異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
ライザは俺たちの行動に困惑していたけど、3人に首輪を着け終わると、「3人は奴隷だったのですか?ですがなぜ首輪を外して......」と訝しそうに俺を睨んだ。
「すまない。仲買人の中には人との付き合いが上手いだけで、ちゃんとした商取引自体は苦手なニセ商人もいるって聞いたので、見た目で判断するようなヤツを避けるために資金的に余裕があるようには見られたくなかったんだよ」
「そうだったのですか?」
「ああ。実際、俺は一般の探索者で、資金的に余裕があるわけじゃない。
たまたま幸運が重なって彼女たちを身請けすることが出来たけど、バックに誰かがいるわけじゃないんだ」
「それで彼女たちが奴隷であることを隠していたと......
少し微妙な気もしますけど、お気持ちは分かりました。
私はついていた... ということになるのでしょうか?」
「ついていたかどうかは、今後の俺たちの状況次第だな」
「ふふっ。そうですね。ご活躍を期待しております。
ところで私はアイテムボックスが使えません。
申し訳ないのですが、なるべくこまめにオークション結果を確認しに来て頂けますか?」
「それじゃ、2、3日おきに確認しに来るよ。それでいいかな?」
「それなら十分です」
ライザが了承したので、俺たちは立ち上がり彼女と握手した。
そして、商人ギルドを後にして、クーラタルの迷宮に向かった。
◆ ◆ ◆
迷宮の前には数人の騎士がいて、探索者からチケットを受け取っていた。
そういえば、クーラタルの迷宮は入場料が必要だったはずだ。
チケット販売所が何処かにあるのか?
そう思って周りを見回すと、なんかデカイ建物からチケットを持った探索者たちが出てきた。
「お、あそこでチケットを売ってるみたいだな。
ちょっと行ってくるから待っててくれ」
3人にそう言って歩き出そうとすると、カエデに袖を引っ張られた。
彼女は俺の耳元に唇を寄せ、「満男君。チケットは1枚でいいからね」と囁いた。
なんで1枚なんだ?
疑問に思って聞こうとすると、彼女は小声で「ワープ」と呟いた。
そういうことか。
流石カエデだ。
俺はカエデにサムズアップすると、チケットを買いに探索者たちが出てきた建物に向かった。
建物に入るとそこは大きなホールになっていたけど、すぐ目の前のカウンターに探索者が列を作っていて、そこでチケットを買っていた。
その列に並び5分ほど待つと自分の番になったので、銀貨2枚を出してチケットを受け取った。
建物から出ると3人が雑談しながら待っていたので、俺はカエデに銀貨を10枚渡し、すぐ先に見えるカフェで待つよう指示して自分は迷宮に向かった。
入口でチケットを渡して迷宮に入ると、入口の小部屋はベイルの迷宮よりも広かった。
通路の広さはあまり変わらないような気がするけど、とにかくそこら中に探索者がいるのでよく分からない。
混んでるせいでなかなか前に進めないし、せっかく魔物を見かけても、他のパーティーに先に接敵されてしまう有り様だ。
魔物の1匹でも倒してやろうと思いながら人が居ない方に向かって30分ほど迷宮内を彷徨い、やっとのことでコボルトを見つけて倒した。
流石に探索者が居過ぎだ。
もっと上の階層に行かないと、まともな迷宮探索にはならない。
やはり、カエデがいないと厳しいか......
あっ!カエデ!
そろそろ迎えに行かないとマズイ。
俺は慌てて小部屋を探すと、ワープで商人ギルドの入口の壁に移動した。
場所的にはチケットを売ってた建物の方が近いけど、あそこの壁がフィールドウォークを出来るものか分からないので仕方がない。
俺は商人ギルドからおもてに出ると、小走りでカエデたちを待たせているカフェに向かった。
カフェに着くと、彼女たちは通りが見える席でクッキーのようなお菓子を摘みながら、紅茶のような飲み物を飲んでいた。
お茶し終わって待ちくたびれてたら悪いと思ったけど、どうやらそういう状況ではなさそうなので、少しホッとした。
「お待たせ」
「お疲れ様。そんなに急がなくても良かったのよ?」
「いや、待ちくたびれてたら悪いと思ってな」
「ふふっ。ありがとう♥
ちょうどみんな紅茶を飲み終わるとこだったので、ちょっと待っててね」
カエデはそう言うと、コクリと最後のひと口を飲んだ。
すると、カエデと同じようにクレアも最後のひと口を飲み、リリアは既に紅茶を飲み終わっていたようで、余ったクッキーを薄布で包んでリュックにしまった。
俺は3人を連れてカフェを出て、ひとまず冒険者ギルドに向かった。
そして、5分ほど歩いて冒険者ギルドに着くと、ロビーの壁にワープゲートを開いて先ほどの小部屋に移動した。
ゲートを抜けると、俺はアイテムボックスから鋼鉄の戦斧を出してリリアに渡し、鋼鉄の槍を出してクレアに渡した。
それからロッドを2本出して、1本をカエデに渡し、1本は自分が持った。
そして、キャラクター再設定でフラガラッハのボーナスポイント31Ptと昨日の探索であげた探索者のレベル上昇分のボーナスポイントを獲得経験値上昇に振り分け、20倍とした。
また、カエデには、アルマスの15ptと妖狐のレベル上昇分を必要経験値減少に振り分けさせて、1/10に設定させた。
これにより、パーティーの獲得経験値は、通常の20倍×10倍=200倍。
俺は更に必要経験値1/5のスキルで、通常の1000倍。
カエデは必要経験値1/10のスキルで、通常の2000倍。
とした。
「それじゃ、カエデ。魔物を探してくれ。
それから、ボス部屋を探してそちらに向かってくれ」
「わかったわ」
カエデはスッと目を瞑って鼻がピクッと動くと、すぐに眉根を寄せて困った顔をした。
「満男君......
なんだかすごく沢山人がいるんだけど......」
「ああ。クーラタルの低階層は探索者で溢れてるから、他のパーティーとの接触回避は考慮しなくていいよ。
逆に、人が多く集まってるところがボス待機部屋だから......」
「わかったわ。じゃ、こっちね」
カエデの案内で一度だけコボルトと接敵し、瞬殺してから5分ほど歩くと、探索者の列にぶつかった。
その列の後ろについて歩き始めると、すぐに俺たちの後ろに別のパーティーが並び、そのまま30分ほどかけて少しずつ進むと、やっと待機部屋に到着した。
待機部屋に入ると、俺たちの前に4つのパーティーが並んでいた。
あと何分待つのか一瞬うんざりしたけれど、3分〜5分で次のパーティーの順番になっているので、思ったよりも早くボス戦に臨めそうだ。
そう思って黙って並んでいると、俺たち... いや、カエデたちのことをイヤらしい目で見つめてきたり、わざと聞こえるように卑猥な会話をしている奴等が現れた。
しかし、この待機部屋にはボスに挑戦するパーティー以外にも休憩しているパーティーが沢山いるし、警備しているような探索者もいるので、直接接触してくる奴等はいなかった。
20分後、俺たちは1階層のボス部屋に突入したけど、部屋の中央にコボルトケンプファーが現れた次の瞬間、俺のファイヤーボールとカエデのファイヤーボール×2発が直撃。
そして、10秒ほど燃え上がると、あっさりと魔物は煙に変わった。
「ま、1階層だからこんなもんだな」
「ボスとは言っても所詮はコボルトだしね」
気を取り直してドロップアイテムを拾い、奥の扉から2階層に進んだ。
2階層の小部屋に出ると、先ほど待機部屋で俺たちの前にいたパーティーが居て、こちらに気付いてギョッとしていた。
1階層とはいえ、あまりにも早く上がってきたので驚いているみたいだ。
話しかけられても困るので、すぐに正面の通路に進み、しばらく歩いてからカエデに魔物を探してもらった。
2階層の魔物はナイーブオリーブだったけど、1匹なら俺とカエデのファイヤーボール。
2匹なら俺とカエデのファイヤーストームで片付くので、リリアとクレアはドロップアイテム回収要員となってしまった。
2人の身体が鈍ってしまわないよう、5度目の接敵以降は俺かカエデが魔法を使った後はリリアとクレアに魔物のトドメを刺す役目を与えたけど、殆ど歯応えが無さそうなので、カエデに探索者が溜まっている部屋を探させて、そちらに向かった。
案の定、そこは2階層の待機部屋だったので、そのまま列に並んでボス戦に臨んだ。
2階層のボスはパームバウムで、コボルトケンプファーよりは強かったけど、それでも2回目の魔法であっさりと煙に変わり、戦った気はしなかった。
先ほどと同じ失敗をしないよう、5分ほど休憩してから3階層に上がると、入口の小部屋には前のパーティーはいなかった。
ちょうどお昼になったので、ワープで一度家に帰った。
そして、パンに朝作った肉野菜炒めを挟んだサンドイッチモドキとハーブティーで軽く食事をしながら1時間ほど休憩し、その後に再度ワープでクーラタルの迷宮3階層の入口小部屋に戻り、探索を再開した。
カエデに索敵してもらうと、「正面通路の先から魔物の匂いがするけど、右側の通路のかなり近い場所に他の探索者パーティーがいるから、さっさと移動しましょう」と言って俺の腕を引っ張った。
“ちょっと焦り過ぎじゃないか?”と思ったけど、歩き始めると右側の方から「クソッ!全然魔物が見つからねえ!」と男が怒鳴る声が聞こえたので、少し早足で通路を進んだ。
すると、すぐに通路の先に蜘蛛型の魔物が見えてきた。
俺は初めて見たので鑑定すると、スパイスパイダーLv3と出た。
どんな攻撃をするのか分からないけど、Lv3なら大したことはないだろう。
そう思ってカエデに頷き、同時にファイヤーストームを
撃ち込むと、魔物は炎に包まれた。
そして、20秒ほど経つと、炎のエフェクトが消えて魔物がこちらに向かって走り出した。
チッ!残ったか。
一瞬そう思ったけど、次の瞬間魔物は再度炎に包まれた。
それと同時に、「うーん残念。もう一発必要だったわね」というカエデの声が響いた。
「ん? カエデ。どういうこと?」
「まだ3階層だから魔法3発は必要無いかなって思って、妖狐の分の魔法しか使わなかったのよ。
でもダメだったから、魔法使いの分の魔法を使ったの」
「そうだったか。負担をかけて悪いな」
「ふふっ。まだ大丈夫よ。でも、MPがキツくなったらお願いね」
「ああ。その時は俺が2発撃つから遠慮なく言ってくれ......
ん?...ってか、その時はデュランダル出して魔物を倒せばいいんじゃね?
別にその間だけ経験値関係のスキルを外しても問題ないし、別に両手剣も使えるんだろ?」
「確かにそうね...... じゃ、満男君の言う通りにするね♪」
「ああ、俺もそうするから、その時は宜しく」
カエデと話している間に炎に包まれていた魔物は煙に変わり、リリアとクレアがドロップアイテムを回収して戻ってきていた。
すると、カエデが2人に話しかけた。
「2人ともちょっといい?」
「どうしたの?」
「何か問題?」
「うん。あのね、私と満男君は昨日説明したスキルでMP吸収出来る剣を出せるの。
それでね、私たちが剣を装備した時はMPを回復したい時だから、その時は私たちに魔物を倒させてね」
「トドメが刺せればいいの?」
「そういうこと」
「今とあまり変わらないような気がするけど、とにかく私たちはトドメを刺さないようにすればいいってことね」
「ふふっ。確かに今とあまり変わらないわね。
私もトドメを刺さないように気を付けるわ」
カエデがリリアとクレアに指示すると、2人はグッと拳を握って頷いた。
その後、1時間ほど3階層で魔物を倒してまわったけど、この階層にも探索者が多くて、先に接敵しようと駆け回ったせいで酷く疲れた。
結局この階層でも他のパーティーが邪魔で魔物との接敵が少なかったので、待機部屋を探してボスを倒し、4階層に上がった時点でクーラタルの迷宮探索は終了とした。