異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
商談室に戻りハーブティーを飲んでひと息ついたので、俺は気になったことを商館主に確認した。
「いくつか聞きたいことがあるのだが 」
「はい。なんでも聞いてください」
商館主が同意したので、俺はまず最後の部屋のエルフについて、購入した際に貴族絡みで面倒なことにはならないのか聞いてみた。
すると、商館主はニヤリと笑って、彼女の父親の状況と彼女が奴隷になった経緯を話し始めた。
なんでも彼女の父親は領地持ちの伯爵だけど、迷宮討伐が上手く行かず、そのうえ領内には盗賊団が蔓延っているらしい。
その盗賊団に騎士団がだいぶ殺られたらしく、今では没落寸前にまで追い込まれているとのこと。
それなのに、伯爵はプライドだけは人一倍高いようで、現実逃避して淫蕩にふけってはいても、同族に助けを求めることはなかったらしい。
そのことについて、彼女はエルフ一族の重鎮に相談しようとしたところ、その前に伯爵にバレて「恩を仇で返す気か!」などと激しく叱責された上、「今まで教育した費用を返せ!」と言われて莫大な金額を請求されてしまった。
その費用を支払う為、彼女はこの商館に売られてしまったとのことだ。
「彼女は伯爵から縁を切られた状態ですから、こちらから関わろうとしない限り、父親の方が手を出してくることはないでしょう」
「わかった。で、彼女はいくらだ?」
「迷宮討伐を成し遂げて貴族になるなら、彼女のような人材は絶対に必要となるはず。
ズバリ、160万ナールとなります」
「そうか。買えないわけではないが、流石に高いな」
「それ以上の価値はあるかと」
商館主は自慢げに語ったが、ふむ。貴族か......
なんか面倒臭そうだな。
俺は彼女のことは一旦保留にして、最後に確認した女性について、今と同じ質問をした。
すると、商館主は彼女が奴隷になった経緯を話し出した。
彼女のいた国は3年前に隣国に戦争を仕掛け、逆襲にあって負けてしまい実質的に滅びてしまった。
今現在、国を治めているのは、元隣国の第2王子だった方らしい。
戦後、かの国は戦争賠償の為、王族や貴族の私財は没収され、王と主立った貴族は打首となった。
さらに、王妃や主立った貴族の婦人、王子や王女、貴族家の子弟の多くが見せしめのため奴隷に落とされたとのこと。
その多くは敵国に連れて行かれ、男は鉱山奴隷、女は性奴隷にされたようだけど、子爵以下の子弟は海外の奴隷商人に売却された。
彼女はその中の1人とのこと。
その後、敵国によって残りの貴族は身分を剥奪され、貴族家も解体されて全員平民になったらしい。
つまり、今さら彼女に手を出す余裕がある者なんていないとのことだ。
「あれだけの容姿なのに、よく敵国が見逃したな」
「実は私が直接仕入れたのですが、彼女に会ったときは顔と身体のあちこちに痣の化粧をして、死病に侵されている風体を装っていました。
ですが、それだけでは私どもに売却という話にはならなかったでしょう。
たぶん彼女に近しい人が敵国の役人に賄賂を掴ませて、敵国の手から逃がしたのだと、私は考えております」
「だろうな。
それで、彼女はいくらだ?」
「彼女は170万ナールです」
「そうか。エルフの女性よりも高いんだな」
「そうです。あの美貌ですからな。
それに、仕入れの際もちょっと無理をしておりますので。
ですが、迷宮討伐を成し遂げて貴族になるなら、彼女のような人材は絶対に必要となるはずなのです。
そのための投資であるとお考えください」
「うむ。わかった。
それでは、狐人族の彼女はいくらだ?」
「ふむ。お客さまの本命の彼女ですな」
な、見抜いてやがるのか?
一瞬動揺してしまうと、してやったりと思ったのか、商館主がニヤついた。
「ふふっ。ズバリ彼女は180万ナールです」
「なっ!180万?!
彼女が一番高いのか?」
俺が驚くと、商館主はニヤニヤしながら説明をはじめた。
「はい。何と言っても希少種ですし、その中でも珍しい白毛です。
彼女に貴族の振る舞いを求めることは出来ませんが、迷宮攻略を進める上で、戦力としては超一流です。
彼女は当商館での最高値となります」
「そうか...... さすがに高いな。
少しだけでも下げられないのか?」
「元手もかかっておりますし......
お客さまには申し訳ありませんが、180万ナールでもかなり勉強させて頂いております」
畜生...... 俺の本命って見抜いてるから強気なのか。
全く値引く気はないようだな。
ここで諦める素振りを見せたらどうなるか......
いや、変なことを考えるのはやめよう。
下手な駆け引きをしようとして、ベイルの商館では失敗したんだ。
あの時の二の舞なんて、もうごめんだ!
しかし180万か。ロクサーヌ3人分じゃねえか。
クソッ!引くつもりはないけど、向こうの言い値で押し切られるのは何だか負けた気がする。
このまま一矢も報えないのは癪だから、遠慮なく値引きスキルは使わせてもらおう。
「わかった...... 1人目は彼女にする」
「お、お買い上げ頂けるのですね」
コイツ。値下げに応じなければ俺には手が出せないとでも思ってたのか?
商館主のリアクションに思わずムカついてしまった。
この恨みは3割引で返してやろう!
俺は商館主に気づかれないように一度目を伏せ、キャラクター再設定で、三十パーセント値引をセットした。
これで準備は万端だ。
「ああ。だけど最低でも、もう一人買おうと思う」
「おお、そうですか。それはそれは。
こちらとしては是非そうして頂けると嬉しいですな」
ニヤニヤしている商館主は無視して、次を誰にするか考えた。
容姿だけならダントツでエリザベートだろう。
だけど、流石に資金が足りない。
それに、貴族になるつもりはないから彼女に拘る必要はない。
この商館に来てロクサーヌやセリーに拘る気は失せたけど、パーティーをどう組むか考えると、やはりドワーフは外せない。
あとはどうするか......
俺は処女の戦闘奴隷の部屋で見た、ドワーフの探索者、狼人族の獣戦士、エルフの僧侶、それと巫女の女性の中から残りの奴隷を選ぶことに決めた。
そして、4名と面談したい旨を商館主に伝えた。
すると彼は使用人を呼び、何かを伝えて奴隷を迎えに行かせた。
部屋から使用人が出て行ったので、まだ面談前だけど、思い切って彼女たちの値段を聞いてみた。
すると、商館主はドワーフの女性が35万ナール、狼人族の女性が55万ナール、エルフの女性が55万ナール、人間族の女性が50万ナールであるとアッサリ答えた。
ドワーフが意外と安いな。訳ありか?
彼女を決定とすると、3割引ならもう1人いける。
いや......
面談してから落ち着いて考えたいところだけど、商館主の言い値のままなら3人目は厳しいな。
なぜなら迷宮探索で生活出来るようになるまでは、彼女たちを養わないといけないし、とにかく最初に色々買わなきゃいけない。
だから、上手く値切って少しでも多く資金を残さないとまずいからだ。
そう考えているとドワーフの女性が部屋に入ってきた。
俺はすぐさまもう一度鑑定した。
[リリア ♀ 16歳 探索者Lv11]
間違いなく先ほどのドワーフ女性だ。
商館主に促されて目の前に座らされると、彼女は自己紹介をはじめた。
「私はリリアと申します。
ドワーフで16歳。ジョブは探索者でレベルは...
11です」
一瞬言葉に詰まったので、「何か問題が?」と尋ねると、彼女は商館主を見た。
そして商館主が頷くのを見て話を続けた。
「私は探索者のレベルが10になったときに鍛冶師に挑戦しましたが、なれませんでした」
「一度鍛冶師になれないと、永遠になれないのか?」
「......なれません」
「理由は?」
「鍛冶師になるためには、鍛冶師ギルドでギルド神殿にジョブにふさわしいか判定してもらう必要があります。
しかし、ギルド神殿を稼働させるには膨大な魔力が必要な為、この判定を受けられるのは探索者レベルが10の者だけであり、生涯に一度きりと定められているのです」
「そうか。残念だったな」
俺の言葉を聞くと彼女は一瞬泣きそうな顔になった。
しかし、次の瞬間に決意のこもった顔つきになり話を続けた。
「鍛冶師にはなれませんでしたが、私は2年間の迷宮探索経験があります。
男性と比べると華奢に見えるかも知れませんが、ドワーフですので力には自信があります。
宜しくお願い致します」
「わかった。ひとつ聞いても良いか?」
「はい」
「俺は戦闘だけでなく、身の回りの世話も出来る者を探しているのだが、その辺はどうかな?」
「あ、はい。家事は一通り出来ますので大丈夫です」
「料理も出来る?」
「一般家庭の料理しか出来ませんが、大丈夫です」
「そうか。それは頼もしいな」
俺の言葉を聞くと、リリアはホッと安堵の表情を浮かべた。
どうやら鍛冶師になれなかったことを、よほど負い目に感じていたようだ。
その後、彼女が退出したので、俺は気になったことを商館主に尋ねた。
「彼女が安い理由は鍛冶師になれなかったからか?」
「左様です。しかも彼女はドワーフですので、同族以外の方からすると幼く見えます。
顔立ちはハッキリしてますし身体つきも悪くはありません。ですが......」
「ちょっと低いか......」
彼女は身長が130cm... いや、それ以下だな。
セリーよりも10cmは低いだろう。
顔は整っていて可愛いというか綺麗だった。
ていうか、妙に大人っぽく見えたな。
髪は黒で背中に届くくらいか。
セリーみたいにこんもりしてはおらず、いわゆるセミロングってやつだった。
それに、身体は小さいが胸はそれなりの......
いや、同じ身長だったら巨乳と感じるサイズだった。
Gカップくらいになるのか?
いわゆるロリ巨乳......
いや、これ以上は考えるのは危険だ。
俺は背が低くて華奢な女は好みだけど、決してロリではないのだ。
「彼女は性奴隷となることは了承しておりますが、そちらが目的の方にはあまり響かないもので...」
性奴隷だと。
くっ!変な扉を開いちまうじゃねえか!
「ま、まあ。ちょっとアンバランスだから、性的なことを目的にしているなら、そうなんだろうな。
俺にはそういう目的で奴隷を買いに来たわけじゃないけど、探索者である彼女はパーティーメンバーとして欲しい人材だ......
うん。彼女を購入する方向で考えたい」
「ほう。それは、それは。
ですが探索者なら、狼人族の者もおりますが。
彼女で宜しいのですか?
狼人族の女性であれば、性的にもご満足いただけると思いますが。
それか、非処女の者でも宜しければ探索者は2名おります。
彼女たちなら性的ご満足に加えて価格も抑えられますぞ」
「ふむ。出来ればもう1名欲しいので、なるべく資金は抑えたいところだが、狐人族の彼女と歳が近い者で揃えたい。
その方が良い気がするのでな」
「なるほど。なるほど。
つまり、年齢の高い者は候補からは外すということですな」
「......申し訳ないが、そういうことだ」
「ふふっ。そういうことですか。
どうぞ、ご自由にお決め下さい」
リリアは鍛冶師にするつもりなので探索者が欲しいというのは嘘だけど、序列を作るときに年齢の高い者がいると、障害になるような気がするのは確かだ。
だから、処女に拘っているわけではないけれど、カエデを買うと決めた瞬間に、俺の中では年齢が上の非処女の女性たちを購入する選択肢は無くなっている。
しかし、ニヤニヤしているところを見ると、どうやら商館主は違うように受け取っているようだ。
なんだかムカつくが、取り敢えず今は放置だ。
「それで彼女の値段だが、何とかならないか?」
「そうですか......
それであれば...... 34万ナールで」
「30万ナールは無理か?」
「そ、それはちょっと厳しいです。
さ、33万ナールではいかがですか?
流石にこれ以下は応じられません」
「そうか...... わかった。じゃ、ひとまずそれで」
「ありがとうございます」
俺が了承すると、商館主は胸に手をあててちょっと大袈裟にホッとしていた。
どう見ても演技に見えるけど、ここから3割引きにするんだから、勘弁してやろう。