異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
ターヘラの奴隷商館の受付で、フレア嬢に「パーティーの戦力増強のため素早く動ける奴隷がいないか探しているのだけど、いくつか条件があるので相談に乗ってもらいたいのだが」と率直に伝えると、何故か彼女は俺から視線を逸らし、後ろにいるカエデをジッと見た。
すると、彼女は何を確信したのかクスッと笑い、「かしこまりました。あちらのソファーで少しお待ちください」と言って商館の奥に引っ込んだ。
そして、3分も経たずに戻ってくると、「準備ができましたのでこちらにお越しください」と言って、俺たちを奥の商談室に案内した。
商談室に入り俺とカエデがソファーに座ると、テーブルを挟んだ向かいにフレア嬢が着席した。
「本日は商館主のオランドが不在ですので、私が詳しい話をお伺いさせていただきます。
宜しくお願いします」
「そ、そうでしたか。
こちらこそ宜しくお願いします」
「それで、先ほど素早く動ける戦闘奴隷とおっしゃいましたが、前回同様カエデと近い年齢で、性奴隷となることを了承していて、更に小柄で華奢だけどそこそこ胸の膨らみがある見目麗しい処女の者......
ということで宜しかったでしょうか?」
「い、いや、その、そうなんだけど、その......」
ちょっと具体的すぎないか?俺の性癖が暴露されてるみたいで恥ずかしいんだけど......
しかし、フレア嬢は恥ずかしげもなくズバズバ言うな。
奴隷商としては正解なのかも知れないけど......
彼女が思いのほかズバッと言ってきたので驚いたのと、隣にカエデがいるので答えづらく、思わず動揺してしまった。
だけどカエデが隣にいなければ、たぶん今頃動揺したまま首を縦に振っていただろう。
俺が答えづらそうにしていると、フレア嬢はクスリと笑った。
「ミツオ様は面白い方ですね♥」
「えっ?」
「前回来られた時に3名も性奴隷を購入していて、そこのカエデにもキッチリ手を出しているのに、私の言葉で恥ずかしがるなんて...... ふふっ♥」
「いや、恥ずかしいというか、あまりにも具体的に言われたので......」
「これでもこの商館の後継者ですので、ミツオ様のことは商館主から伺っております。
無駄にお時間を取らせるのも申し訳ないと思いましたので、先ずは前回の条件を確認させていただきました。
ところで他に条件はございませんか?」
特にないと言おうとした瞬間、カエデが袖を引っ張った。そして、耳元で「狼人族は......」と囁いた。
そうだった。
はぁ、なんかフレア嬢に場の雰囲気を持っていかれてた......
俺は一度深呼吸して、改めてフレア嬢に向き直った。
仕切り直しだな。
「1つ 条件を付け足す。狼人族は外してくれ」
「そうですか......
それはパーティー内に不和が起こる懸念があるから... と、考えているからですか?」
「まあ、そういうことだな」
フレア嬢は一瞬カエデに恨めしそうな視線を向けたあと、「はぁ~」とため息をついた。
「申し訳ありません。現在当館にミツオ様のご要望に応えられる奴隷はおりません」
「いないのか?」
「はい。数日前までは16歳の猫人族の者がいたのですが、売れてしまいました。
狼人族の者でもよろしければ、該当者は3名おります。
前衛というだけならば竜人族の者がおりますが、彼女に素早さを求めるのは厳しいので、盾役としての配置となります。
また、非処女で歳が少し上の者でもよろしければ、猫人族や兎人族の娘が数名おりますが......」
「そうか...... それは残念だな」
「仕方がないことです。
妥協して奴隷を購入されても、良いことは......」
残念ながら、ここには希望する奴隷はいなかった。
面倒だけど他の町の奴隷商館を探すしかなさそうだ。
そう思っていると、フレア嬢が言いかけていた言葉を止めて一瞬考え込んだ。
「ミツオ様は迷信を気にする方ですか?」
「迷信?呪いとか、そういう話か?」
「はい。呪いではなく神罰というか、神殿の不興を買ってしまって奴隷落ちした者がいるのですが」
「ふむ。うちにはクレアがいるし、今さらだろ?」
「彼女の場合はあくまで借金奴隷です。しかし、心当たりのある者は、神域を侵して神殿の不興を買った者ですので」
「ふーん。俺は気にしないけど......」
軽く返事をしたものの、俺はこの世界の常識には疎いので助けをもとめてカエデを見ると、彼女は少し考えてから口を開いた。
「そうね...... 神罰なんてただの迷信よ。
気にするのは貴族や一部の有力者。それと、神殿関係者ね。
そいつらと付き合う気があるならマズイけど、その気がないなら問題ないわ」
「ふーん...... じゃあ問題ないな。
その心当たりの娘と面談したいのだが」
フレア嬢はカエデの言葉遣いに一瞬ぎょっとしたけど、すぐに雰囲気を戻して話を続けた。
「すみません。その娘はこちらにはおりません。
帝都の商館にいるもので、猫人族で15歳。ジョブは海女。
もちろん見目麗しく、処女で性奴隷となることを了承している者ですので安心してください」
「...... その、安心はともかく、どういうことだ?」
「先日帝都の商館に情報交換と商圏の調整で伺ったのですが、その際にその者のことを伺ったのです。
あちらの商館では、神殿から要請があり仕方なくその者を仕入れたらしく、奴隷としての教育は施しているのですが、ワケありですのでオークションには出せずに困っているようでした」
「なぜ出せないんだ?」
「オークションでは周りを騙すことは出来ません。
ですので、神域を侵した者であることを発表しなくてはなりませんし、そのような者など価格が安くても買い手がつくか微妙なところです。
オークションは多くの顧客から注目される場であり、各商館にとっては宣伝の場であります。
そのような所にワケありの奴隷を出品するなど、その後の商売に関わる大失態になりかねません」
「なるほどな。
それで、俺はどうすればいいんだ?」
「紹介状を出しましょう。そちらを持って帝都の商館を訪問してください」
「それは助かるけど、フレアさんはいいのか?」
「大丈夫です。恩が売れれば次の商圏調整の時に有利ですから。
それに、ミツオ様にも恩が売れますしね♥」
「はははは。なるほどね。では、遠慮なく紹介状をいただこう」
その後、フレア嬢から紹介状を受け取って、ターヘラの奴隷商館を後にした。
◆ ◆ ◆
ワープで帝都の冒険者ギルドに移動し、そこから町中に出て奴隷商館に向かった。
そして15分ほど歩くと、周りを高い塀で囲まれた一角にたどり着いた。
かなり広いけど、フレア嬢から聞いた通りならここで間違いないはずだ。
塀に沿って歩いていると、豪華な門が見えてきた。
本当にこれが奴隷商館か?
帝都にこんな大きな商館を構えているなんて、ココの奴隷商は相当儲けてるんだろう。
門の左右には白い鎧を着用してハルバートを持った門番が立っていたので、恐る恐る「あの、奴隷を買いにきたのですが.....」と声をかけると、「お通り下さい」と丁寧に返事をされた。
「あ、はい」
「し、失礼します」
門番に訪問理由を話してココで待たされるのかと思ったけど、俺とカエデはすんなり敷地内に通された。
少しホッとしていると、目の前の立派な建物から俺と同じくらいの歳の男が出てきた。
「ターヘラの商館から紹介を受けて来ました」
「わかりました。それではこちらにお越しください」
紹介状を手渡すと、男は俺たちを建物の中に案内した。
そして、受付で使用人に紹介状を渡して一言二言 何か話すと、俺たちをちょっと豪華な応接室に案内して、一礼して退室した。
しかし、10分ほどすると戻ってきて、俺たちの目の前のソファーに座った。
「改めまして、ようこそおいでくださいました。
私は当商館で奴隷商をしておりますユグド・オラシアンと申します。
本日は私がお客様のお相手をさせて頂きますので、よろしくお願いいたします」
「ミツオです。こちらこそよろしく」
挨拶しながら目の前のヤツを鑑定した。
ユグド・オラシアン 男 21歳
奴隷商人Lv2
お、俺とタメか。
レベル2だけどちゃんと奴隷商人だな。
「お求めの者については、紹介状で確認させて頂きました。
ターヘラの商館でおよその話は伺っていると思いますが、改めてご説明させて頂いてもよろしいでしょうか」
「そうだな。認識に齟齬があると困るので、一応説明してくれ」
「かしこまりました」
するとユグドはフレア嬢から聞いた話に加え、対象の娘が神域を侵すことになるまでの経緯や、彼女が奴隷落ちした理由を説明した。
そして、彼女が容姿端麗だけどワケありのため、神罰や神殿関係者からの不利益を意に介さないお客様にしか勧められない旨を仲の良いいくつかの商館に相談していたことを教えてくれた。
「それでターヘラの商館が、帝都の商館のワケあり奴隷を知っていたんだな」
「そういうことです。
それでは該当の者を連れてきてもよろしいでしょうか?」
「ああ。よろしく頼む」
「面談して頂いて、気に入って頂けたのなら是非ともご購入して頂きたいと思います。
因みに彼女の売却価格は45万ナールとなっております。
ただいま連れてまいりますので、しばらくお待ちください」
ユグドは一礼して退室した。
「45万か。カエデはどう思う?」
「金額のことはよくわからないし、今のところは何とも......
ただ、当たり前のようにワケあり奴隷を買う方向で話が進んでるけど...... 条件が合うならワケありじゃない方がいいんじゃない?」
「!」
カエデに指摘されてハッとした。
いつのまにワケあり奴隷一択になってるんだ?
気を引き締めないと、気づいたら意にそぐわない奴隷を買わされてしまうかも知れない。
「取り敢えず面談して、先ずは俺たちとうまくやっていけそうか確認しよう」
「わかったわ」
それから5分ほど、カエデとイチャつきながら待っていると、コンコンとノックする音が聞こえ、扉を開いてユグドが部屋に入ってきた。
さあ、ワケあり奴隷とご対面だ。