異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
「では、帝都に向かおう」
俺は無詠唱でロクサーヌをパーティーに誘うと、彼女は目を見開いて驚いた。
そして、動揺しながらも彼女はパーティーに入ったけど、「あの、ご主人様。ご主人様は奴隷商人ですよね?どうしてパーティー編成が使えるのですか? それと、いま詠唱しなかったような」と、頭に沢山の疑問を浮かべて質問してきた。
帝都に移動しようと思ってたけど、都度都度質問されても面倒だ。
彼女は俺の奴隷になったのだし、しっかり口止めしておけば問題は無いはず。
ロクサーヌには、俺の能力を説明しておいた方が良さそうだな。
そう思い、俺は彼女に説明をはじめた。
「うむ。そうだな...... ロクサーヌ。俺はいくつか常人にはない能力を持っている。その一つに“同時に複数のジョブに就ける”というものがあるんだ」
「複数...ですか?
そのような話、聞いたことはありませんが......」
「信じられないかも知れないけど、今はファーストジョブは奴隷商人。セカンド以降は冒険者、勇者、魔道士、魔法使い、遊び人、禰宜の7つのジョブをセットしている。
落ち着いたときに詳しく教えようと思うけど、貴族や王族、有力者などに知られるとろくなことにならないので、全て内密にしてくれ」
「......かしこまりました」
「不服か?」
「いえ、そういう訳では...... その......」
「ん?どうした?」
「えっと... その...... 勇者って聞こえたのですが」
「ああ。持ってる。英雄の上位ジョブだ」
「え、英雄の上位ジョブですか?」
「疑わしいよね」
「い、いえ。決して疑っている訳では」
俺はそこでやっとロクサーヌが訝しそうにしている理由に気が付いた。
さっきから俺は口で説明するだけで、何一つ証拠となるものを見せていなかったのだ。
「ふふっ。ちょっと待って」
俺はキャラクター再設定でファーストジョブを勇者に変更し、インテリジェンスカードを出してロクサーヌに見せてみた。
「ほ、本当に勇者! 先ほどは奴隷商人でしたのに。
それに、ご自分でジョブを変えられるのですね!
ご主人様。すごいです!」
俺のインテリジェンスカードを確認すると、ロクサーヌは目を見開いて驚いた。
そして、カードと俺の顔を何度も見返している。
「はははは。内密にね」
「かしこまりました」
ロクサーヌの声が急に弾んだ。
論より証拠。一発で彼女は俺の言うことを信じたようだ。
「あと、俺の呼び方なんだけど、ご主人様っていうのはちょっと...... 出来れば今まで通り名前で呼んでくれないか?」
「よろしいのですか?」
う、ロクサーヌの笑顔が眩しい!
「うむ」
「では...... レオン様」
「ああ。それで頼む。
じゃあ、先ずは帝都の冒険者ギルドに移動するぞ」
「はい」
無詠唱でゲートを開くとロクサーヌは一瞬驚いた表情をしたけど、今度は質問せずに黙っていた。
俺はゲートを通り、帝都の冒険者ギルドに移動した。
◆ ◆ ◆
帝都の冒険者ギルドに移動して、そこから街中に出た。
するとロクサーヌが「レオン様。どちらに向かいますか?」と質問してきた。
「そうだな。先ずは中小規模の常設店舗が多い南地区に向かう。そして、第1外壁の南門を抜けて、その地区の世話役を探そうと思う」
「かしこまりました」
俺たちは冒険者ギルドのある南西区から南東方向に歩き出し、10分ほど歩いて中小規模の常設店舗が多い南区にきた。
そしてそこから南下して雑貨屋が立ち並ぶ通りを抜け、第1外壁の南門とその日は先の堀を通り抜けた。
堀を渡ると道は真っすぐ延びており、このまままっすぐ 10分ほど歩くと、第2外壁を抜けてドホナに向かう街道になっている。
そこまでの道は左右に生鮮食料品を扱う常設店舗や小物雑貨を扱う店舗が立ち並び、そしてその奥には住宅街が広がっていた。
俺たちは 堀を渡ってすぐの、右手角の金物屋に入った。
そして、店員にこの地区の世話人のことを尋ねると、奥からこの店の主人が出てきた。
「私がこの地区の世話役を務めているハマルと申します。私にどのような御用件ですかな?」
「私はレオンと申します。帝都に住みたいと考えているので、どこかに良い物件が無いか相談したいのですが」
「ふむ、そうですか......」
ハマルさんは人間族の男で、親父と同じくらいの歳に見える。
頭の毛は少し寂しくなってしまっているが、人の良さそうなおじさんだ。
彼は俺とロクサーヌを見て少し考えると、ニヤリと微笑んで口を開いた。
「失礼ですが、ご商売されている方ですか?
それでそちらのお嬢様とお二人で暮らす家を探しているということで宜しいでしょうか」
どうやらハマルさんは俺の姿を見て、商人と判断したようだ。
それは問題無いが、ロクサーヌのことは、付き人か情婦と思っているように見える。
奴隷の首輪をしているから仕方がないのかも知れないが、少し不満だ。
しかし、ここで否定しても雰囲気を悪くするだけなので、今は黙っておくことにした。
「すみません。こんな格好ですが、私は商人と兼務で探索者をしております。
ですので6人が暮らせるくらいの家を探しております」
「なんと、そうでしたか。それは失礼いたしました 。
6人で住むとなると、そうですね...... やはり一軒家を希望でしょうか? それと迷宮への移動は、どうお考えですか?」
「えっ?移動方法ですか?」
「ええ。フィールドウォークを使えるメンバーがいない場合は冒険者ギルドに近い南西区で探した方が良いと思いますので、そちらの世話役をご紹介致します。
いる場合は住む場所を選びませんので、こちらでもいくつか物件を紹介できると思います」
なるほど。
探索者で移動魔法のあてがなければ、運び屋のいる冒険者ギルドに近い場所を勧めるのか。
ドロップアイテムを売ることを考えると冒険者ギルドに近い方が便利かも知れないけど、探索者が多い場所は治安が悪い気がする。
俺たちは移動魔法を使えるから、冒険者ギルドから家までわざわざ歩く必要はない。
ならば、治安が良い分こちらの地区の方が良いだろう。
そう考えて、俺は答えた。
「フィールドウォークを使えるメンバーがいますので、出来ればこちらの地区で選びたいと思います」
「そうですか。それなら、ちょっと待ってて下さい」
ハマルさんはそう言って一度店の奥に引っ込むと、空き物件の情報が書かれたパピルスを持ってきた。
そして、いま空いている一軒家をいくつか紹介してくれた。
その後、俺とロクサーヌはハマルさんが紹介してくれた物件情報を見させてもらい、その中から1軒の家を選んだ。
場所は、第1外壁南門から西側に3分ほど歩いた所で、冒険者ギルド方向の第1外壁南西門から歩いても10分少々の所だ。
冒険者ギルドから直接歩いても20分もかからないので、迷宮探索後にドロップアイテムを売り、その後は買い物しながら家まで歩いて帰ることも十分可能だろう。
俺たちは選んだ物件のパピルスをハマルさんに渡し、内見を申し入れた。
その後、俺たちはハマルさんに案内されて物件まで歩くと、情報通り3分ほどで到着した。
あまり広くはないが、玄関前には庭もあるので、家庭菜園くらいなら出来そうな気もする。
家は2階建てで、1階はリビング、ダイニング、キッチン、トイレが2カ所と洗濯場がある。
洗濯場はかなり広く、手前に洗濯前の服を置くための小部屋もあるので、風呂桶を設置して風呂場と脱衣所とすることも可能だ。
さらに玄関横には広めのクローゼットもあるので、棚を設置すればちょっとした倉庫にもなりそうだ。
2階は大部屋と小部屋が2つ、トイレ、洗面所があり、さらに広めのベランダがあるので、洗濯物の天日干しも可能なようだ。
小部屋の一つは棚を設置して衣装部屋にするとして、やはり大部屋を寝室にするか。
少し大き過ぎるような気もするが、その辺は住んでから追々考えれば良いだろう。
そんなことを考えながら内見を進めていると、ハマルさんがこの家の利点について説明を始めた。
「帝都は北東の山岳地帯と西の独立峰から流れる川に挟まれた場所にあり、その川から堀に水を引き込んでいるため取水出来る場所が各所にある。
水の利便が良かったから多くの人が生活出来るしこれだけ大きな街に発展できたのだが、それとは別に川の水源近くから高低差を生かした水道も引かれていて、帝都内の各所に供給されていることは知っているかな?」
「知ってます。
そのまま飲用には使えないけど、生活用水として使うには十分だし、何より水汲みの必要が無いので便利だと。但し供給されているのは主要施設だけだと聞いていましたが」
「ははは。実はそうでもないんだよ。第1外壁内の各所には給水塔があってな、そこで貯めた水を施設に供給する仕組みになってるので、かなり多くの施設に水が供給されている。
それに第1外壁の外の住宅街にも給水塔はあってな、実はこの家にも水道が供給されているのだよ」
「そ、そうなんですか?」
俺は驚いて思わず聞き返してしまうと、ハマルさんは頷いてさらに言葉を続けた。
「ああ。初代の皇帝陛下が帝都を作ったとき、水道や下水道の考え方を広めたらしくてな、わざわざ山から水道をひく工事をしたそうだ。
そして、下水は地下に流すようにしたんだよ」
「すごいですね」
話を聞きながら、もしかして初代皇帝陛下は俺と同じ前世の知識があったのではないかと思ったけど、そんなことはハマルさんに話せることではないので、意気揚々と話す彼の言葉に驚いたフリをしておいた。
するとさらに気を良くしたハマルさんは、「この家の壁は全て遮蔽セメントが塗られているから、防犯対策もバッチリだ。正直これ以上の物件は私には紹介できないと思う」と言って満面の笑みを浮かべていた。
一瞬遮蔽セメントで囲まれていると移動魔法は使えないのでは?という疑問が浮かんだけど、それを察したハマルさんは、すぐに「フィールドウォークを使う際は、衝立や厚布を設置すれば問題ない」と説明を付け加えた。
ここは周りも似たような住宅だし、落ち着いた雰囲気がして治安も良さそうだ。
ロクサーヌもかなり気に入ったようで、さっきから仕切りに尻尾がピクついている。
しかし、好立地で広目の一軒家の為、賃貸料は1年間で8万ナール(金貨 8枚)とかなり高めだった。
金額を聞いたときは一瞬怯んでしまったけど、隣で顔を青ざめさせていたロクサーヌを見て思わずフッと吹き出してしまい、逆に冷静になれた。
なので、ハマルさんには契約することを伝え、金物屋に戻った。
そして、彼が契約書を用意している間にいくつか調理器具や食器を見繕い、抱き合わせで3割引で契約した。
その後、俺たちは家の鍵を受け取り、金物屋を出て家に向かった。
そして、家に入って荷物を置き、ロクサーヌに声をかけた。
「ここがこれから俺たちの家になる。ロクサーヌ。改めて言うが、これからよろしくな」
「は、はい。あの、レオン様。
私、こんなに大きな家に住めるなんて夢のようです。
あの、今後とも、宜しくお願い致します」
「じゃあ、次は家具屋に行くぞ」
「家具ですか?」
「ああ。良い物件だったので勢いで借りてしまったが、このままでは生活出来ないからな」
「ふふっ。そうですね♥」
肩をすくめると、ロクサーヌは俺の態度が面白かったのか、微笑んでくれた。
「では、必要なものを買いに行こう」
「かしこまりました」
俺はロクサーヌの手を引き、次の買い物に出かけるのであった。