ミツオ様。インテリジェンスカードを出して下さい」
商人は騎士に返事をすると、俺に盗賊のカードを出すように言って、自分の持ってる2枚を先に差し出した。
俺も慌てて盗賊のカード28枚を取り出して騎士に渡すと、彼はその量に驚いていた。
すると騎士は、1枚1枚カードを全て確認し、「間違いない全て盗賊だ」と言って、俺と商人に左手を差し出すよう促した。
恐る恐る商人と一緒に手を差し出すと、呪文を詠唱し始めた。
「滔々流るる霊の意思、脈々息づく知の調べ、インテリジェンスカード、オープン」
次の瞬間、俺の左手の甲からインテリジェンスカードが飛び出した。
おおっ! これが俺のインテリジェンスカードか。
[加藤満男 男 22歳 村人 自由民]
なるほど、やはりレベルは書かれてないんだな。
騎士は商人と俺のインテリジェンスカードを確認すると、俺のカードを見た時に少し驚いた顔をした。
一瞬焦ったけど、独り言のように「ん?苗字持ち? いや。自由民か」と呟いた。
そこでハッと気がついた。今度は忘れずにキャラクター 再設定で買取価格30%上昇を付けておく。
どこかのCMの文句じゃないが、“モノ売る時は忘れずに”だ。
「もうしまって結構です。では、少しお待ちください」
騎士はそう言い残すと足早に詰所の奥へ向かった。
ん、なんか急に対応が丁寧になったな。何でだ?
少し不思議に思っていると、それを察したのか商人が「ミツオ様が自由民と分かったので態度を改めたのでしょう」と返事をした。
俺は何も言ってないのに、こいつはエスパーか?
そう思いながら商人の方を見ると、「ジョブが盗賊になっていないかどうか確認したのです。盗賊に懸賞金を渡すわけにはまいりませんので」と言い出した。
どうやら俺がインテリジェンスカードを確認したことに困惑してると思ったようだ。
否定するのも変なので、とりあえず頷いておいた。
それと、取り敢えずこの商人はエスパーではないようなのでほっとした。
少し冷静になって詰所の中を見ていると、なんとなく慌ただしかった。
奴隷商が言ってた通り、あちらこちらで不穏な会話が聞こえてくるし、ピリついた雰囲気がする。
「聞いたか?あの男爵。自分は諸侯会議で忙しいから、俺たちだけで迷宮を殺せってほざいたらしいぞ!」
「全くあのバカ領主が、相変わらず無茶言いやがる!」
「噂じゃ盗賊連中に手を緩めてほしかったら裏金払えって脅してるらしいぜ」
「ああ、それでスラムに男爵の執事が出入りしてたのか」
「俺たちには盗賊を殲滅しろなんて言っておいて、奴等が金払ったら俺らに手を緩めろって言うつもりか?」
「あのバカ領主なら言いかねないな」
ここに部外者がいるのに、この騎士団には情報漏洩って考えは無いのか?
この世界、結構やばいかもな?
騎士団の連中を眺めながらしばらく待っていると、詰所の中から一人の女が出てきた。
何か偉そうなんで鑑定してみた。
[ラディア・マキシナント・ゴッゼル 女 28歳 騎士Lv27 装備 マジカルアーマー 加速のブーツ]
胸はそこそこだがケツはデカイな。いや、腰のくびれがヤベーのか。
すらっとしてて、ティリヒやセラよりよっぽど美人だ...... コイツも性奴隷に出来ねえかな。
そう思っていると女騎士にキッと睨まれた。
「何か不快な視線だな」
「へっ?」
やばい。こいつ、勘が鋭いのか!
ちょっと焦ってしまったけど、そんな俺の様子を無視して、女騎士は言葉を続けた。
「フンッ! 盗賊を倒したのはそのほうか」
「あ、ああ、そうだが」
「あれはこの町のスラムを根拠としている盗賊団の一味だ。現在壊滅作戦を展開中なので一部が逃げ出したのだろう。そのほうが倒した中の二人に懸賞金がかけられている。その他の者にはまだ賞金はかかっていない」
「さようでございますか」
商人は残念だったようだ。
そう思っていると、詰所の奥からさっきの騎士Lv4が走ってきた。
そして、女騎士に白い袋を渡すと、耳元で何か囁いた。
女騎士は「チッ!」と舌打ちすると、騎士Lv4は一礼して詰所の奥に戻っていった。
「2人分の賞金だ。今回は、我々騎士団が取り逃がした賞金首の討伐に協力してもらった礼も上乗せしてある。受け取るがよい」
そう言うやいなや、女騎士は白い袋を俺に向かって放り投げた。
「おっと」
「受け取ったら、さっさと立ち去るがよいぞ」
「あーあ。感謝の言葉もねえのか。お前、終わってんな」
俺は賞金を投げられたことにムカついて、咄嗟に女騎士に突っかかった。
上手く煽ってこの女を性奴隷にしてやろうと思ったからだ。
「何だと。騎士団を侮辱するのか!」
「騎士団は侮辱してないさ。俺は素直に感謝できないアンタを侮辱したんだ」
「なっ!たまたま何人か倒したからって調子に乗るな」
「別に調子に乗ってねえさ。ただ、あんな盗賊にてこずるとはね。アンタ、手を抜いてるのか?」
「クッ!」
「誰に取り入って偉くなったのかは知らんけど、アンタの手には負えなくても、俺ならあんな盗賊なんて余裕だぜ。へへっ」
「いいだろう..................
そこまで言うならこの町の盗賊を壊滅させてみろ!
それが出来たらお前を認めてこの身体を好きにさせてやる。だが、出来なかった時は覚悟しておけ!」
女騎士は一瞬俺に殴りかかりそうになったけど、ギリギリで踏みとどまったようだ。
だが、頭に血が上っていたせいか、盗賊を倒したら自分の身体を好きにさせてやるなんて言いやがった。
やった。煽り勝った!
俺は心の中でほくそ笑みながら言葉を続けた。
「へへっ。そうか。なら、可愛い下着を買っておきな。
その時は生意気な口がきけなくなるまでたっぷり可愛がって礼儀を教えてやるからよ」
「フンッ!盗賊は数がいるから大変なんだ。賞金稼ぎを気取るのはいいが、せいぜい後ろには気をつけるんだなっ!」
女騎士はそう言い残し、詰所の奥に戻っていった。
フフッ。言質は取った。
これで盗賊を何人か倒せば、アイツは俺の性奴隷だw
そう思って振り返ると商人が凍りついていた。
「ミツオ様。騎士団に楯突いて、大丈夫ですか?」
「ん?何か問題でも?俺の強さは知ってるだろw」
騎士団詰所を出ると、商人が話しかけてきた。
かなり心配そうな顔をしている。
「いや、ミツオ様は騎士団の代わりに、盗賊を壊滅する義務を負ったことになったのですよ」
「はあ?なんでだ?」
「なんでも何も、“盗賊を壊滅出来なかった時は覚悟しておけ”と言われていたではありませんか」
「確かにそうだが」
「“覚悟しておけ”ということは、処罰するということです」
「へっ?」
「しかも壊滅ってことは、一人でも盗賊が残っていたら、壊滅できてないと言われてしまいます」
「なっ!そういうことか」
あの女騎士。あの時一瞬 言葉に詰まったのは......
くそっ!嵌められた!
うまく煽って抱くきっかけを作ろうなんて、考えなきゃよかった......
強そうな奴を何人か殺って、あの女にマウント取って一発やって、あとは俺のテクニックで性奴隷にするつもりだったのに。
何人殺れば終わるのか、わかんねえじゃねえか!
「騎士団詰所の中で、あれだけ派手な言い合いをしたのです。今更なかったことには出来ますまい」
“クッ!そんなことはわかってる!お前はもう黙っとけっ!”
俺は心の中で毒づいて、思わず商人に恨めしそうな目を向けてしまった。
「ま、幸い期限を設けられてはおりません。
少しずつでも盗賊を駆除していけば、処罰されることはないでしょう」
「うむ。そうだな......」
「さ、気を取り直して次は装備品を売りに行きましょう」
「ああ。頼む」
俺は半ば放心状態のまま、再び馬車に乗り込んだ。