異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
カエデには索敵してもらいつつ、次の行動をどうするか考えていたけど、しばらく悩んでいると盗賊と海賊のインテリジェンス カードが浮き出てきた。
インテリジェンスカードを回収して通路の端に左手を投げ捨てると、クレアが怖ず怖ずと手をあげた。
「先ほど戦ってから30分経ちましたけど、なぜ盗賊たちはこちらを確認しに来ないのでしょうか?
それとも、ダンジョンウォークでどこかに逃げてしまったのでしょうか」
「クレア。まだこの奥にいるわよ」
クレアの疑問にカエデが答えると、彼女は少し考えてから再び口を開いた。
「盗賊たちが、まだこの先の小部屋にいるのなら......
仲間に探索者がいない...
なんてことはないですよね?」
「探索者がいないってことはパーティーが組めないってことだし、ダンジョンウォークも使えないってことだろ......
迷宮で活動してるのに、そんなことがあるのか?」
「ちょっと待って。
満男君。最初に倒した盗賊たちの中に探索者がいたよね?」
「......いたな。
でも、探索者がいないなら、なんで俺たちがいるのかどうか確認しに来ないんだ?」
「私たちがいることがわかってるということでしょうか......」
「向こうにも索敵出来る奴がいるってことか」
面倒だな......
もう放置して帰っちまうか......
いや.....
「俺たちがいなくなったら、盗賊の奴等、外に出てくるんじゃねえか?」
「じゃ、迷宮の前で見張るの?」
「すぐに出てくるでしょうか......」
「探索者がいないなら、この階層の入口まで歩いて移動するので、しばらく出てこないと思います」
「うーん。それは面倒だな。
まあ、そこそこ強そうな奴等を狩ったから、騎士団詰所に行ってここに盗賊がいたことを報告する。
ついでにインテリジェンスカードを渡して賞金をいただこう」
「あ、ちょっと待って」
「ん?カエデ。どうした?」
「さっき満男君が倒した海賊の装備品は回収しちゃわない?なんだか良さそうな剣だった気がするわ」
アイツを殺した場所は小部屋から10mは離れてた。
盗賊の方は小部屋の直近だから危ないけど、あそこなら取りに行っても大丈夫か......
「わかった、アイツの装備品を回収して、それからワープで冒険者ギルドに移動する」
「わかったわ」
「かしこまりました」
「わかりました」
3人が了解したので、少し警戒しながら先ほどの小部屋の方に戻った。
カエデが口の前に人差し指をたてて、静かにするようサインを出したので、俺たちは音を立てないように注意しながら海賊の装備品を回収し、ワープゲートを開いて冒険者ギルドに移動した。
そして、そのまま町中に出て騎士団詰所に移動し、表で警備していた騎士に話しかけた。
「ちょっといいか?」
「どうかしましたか」
「今しがたターヘラの迷宮13階層で盗賊に襲われて、何人かを倒したのだが」
話ながら盗賊のインテリジェンスカードを手渡すと、彼は「そうですか。それではインテリジェンスカードを確認しますので、左手を出してください」と言って、俺の左手に自分の手をかざし、インテリジェンス カード操作の呪文を唱えた。
そして、俺のインテリジェンスカードを確認すると、「自由民の方ですね。カードを確認して参りますので、あちらのソファーでしばらくお待ちください」と言って頭を下げ、詰所の奥に走って行った。
ベイルの騎士団とは全然違う。
この町の騎士は紳士だな。
そう思っていると、初老の騎士が俺のところにやって来た。
「君たちがターヘラの迷宮で盗賊たちを倒した方たちか?」
「そうだが」
「すまないが、少し話を聞かせてくれないか?」
「構わないが」
彼は俺たちの前のテーブルにターヘラの迷宮13階層の地図を広げると、盗賊がいた場所を確認してきた。
そして、俺たちが襲われた場所を説明すると、彼は「うむ。協力に感謝する」と言って頭を下げ、詰所の奥にさがっていった。
初老の騎士と入れ替わるように、詰所の入口で警備をしていた騎士が戻ってきた。
彼は「インテリジェンスカードを確認しました。
全員盗賊で間違いありません。
それと、3名に賞金がかかっておりましたので、お納めください」と言って、小袋を差し出してきた。
小袋はずっしりと重かったので思わず中を確認したくなったけど、ぐっと堪えて懐にしまい、騎士団詰所から町中に出た。
中身の確認は家に着いてからだ。
そう思って家に向かって歩いていると、俺たちの後ろから10名ほどの騎士の一団が追いついてきて、そのまま抜き去っていった。
先頭は騎士団詰所で詳しい話を聞きにきた初老の騎士だったので、たぶん迷宮に向かったのだろう。
俺たちは騎士の一団を見送った後、再び歩き出して一旦家に帰った。
そして、ダイニングテーブルで休憩しながら小袋を取り出し、中身を確認した。
小袋の中に入っていた金貨は55枚。
一緒に入っていたメモ書きには、海賊が金貨30枚、盗賊の2人が金貨15枚と金貨10枚との記載があったので、どうやら迷宮に巣食っていたのはそれなりの盗賊団だったのだろう。
しかし、この臨時収入はすごく助かる。
これで、メンバーを増員する目処がたった。
まだ昼前だけど今日は迷宮探索は中止して、ターヘラの奴隷商館に行ってみよう。
スピード特化で魔物の後衛に飛び込んで詠唱を止められるようなメンバーがいればいいのだけど......
そう思って自分の考えをみんなに話すと、怖ず怖ずとクレアが質問してきた。
「ご主人様。迷宮探索のパーティーは最大で6人です。
あと2名増員出来ますけど、種族については何かお考えはありますか?」
「ん?種族についての拘りは無いけど......」
「あくまでジョブとの兼ね合いにもよりますので絶対ではありませんが、スピード特化の前衛となるとカエデと同じ狐人族、あとは狼人族、猫人族、兎人族といった種族の方が優れていると言われております」
「うむ......」
「ですがこの中で、狼人族だけは出来れば避けていただけると助かります」
「ん?なんでだ?」
「狼人族は順位付けに拘る者が多い種族だからです」
「ん〜...... 順位付けに拘る者がいると、何か問題なのか?」
「はい。これからこのパーティーに加入するということは、ご主人様にとっての4番目ないし5番目の奴隷ということになります」
「まあ、そうだな」
「狼人族は素直で忠誠心が高く、自身が認めた人には従順ですが、その反面、自身よりも下の者には容赦がありません。
ですので、下となった者は意見が言えなくなるのです」
「そうなのか?それなら、5番目なら問題ないんじゃないか?
自分より下はいなくなるわけだし......」
「残念ながら、そうではないのです。
狼人族は上昇志向が強いので、自身が一番という立場になるまで仲間を蹴落としてでも成り上がろうとします。
結果、パーティー内が荒れるのです」
クレアが言ったことはちょっと盛ってる気がしたので、他の意見がほしくてリリアを見ると、彼女は無言で頷いた。
なんだか心当たりがあるようだ。
カエデも「満男君。狼人族を加えたパーティーがしばらくして解散したとか、狼人族をパーティーから追放したって話。割と聞くわよ」と言ってクレアの意見を肯定したので間違いないんだろう。
マジか......
今さらロクサーヌを得たいとは思わないけど、狼人族って、そんな面倒な種族なのか......
あの漫画では一番奴隷だったから、面倒くささが目立たなかったのかも知れないな。
そう考えると、ターヘラの奴隷商館には俺たちが希望する奴隷はいないってことなのか?
いや、確か猫人族の奴隷がいたはずだ。
それにみんなを買ってから30日以上経ってるから、新しい娘がいるかも知れない。
他の町にも奴隷商館はあるけど......
「取り敢えずこの町の商館に行ってみるよ」
「じゃ、私が一緒に行くから、リリアとクレアは家のこと、お願いね」
「わかったわ」
「うん。こっちは任せて」
「......」
どうやら一人で行くのは無理なようだ。
少し休憩した後、俺はカエデを連れてターヘラの奴隷商館に向かった。