異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
執務室に戻るとレオン様とロクサーヌさんは雑談しながら装備を外しだした。
しかし、一向に先ほどのことに関する話をしないので、私は我慢できずに説明を求めた。
「あの、鍛冶師を取得したってどういうことですか?」
「そのままの意味だが?」
レオン様の返事に困惑していると、ロクサーヌさんがクスッと笑って詳しく教えてくれた。
「セリー。貴方は先ほど鍛冶師のジョブに就けるようになったのですよ」
「えっ?でも私は鍛冶師ギルドの神殿で、鍛冶師になる資格はないと判断されていたのですけど......」
「ですからその資格を先ほど迷宮で取得したのです」
「えっ?資格を取得?」
私が首を傾げると、ロクサーヌさんに代わってレオン様が説明を引き継いだ。
「セリー。あるジョブに就くためには、そのジョブになるための資格がなければいけない。
ジョブに関するギルドで訓練や修行を行うところがあるだろう。あれは、そのジョブに就くための資格を取得させようとしてるんだ。
そして、ギルド神殿はその資格が取得できているかどうかを判断し、取得できていた場合はジョブを変更するようになっている」
「そういう仕組みだったのですね。
それでは...... 私が鍛冶師になれなかったのは、その時には資格がなかっただけだということですか?」
「その通りだ」
「私は巫女にもなれませんでしたけど、それもその資格が取得出来なかったということなんですね」
「ふむ。そうだな。だが、今回巫女の資格も取れているぞ」
「えっ?巫女もですか?」
「ああ。どちらも村人Lv5が資格取得条件の一つだったようだな」
「あっ!その、村人Lv5って何ですか?レベルがあるのは探索者だけのはずですけど」
「はははは。セリーもそう思ってたんだな」
「えっ?」
「レオン様。探索者以外のジョブにはレベルが無いという考えが常識になってますから、仕方がありませんよ」
「うむ。毎回説明するのは面倒だな」
「えっ?えっ?」
レオン様はまるで常識が間違っているみたいなことを言い出した。
驚いていると、ロクサーヌさんも同意するようなことを言い出したので、わけがわからない。
「では今回は、私が説明させていただきます」
「うむ。宜しく頼む」
私が困惑していると、ロクサーヌさんが私に向き直った。この疑問については、どうやら彼女が説明してくれるみたいだ。
「セリー。あなたは 探索者のレベルとはどういうことだと思っていますか?」
「えっ?探索者のレベルですか?
えっと、それはアイテムボックスの数だと思っていますけど」
「探索者は経験を積むと変わるのはアイテムボックスの数だけですか?」
「いえ。アイテムボックスが増えていく都度、少しずつ強くなっていきます」
「では、アイテムボックスが50個ある冒険者は、レベル50ということですか?」
「えっと。冒険者にはレベルはありません」
「それは何故ですか?」
「冒険者はどんなに経験を積んでもアイテムボックスの数が変わらないからです」
「では、強さも変わらないのですか?」
「いえ。冒険者は経験を積むと、戦う力が強くなったり、フィールドウォークで移動できる距離が延びたりします」
「では、冒険者はレベルが変わらないのに強くなるのですか?探索者はレベルが上がらないと強くならないのに」
「そう言われてしまうと何だか辻褄が合わない気がしますけど......」
私が悩み始めると、ロクサーヌさんはフッと少し笑って話を続けた。
「考え方が逆なんですよ」
「逆ですか?」
「探索者はアイテムボックスの個数が増えるとレベルが上がって強くなるのでは無く、強さのレベルがあがると、それに合わせてアイテムボックスの個数が増えるのです。
つまり、“レベル=アイテムボックスの数”ではなく、“レベル=強さ”なのです」
「逆に考えるなら確かにそうですけど......」
「殆どの人が勘違いしているのですが、“レベル=強さ”である以上、全てのジョブにレベルは存在します。
ただ、探索者以外のジョブは、レベルを表すための分かりやすい指標がないだけなのです」
「そうですか。話は分かりましたけど......
それならば、探索者以外のジョブはレベルなんて分かりませんよね?」
「普通はそうですね。ですが、レオン様にはそれを確認する方法があるのです」
「えっ?そんなことが......
いや、だから私のジョブを村人に変えて経験を積ませたということですか?」
私の質問が確信をついたのか、ここでレオン様が口を開いた。
「セリー。正解だ。
俺には鑑定というスキルがある。
このスキルを人にかけると、相手の名前、性別、年齢、ジョブ、ジョブレベル、装備品がわかる。
因みにパーティーメンバーの場合は、いま就いているジョブだけでなく、なれる資格があるジョブまでわかるんだ」
「鑑定ですか?
武器鑑定や防具鑑定ならありますが、ただの鑑定は聞いたことがありません。
ですけど...... レオン様の今日の行動を考えると、今お話しされた能力があると考えなければ辻褄が合わない気がします」
「一度に全てを理解するのは難しいと思う。だから、今は、俺たちに関して見聞きしたことを内密にしてくれればそれで良い」
「かしこまりました」
「では、取り敢えず納得してくれたようなので、今からセリーのジョブを鍛冶師に変更する」
レオン様はそう言うと、もう一度私をジッと見つめた。
そして、30秒ほど見つめ続けると、「よし。完了」と呟いた。
「セリー。お前のジョブを鍛冶師に変えた。但し、このことは内密にしておくこと」
「えっと。私、鍛冶師になったのですか?」
「ああ」
レオン様は返事をすると、私の左手を持ち上げて自身の右手をかざした。
すると、私の手の甲の上にインテリジェンスカードが浮かび上がった。
セリー 女 16歳 鍛冶師 初年度奴隷
所有者 レオン
間違いなく鍛冶師になっている......
私にとって憧れのジョブであり、鍛冶師になるために2年間も迷宮で戦い続けた。
いや、それ以前に幼い頃からうちにある鍛冶関係の本を熟読し、分からないことは祖父に聞いて、鍛冶師になるための勉強をしてきたのだ。
そして、やっと探索者のレベルが10になったので、鍛冶師に転職するために鍛冶師ギルドに赴いた。
迷宮を嫌がるようなダメな父でも鍛冶師になれたのだから、ずっと努力をしていた私なら当然鍛冶師になれるはず。
そう思っていたのに......
私はギルド神殿に、“鍛冶師になる資格無し”と判定されてしまった。
鍛冶師ギルドでは探索者Lv10の人しか鍛冶師への転職を認めていないし、一度ギルド神殿に資格無しと判定された人にもう一度判定を受けさせることはない。
つまり、私は鍛冶師になる夢を絶たれてしまったのだ。
一生なれることはなく、生涯羨ましむことしか出来ないと思っていた鍛冶師のジョブ。
その憧れのジョブに、鍛冶師ギルドのギルド神殿に資格無しと判定され、夢を絶たれたはずの私が転職出来ている。
こんなに嬉しいことはない!
試しに私は小声で防具製造と呟いた。
すると、頭の中に防具を製造するための呪文が浮かび上がった。
感動で思わず涙が溢れ出した。
「うぅ......」
「どうした?」
「嬉しいです..... 私...... 鍛冶師には、もう一生なれないと思っていたので......」
俯いて涙を流していると、不意に柔らかい身体に抱きしめられた。
そして、「セリー。良く頑張りましたね」と言われ、優しく背中をさすられた。
私を包んでくれたのはロクサーヌさんだ。
彼女は私を慈しむように、優しく声をかけてくれた。
更に、レオン様にも抱きしめられた。
彼は私とロクサーヌさんの2人を包み込むと、私の耳元で「セリー。これから鍛冶師として役にたってもらうぞ」と優しく囁いてくれた。
私は2人に包まれながら、「ありがとうございます。私、頑張ります」と返事をした。
しばらくして私が落ち着くと、レオン様がこれからのことを話しはじめた。
「セリー。お前には引き続き商館で一通りの教育を受けてもらう。
その間、俺たちとパーティーを組んだままとし、鍛冶師としての経験値を上げておく」
「えっ?よろしいのですか?」
「レベルをあげておいた方が、俺たちと合流したときにすぐに上の階層で戦えるだろう?」
「えっ?合流?」
「そうだ。全ての教育が終了したら、お前は俺たちと一緒に暮らしてもらうし探索パーティーにも合流してもらう。
それと、鍛冶師としての仕事に加え、商館の仕事も手伝ってもらうから、そのつもりでいてくれ」
「それって......
レオン様が私を身請けしてくださるということですか?」
「身請けも何も、もう対価も支払い済みだしな。
インテリジェンスカードにも俺の所有と書かれているだろう?
もしかして嫌だったか?」
「い、いえ、そんなことは無いです!嬉しいです!」
あまりにも嬉しかったので、思わずレオン様に飛びついてしまった。
すると、ロクサーヌさんが「よかったですね♪」と言って、私の頭を撫でてくれた。
「ロクサーヌ。合流したら、家のこととかは教えてあげてくれ」
「はい。そのときはお任せ下さい♪」
ロクサーヌさんはレオン様に返事をすると、私の後ろにピタッと身体を寄せた。
そして私の頭越しに、レオン様とキスをした。
ごく自然なその行いに、羨ましいと思ってしまった。
ロクサーヌさんはすごく綺麗な人だし、性格も良い。
回避力がすごいから迷宮では安心して前衛を任せられるし、索敵する力もあるから彼女がいれば魔物を探し放題だ。
レオン様への忠誠心、というか愛情も非常に高いから、彼から寵愛を受けることは仕方がないのかも知れない。
だけど......
ロクサーヌさんに言われた通り2番目でもいいから、私のことも見てほしい......
レオン様。何でもするから、私のことも可愛がってほしい。
そんなことを考えながら羨ましそうにしていると、ロクサーヌさんが耳元で囁いた。
「セリー。あなたもキスしたい?」
「えっ? その、私は......」
正直に言うとレオン様とキスしてみたい。
でも、この場でそんなことを言っていいのかわからない。
どう返事をしていいのかわからずに口ごもっていると、ロクサーヌさんは小声でレオン様に何か伝えた。
すると、レオン様は私の顎を少しだけ持ち上げて顔を上向かせ、「セリー。これからも宜しくな」と言って唇を重ねた。
ひゃーっ!キスされちゃった!
ファーストキスをレオン様と!
あうっ!目の前にレオン様が!近っ!
どうしよう!私はどうすれば!
く、口を開く?ああっ!ひ、開かない!
どうすれば!
どどどど、どうすればぁぁぁぁ...... ぁっ!
私は嬉しさと恥ずかしさで頭が真っ白になり、カッと顔から火が噴き出した気がした。
そして、どうすればいいのかわからなくなり、目の前がぐるぐる回りだす。
すると、スッと意識が遠のいた。
気がつくと私は自室のベッドに寝かされていた。
レオン様にキスされたあと、頭に血がのぼって倒れてしまったのか?
レオン様の執務室から、誰かに部屋まで運んでもらっていたようだ。
奴隷教育でご主人様への奉仕について学んでいたはずなのに、彼にキスされた瞬間に全て飛んでしまった。
うぅ〜......
今さらながら、恥ずかしくなってきた。
次に2人と顔を合わせたときに、どんな顔をすれば良いのか......
私は悶々としながら2人のことを考えていたけど、いつの間にかレオン様がロクサーヌさんを可愛がる姿を妄想しはじめていた。
そして、自分も一緒に可愛がって頂くことを想像すると、自然と股間に手が伸びてしまった。
結局私はいつも通り手を止めることが出来なくなり、ほどなくして絶頂をむかえるのだった。