※この作品はR-18です。

異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる   作:龍いち

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カエデの秘密【Side 主人公】

ターヘラの北区に家を借りた翌朝。

宿屋をチェックアウトして隣の食堂で朝食を食べた後、俺はカエデを引き取るために商館に向かった。

 

昨日の昼過ぎまでは、家の準備を万端にしてから彼女を迎えに行こうと思ってたけど、色々あって必要なものが揃っているのか自信が無くなってしまった。

一人で準備するのはかなり厳しい気がしてきたので、少し可哀想な気もしたけど、カエデを家の準備に巻き込む。

じゃなくて、手伝ってもらうことにしたのだ。

カエデなら、きっと将来の1番奴隷として、頑張ってくれるだろう。

 

商館の受付でフレア嬢に「先日購入した奴隷を受け取りにきた。今日はカエデを連れて帰る。宜しく頼む」と伝えると、彼女はニッコリと微笑み「かしこまりました」と返事をして商館の奥に入って行った。

そして、ソファーに座って10分ほど待つと、奥の扉が開いて商館主とフレア嬢、その後ろからカエデが出てきた。

フレア嬢はそのまま受付に行ってしまったので、俺と向き合うのは商館主とカエデの2人だ。

 

「ミツオ様。おはようございます。

カエデを連れて参りました」

「ありがとうございます」

 

カエデを連れてきたことに加えて、購入済みの奴隷を預かってくれていることも兼ねて商館主にお礼を言うと、彼は「いえいえ、お気になさらずに。それよりも、次に 奴隷をお求めになる時も、是非当商館をご利用ください」と言ってニヤリと微笑んだ。

 

正直、“オヤジの微笑みなんて誰得だよ!”ってツッコミたくなったけど、その前に彼の後ろからスッとカエデが前に出てきたので、0.1秒でそんな考えが吹き飛んだ。

 

おおっ!めちゃくちゃ可愛い!

1日会わなかっただけなのに、カエデを見た途端に思わず心臓が高鳴ってしまった。

俺は2人に気づかれないように一度深く呼吸して、それから彼女に向きなおった。

 

「ミツオ様。おはようございます。

本日より、宜しくお願い致します」

「う、うむ。おはよう。今日から宜しく」

 

カエデは挨拶しながら深々とお辞儀したので、俺も内心の動揺を隠しつつ、なんとか返事した。

そして、アイテムボックスから硬革の靴とリュックから外套を取り出して彼女に渡し、着用するよう指示した。

 

昨日服屋でこの外套を買ったときは流石に少し大き過ぎるかも知れないと思ったけど、実際に着せて見ると彼女の容姿をすっぽり隠すにはちょうどよい大きさだった。

俺は彼女の頭にフードをかぶせ、素顔を隠した。

 

「カエデの容姿を見られると、無駄に絡んでくるヤツがいるかも知れない。

だから俺が許可するまでは顔を出さないこと」

「かしこまりました」

 

彼女が俺の指示を承諾したので、商館主にリリアとクラウディアも予定通り数日中に迎えに来ることを伝え、もう一度2人のことを頼んだ。

そして、カエデを連れて商館を出た。

 

取り敢えず服屋と雑貨屋をまわって家に行き、荷物を置いてから装備品を買いに行こう。

そう考えながら歩きはじめると、突然カエデが抱きついてきた。

 

驚いて彼女を見ると、大粒の涙を流していた。

だけど、その表情はすごく幸せそうだ。

俺は理由がわからず困惑したけど、取り敢えず通りの端に寄って彼女に理由を尋ねた。

 

「カエデ。これはどういうことだ?」

「ごめんなさい。もう少しだけ......」

「????」

 

よくわからないけど、彼女が満足するまでこのまま待つか......

そういえば、彼女だけ鑑定してなかったな。

 

俺は彼女のレベルを確認するくらいの軽い気持ちで鑑定した。

そして、そこに表示された内容を見て、目玉が飛び出るぐらい驚いた!

 

[カエデ ♀ 15歳 奴隷 妖狐Lv2、探索者Lv10、英雄Lv6、村人Lv13 装備 硬革の靴]

 

「なっ!ジョブが4つ!」

思わず叫んでしまうと、次の瞬間 カエデの身体がビクンと震え、その次の瞬間には彼女に口を塞がれた。

そして、小さな声で、しかし、ハッキリと「満男君。大きな声出しちゃダメ!」と彼女に注意されてしまった。

 

えっ!どういうこと?

複数のジョブに就くことって、俺だけの特別じゃなかったの?!

それに、俺、いまカエデに注意された?

それと主人とタメ口ってどういうこと?!

しかも満男君って......

 

激しく混乱していると、彼女は俺の口からそっと手を離した。

そして、「満男君。愛してる」と言って今度は唇を重ねてきた。

 

なっ!どういうこと?!

カエデは俺の唇に吸い付くと、全てを味わおうかというくらい激しく舌を絡ませて、情熱的なキスをしてきた。

そして、混乱して動けずにいる俺をよそにたっぷりとキスを堪能すると、満足したのか唇を離し、恥ずかしそうに頬を赤く染めて微笑んだ。

 

「満男君。落ち着いた?」

「いやいやいやいや。落ち着くわけねえだろ。

ちゃんと理由を説明してくれ」

「えー。前はキスしたら落ち着いてたのに」

「前?いつの話だ?」

 

「いつって...... もう忘れちゃったの?

それとも、貴方は私が愛した満男君じゃないの?」

 

カエデはそう呟くと寂しそうに笑った。

 

わけがわからない。

俺、今...  責められてるの?

あまりにも状況がわからないので、もう一度彼女に話を聞いてみることにした。

 

「あのー、カエデさん?

俺のこと、何処で知ったの?」

「えっ?... あっ!」

彼女は自分のミスに気がついたのか?

今度は顔が真っ赤になって、その場にしゃがみこんだ。

 

とにかくちゃんと話を聞かないと、彼女の奇行や特異性について何もわからないので、「落ち着いたところで話をしよう」と言って彼女を立ち上がらせ、ひとまず家に向かった。

 

◆ ◆ ◆

 

商館から15分ほど歩いて家に到着。

しかし、家にはまだ家具が到着していないので、仕方なく2階に上がる階段に座り、カエデを隣に座らせた。

 

「色々と説明してほしいんだけど......」

「うん。先ずは私から話すね」

 

説明を求めると、目を潤ませながら、彼女は自分の状況について語り出した。

 

「私は狐人族のカエデ......

なんだけどね。

私にはこの世界とは別の世界にいた頃の記憶があるの。貴方に会うまでは、ただの前世の記憶なんだと思っていたんだけどね......

その世界での私の名前は綿貫綾女。

別の世界で満男君と将来を誓ったわためなの」

「なっ!わためって!」

 

思わずカエデの両肩を掴み、彼女と目を合わせた。

驚くなんてもんじゃない!

話が本当なら、姿形は違っていても一度は失くした俺の宝が目の前にいることになる。

彼女は俺の行動に一瞬 驚いたようだけど、すぐに話を再開した。

 

「やっぱり私の知ってる満男君で間違いないのね。

あのね。前世の記憶は継ぎはぎで、全てを覚えてるわけじゃないの。

私にはカエデとして生きた15年の記憶がちゃんとあって、それ以外に人間族としての記憶が断片的にあるみたいな感じなの。

でもね、私は満男君の幼馴染で、将来を誓い合った彼女で、貴方のことをとても愛していたことはちゃんと覚えてる。

だから、ずっと会いたいと思っていたの。

あとね、前世の自分がなんで死んだのかもだいたいわかってる」

 

「えっ!それは」

それは彼女にとって辛い記憶のはずだ。

“それは話さなくていい”と言おうと思ったけど、その前に 彼女が話を続けてしまった。

 

「ハッキリとは覚えてないんだけどね......

私は何人かの男たちに襲われて乱暴されたこと。

男たちに“満男君にバラす”と脅されて、性奴隷にされてたこと。

あと、駅のホームから線路に飛び込んだこと。

断片的だし靄がかかった感じなので、相手の顔も判然としないんだけどね。

そんな、記憶もあるから......

たぶん前世の私は乱暴されたことを満男君に話せなくて、耐えられなくなって自殺したんだと思う」

 

彼女は言いきると、俯いて目を伏せた。

そこまで聞いて、流石に俺も確信した。

目の前にいるのは間違いなくわためだ。

そう思うと同時に俺は彼女を抱きしめた。

彼女も俺の背中に腕をまわし、強く抱きしめ返している。

 

「わため。会いたかった。俺...... 俺......」

「満男君。私も会いたかった。

でも、ごめんなさい。 私...... どうしても言えなくて......」

 

しばらく抱きしめあっていたけど、少し落ち着いてきたので俺に抱きついて震えているわための頭を撫でた。

そして、彼女を震えさせている原因を作った奴等を思い出した。

俺は、ふつふつと湧き上がる怒りを抑えながら、わためが死んだ後のことを彼女に話した。

 

「わため...

お前を汚した男たちと黒幕の高飛車女は俺が制裁した」

「えっ?制裁って...」

 

「文字通り制裁だよ。

わためが死んで、しばらく経ってからだけど、学校で俺の顔を見て逃げ出した奴がいたんだ。

そいつを捕まえてボコったら、お前のことを白状したんだ。

そこからは、芋づる式に仲間を炙り出した。

そして、全員ボコボコにしてから玉を潰して二度と使い物にならないようにしてやった。

それからお前を襲わせた高飛車女も、拉致ってお前と同じ目に合わせ、ネットで公開して社会的に殺してやった」

 

「満男君...... 暴走しちゃったの?」

「仕方ないじゃん。わため いないし」

「うぅ... そうだけど...」

「まあ、おかげで俺は警察に捕まって、3年間も塀の中だったよ」

 

「そうだったのね」

「ああ。だから、もうあんな奴等のことは忘れろ。

世界も違うしわためは身体も変わったんだからな」

「うん......

名前も変わっちゃったけどね。ふふっ♪」

 

彼女の顔に笑顔が戻ったので、俺は気になることを聞いてみた。

 

「わためはこの世界の15年前に転生したのか?」

「えっと、そうかも知れないけど、前世のことをはじめて思い出したのは今から3年半くらい前。

盗賊に襲われて両親が殺された翌日くらいなの」

 

「そんなに最近のことか」

「最近かどうかは分からないけど、それまでは前世の記憶なんてなかったわ」

 

3年半前か......

元の世界でわためが死んだ頃だな。

何か関連があるのか?

少し考えていると、カエデは次の爆弾を投げだした。

 

「あと、さっきのジョブ4つのことだけど、たぶん私には満男君と同じ力があると思う」

「同じって?なんでそう思うの?」

「えっ!だって満男君もジョブ4つ就いてるじゃん」

「なっ!なんで分かったんだ?」

 

「なんでって言われても、鑑定したとしか言いようがないけど」

「えっ!マジか?!鑑定出来るのか」

「うん。あの、ステータス画面でボーナスポイントの振り分け次第で色々出来るでしょ」

「そうだけど。それはこの世界の人には......」

 

「わかっているわ。こんな力、誰かにバレたら大変だってこと。

だから、3年前にこの力に気付いてから、ずっと隠してるし誰にもバレてないよ」

「そうか。良かった」

 

「ところで私の方からも1つ聞いていい?」

「いいよ」

「なんで満男君はそのままの姿と名前なの?

おかげで商館で会ったときにびっくりしたし、思わず鑑定して本当に満男君か確認しちゃったんだけど」

 

「そうだったのか。商館で会った時に一瞬目を丸くして驚いていたことには気付いてたけど、そういうことだったんだな。

ところで俺がそのままな理由だけど、それは俺がこの世界に転生したのではなく、転移してきたからなんだと思う」

 

「異世界転生と異世界転移の違いってこと?」

「ああ。そうだ」

 

それから俺はこの世界が[異世界迷宮でハーレムを]という漫画の世界と酷似してること。

俺がその漫画の通りにこの世界に転移してきたこと。

この世界で起こる事象や人物についてある程度 知ってることを説明した。

 

その後、結局俺たちは出かけずに、家具屋の配達が来るまでわためはカエデとして生きてきた15年間の経緯を、俺はわためが死んでからの3年間の経緯を話し、お互いの理解を深めたのだった。

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