異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
スラムの2つめの盗賊グループを襲撃してから2日経った。
俺は昨日に続き、空き家から幹部を始末したグループの動向を監視していた。
襲撃の翌日以来、アジト入口の監視は3人になり、かなり警戒度が上がっている。
この状態で正面から入るのは不可能だ。
かといって、中の状況もわからないのにワープで侵入するのも危ない気がする。
残りの盗賊をどうやって殲滅するか考えながら監視していたけど、どうやら今日も打開策が浮かびそうにない。
そろそろ夜が明けるか......
“今日も無駄足だったな”なんて思いながらソマーラの村に移動しようとした。まさにその時、アジトから盗賊たちがワラワラと出てきた。
7人... いや、8人か。
鑑定すると出て来たのは全員男で、盗賊Lv26、盗賊Lv21、盗賊Lv18、盗賊Lv12、盗賊Lv11、盗賊Lv10、海賊Lv8、盗賊Lv5だった。
どうやら仕切っているのは盗賊Lv26の男みたいだ。
そのまま見ていると、全員揃って移動を始めたので、俺はどこに行くのか考えながら奴等の尾行を開始した。
そう言えば女騎士は“何処かを襲撃することがある”なんて話をしてたし、よくよく考えると漫画では商館が盗賊に襲撃されていた。
もしかするとそのイベントか?なんて思ったけど、あの商館だったら自分は出入り禁止にされているから襲撃されていても何も出来ない。
ついて行っても仕方がないけど、あの漫画では全滅させたとは言ってなかったから、逃げ帰ってくる盗賊がいるかも知れない。
そういう奴がいたら闇討ちしてあのグループの盗賊を減らし、壊滅に追い込もう。
そう考えながら尾行を続けていると、盗賊の集団は商館の前に到着した。
“マジであのイベントだったのか!”なんて驚きながら建物の陰から見ていると、集団を仕切っていたリーダーが扉をノックした。
すると、なんと商館の入口の扉が内側から開いて、中から男が出てきた。
内通者がいたのか......
あっ!そう言えば漫画の方もソマーラでコソ泥を働いた奴が、内通者になってたな。
アイツを買った奴は盗賊ではないはずだから、あのアジトにいた盗賊以外の奴がコソ泥の主人ってことなんだろうけど... じゃ、主人は女か?
男は全員盗賊だったから、奴隷を買うことは出来ない。
でも、漫画ではアイツを買ったのは男だったんだよな...
うーん... やっぱ漫画とは違うのか。
それとも外部に協力者がいるのか......
この辺ハッキリしておかないと、そのうち足を掬われるかも知れないな。
余計なことを考えていると、扉を開いた男は盗賊から剣を受け取り、踵を返して商館の中に消えていった。
それに続き、他の盗賊たちも次々と商館の中になだれ込んでいった。
内通者も入れて9人か...... それなりの戦力だとは思うけど、狭い建物の中ではたしてそれが活かせるのか?
確か駐車場の方に裏口があったから、俺だったら半分はそちらに回すとか、別の場所から窓を割って侵入するけどな。
ん、待てよ......
こんな時間に襲撃するということは、盗賊グループの奴等は商館の人間は寝静まっていると考えているはず。
つまり、戦闘はあまり考えておらず、寝込みを襲って金品を強奪しようと考えてるのか。
だから何も考えずに、正面入口から全員入っていったんだ。
漫画と同じように待ち構えられてたら、盗賊側は苦戦必須だろう。
そう思っていると、すぐに剣戟の音が聞こえてきた。
言わんこっちゃない!キッチリ待ち伏せされてるやん!
呆れてしまい、心の中で変な関西弁でツッコミを入れてしまった。
しかし、5分も経たないうちに、異変が起こった。
どこから走ってきたのかよく分からないけど、気づいたら武装した男女が商館の入口まで走ってきていたのだ。
そして、彼等は躊躇なく入口扉を開くと、勢いそのまま中に駆け込んでいった。
暗がりだし一瞬しか見えなかったけど、女の方は尻尾が生えていたから獣人だ。
しかも、首輪のような物をしていたし、胸がデカくてかなりスタイルが良かった。
まさか...... ロクサーヌか?!
チッ!いきなりだったんで鑑定し忘れた!
あの漫画では、ミチオとロクサーヌは商館が襲撃された時に用心棒として雇われていた。
この世界は漫画の世界と全く同じではないようだけど、いま見た獣人がロクサーヌだったら......
あの奴隷商は俺に嘘をついてたってことか?
いや、先に売れてしまっていたら、嘘をついたのではなくて、黙っていたということか......
あのとき、本当に商館にロクサーヌがいなかったのなら、今の女は彼女に似ているだけの全くの別人という線もある。
よくわからないけど、もしいま商館にロクサーヌがいるのなら、なんとか買えないだろうか......
いや...... 俺は出禁にされてるから、奴隷を買うどころか入館すら出来ない状態だった......
クソッ!金ならあるのにっ!
俺は込み上げる激情のまま、身を隠している建物の壁を蹴りそうになったけど、すんでのところで我慢した。
そして、大きく深呼吸して気持ちを落ち着かせ、もう一度冷静に考えた。
男の方は普通の戦士のようだったけど、もしかしてロクサーヌを買った奴なのか?
それとも男の方も、ただの戦闘奴隷だったのか......
どちらか分からんけど、2人はきっと商館の裏口から回り込んできたのだろう。
挟み撃ちに出来れば、圧倒的に有利だからな。
俺は今見た2人についてはそう結論づけて、商館入口の監視を再開した。
商館には戦闘奴隷がいるから簡単に勝負がつくとは思えないけど、商館側が勝てば何人かはあの入口から逃げ出してくるだろう。
じゃ、盗賊側が勝てばどうなるか......
しばらくは誰も出てこないか。
それとも金品の入った袋を抱えて逃げ出してくるか。
若しくは奴隷を奪って引き連れて出てくるか......
色々と考えていると、不意に剣戟の音が止んだ。
ん?もう勝負がついたのか?
まだ襲撃開始から10分も経ってない気がするけど......
今すぐ商館に踏み込むか。
それとももう少し様子を見るか......
盗賊側が勝っていれば踏み込んでも問題ないが、商館側が勝っていたら、不法侵入扱いされて、下手すれば盗賊の仲間と思われる可能性がある。
どうするか......
次の行動に逡巡していると、商館の入口から冒険者ふうの男が飛び出してきた。
そして、町の中心部に向かって走っていった。
あれは騎士団詰所の方だ。
どういうことだ?
まさか盗賊が全滅したのか?
盗賊側が負けた場合、何人かは逃げ出してくるだろうから、そいつらを始末しようと思ってたけど、ただの一人も出てこない......
9人もいたのに、全員殺されたのか?
それとも生きたまま捕まっているのか?
もしかして、裏口の方から逃げたのか?
よくわかんないけど、いま出て行った男はたぶん騎士を呼びに行ったのだろう。
「はぁー... 盗賊が出てこないんじゃ、これ以上ここにいても仕方がないか」
俺は一人呟くと、ワープでソマーラの家に帰宅した。
そして、何だか1日無駄にした気分が抜けぬまま、食事と種付けをして眠りについた。