異世界転生した俺は、原作展開を壊して自由に生きる 作:龍いち
パーティー編成を検討【Side レオン】
帝都の商館にて情報交換を行なった後、ミリアを購入出来ないか商館主のゲプランさんに相談したのだけど、俺の数分前にこの商館を訪れたミツオに買われてしまい、願いは叶わなかった。
どうしても彼女じゃないといけないというわけじゃなかったけど、“ミリアなら簡単に手に入れられる”なんて驕った考えをしていた自分が恥ずかしい。
取り敢えずロクサーヌになんて言おうか......
なんて考えながら同行者の待機部屋に入り、彼女を見た瞬間に固まった。
一体何があったんだ?
ロクサーヌは青い顔をして俯いており、何かブツブツと呟いている。
近づくと、彼女はハッと顔をあげて俺を確認し、次の瞬間に勢いよく立ち上がった。
そして、「レオン様。申し訳ありません」と言って深々と頭を下げた。
「えっ?何があった?」
「本当に申し訳ありません!ミツオたちと揉めてしまいました!
いかような罰も受けますので、どうかお許しください!」
ミツオたちと揉めた?
確かにヤツはココに来てたみたいだけど、何故揉めるようなことになったんだ?
「分かったからひとまず落ち着け。
その...... 詳しく説明してくれ」
「はい......」
ロクサーヌから何があったのか確認しようとしていると、この商館の次男であるユグドが部屋に入ってきた。
「おい、レオン!
テメー、奴隷にどういう教育してるんだ!
その女、他の客と口論した末に剣を抜きかけたんだぞ!」
「えっ?!」
「えっ!じゃねえよ」
ユグドは掴みかかりそうな勢いで顔を近づけ、俺を睨みつけた。
「す、すまない。事情を確認させてくれ」
「は?何言ってんの?
俺が止めなかったらこの女は剣を抜いてたし、抜いてたら騎士団呼ぶとこだぞ!
とにかくその女を連れて、さっさと出てってくれ。
それと、その女は二度とウチに連れてくるな!」
「......分かった。迷惑をかけてすまなかった」
何があったのかロクサーヌを落ち着かせて確認しようと思ったけど、事情も分からないまま喧嘩腰のユグドと揉めるわけにもいかず、彼に言われるまま商館から追い出されてしまった。
ユグドとはフレアのことで因縁があるので半分は言いがかりなのかも知れないけど、かなり怒っているからロクサーヌとミツオたちが酷く揉めたことに間違いはないのだろう。
仕方がないので冒険者ギルドに向かって歩きながら、ロクサーヌから待合室で何があったのかを聞いた。
その結果、かなり不味いことになっていることが分かったので、一度家に帰ってから状況を整理することにした。
冒険者ギルドからワープで家に帰りリビングに行くと、作業机の上に真新しい装備品が積み上がっていた。
革の鎧と革のジャケット、そして革のグローブか。
ダガーとスタッフも数本ずつあるな。
レベルが30を超えると、一度にこんなに作れるものなのか?
そう思って積み上げられた装備品を見ていると、その中から小さな人影が起き上がった。
「おかえりなさいませ......」
「ただいま。セリー。随分頑張った...... な?」
「ただいま。こんなにたくさん凄いです...... ね?」
セリーの雰囲気が暗かったので疑問に思うと、隣のロクサーヌも首を傾げた。
次の瞬間、セリーはガバッと頭を下げた。
「申し訳ございません。
この程度の物しか作れない私なんて、皆さんの足手まといにしかなりません」
「いや、そんなことはないぞ」
「いえ、私のような役立たずは、この世にいない方が......」
セリーはそう言うと、頭を抱えてうずくまった。
これは...... MP枯渇か。
止める者がいなかったから、限界を超えて装備品を作り続けてしまったのだろう。
昨日の探索でセリーの鍛冶師レベルは32に上がったけど、よく考えてみたら防具を製造したのは今日がはじめてだ。
今更ながら、素材だけ渡して目を離したのは失敗だった。
いますぐ自殺するほど深刻ではないようだけど、薬を飲ましておいた方が良いだろう。
俺はアイテムボックスから強壮丸を取り出して口に含み、セリーの前にしゃがみ込んだ。
そして、セリーを抱き寄せて唇を重ね、彼女の口内に強壮丸を送り込んだ。
そのままキスを堪能していると、彼女が“コクッ”と薬を飲み込んだので、彼女から離れて様子を見た。
「大丈夫か?」
「......はい。
あの、申し訳ありませんでした」
「いや、謝らなくて良い。MP枯渇のリスクを失念していた」
「MP枯渇...... そうだったのですね。
急に気分が悪くなって、それからすごく後ろめたい気分になってしまって......
薬を飲ませて頂いて助かりました。
ありがとうございました」
セリーはそう言って頭を下げたけど、先程までと違って顔色は良いのでもう大丈夫だろう。
俺はセリーが作った装備品をアイテムボックスにしまい、2人を連れてダイニングに移動した。
俺はハーブティーを飲みながら、先ずはセリーにミリアという猫人族の娘はミツオという男に買われてしまい、仲間に出来なかったことを伝えた。
そして、今日俺たちが家を出た後に何があったのか、順を追って詳しく説明した。
先ず、帝都の冒険者ギルドを出て、商館に向けて歩いていく途中、俺たちの前を歩いているヤツがミツオだということに気がついた。
ヤツに見つかると面倒なことになると思い、咄嗟に建物の陰に隠れたけど、その行動をミツオに同行していた狐人族の娘に見られてしまっていた。
その後、帝都の商館で俺が打ち合わせをしている間、ロクサーヌは待機部屋にいたのだけど、そこにミツオたちが現れて、彼女が絡まれてしまった。
その時のやり取りで、ミツオにロクサーヌが俺の奴隷であることを知られてしまった。
更に言い合いになった際、ロクサーヌが剣の柄に手をかけてしまったことを商館主の次男に見られ、彼女は帝都の奴隷商館を出禁にされてしまった。
以上をセリーに説明した後、次の仲間をミリアにするつもりだった理由は、“俺が彼女を見知っていたからだ”と伝えた。
その上で、俺には前世の記憶があることや、その中には[異世界迷宮〜]という小説の記憶があって、この世界はその小説にそっくりなこと。
小説の中では、ロクサーヌやセリー、それにミリアを仲間にするのは主人公で、どうやらその主人公はミツオという男が該当していること。
そして、ミツオにも[異世界迷宮〜]という小説の知識があるらしく、最初はウチにロクサーヌを探しに来たことと、セリーが売られに来たときに、商館に入る前に無理矢理君を連れて行こうとしたことを説明した。
そこまで説明するとセリーは「あのときの男ですか......」と呟いてから少し考えて、何かに気づいたようにハッとした。
「もしかして、ミツオという人は、私が鍛冶師になることを知っていたのですか?
だから商館の前で、あんなに強引に私を手に入れようとしたのでしょうか」
「多分知っていたと思う」
「うわっ...... なんだか気持ち悪いです......」
セリーはそう言いながら鳥肌でも立ったのか、腕をさすって寒そうな仕草をした。
「一連の状況から、俺に[異世界迷宮〜]という小説の知識があることをミツオに知られた可能性が高い。
そして、ヤツはその小説に出てくるメンバーを俺が集めていると考えている可能性も高いだろう。
下手をすると、ヤツと同じボーナスポイントを割り振る能力を俺が持っていることに気づいたかも知れない」
「申し訳ありませんでした!」
一通りの状況を説明すると、ロクサーヌは顔を青くして、勢いよく頭を下げた。
自分の立ち回りが悪かったせいで、かなりまずい状況になったことを改めて理解したみたいだ。
「ロクサーヌ。さっきも言ったけど、お前のせいじゃない」
「ですけど!内密にしないといけないことを......」
「いいんだ...... ヤツに対する優位性はなくなったけど、能力に関してはヤツも内密にせざるを得ないのだから」
「えっ?どういうことですか?」
「俺にボーナスポイントを割り振る能力があることを知ったなら、当然“鑑定”が使えることも知ったはずだ。
つまりヤツが俺の秘密を漏らすということは、同時に自分の秘密も漏らされるということになる」
「つまり、自分も危険なことになるから秘密は漏らさないと......
ですけど、優位性をなくしてしまったことに変わりはありません。
本当に申し訳ありませんでした」
「分かった。反省しているならそれで良い。
それよりもこれからどうするかを考えよう」
「......かしこまりました」
ロクサーヌは釈然としていないようだけど、とにかく彼女が承諾したので話を進めることにした。
「先ず、今回ミリアが手に入らなかった。
なので、彼女に代わる前衛を見つける必要がある」
「ミツオからあの娘を手に入れることは出来ないのですか?」
「今までのミツオの行動から考えると、ヤツがせっかく手に入れた[異世界迷宮〜]のメンバーを手放すとは思えない。
ヤツと交渉するには相応の対価を用意しないと厳しいだろう」
「その対価は用意出来ないのですか?
足元を見られるかも知れませんけど、レオン様なら...」
ロクサーヌは対価を金銭と考えているのか、不思議そうな表情をして小首を傾げた。
“やれやれ、仕方がないか......”
俺は彼女に対価が何を指しているのか説明することにした。
「ロクサーヌ。対価とは金銭ではない。お前自身のことだ」
「えっ?」
「ヤツの目的は分からないけど、[異世界迷宮〜]のメンバーを仲間にしようとしていることは間違いないだろう。
だから、ミリアを譲る対価となると、ロクサーヌかセリーを要求してくる可能性が高いと思う」
「そんな......」
「......」
ロクサーヌは自分が対価と聞いて一瞬目を見開いた後に絶望的な顔をしたけど、セリーは少し前に気づいていたようで、驚きもしないしむしろ納得したような表情だ。
セリーは頭の回転が速いので、間違っても俺が自分を手放すことは無いと思っているのだろう。
その上で、じっと俺を見つめているということは、さっさと結論を話せということか?
彼女にそんなつもりはないのかも知れないけど、そんな雰囲気を醸し出してしまうところが、両親から“可愛げがない”と言われて疎まれていた理由なんだろうな。
「ミリアを手に入れることは諦めて、彼女に代わる遊撃ポジションの前衛を見つけることにする。
それと、30日後の休日に、クーラタルの商人ギルドで奴隷オークションが開催されるのだが、そこでベスタという竜人族の娘が出品されるはずなので、その娘を手に入れる」
「ベスタも物語でメンバーに加わる娘なのですか?」
「ああ。かなり背が高くて前衛でタンク役になる娘だ。
あの小説では、ロクサーヌの言う事に素直に従う大人しい娘だったはず」
「良い娘なんですね♪是非仲間にしましょう♪」
“ロクサーヌの言う事に素直に従う”と聞いた瞬間、彼女の表情がパッと明るくなった。
薄々感じていたけど、“自分の一番を脅かす娘であるか否か”が、彼女が仲間として認める一番の基準なんだろう。
「ところでその娘は何処かの商館から出品されるのですよね。その商館に行ってオークションの前に買おうとすると、やはり足元を見られてしまうのでしょうか」
「そうだな。
俺のことを認識してる商館だったらそうなる。
ただ、それよりも問題なのは、どこの商館から出品されるのかわからないことだ」
「わからないのですか?」
「ああ。小説に書かれていなかったのか?
それとも書いてあったけど忘れてしまったのか......
その辺は分からないけど、とにかく記憶にないのだ。
だから、彼女はオークションで競り落とすしか、仲間にする方法がない」
「そうでしたか。
余計なことを言って、申し訳ありませんでした」
「問題なのは、オークションにはミツオも出てくるだろうということだ」
「アイツですか...... でも、レオン様なら......」
「競り負けるとは考えてないけど、価格はかなり吊り上がるだろう。
だから、ミリアに代わるメンバーを探しつつ、迷宮探索と装備品の売却で出来るだけ資金を貯めておくつもりだ」
「わかりました」
「......セリーも頼むぞ!」
「は、はい!頑張ります!」
次のメンバーについて話している間、セリーはずっと思案顔で会話に入ってこなかったので敢えて話を振ると、彼女は慌てて返事をした。
しかし、返事をしたあと窺うような眼差しで俺を見ていたので、無言で彼女を見ていると、観念したのか「あの...」と言って話し始めた。
「パーティーメンバーは最大6人ですけど、その物語では他にもメンバーになる人がいるのですか?」
どうやら彼女はパーティーの最終形が気になっていたようだ。
「あと1人いる。ルティナという名のエルフで、魔法使いになる娘だ。
だけど、その娘はセルマー伯爵という貴族の長女なので、貴族に近づきたくない俺としては、仲間には出来ないと思っている」
「貴族の魔法使いですか......
気位が高そうですし、メンバーとなったらパーティーの和を乱しそうですね」
「そうだろうな。
それに彼女を手に入れるには、ハルツ公爵とかなり深い関係にならなければいけない」
「公爵ですか?!そんな地位の高い方と......」
「いや、貴族と関わりたいとは思わないから、その娘は仲間にするつもりはない。
一先ず忘れてくれ」
「かしこまりました」
「そうなると...
レオン様はもう一人のメンバーをどうしようと考えておられますか?」
「そうだな......」
セリーの問いかけに、俺は少し考えた。
俺は迷宮討伐は目指してない。
だから、俺以外に魔法使いはいらないと考えている。
だけど高階層で戦えるパーティーにはしたいので、戦闘中のダメージコントロールは必須だと思う。
そうなると...... もう一人に求めるのは回復役だな。
「必要なのは回復役。
出来れば巫女が欲しいと考えている」
俺が答えると、ロクサーヌが小首を傾げた。
「回復役ならレオン様が担えるのではないですか?」
「戦闘中に攻撃魔法を使いながら、パーティーメンバーの回復まで行うのはかなり厳しい。
上の階層を目指すには、回復専門のメンバー加入は必須だと考えている」
「つまり最終的に、前衛4名が魔物を抑え、後衛2名が魔法攻撃と回復を担うパーティー編成とするということですね」
「セリーの言う通りだ。
今後はその方向で メンバーを集めていく」
「かしこまりました」
「分かりました」
さて、方向はまとまった。
明日からはメンバー探しと資金調達に奔走する日々になりそうだ。