異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
ベイルの迷宮からワープでターヘラの冒険者ギルドに移動して、ギルドカウンターでいくつかドロップアイテムを売却した。
そして、冒険者ギルドの外に出ると町中は日が暮れる寸前で薄暗く、いくつかの店はもう閉まるようで、片付けをはじめていた。
俺は隣の大衆食堂で夕食を食べようと提案したけど、「明日の朝食の材料も必要でしょ?だから店が閉まらないうちに買いに行きましょう」とカエデに言われて 俺の提案はあっさり 却下された。
なので、俺たちは途中いくつかの店に立ち寄り、食材を買い足しながら歩いて帰宅した。
そして今現在、カエデとクレアに夕食の準備を任せ、俺とリリアはリビングに用意した作業机を挟んで向かい合っている。
「リリア。防具製造の呪文はわかるか?」
「わかります」
「では、鍛冶師の初仕事として、先ずはミサンガを作ってくれ」
俺はそう言ってアイテムボックスから糸を5個取り出した。
「えっと... すみません。
鍛冶師になったばかりなので、5個も作れないと思います」
「ああ。取り敢えず5個出したけど、無理せず作れる分だけでいいよ。
別にノルマがあるわけじゃないから、残りはまた明日作ればいいしね」
「分かりました...... それでは......」
リリアは糸を1つ取り、両手で包み込むと目を閉じた。
そして、精神統一が完了したのか?
スッと息を吸うと呪文を唱え始めた。
「今ぞ来ませるミココロの、ことほぐかげのアメツチの、防具製造」
リリアが呪文を唱え終わると、包み込んだ手の中から眩い光が迸り、視界を白く染め上げた。
そして、それが消えると彼女の手の中にはミサンガが包み込まれていた。
「出来ました」
「おおっ!お疲れ様。まだいけるか?」
「ご主人様。何故だかわかりませんが、まだ沢山作れそうです」
彼女はそう言いながらミサンガを机に置くと、次の糸を手に取り両手で包み込んだ。
そして再び呪文を唱え、光が収まると彼女の手の中にはミサンガが包み込まれていた。
すると、先ほど少し困惑気味な顔をしていたリリアは少し俯いて表情を隠し、先ほど作ったミサンガの横に今作ったものを並べた。
一瞬MPが減り過ぎて気分が悪くなったのかと思ったけど、彼女は黙って糸を手に取ると、本日3度目の防具製造の呪文を唱えた。
そして あっさりと成功させ、先に作ったものの隣に新たに作ったミサンガを並べた。
「ふふっ、ふふふふっ♪」
リリアは肩を震わせながら小さく笑うと、ガバっと音が聞こえるくらいの勢いで顔をあげた。
笑顔だ... 満面の笑顔だ...
なんだかハイになっていらっしゃる。
「ご主人様。私、まだ余裕みたい」
「そ、そうか」
「では、4つ目を作りますね♪」
ニコニコしながら糸を手に取る彼女を見て、何故か背中に寒気がしたけれど、それはきっと気のせいだろう。
俺は適当に相槌を打ちながら、リリアがMP枯渇で鬱状態にならないよう注意していたけど、結局10分ほどでミサンガ5個を作り終えた。
更に彼女は「もう少しいけそうです」と言ったので、俺はアイテムボックスからジャックナイフ2個、ブランチ1個、皮1枚を取り出して手渡すと、彼女は全てを両手で挟み、武器製造の呪文を唱えた。
そして、手元の光が治まると、そこにはダガーが1本作り出されていた。
すると流石に疲れたのか、「ふう...」と息を吐いて机に突っ伏した。
MPがかなりキツかったのか?
小声でブツブツ呟いてるけど、それ以上何かしそうな雰囲気はないので、「お疲れ様。そのまま少し休憩していてくれ」と声をかけながら彼女の頭を撫でてあげた。
そして、出来上がったミサンガを鑑定すると、空きスロットが付いた物が1つあったので、その1つをアイテムボックスにしまい、残りのミサンガは棚に片付けた。
ダガーは空きスロットは付いていなかったけど、普段の護身用として俺が身につけることにした。
しかし、「このダガーは護身用として使わせてもらおう」と言って俺が取り上げると、リリアが「そんな素人作品なんて、ご主人様に相応しくありません」と言って嫌がった。
なんだか嫌な予感がしたので、俺は間髪容れずにアイテムボックスから強壮丸を取り出して、無理矢理彼女の口に突っ込んだ。
彼女は一瞬吐き出そうとしたけれど、口を押さえて目を合わせ、「いいから飲み込め!」と言ってジッと顔を覗き込むとコクッと喉を鳴らして薬を飲み込んだ。
するとすぐにリリアが落ち着いてきたので手を離すと、彼女は「すみません。調子に乗ってしまったみたいです」と言って頭を下げた。
「さっきも言ったけど、別にノルマがあるわけじゃない。だから、無理はしないように」
「はい。今後は気をつけます」
その後、30分ほど休憩していると、夕食の準備が出来たとクレアが呼びにきたので、俺たちはダイニングに移動した。
そして、夕食を食べ終わり、ハーブティーを飲んで歓談しながら皆のステータスを確認した。
加藤満男 男 21歳 自由民
所有奴隷 カエデ、リリア、クラウディア
ジョブ 探索者Lv22、英雄Lv19、戦士Lv21、魔法使いLv10
装備 フラガラッハ、革の鎧、革の帽子、革のグローブ、硬革の靴、決意の指輪
カエデ 狐人族 ♀ 15歳 奴隷
所有者 加藤満男
ジョブ 妖狐Lv11 、探索者Lv17、英雄Lv13、魔法使いLv10
装備 アルマス、カイトシールド、革のジャケット、革のカチューシャ、革のグローブ、加速のブーツ
リリア ドワーフ族 ♀ 16歳 奴隷
所有者 加藤満男
ジョブ 鍛冶師Lv9
装備 棍棒、革のジャケット、革のカチューシャ、革のグローブ、革の靴
クラウディア エルフ族 ♀ 15歳 奴隷
所有者 加藤満男
ジョブ 巫女Lv10
装備 鋼鉄の槍、革のジャケット、革のカチューシャ、革のグローブ、革の靴
元のレベルが低かったことが大きく影響してるとはいえ、2時間足らずの探索でみんなだいぶレベルが上がっている。
獲得経験値上昇と必要経験値減少の組み合わせは狂悪だな。
こんな調子でレベルが上がったら、俺たちはどうなってしまうのだろう......
ちょっと怖い気もするけど、貴族や有力者にバレなきゃいいだけだしカエデもいるならなんとでもなるだろう。
となると、あとは装備品の強化か。
「みんな。ちょっと聞いてくれ。
リリアが鍛冶師になったので、次は装備品の強化を考えたいんだけど、モンスターカードって商業ギルドで仕入れるしかないのか?」
「そうですね...
迷宮で目当てのカードを落とすモンスターを狩りまくって自力で獲得するか、迷宮の前で探索者に声掛けしたり冒険者ギルドで依頼したりして、直接仕入れる方法もあります。
但し、後者はトラブルになる可能性がありますので、お勧め出来ません」
俺が質問すると3人は雑談を止めて一瞬考え込んだけど、いち早くリリアが返事をした。
モンスターカードも鍛冶素材だから詳しいのだろうか?
さすがドワーフというところか......
「トラブルってどういうことか?」
「1つ目は詐欺やぼったくり、強盗、窃盗など、直接犯罪に巻き込まれる可能性があること。
2つ目はお金持ちと思われて、タカリや付き纏い、怪しいセールスが近づいてくるなど、鬱陶しい思いをする可能性があること。
3つ目は皇族や貴族、大きな商家などの有力者や、盗賊や宗教関係者などの怪しい集団に、目を付けられたり変な噂を流されるなど、更に鬱陶しい思いをする可能性があることです」
「1つ目2つ目はわかるけど、3つ目はなんでだ?」
「直接仕入れるってことは個人間の取引になるということです。
守秘義務なんて期待出来ないので、ご主人様の情報は広がり放題となる可能性が高いと思われます」
「そう考えると商業ギルドしかないのか......」
「目当てのモンスターカードが出るまで迷宮で魔物を狩りまくることが一番良いのですけど、早く仕入れたいなら値は張りますが、商業ギルドで仲買人に注文するしかないと思います」
「商業ギルドもお勧めではないのか?」
「そうですね。ハッキリ言ってお勧めはしません。
商業ギルドでのモンスターカードや高額装備品の売り買いはオークションで行われるのですが、仲買人は自分たちが利益を得られるように結託して相場を操作します。
だからと言って仲買人を通さずにオークションに出品しても、最低価格で買い叩かれるか、応札無しで出品料を取られたうえに商品が売れないなんてことに追い込まれます。
しかも......」
リリアは一瞬俯くと、カッと目を見開いてガバッと顔をあげた。
何か覚悟を決めたような顔をしていて、思わず身体がビクッと震えてしまった。
「建前上は顧客の情報は漏らさないと言っていますが、彼奴等がつながっている有力者には情報はダダ漏れです!
仲買人にモンスターカードの仕入れを依頼するとしても、付き合いは最低限!
こちらの情報は漏らさない!
そして、奴等から何か提案されても、必ず断ってください!」
「お、おう......」
「仲買人の奴等は言葉巧みにコチラにも利益があるような提案をしますけど、結局自分たちの利益の事しか考えていません。
奴等は自分が仲介した取引に問題が発生しても、“私は仲介しただけで、最終的に決断したのはお客様自身です”なんて言って責任逃れをします。
とにかく奴等を信用してはいけません。
仲買人とは、あくまでも早く目的のモンスターカードを仕入れるために利用するだけの付き合いとしてください!」
リリアは話しながら怒りが湧いてきたのか、途中からテーブルをベシベシ叩きながら熱弁をふるった。
個人的に何かあったのか分からないけど、彼女は仲買人に相当恨みがあるみたいだ。
確か漫画でセリーも仲買人は信用しないなんてことを言っていたけど、もしかして仲買人を嫌うのはドワーフの種族特性とかなのか?
よく分からないけど、彼女の言うことはもっとものような気がする。
そう思っていると、隣のカエデが口を開いた。
「リリアの言う通りだと思うわ。
私たちには内密にしなくちゃいけないことが沢山あるから、情報が漏れるのは相当マズイと思うの。
だから、モンスターカードの仕入れを仲買人に頼むとしても、気を許しちゃダメだからね」
リリアだけじゃなくカエデも仲買人のことは信用してはいないようだな。
クレアは特に何も言ってはいないけど、さっきからしきりに頷いているから“信用してない派”なんだろうな。
で、あれば俺も“信用してない派”だ。
何故なら俺に、見ず知らずの仲買人なんかに味方をする義理は無いからな。
「そうだな。
リリアの言う通り、仲買人とのつき合いは最低限とするよ。それと、コチラの情報は漏らさないように気をつけないとな。
ただ、俺一人では手玉に取られるかも知れないから、商業ギルドに行くときは3人ともついてきてくれ」
「言われなくてもついてくわよ。当たり前でしょ」
「奴等の好きなようにはさせません。いざという時は任せてください」
「大した力にはなれないかも知れませんが、私もご一緒させて頂きます」
「じゃ、何のモンスターカードを頼むか考えよう」
それから1時間ほどみんなで必要なカードを考えて、夕食後の雑談を終了した。