異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
ユグドの後ろから、猫人族の娘が部屋に入ってきた。
身長は155cmくらいか?
八頭身で身体つきは一見すらっとしてるけど、胸はDカップはありそうだ。
髪は紺色でショートカット、目はクリっと丸くて瞳はサファイアのような透きとおった青色だ。
耳は頭の上の方で、外側は髪の毛と同じ紺色。
内側は白くてモフモフの毛が生えている。
腰のつけ根からは紺色の尻尾が生えており、長さ80cmほどで棒状だ。
ユラユラと揺らしているみたいなので、カエデのモフモフの尻尾とは異なり、自由に動かせるみたいだ。
ぱっと見は明るくて快活そうな“陸上女子”といった感じだけど、なんとなく顔がこわばっているので、だいぶ緊張しているみたいだ。
しかし、そんなことより彼女の顔には見覚えがあった。
この世界に飛ばされる前、あの漫画のまとめサイトを確認したときだ。
あのサイト、トップ画面の静止画では主人公は5人の女に囲まれていた。
確かロクサーヌとセリー以外は、体が大きく超巨乳な赤髪の女、華奢で線の細い金髪のエルフ少女、そして、今目の前にいるような紺色の髪の猫耳少女だったはず。
彼女を鑑定すると[ミリア ♀ 15歳 海女Lv2]と表示された。
海女がどんな性格のジョブかはわからないけど、種族固有ジョブに就いているのだからそれなりには戦えるはずだ。
俺たちの向かいにユグドとミリアが座ると、彼女が一礼して自己紹介を始めた。
「私はミリアといいます。
猫人族の15歳でジョブは海女です」
「ミツオだ」
「私は一番奴隷のカエデ。よろしくね♪」
「よ、よろしくお願いします」
ミリアがペコリと頭を下げたので、俺は早速質問を始めた。
「それじゃ、質問してもいいかな?」
「どうぞ」
「神域を侵したって聞いたけど、具体的に何をやったの?」
「神殿が儀式を行う入江で、魚を捕るため網を打ちました」
「神域って知ってたの?」
「陸側からその入江に近付いたときに、道を塞ぐように縄が張ってあったけど、その先が神域だとは思っていませんでした」
それじゃ本人が悪いとは言い切れないか......
そう考えていると、カエデが発言した。
「縄で塞がれた場所に入っちゃいけないとは思わなかったの?」
「えっと...... 海側からなら普通に行ける場所だったし、その...... バレなきゃ大丈夫かなって......」
「なにそれ...... 自業自得じゃない」
「魚がいっぱいいる入江だったので、ちょっとぐらいならいいかなって、その時は考えちゃいました」
「......」
カエデは大きくため息をついて、俺に向かって首を振った。
この娘は問題有りということだ。
確かにこの娘は危険だ。
欲求を満たすためなら、決められたルールに対して勝手な解釈により自己を肯定するきらいがある。
勝手な解釈で秘密をバラされたら、取り返しがつかなくなるから、この考え方を直さないと仲間には出来ないな。
「よろしいですか?」
「ああ」
話がまずい方向に向かってると感じたのか、ユグドが会話に割って入ってきた。
「彼女はこちらに来た当初は、物事を深く考えずに勝手な解釈により自身の行動を肯定するきらいがありました。
ですので、奴隷教育と並行して“自身の欲求よりもルールを順守することが大切だ”という道徳教育も施しております。
ブラヒム語の教育もしっかり行いましたので、お客様と意思疎通が図れないということもありません。
ですので、お客様の懸念は杞憂であるとお考えください」
「その教育が十分であれば問題ないけど......」
「そこは信用していただきたい」
ユグドは俺たちの表情を見ながら、ミリアには適切な教育を行なったことを説明した。
反論しづらいし、ここで教育について議論しても仕方がないので、どうやら 話題を変えるしかなさそうだ。
「そうか......
分かった。ひとまず信用しよう」
信用出来るかどうかについて話しても仕方がないので、俺はミリアに向き直って次の質問をした。
「じゃ、次の質問だ。
君には迷宮探索パーティーの前衛を務めてもらいたいんだけど、魔物と戦ったことはある?」
「はい。パーティーを組んで村の近くのダンジョンに入っていましたので」
「それじゃ、武器は何を使ってた?」
「主にシミターを使っていました。
ほんとは槍の方が得意なのですが、魔物との戦闘の際に何度か投擲してしまい、使用禁止にされてしまいました」
「投擲したら、回収するまで困るだろ」
「そのときは魔物の攻撃を避けながら隙をついて回収したのですけど、後でパーティーを組んでいたメンバーにすごく怒られました......」
「だろうな...... じゃあ次の質問。
海女とはどんなジョブなんだ?」
「猫人族の種族固有ジョブで、水性系の魔物に攻撃するときは力が強くなります」
「水性系じゃない魔物とは戦えるのか?」
「問題有りません。
海女の強さは戦士や剣士と同等といわれてますし、実際に迷宮で戦いました」
「ほう。どんな魔物と戦った?」
「水性系の魔物以外だと、グリーンキャタピラとチープシープです」
「前衛でか?」
「前衛で、です」
「分かった。それなら問題ない」
取り敢えず聞きたいことは聞き終わった。
そう思っていると、ミリアが手を挙げた。
「あの私からよろしいでしょうか」
「ああ。構わないけど」
「お魚を食べさせて頂くことは出来ますでしょうか」
「魚? 食べたいのか?」
「はい。私は猫人族ですので、3日に1度はお魚を食べさせて頂きたいのですけど」
魚か...... 猫人族は魚を食べないと死ぬのか?
小骨を取るのが面倒くさいので昔は嫌いだったけど、少年院では好き嫌いしてる余裕はなかった。
なので、今は普通に食べられるけど、元の世界にいる間は好んで食べてはいなかった。
しかし、この世界ではダンジョンで魚がドロップし、驚いたことにその魚には骨がない。
なので、好んで食べてはいないけど、別に魚が出ても嫌な気持ちはしない。
だから俺は3日に1度の食事が魚でも問題ないんだけど、考えてみると俺は殆ど自分では料理してないし、家の食卓にはあまり魚は並ばない。
なので、カエデの方を見ると、彼女は“ココからは任せて”という表情で小さく頷いた。
「ミリアさん。3日に1度、食事を魚料理にすることは可能だけど、貴方は料理は出来るの?」
「はい。大丈夫です」
「魚以外の料理もちゃんと出来る?」
「はい。大丈夫です」
「それなら問題ないわね」
「ありがとうございます」
どうやらミリアは 納得したようだな。
そう思った次の瞬間、「では、そろそろよろしいでしょうか?」とユグドから声がかかった。
断る理由がなかったので頷くと、彼はミリアを連れて退出した。
俺はハーブティーを一口飲んで、カエデに話しかけた。
「どう思う?」
「最初はダメだと思ったけど、道徳的な教育がちゃんとできているなら問題ないわ。
素直そうだし可愛いし... ふふっ♥
満男君が気に入ったなら良いんじゃない♥」
「そ、そうか」
「猫人族は嫉妬深くないし、かまってちゃんじゃないから、ハーレムメンバーの増員としてはたぶん最適。
彼女ならリリアとクレアとも仲良くやれると思う。
だから、あとは満男君がちゃんと愛してあげられるかどうかね♥」
カエデの言葉を聞いて、俺は以前彼女に言われた“奴隷を買うということの意味”を思い出した。
そして、一度深呼吸して、彼女の人生も背負う覚悟を決めた。
「分かった。彼女を買うので、色々と教えてやってくれ」
「分かったわ。
但し、仲間になったら一度釘を刺すわよ♪」
「そこはカエデに任せるよ」
「はい。任されます。
あと、ちょっといい......」
カエデは耳元に口を寄せると、小声で囁いた。
「ファーストジョブを冒険者に変更して、値引き率30%をつけて。
あと、抱き合わせで遺言作成を頼んで... 私を死後解放にするよう依頼してね」
なぜ小声にしたのかちょっと疑問に思ったけど、黙って頷きキャラクター再設定でジョブとスキルを組み替えていると、ユグドが部屋に入ってきた。
静かになった途端に入ってきたので、もしかしたら部屋の外で聞き耳を立てていたのかも知れない。
俺はカエデに感謝しつつ、手早く設定を完了させた。
「ミリアは如何でしたか?」
「問題ないので購入したいと思う。
あと、一緒にカエデの遺言を作成してほしいのだが」
「遺言作成代として別途300ナール頂きますが、よろしいですか?」
「ああ。問題ない。彼女は死後解放にしてくれ」
「かしこまりました。
それでは、ミリアの代金が45万ナール。それと遺言作成が300ナールです。
合わせて45万300ナールとなりますが、今回は私の婚約者からの紹介ですので最大限勉強して、315,210ナールとさせて頂きます」
「は?婚約者?」
「はははは。恥ずかしながら私はフレアと婚約しておりまして、将来的にターヘラの商館を継ぐ予定なんです」
なるほど、そういうことか。
どうりでフレア嬢が熱心にミリアのことを俺に紹介したわけだ。
そんなことを考えながら、ユグドの用意したトレーに代金を乗せると、彼はそれを持って退出し、すぐにミリアを連れて戻ってきた。
ミリアは俺の前まで来ると、「ミリアです。この度は購入して頂き、ありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します」と言ってペコリとお辞儀をした。
先ほど話していたときに一度打ち解けたけど、また少し緊張しているようだ。
「ああ。こちらこそよろしく」
「それでは、契約を行いますので、インテリジェンスカードを確認させて頂きます。
左手をこちらへ」
ユグドの前に左手を差し出すと、反対側からミリアも左手を差し出した。
すると、ユグドは2人の手の甲に手をかざして呪文を唱え、俺のインテリジェンス カードを確認した。
そして、俺のジョブを確認すると、もう一度手をかざして呪文を唱えた。
「これで契約が終了しました。インテリジェンスカードをご確認ください」
「うむ」
加藤満男 男 21歳 冒険者 自由民
所有奴隷 カエデ、リリア、クラウディア、ミリア
ミリア ♀ 15歳 海女 初年度奴隷
所有者 加藤満男
問題なくミリアが所有奴隷となったので、ユグドにカエデの遺言変更を任せ、俺はアイテムボックスから革のブーツを取り出した。
「早速だけど、これを履いてくれ」
そう言って革のブーツをミリアに渡すと、彼女は「よろしいのですか?」と言って目を輝かせた。
「素足で歩いて怪我をしたら困るからな」
「ありがとうございます」
彼女はそう言うと、そそくさとブーツを履いた。
嬉しそうに足元を見ているミリアを眺めていると、カエデが「終わったわよ」と言ってインテリジェンスカードを見せてきた。
カエデ ♀ 15歳 妖狐 奴隷
所有者 加藤満男 (死後解放)
「うん。問題ないな。それでは帰るとするか」
「それではこちらに」
俺が帰宅する意思を示すと、ユグドは素早く扉の前に移動して、扉を開いて退室を促した。
装備品は一通りあるから、この後は、ミリアの服とリュックや小物類を買いに行くか......
いや、一度家に帰ってリリアとクレアにミリアを紹介しておいた方がいいか......
俺は今後の予定を考えながら、2人を連れて応接室を退室した。