※この作品はR-18です。

異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる   作:龍いち

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第6 章 新天地
再起【Side 主人公】


ベイルの商館の前でセリーと出会った日の翌日。

俺は久しぶりに朝早く目が覚めた。

 

何時間寝たのかよく覚えていないけど、服も脱いでいないので、たぶん帰ってそのままベッドに倒れ込んだのだろう。

先ず間違いなくティリヒとセラの2人を抱くことは無かったはずだ。

 

泥のように眠っていたのか、途中で起きることもなかったから、まず間違いなくこの世界に来てから一番長く寝たと思う。

それなのに...... 気分は最悪だ。

その理由は言わずもがなだろう。

 

昨日夕方、俺は商館のアノ男に完膚無きまで言い負かされ、目の前でセリーを奪われた。

あまりにもショックだったので、それからどうやって帰ってきたのか全く覚えていない。

覚えているのは、少し離れたところでアノ男を鑑定したときに表示された、探索者Lv83というとんでもなく高いレベルと、レオンという名前だけだ。

 

一体何が悪かったんだろう。

セリーに気付いたあの時、金貨でも見せればよかったのか......

 

漫画では普通に主人公と喋っていたので、言葉が通じないなんて考えもしなかった。

いや、セリーは商館でブラヒム語を習ったはずだったから、当然その前は話せないはず......

 

畜生っ!なんで気づかなかったんだ!

話せないってわかっていたら、やりようはいくらでもあったはずだ。

 

セリーの隣にいた男を黙らせられなかった時点で、彼女を手に入れることは難しくなったけど、あの時点ではまだ逆転できたはずだ。

 

あのあと商館から出てきたヤツの挑発めいた言葉に切れちまって収拾がつかなくなったけど、あのとき我慢してアイツを通訳代わりに使っていれば......

 

くそっ!

金は十分あったんだ。

ちょっと我慢出来てれば、今頃セリーが隣にいたはずなのに......

それなのに......

あとから出てきたアノ男に言い負かされて、セリーの側から立ち去らなくちゃいけなくなっちまった。

 

もう、どうやっても手に入れることは不可能なのか......

俺はフードの隙間から覗いたセリーの顔を思い出し、深くため息をついた。

 

何もかもが上手くいかない。

欲しい結果がすんでのところですり抜けていく。

前にも少し思ったけど、やっぱり俺はこの世界の主人公じゃないんだろう。

 

ロクサーヌとセリーが手に入らないなら、もう目標や目的にすることはない。

いや、目標どころかもうこの世界には未練はないな。

だけど... 

だからといって自殺する気なんてさらさらない。

 

ベイルの町での盗賊狩りも出来なくなった。

女騎士は美人だけど、あれは手を出したら面倒臭くなるヤツだ。

もう、ここを拠点にする意味はないのかも知れないな。

そう考えながら、俺は資金を確認した。

 

うむ。金貨は207枚あるな。

銀貨も...... あー、数えるのが面倒だな。

クソッ!銀行があれば楽なのに。

まあ、とにかく資金は十分だな。

 

あとは何処に移るかだ。

とは言っても、俺がこの村とベイル以外に行ったことがあるのは、帝都とクーラタルの町しかない。

それも、取り敢えず行ってみただけで、街の雰囲気すらわからない。

つまり、俺はこの世界を殆ど知らないのだ。

 

それに、この世界にきてから1ヶ月くらい経った気がするけど、ブラヒム語は話せても、未だに読み書きは殆ど出来ない。

まあ、今さら勉強なんかする気もねえから覚えてなくても当然なんだけど、さすがにちょっと不便さを感じてきた。

 

このまま一人で生きるのは厳しいな。

かと言って、ここに残る選択肢は無い。

 

「ハァー...... セリーが手に入っていたら......」

思わず言葉が出てしまった。

 

夜中にワープであの商館に移動して、セリーを攫うことは出来るだろう。

しかし、彼女を俺の奴隷にするには、奴隷商の協力が必要だ。

そういえばあの奴隷商は、ベイル以外の町にも商館はあると言っていた。

そこの奴隷商が協力的かどうかはわからんけど、話を聞いてみても損はないだろう。

 

ひとまずセリーのことは諦めるけど、上手く他の町の奴隷商の協力が得られたら、彼女を攫いに行ってやる。

そのときは...... ついでにアノ男に復讐してやるか。

 

フフッ。また復讐か。なんだか懐かしいな。

当事者のはずなのに、なんだか他人事のような気がする。

わためのことを考えると、今でも衝動的に怒りがこみ上げてくるし、あの男たちや高飛車女がいたら、産まれたことを後悔させながら殺せる自信がある。

 

だけど......

前もそうだったけど、きっと気分は晴れないだろう。

 

レオンだったか......

探索者Lv83は確かに脅威だけど、俺は複数のジョブに就くことが出来る。

だから、もう少し迷宮探索で身体を鍛えれば、十分戦えるはずだ。

それに、オーバーホエルミングを使えば、まず負けることは無いだろう。

 

だけど、あの商館には竜騎士のコンビがいる。

それに奴隷商も何気にレベルが高かったはず。

1対1ならなんとかなっても、多数相手に戦いは挑めない。

そう考えると、復讐と言えるようなことは厳しそうだ。

 

セリーを奪って、ざまあしてやるくらいが関の山か。

ただ、セリーが売られてしまったら元も子もない。

そう考えると、早く動いた方がいいな。

 

フフッ。

良いか悪いかは置いといて、進む方向が決まると少し気持ちが軽くなり、思わず笑いがこみ上げてきた。

 

さて、そうと決めたら取り敢えず朝飯を頂こう。

昨日の晩は食べてないから、かなり腹が減ってるしな。

それと、身辺整理をしないといけないな。

 

俺はティリヒとセラを呼び、朝食の準備を頼んだ。

そして、朝食を食べてるときに、ここから出ていくことを伝えた。

2人は少し残念そうな顔をしたけど、思いのほかあっさりと了承した。

 

不思議に思って聞いてみると、“俺に抱かれることは気持ちいいから無くなるのは残念だけど、さすがにそろそろ妊娠しているだろう。だから、これ以上俺をこの村に引き止めるのは悪いと思っていた”とのことだった。

 

因みに2人とも、今でも死んだ旦那のことを愛しているらしく、俺との種付けは生きていくためと、村長に言われたから仕方なく受け入れたとのこと。

気持ち良かったのは事実だけど、俺のことは別に愛してはいないらしい。

 

その話を聞いて、最後にもう一度だけ種付けするか聞いたけど、もう十分だとあっさり断られた。

その後、家に仮置きしていた装備品をアイテムボックスに収納し、服や小物はリュックにしまった。

そして、2人に「じゃ、元気でな」と挨拶すると、彼女たちは「ゴブ、ウンヲ」と言って頭を下げた。

 

俺はしばらく暮らした家を出ると、村長に村を出ていくことを伝えた。

彼は少し残念そうだったけど、最後は「気が向いたらいつでも戻ってきてください」と言って、俺を送り出してくれた。

 

◆ ◆ ◆

 

ベイルの冒険者ギルドに移動して周りを見回すと、ギルドカウンターの近くの椅子に男が腰掛けていた。

俺はその男の前まで歩いていき、「あんたは冒険者か?」と尋ねた。

 

「そうだ。どっかに移動したいのか?」

「行ける場所と料金が知りたいのだが」

「そうだな。

ターヘラなら銀貨1枚。帝都なら銀貨2枚。クーラタルなら銀貨4枚だ。

それ以外は、場所を聞いてからだな」

 

「ターヘラって何処だ?」

「なんだ兄ちゃん知らないのか?ターヘラはここと帝都の間の町だよ」

「栄えてるのか?」

「そうだな... ここと同じくらいの町だな。近くに迷宮があるのも同じだ」

「そうか。それならそのターヘラまで頼むよ」

「わかった」

 

冒険者のパーティーに入り、ターヘラの冒険者ギルドに移動すると、そこは意外と活気に満ちていた。

どうやらこちらの迷宮は、ベイルの迷宮よりも攻略が進んでいるらしい。

 

だから探索者が多いのか......

 

それだけでは無いような気もするけど、市が無い日は何となく寂れた気がするベイルと比べると、こちらの町の方が拠点にするには良いかもな。

 

そんなことを考えながらギルド併設のバーカウンターで従業員に、「初めて来たけど賑やかな町だな」と話しかけると、気分よくこの町に活気がある理由と宿を紹介してくれた。

 

と言っても、宿はこの冒険者ギルドの隣で素泊まりらしく、食事はそのまた隣にある大衆食堂で済ませるというスタイルらしい。

 

ところでこの街に活気がある理由だが、どうやらこの町の領主はダストニア男爵という貴族らしく、ターヘラとベイル、そしてその周辺のいくつかの村を治めているらしい。

その貴族がこの町に住んでるため、この町は騎士団が強く、治安が強化されている。

更にスラムが無く、盗賊も殆どいないらしい。

 

もちろん収入が少ない人の住む地域はあるけれど、ベイルのスラムのような治安の悪い場所ではないとのこと。

だから、人口はベイルの町よりも多く、必然的にベイルよりは活気があるとのこと。

 

自慢げに語る従業員の話を聞き終え、俺は隣の宿に移動した。

そして、取り敢えず2泊分部屋を確保してから町に繰り出した。

 

今日は市が立つ日なのか、人通りが多い。

武器屋と防具屋はどう見ても常設店舗だし、大衆酒場みたいなところもある。

しばらく通りの店を見ながら歩いていると、質素な外観のわりに大きな建物が見えてきた。

 

近づくと、入口の扉の横に小さな看板がついていた。

何て書いてあるのか読めないけど、たぶんここは奴隷商館だろう。

何故なら重厚そうな建物だけど、何となくまとう暗い雰囲気がベイルの奴隷商館にそっくりだからだ。

 

通り過ぎようと思ったけど、せっかくだから入ってみることにした。

理由はよくわからないけど、何故かそうすべきだと強く感じたからだ。

 

商館に入ろうと扉をノックすると、カシャっと音が鳴り、入口扉自体についている小窓が開いた。

そして、中から男が俺を確認し、口を開いた。

 

「何かご用でしょうか?」

「ここは奴隷商館で間違いないか?」

「間違いありません」

「そうか。奴隷の購入を検討してるのだが」

「失礼しました。今開けますので中にお入りください」

 

男ははじめ訝しそうに俺を見ていたけど、客だとわかると態度が一変した。

そして中に入ると、男は恭しく一礼し、俺を出迎えていた。

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