異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
ターヘラの迷宮【Side 主人公】
クレアを抱いた翌日。
目が覚めると、そこにはクレアの顔があった。
“えっなんで?”そう思った次の瞬間、彼女に熱烈にキスされた。
取り敢えず彼女とのキスを堪能しながら意識を覚醒させ、それから唇を離した。
どうやら彼女は先に起きて、俺の上に馬乗りになって顔を覗き込んでいたみたいだ。
「おはよう」
「おはようございます♥」
「なんだか嬉しそうだな?」
「ふふっ♥だって起きたら、隣にご主人様がいるのですよ♥」
「俺がいたら嬉しいのか?」
「そんなの当たり前じゃないですかぁ♪」
クレアはそう言うと、俺に覆い被さるように抱きついた。
俺の胸に昨夜感じたムニュッとした柔らかくも弾力のある感覚が伝わってくる。
昨日の続きといきたいけど金策しないといけないので、断腸の想いで身体を起こした。
着替えてリビングに行くと、俺に気付いたカエデとリリアがハーブティーを持ってきたので、挨拶をして二人にキスした。
「満男君。クレアは?」
「ああ。シーツを洗いにいったよ」
「ふふっ♥ それならいいわ♪」
「だからなんで嬉しそうなんだ?」
「ふふっ♥ これでみんな満男君に愛してもらったから、変な気遣いがいらなくなったってこと」
「気遣い?」
「そうよ。抱かれた娘と抱かれてない娘の差は大きいのよ。だから、今日からはお互いに気兼ねしなくてよくなるのよ♪」
いままで気兼ねしてたのか?
全くそんな気はしなかったけど......
まあ、カエデの機嫌がいいなら問題ないな。
◆ ◆ ◆
朝食後、俺たちは冒険者ギルドに向かった。
もちろん3人には外套を着せてフードを目深に被らせ、容姿を隠した状態でだ。
そのせいか?
ワープで冒険者ギルドに移動すると、壁から出てきた俺たちを見て、近くにいた男が訝しそうな顔でコチラを睨んだ。
隣にいた男もこちらの様子を窺っている気がする。
睨まれる謂れはないのでムカついたけど、騒ぎを起こして3人の容姿がバレるようなことになったら隠している意味が無くなってしまう。
“テメーら命拾いしたな!”
そう心の中で毒づいて、表面上はヤツらの視線には気付かないフリをした。
「それじゃ、迷宮の情報を集めよう」
わざとらしく宣言して俺たちは迷宮探索の攻略状況が掲示されている壁面の前に移動し、ターヘラの迷宮情報を確認した。
情報とは言っても実に簡素なものだ。
各迷宮のボードには、1番上に管理番号と迷宮名称。
その下の左上から、階層番号とその階層から出現する魔物の名称、そして、安全宣言が出ている階層は階層番号の横に◯印が書いてあるだけだ。
ブラヒム語で書かれているとのことだが文字が読めない俺には何が書いてあるのか分からないので、ターヘラの迷宮のボードをカエデに読み上げてもらった。
それと同時に、今後の探索に役立てるため、リリアとクレアにターヘラの迷宮とクーラタルの迷宮情報をパピルスに書き写すよう指示した。
因みにターヘラの迷宮の場合は以下のように書かれている。
[203番 ターヘラ]
安全 階層 魔物
◯ 1 コラーゲンコーラル
◯ 2 グリーンキャタピラー
◯ 3 スローラビット
◯ 4 チープシープ
◯ 5 コボルト
◯ 6 ニートアント
◯ 7 ミノ
◯ 8 スパイスパイダー
◯ 9 エスケープゴート
◯ 10 ニードルウッド
◯ 11 ナイーブオリーブ
12 ピッグホッグ
13 マーブリーム
14 ケトルマーメイド
15 ロートルトロール
16 ラブシュラブ
17 サラセニア
18 ハットバット
19 ビッチバタフライ
20 フライトラップ
21 グラスビー
22 クラムシェル
23 モロクタウルス
24 シザーリザード
25 サイクロプス
26 ケープカープ
27 ドライブドラゴン
28 ハーフハーブ
29 ブラックフロッグ
30 グミスライム
31 ノンレムゴーレム
32 ロックバード
33 タルタートル
34 コラージュコーラル
35 ホワイトキャタピラー
36 ラピッドラビット
37 ビープシープ
38 コボルトケンプファー
39 ハントアント
ターヘラの迷宮は探索が39階層まで進んでいて、11階層までは安全宣言が出ている。
何階層が最上階なのかはわからないけど、かなり攻略が進んでいるようだ。
ついでにベイルの情報を確認してもらうと、17階層までしか情報が書かれておらず、◯印も5階層までしかついてないとのことだった。
あまり気にしてなかったけど、俺たちが攻略していた6階層は、まだ安全宣言されてなかったようだ。
俺が盗賊グループを相手している間、女騎士たちは迷宮討伐に専念していたはず。
それなのに、まだこの程度......
ベイルの騎士団ってポンコツなのか?
いや、確かベイルの迷宮は、俺がこの世界にきたのと同じ頃に発見されてたはず。
と、いうことはベイルの騎士団は30日で17階層まで到達したってことになる......
それって優秀なのか?
うーん正直よく分からないけど、どうもベイルの騎士団は、こちらの騎士団よりも苦労しているようだ。
「気になるの?」
「ん?多少はな」
ベイルの攻略があまり進んでない気がしたので騎士団がちゃんと仕事しているのか考えていると、不思議そうにカエデが聞いてきた。
「そう言えば......
満男君はここにくる前、ベイルを拠点にしてたって言ってたよね。
誰か気になる人でもいるの?」
「別にいないけど、ベイルの迷宮はそれなりに攻略されてるのかと思ってたから」
「ふーん。そっか......」
カエデはなんか含むところがありそうな顔をしてるけど、理由を聞く前にリリアとクレアが戻ってきた。
「ご主人様。情報収集完了しました」
「ご苦労様。それじゃ、一旦帰るぞ」
そう宣言してワープゲートを開き、家に帰った。
そして、クーラタルの迷宮情報のメモ書きはダイニングテーブルの上に置き、玄関から出て先ずは町の北門に向かった。
まだ、夏ではないけれど、今日はやけに日差しが強くて気温が高い。
なので、俺は意識的に日陰になる場所を歩いて、10分ほどで町の北門の前に到着した。
この前宿屋の男に迷宮の場所を聞いたとき、ヤツは“北門を出てすぐだから間違うことはない”って言っていた。
胡散臭そうなヤツだったけど、アイツが自慢げに語っていた情報に間違いは無かったから、迷宮が近いってことも間違いはないんだろう。
そんなことを考えながら北門を通り抜けて町の外に出ると、そこから北に向かって真っ直ぐ街道がのびていた。
あれ?けっこう先の方まで見えるのに、迷宮の入口なんか見えないぞ?
すぐに着くんじゃなかったのか?
チッ!やっぱりいい加減なヤツだったか。
あのヤロー。今度会ったらしこたま文句言ってやる!
瞬間的に宿屋の男を頭に浮かべ、盛大に毒づいたけど、よく見ると100mくらい先の街道脇にベンチがあり、そこに座ってる人が見えた。
そして、その人と向かい合って、何やら話している探索者パーティーらしき人たちも見える。
アイツらは何してるんだ?
疑問を感じながら近づいていくと、探索者パーティーは街道を外れ、座っている男の隣を通り抜けた。
すると、次の瞬間、そいつらの体が地面に沈みはじめ、次の瞬間には消えてしまった。
えっ!どういうことだ?!
ちょっと驚いたけど、男に近づいたらすぐに理由がわかった。
男の横が窪地になっていて、下がったところに迷宮の入り口があったのだ。
早々にネタがバレてしまい何となくガッカリしながらベンチに座った男に近づくと、そいつは俺を見るなり「案内が必要か?」と聞いてきた。
一瞬何処かの階層に送ってもらおうかと思ったけど、どうしようかと思ってチラッと 3人を見ると、「ハァ... ハァ...」と息を切らせていた。
この暑さの中、このまま日陰も無いこんな場所で3人を待たせておくのは忍びないので、男の申し出を断って一旦みんなで迷宮の1階層に入った。
迷宮の中に入ると3人は外套を脱いで、身体にこもった熱を追い出すようにパタパタと扇ぎだした。
3人とも汗を滴らせているので、どうやらかなり暑かったようだ。
「みんな。大丈夫か?」
「だ、大丈夫。ちょっとだけ... 息を整えさせて......」
「わかった」
町の中は日陰があったけど、門の外は日差しを遮るものが全くない。
それに、外套は水を弾く為に生地の表面にワックスのようなものが塗ってあるから、全く風を通さない。
短い時間だったとはいえ、周りから見えないようにフードを目深に被っていたから、中はかなり蒸れたのだろう。
かわいそうだとは思うけど、強くなったら外套で容姿を隠す必要はなくなる。
そうなればこの灼熱地獄からは解放だ。
俺たちは爆速で成長してるから、その日はすぐにやってくるはず。
だから、もう少しだけ頑張ってもらおう。
俺はリュックからコップを4つ取り出すと、ウォーターウォールと念じて水壁をだし、水を汲んで彼女たちに配った。 そして、しっかりと水分を補給させ、そのまま彼女たちの息が整うまで休憩した。
俺はいつでも戦えるようにアイテムボックスからみんなの武器を出して警戒していたけど、どうやら杞憂だったようで、他の探索者と鉢合わせすることは無かった。
5分後、カエデが大きく深呼吸して、それから「ん~!」と唸りながら両手を突き上げて身体を伸ばした。
それから彼女はリリアとクレアの様子を確認すると、「満男君。お待たせ。もう大丈夫よ♪」と言ってニッコリと微笑んだ。
俺は3人からコップを受け取ると、リュックにしまいながらカエデに索敵を頼んだ。
するとすぐに「満男君。こっちに魔物がいるわ」と言って、正面の通路を指さした。
俺は3人に向き直ると、「今からターヘラの迷宮攻略を開始する。先ずはこの階層を突破しよう!」と宣言して、魔物に向けて歩きはじめた。