異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
夕食の後、俺はベイルの騎士団詰所に移動した。
そして、入口で案内をしている騎士に話しかけた。
「よう。ちょっといいか?」
「ん?何か用か?」
「昨日盗賊を倒したので、インテリジェンスカードを持ってきたのだが」
「お前がか?まあ良い。左手を出せ」
言われた通り左手を突き出すと、彼はインテリジェンス カード操作の呪文を唱えた。
そして俺の名前とジョブを確認した。
「ふむ。何だ、苗字もちか... 特に問題はないな。
それじゃ、盗賊のインテリジェンスカードを見せてみろ」
俺は、「これだ」と言って騎士にカードを手渡した。
すると彼はその場で枚数を数え、「10枚もあるのか......」と呟いて、訝しそうな目で俺を睨むと、「いま調べてくる」と言って詰所の奥に歩いていった。
ずいぶん横柄な態度だったな。
ああいう奴がいるから、この町の騎士団はあまり好かれてないんだろうな。
そんなことを考えながら10分ほど待っていると、懸賞金が入っているであろう小袋を持った女騎士が俺に向かって歩いてきた。
「賞金首が3人いた。中でもトグロは盗賊グループの頭目で、我々では消息も掴めなかったのだが、一体どうやって見つけたのだ」
彼女はそう言いながら、賞金の入った小袋を差し出した。
「トグロ? ......あ、ああ。アイツか。
いや、狙って見つけたわけじゃない。たまたま狙った盗賊グループの頭目が奴だったということだ」
「何だ、偶然か。そんなんじゃ、そのうち背中を刺されるぞ」
賞金を受け取りながら返事をすると、女騎士は俺を小馬鹿にし、何が楽しいのかニヤニヤしながら俺の顔を覗き込んだ。
「そうかも知れない。だから、なるべく1グループずつ、殲滅するよ」
「はあ?お前正気か?
外で戦っているならともかく、スラムの中じゃ逃げられるから殲滅なんて不可能だぞ」
彼女から“呆れて物も言えない”といった感じの視線を向けられてしまったので、「確かにその通りだな。肝に銘じておくよ」と返事をすると何故か驚かれた。
「お、お前...... 憑き物でも落ちたのか?」
「ある意味そうかも知れないな」
「ま、まあ、盗賊壊滅に向けて真摯に取り組むならこちらとしてはありがたい。これからも頼むぞ」
「分かった」
「ところで昼前に、少女を2人、警ら中の騎士団員が保護したのだが、何か知らないか?」
「さあな」
「ふ~ん...
その子たちは昨日の夜攫われて盗賊のアジトで乱暴されたようなんだが、朝起きたら盗賊が全員殺されてたらしく、怖くなって川沿いを逃げてきたらしいんだが」
女騎士は言い終わると、ニヤニヤしながら俺の顔を覗き込んだ。
そして、そのまま俺が返事をするのを待っている。
“チッ! 俺が知ってるって確信してるな”
俺は諦めて肩をすくめ、少しだけ昨日のことを話した。
女騎士は最初はニヤついていたが、少女たちが頭陀袋に入れられて連れてこられた様子を見ても何もしなかったことや、少女たちが頭目の部屋で犯されたことに薄々気づきながらも、俺がそのまま立ち去ったことを話すと、眉間にシワを寄せて見るからに不快そうな顔をした。
「つまりお前は、盗賊を全滅させたくせに、少女を放置してきたのか。ちょっとは見直してやろうと思ったが、クズはどこまで行ってもクズだな」
「脅威は排除した。それ以上の責任は持てない。
俺も生きるのに必死なんでな」
「必死だと?!普通は...... いや。もういい。
トグロのアジトの場所を教えろ」
「......今さらどうするんだ?」
「現場を確認する。それと......
お前が一般人を手にかけていないか、確認する必要もあるからな」
「そうだな」
俺が肯定すると、女騎士は少し驚いたような顔をした。
しかし俺は、それを無視して盗賊のアジトの場所を教えると、騎士団詰所を後にした。
それから冒険者ギルドに行き、ドロップアイテムを売ろうと思ったけど、残念ながらカウンターが閉まっていた。
どうやら今日は探索者が少ないので、早めに カウンターを閉めてしまったようだ。
どうしようか考えながらギルド内を見渡していると、ギルドの壁にゲートが開いた。
そして、ゲートから男が2人出てきた。
あれは、他の町に人を輸送をしている冒険者か?
他の町の冒険者ギルドだったら、まだカウンターが開いてたりしないだろうか......
そう考えながら見ていると、冒険者は男に一言声をかけて壁に振り返ったので、俺は慌てて声をかけた。
「すまん。ちょっと待ってくれ!クーラタルまでお願いしたいのだが」
「ん?済まないが、帝都に戻って今日は終了だ」
「なら、帝都まででいいから頼む」
「分かった。銀貨2枚だ」
俺はアイテムボックスを開いて銀貨を2枚取り出し、冒険者に手渡した。
すると彼からパーティー加入要請がきたので、合意して彼と一緒にゲートをくぐった。
帝都の冒険者ギルドに着くと、俺はその大きさに圧倒されてしまった。
言葉もなく立ち尽くしていると、いつの間にかパーティーから外されており、送ってくれた冒険者もいなくなっていた。
もう外は真っ暗だけど、冒険者ギルドの中にはかなり多くの人がいる。
そして、カウンターにもたくさん人が並んでる。
今後、ベイルの冒険者ギルドのカウンターが閉まっているときは、コチラの冒険者ギルドに移動してドロップアイテムを売ることにしよう。
待てよ...... これだけ人がいるのなら、もしかして武器屋とかも開いてるんじゃねえのか?
俺はそう思ってギルドから外に出ると、通りは街灯に照らされて明るく、店も全然開いている。
そして、行き交う人も多かった。
左右を見渡すと、100mほど先に武器屋を見つけた。
その隣に防具屋もあるようだ。
まだやってるのか?
元の世界では店の灯りが点いていても営業終了なんてよくあることだったけど、店の前まで来たら普通にやっていた。
何人か客もいるようだ。
武器屋に入ってカウンターに行き、店員に武器を売りに来た旨を離すと、隣の机に売る武器を出すよう指示された。
俺は、鋼鉄の剣とシミターを1本ずつ残し、残りの武器を全て売却した。
次に、隣の防具屋に行き、自分の防具に加えて革のジャケットと革の靴を1つずつ残して、残りの防具は全て売却した。
その後は冒険者ギルドに戻り、ワープでベイルの迷宮6階層に移動した。
迷宮の小部屋に着くと立ちくらみのような感覚と気分が落ち込む感覚が同時に襲ってきた。
瞬間的に魔力枯渇という言葉が頭に浮かんだので、キャラクター再設定をいじり武器をデュランダルに変えた。
そして、迷宮内を歩き回って何度か魔物を狩ると、気分が戻った。
俺はキャラクター再設定で武器をフラガラッハに戻し、経験値上昇を主軸にボーナスポイントを振り直した。
それから2時間ほど6階層で魔物を狩り、腹が減ってきたので本日の探索は終了した。
迷宮を出る前にステータスを確認したところ、探索者と戦士のレベルが昨日よりも1つずつ上がっていた。
加藤満男 男 21歳 自由民
探索者Lv17 英雄Lv14 戦士Lv15
装備 フラガラッハ 革の鎧 皮の帽子 皮のグローブ 革の靴 決意の指輪
ついに戦士のレベルが英雄を上回った。
英雄のレベルが上がりにくいので、何となくジョブによってレベル上昇に必要な経験値が違うような気がしていたけど、どうやら間違いないようだ。
だいぶ体力がついてきたから、そろそろ魔法使いのジョブ取得を目指すか。
MP全解放か...... ちょっと怖いな。
確か、MPを回復する薬があったはずだから、やる前に買っておこう。
そう思いながら迷宮を出て、いつものようにベイル亭に向かった。
◆ ◆ ◆
旅亭で食事後にスラムの入口に移動して、そこから昨日殲滅したグループの隣のエリアを縄張りにしている盗賊グループのアジトに向かった。
そして、アジトの入口が見える空き家を見つけると、そこに潜んで出入りする人の観察をはじめた。
すると、アジトの中から昨日殺し忘れた見張りの盗賊Lv2が出てきた。
カンテラの灯りに照らされてる姿だから間違ってるかも知れないけど、何となく落ち込んでいる気がする。
そう思っていると、すぐ後ろからスキンヘッドでゴツイ体をした盗賊Lv33が出てきた。
このグループのLv30超え6人のうちの一人だ。
盗賊Lv33が大声で「おう!全員集まれっ!」と叫んで周りに声をかけると、付近で雑談していた盗賊たちがワラワラと集まってきた。
7人... 8人... いや、10人か。
建物の陰や空き家と思っていた家からも盗賊が出てきた。
思ったよりも多いな......
鑑定すると、盗賊だけではなく海賊もいる。
海賊って...... ベイルの近くに海があるのか?
考えてみると俺はソマーラの村とベイル、そして、今日の帝都しか行ったことがない。
地図も無いからベイルの近くに海があるのかも分からない。
今度、地図を探してみるか。
そう思っていると、盗賊Lv33が昨日見張りしていた盗賊Lv2の背中をバシッ!と叩いた。
「見張りは新入りがやることになった。心配だろうがコイツが「どーしてもやりてえ」っつうんだから、信用してやろうや。
ガハハハハハハハ!」
「チゲーだろ。「役立たずの僕ちゃんに、是非やらせて下さい」っつったんだろ。
ギャハハハハハハハ!」
「コイツに見張りが出来んのか?
「ロリコンオヤジの仕打ちにはもう耐えられましぇーん。何でもやるからたしゅけてくだしゃい」って鼻水垂らしてボスに泣きついたって聞いたぜ。
ブハッ!ギャハハハ」
盗賊たちは新入りをひとしきり馬鹿にすると、「じゃあ朝まで寝るんじゃねえぞ!」と言い残してアジトの中に引っ込んだ。
それから明け方まで監視したけど、アジトは静まり返り、結局誰も出てこなかった。
昨日のグループと同じだな。
奴等、寝込みを襲われるなんて、考えてもいないのだろう。
いや......
隣のグループが寝込みを襲われてるのに緊張感の欠片もない分、昨日のグループよりも酷いのか。
このグループは昨日のグループよりも人数が多いし、明らかに戦力が高い。
だから驕っているのだろう。
そう結論づけて、俺はその日の監視を終了した。