異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
まだ家に帰るには早過ぎるな......
俺は3人にベイルの迷宮に移動する旨を打診すると、みんなは二つ返事で了承してくれた。
順当に考えるなら、移動先は4階層とするところだけど、
今の状態で十二分に戦えているし、昨日既に6階層を経験している。
なので、俺はワープゲートを開いてベイルの迷宮6階層の入口小部屋に移動した。
ベイルの迷宮はクーラタルの迷宮に比べて極端に探索者が少なかった。
これなら魔物を狩り放題だ。
俺はカエデに索敵を頼み、「他の探索者パーティーを避けつつ、手当り次第魔物を探してくれ」と言うと、彼女は「任せて」と返事をして匂いを嗅ぎはじめた。
その後、ベイルの迷宮6階層で2時間ほど魔物を狩り、それから3階層に降りて魔物を狩って素材を集めた。
3階層で狩りをはじめてから2時間ほど経つと、アイテムボックスの一枠がコボルトソルトで一杯になった。
目的のジャックナイフは10本入手出来ているし、他の素材も揃ったから、今日の探索は終了しよう。
ターヘラの冒険者ギルドに移動して不要なドロップアイテムを売却し、それから町中に出て、食材を買いながら帰宅した。
家に帰って装備品を外し、軽く整備してから俺のアイテムボックスにしまった。
今日1日で9もレベルが上がった為、アイテムボックスには空の枠がいくつもあったので余裕でしまうことが出来た。
その後、昨日と同じようにカエデとクレアに食事の準備を任せ、俺とリリアはリビングに用意した作業机を挟んで向かい合った。
俺はアイテムボックスから糸を一つ取り出してリリアに渡すと、彼女は防具製造の呪文を唱えてミサンガを作り、作業机に置いた。
俺は次の糸を取り出して彼女の左手に乗せると、当たり前のように防具製造の呪文を唱えた。
そして、出来あがったミサンガを作業机に置くと、次の糸を受け取ろうと左手を差し出した。
そのまま流れ作業のように彼女にミサンガを作らせたけど、結局糸がなくなるまで続けてもMP切れを起こすことはなかった。
それでもまだ余裕があるらしいので、アイテムボックスから皮を10枚ほど取り出してリリアに渡した。
すると彼女は防具製造の呪文を唱えて皮の靴を作り、少し考えてから、皮を数枚握り締めた。
そして、もう一度呪文を唱え、今度は皮のジャケットを作成した。
リリアはまだ余裕そうだったけど、なんだか呆けているようなので、今日の鍛冶は終了にした。
「お疲れ様。今日は余裕だったな」
「えっ? あ、はい」
「ん?どうしたんだ?」
「えっと... 普通、鍛冶師はミサンガ作りからはじめて、徐々に皮製の帽子、ミトン、靴、それからグローブやブーツが作れるようになり、その後に鎧やジャケットのような大きめの装備品が作れるようになるのです。
その後は革製、硬革製、竜革製や鉄製、鋼鉄製という順に作れる装備品のランクが上がるのですけど、鍛冶師になった翌日に皮のジャケットが作れるなんて......」
「信じられないって感じか?」
「信じられないというか、他人事みたいな感じというか......」
「まあ、通常の100倍の早さで経験値が獲得出来るだけじゃなくて、カエデの索敵のおかげで魔物と接敵する回数も4、5 倍になってるんだ。
つまり、今日1日の経験は、普通の探索者の500日分ってことなんだよ」
「500日ですか......」
「だから、リリアはそのうち伝説の鍛冶師になると思うぞ(笑)」
「はあ......」
「まあ、悪いことじゃないんだから、深刻に考える必要はないんじゃね?」
「そうですね... そうします」
リリアはまだ釈然としないようだけど、装備品作成とモンスターカードの融合をし続ければ、そのうち自分の中で折り合いをつけるだろう。
そう思いながら作った物を鑑定すると、ミサンガ17個のうち空きスロットのあるものが2つあった。
昨日の1つと合わせて3つ目。
取り敢えずはあと1つだな。
俺は空きスロット付きのミサンガはアイテムボックスにしまい、空きスロットがないものは棚に片付けた。
次に皮の靴と皮のジャケットを鑑定したけど、残念ながらこちらは空きスロットがなかった。
「これは売却用だな」
思わず呟いてしまうと、リリアが訝しそうにこちらを見た。
「ご主人様。ミサンガは売れないので棚に片付けたのは分かりますけど、アイテムボックスにいくつかしまいましたよね?」
「ああ。昨日最初に作った1つと、今日作ったうちの2つには空きスロットがあったので、あとでモンスターカードを融合してもらおうと思っている」
「空きスロット...... ですか?」
「モンスターカードを融合出来る枠のことだけど、知らないのか?」
「聞いたことがありません。
モンスターカードの融合成否は鍛冶師の腕と運次第だと言われていますので」
あれ?スキルスロットのことってドワーフの中では知られていることじゃないのか?
疑問を解消する前に、次の質問が飛んできた。
「ご主人様。空きスロットの有る無しはどうやって見分けるのですか?」
「あれ?説明してなかったか?
昨日、俺とカエデが鑑定というスキルが使えることは説明したと思うけど、装備品を鑑定するとモンスターカードが融合可能な枠の有り無しが分かるんだよ。
その枠にスキルが付いているときは“スキル ◯◯◯”ってスキル名が見えるんだけど、スキルが付いてないときは“スキル 空き”って見えるんだよ」
「それってもしかして......」
「たぶん“空き”がない装備品にはモンスターカードが融合出来ないんだと思う」
「す、凄いことかも知れません」
「スキルスロットに空きがある装備品に100%カードが融合出来るかどうかは分からないけど、少なくても空きのない装備品は弾くことが出来るから、成功率は上がるはずだ」
「わ、私!頑張ります!」
リリアは表情を一変させて、目をキラキラさせて拳を握った。
「ははっ。まあその...... 内密にな」
「はい!」
リリアと話し終わると、タイミングよくクレアが“夕食の準備が出来た”と言って迎えにきた。
ついでなのでクレアにもスキルスロットのことを話すと、彼女は「さすがはご主人様!凄いです!」と言って俺に尊敬するような眼差しを向けてきた。
その後、クレアにも内密にするよう言い聞かせて、それからダイニングに移動した。
そして、カエデとクレアが用意してくれた夕食を食べ、その後は昨日と同じように、歓談しながら皆のステータスを確認した。
加藤満男 人間族 男 21歳 自由民
所有奴隷 カエデ、リリア、クラウディア
ジョブ 探索者Lv30、英雄Lv27、戦士Lv29、魔法使いLv21
装備 ロッド、革の鎧、革の帽子、革のグローブ、硬革の靴、決意の指輪
カエデ 狐人族 ♀ 15歳 奴隷
所有者 加藤満男
ジョブ 妖狐Lv25、探索者Lv29、英雄Lv23、魔法使いLv25
装備 ロッド、カイトシールド、革のジャケット、革のカチューシャ、革のグローブ、加速のブーツ
リリア ドワーフ族 ♀ 16歳 奴隷
所有者 加藤満男
ジョブ 鍛冶師Lv18
装備 鋼鉄の戦斧、鋼鉄の盾、革のジャケット、革のカチューシャ、革のグローブ、革の靴
クラウディア エルフ族 ♀ 15歳 奴隷
所有者 加藤満男
ジョブ 巫女Lv19
装備 鋼鉄の槍、革のジャケット、革のカチューシャ、革のグローブ、革の靴
昨日もそうだったけど、今日もすごくレベルが上がった。だけど、低階層ばかりで戦っているから、収入の方は今ひとつだ。
アイテムボックスを確認すると、いつの間にか残りの金貨が5枚になっている。
銀貨は沢山あるけれど、とは言っても100枚は無いようだ。
そろそろ本格的に金策を考えないといけないな。
明日からは成長うんぬんは置いといて、なるべく高く売れるドロップアイテムを狙うか......
そう思って彼女たちに相談すると、カエデから意見が出た。
「ドロップアイテムの売却額は魔物の強さやアイテム自体のレア度によっての違いはあるけど、一般的に魔物のランクが上がれば売却額も上がると言われてるわ。
そう考えると、12階層で戦えるのか一度挑戦してみてもいいと思うんだけど、どうかな?」
「えっ!第二ランクの魔物と戦うの?」
「私たちは、まだ6階層で戦ってるのよ?」
カエデが12階層と言うとリリアとクレアはかなり驚いたようで、半ば反射的に質問し返した。
「確かにそうだけど、私たちってここ2日で急激に強くなってるの。
いまさっき確認したけど、もうみんな中階層を攻略するくらいの強さがあるわ」
「えっ?私は昨日鍛冶師になったばかりよ?」
「そうよ。私も昨日巫女になったばかりだから、中階層なんて無理だわ」
「そんなことを言ったら私だって昨日の朝の時点では、妖狐のレベルは2だったわ。
でもね、2日間で、妖狐のレベルが25まで上がったのよ。それに、探索者の方はレベルが10から29まで上がったの。
2人の成長は私よりは少しだけ遅いけど、そろでもちゃんと戦えるはずよ」
「えっ!たったの2日で探索者のレベルが19も上がったの?!」
「よ、妖狐って種族固有ジョブよね?
なんでそんなに成長したの?
もしかして、経験値が100倍とか言ってた成長促進のスキルのせい?」
なんで12階層なんだ?それに第二ランクの魔物って何のことだ?
わからないので聞こうと思ったけど、3人の会話がどんどん進んでしまい、口を挟めない。
「そのせいよ。嘘じゃないから」
「カエデが凄いことは知ってるけど、だからと言って、私たちまで強くなれてるなんて......」
「成長している実感が無いから、強い魔物の前に立ち続けられるのか、不安が否めないのよ」
「実感って言われると口で説明するだけじゃ厳しいわね。こればかりは魔物と戦ってもらうしか無いだろうし......
だけど、魔物をブロックしてもらう時間は長くはないわ」
「なんで長くないの?」
「私と満男君は無詠唱で魔法を撃てるから、詠唱共鳴することはないし、魔物を見つけてから接敵するまでに2回は魔法が撃てるのよ。
しかも私は妖狐と魔法使いのダブルで撃てるから、接敵する前に満男君と合わせて6発も魔法が撃ち込めるの。
だから、ブロックしてもらうのは、3回目の魔法が撃てるようになるまでの間。
せいぜい30秒ってところよ」
「30秒でいいの?それならイケるかも」
「そうね。30秒くらいなら中階層でも抑えられると思うわ」
「それじゃ12階層で決まりね♪」
「わかったわ」
「私もそれで良いわよ」
リリアとクレアが同意したので、中階層への挑戦が決まった......
俺は一言も発していないけど......
「じゃ、迷宮は何処が良いと思う?」
「やっぱりクーラタルじゃない?
大きいぶん魔物とたくさん戦えるし、冒険者ギルドや探索者ギルドに行けば、簡単に情報が得られるはずだから」
「確かにそうね。
それが嫌なら、この町の迷宮ってことになるのかな?」
「この町の迷宮かあ...... そういえば、この町の迷宮には一度も行ってないわね。
地域貢献を考えると、早めに入っておくべきよね」
クレアがこの町の迷宮と言いだすと、カエデが地域貢献なんてことを言い出した。
どういうことだ?
ボランティアでもするのか?
わからないから、今度こそ聞こうと思ったけど、またもや会話が進んでしまい、口が挟めなかった。
「それなら明日は朝イチで、この町の冒険者ギルドに行ってみない?
そこに迷宮の魔物に関する情報がないときは、クーラタルの方に向かうということで」
「そうね。そうしましょう」
「私もそれでいいと思う」
「じゃ、決まりね」
今度はリリアの提案に、カエデとクレアが了承して、明日の行動が決まった。
またしても俺は一言も発していないけど......
そう思っていると、3人が一斉にこちらを向いた。
「それじゃ、満男君。明日もガンガン魔法を使うから、宜しくね」
「ご主人様。頑張って魔物を抑えますので、明日も宜しくお願いします」
「ご主人様。私も頑張って魔物を抑えます。
いざとなったら全体回復の呪文も唱えますので、宜しくお願いします」
どうやら俺の意思には関係なく、方針が決まったようだ。
もちろん3人が決めたことに反対することは無いし、不満もない。
無いったら無い!
多少のモヤッと感があるけれど、それは今晩クレアに解消させてもらおう。
そんなことを考えていたのがいけなかったのだろうか?
このあと俺は風呂場で身体を拭くときに、昨日以上にたっぷりと搾られてしまうのだった。