異常希性 作:マキアン
『■■■ァア!!』
影で蟻の姿を模した全長三メートルほどの怪物──界異が威嚇するように声をあげながら、ガチガチとその大顎を鳴らす。
影を媒介して移動する群体系の二号級界異である【
分裂能力に空間移動と奇術師や暗殺者も斯くやという姑息な能力を持ち合わせている。その上、本体も高い穢装等級と怪物じみた膂力による恐るべき正面戦闘力を兼ね備えた、二号級上位に位置する界異である。
「ここまで追い詰めたんですから、もう逃しませんよ!」
「由良来ちゃん、無茶はしないでくださいね!」
「あはは、怪我しても桃花さんがなんとかしてくれるから大丈夫ですよ!」
「またそんなこと言って……」
それに相対するは二人の少女。
片や両の手から黒く鋭利な爪を生やして【背影蟻】と対峙し、片やその後ろで符と救急バッグを携えてそれを見守る。
在原由良来と山城桃花。この界異を祓滅するために派遣された二人のタクティカル祓魔師だ。
「三番!」
『応よッ!』
由良来の合図に、ノイズ混じりの第三者の声が応える。
瞬間、その長い黒髪をばさりと翻しながら、由良来の背から
「射抜け!」
『■■ュァ!?』
バサリと大きく広げられた翼から、幾つもの瘴気の結晶が弾丸となって放たれる。それは【背影蟻】を容易く貫き、その全身に穴を開けた。
ここまでに、もう幾度となく由良来の攻撃を受けてボロボロになっていた【背影蟻】は既に瀕死。甲殻が砕かれ、触覚が千切れ、右の眼が貫かれる。弾丸の雨に晒される中で残った左の複眼が由良来を見て、桃花を見た後に、
『相棒、アリンコのやつまた影に潜るぞ! 逃げんじゃねェのか!』
「ッ」
これまでの行動パターンからすれば再び影に潜って逃げることだろう。しかしここに来て、由良来にはなんとなくその狙いが分かった。
「二番!」
『っ! 応!』
これこそ阿吽の呼吸。そう形容すれば由良来は「誰がこんな奴と」と怒りを露わにすることであろうが、実際この
由良来の声に弾かれるように、その意図を察した三つ目の声の主が由良来の腰より尾となって桃花へ、その
「きゃっ、アラハバキさん!?」
『どいてろ桃花ァ!』
「桃花、伏せてッ!」
桃花は由良来の指示を信じてその場で屈む。次の瞬間、桃花の影から現れた大きな顎が、先まで桃花の上半身があった所を噛み砕かんとして空を噛んだ。
その無防備に差し出された首に、予想通りに尾が巻き付けば、
「王手!」
『そらよォッ!』
『■■■■ィィイイッ!?』
細い尾とは思えない怪力で一トンはくだらない【背影蟻】の巨躯が宙へと放り投げられる。その先には先回りするように飛び上がっていた由良来の姿。
既に力のほとんどを使い切った界異が最後の抵抗とばかりに細く筋肉質な前足を振るうが、由良来は翼をはためかせてくるりとロールしながらそれを回避する。
そして、
「てやぁー!!!」
───突き出された由良来の拳爪が、その硬い中胸を貫いた。
どしんと地響きをさせながら【背影蟻】が墜落し、由良来もまた両手両足を地面につきながら着地する。
核とも呼ぶべき箇所を致命的に損傷したことで、【背影蟻】は己の身体を構成する穢れを留めることができなくなり、やがて苦しげな声を上げながらぼろぼろと自壊していく。
「よし、終わり!」
「祓滅確認。お疲れ様です、由良来ちゃん!」
「桃花もお疲れさま! はい!」
「たっち……! あはは、やっぱり恥ずかしいですね」
由良来が突き出した手のひらに、桃花が控えめにハイタッチする。
照れながら頬を掻く桃花。その姿に、ここまで我慢していた由良来の中のナニカが弾けた。
「ぁ」
「あは、桃花♡ それじゃ、今日もよろしくね♡」
正面から桃花のくびれた腰を抱き寄せると、そう言って由良来は正面から桃花のロングスカートの股座に自らの
無邪気に、しかし嗜虐的な笑みを向けてくる由良来に桃花はごくりと喉を鳴らす。その顔は努めて理性的に振る舞おうとしているようにも見えたが、隠し切れぬ淡い期待に揺れていた。
「んっ♡ ちょ、由良来ちゃんっ♡ ここまだ人通りが、ぁん♡」
「そんなこと言わないでよ、桃花♡ ちょっとだけ、擦るだけだからっ♡」
「あ、あつっ♡ 昨日もシてあげたのに、こんな♡」
「もう、わたしが性欲すごいみたいに言われるのは心外だなー♡ アラハバキの力を使うとこうなっちゃうんだし♡」
それは紛れもなく雄の象徴。ペニス。
乳房も女性器もある歴とした女性である由良来だが、その身に宿した力を行使してしまえば代償として、その少女の身体に男も顔負けな逸物が生えてしまう。
これを解消するには、相性の良い女人が"ヌく"しかない。
「ほら、はやく♡桃花♡」
「っ、ちょっとだけ、ですよ?♡」
「そんなこと言って、わたしのおちんちん大好きなくせにぃ♡」
その言葉に桃花は耳を真っ赤に染めるだけで、肯定も否定も返さなかった。しかし行動だけは正直で。
びくっぴくっと誘うように揺れるペニスに桃花が自ら手を這わせようとした時、
「あ、電話! 電話ですから……!」
「ぇえ〜、いいとこだったのに」
「続きはまた後でしましょう、ね?」
二人を現実に引き戻すように桃花の携帯電話が鳴った。
□
日が照り付ける人気のない田舎道に、二人の少女の姿があった。
その手には小さめの旅行鞄が提げられており、他所からの訪問者であろうことが窺える。顔立ちの幼さからはどう見ても学生くらいの年代に見える二人であるが、その装いは何か所属を表すように統一されたもので、彼女たちが単なる学生のズル休みではないことは確かだった。
「あづい」
十月も折り返し。日本の本来の四季であれば、秋風が吹いてちょうど過ごしやすくなる頃。
しかしどうやら今年は異常気象らしい。
30度を超える夏のような気温。それがここ数日続いていた。地球温暖化だと、異常気候だと騒ぐのも頷ける。地球は終わりなのかもしれない。いや、この暑さが続くならいっそのこと……。
そんな取り留めもないことをぐだぐだと思いながら、在原由良来は気怠く重い足取りで整備されていない歩道を歩いていた。
「夏……あつい……秋どこ……」
「由良来ちゃん、もうすぐですから! 後ちょっとで目的の場所に着きますよ!」
由良来のぼやきに答えたのは、山城桃花。身長はさほど変わらないが、互いの雰囲気もあってか二人は歳の離れた友人やそれこそ姉妹のようにも見える。
だが、彼女達はとある公的組織に所属する立派な公務員であり同僚の間柄だ。
「今回の境界異常、どういうタイプなのかはまだわかっていないらしいですね」
「うーん。単純に強いだけの界異ならわたしとアラハバキの力があればなんとかできそうですけど……」
境界異常。それは現世と幽世との境界線が曖昧になり、仕切りが崩れた際に発生する異界化現象。その際に現れる存在を界異と呼称する。
二人はそんな界異を祓い、境界異常を正す者達の公的組織、環境庁神祇部境界対策課、通称境対に所属する
「確かに由良来ちゃんとアラハバキさんであればなんとかできてしまうとは思いますが……」
「そうそう! わたしとアラハバキの力さえあれば大体なんとかなってしまいますからね!」
『相性百パーなオレサマと相棒なら、木端界異程度ならどうってことねえのは確かだな』
突如として、二人の会話に第三者の声が割って入った。
それは男とも女とも取れるノイズ混じりの声であり、発信源は由良来の肩からその姿をニョキっと現す。
「アラハバキさん、おはようございます」
『おう、デカパイ桃花、今日も相変わらずデケエ乳とケツしてんな』
「胸も尻もデカくないです……!」
(いや、乳も尻もデカいけど……)
桃花の挨拶にセクハラ発言混じりの挨拶で応えた存在は、言うなれば黒い影でその身を構成した蛇、もしくはチンアナゴとも形容できる存在。
五号級界異、【アラハバキ】。界異の中でも最大の等級に割り振られる、存在そのものが人理の敵とも言える存在。……そのはずであったが、現在は祓魔師在原由良来と同化してしまっており、彼女の相棒として振る舞っている。
『しっかし、シケた田舎だなァ。こんなところじゃ、美人のネーチャンはいなさそうだぜ』
「美人のお姉さんを探しにきたんじゃないから、とりあえず引っ込んでてくださいアラハバキ」
『ァァん? 目の保養にゃ確かにデカケツ桃花もいるがよぉ、やっぱ冒険っつったら旅先での新しい出会いとロマンスだろォが』
(もしかして飛行機の中で見てたスパイ映画に感化されてる?)
「……んん、そもそも羽目村に赴くのは境界異常の調査のため。終わったらすぐに帰るんですから、ロマンスも何もありませんよ、アラハバキさん」
桃花がそう言うとアラハバキはちぇっと不満げに由良来の中へと戻っていった。
実際、祓魔師としての仕事のために東京を離れ、遥々このような田舎にまで訪れているのだ。由良来は中卒祓魔師ゆえに関係ないが、桃花には学校もある。如何に公欠扱いをされるといえども私情で長々と滞在するわけにもいかない。
「羽目村ってどんな村なんですかね?」
「うーん。私も事前説明は本当に最低限しか受けてないのでなんとも。そもそも羽目村自体、今の時代珍しいことにネットにも名前以外の情報がないですし……」
某県北西部に位置する名間郡羽目村。二人が目指す目的地だ。
名間群を含め某県北西部一帯を管轄する境界対策課支部の一つが、羽目村で境界異常の発生を観測したというのがことの発端。その上、支部の人員ではすぐには対処ができないということで境界対策課本部への人員の派遣を要請してきた、という次第である。
(相変わらず人使いの荒い組織だなぁ)
「人使いの荒い組織だとか思ってはいけませんよ、由良来ちゃん。私達は立派な公務員なんですから」
「え、えへへ」
「皆さんの大切なお金をもらって働いてるんです。多少の大変さは飲み込まないと」
「はーい……」
しかし境界対策課は万年人手不足。特に前線部隊の人間は毎日あっちへこっちへ引っ張りだこ。
そこでアサインされたのが、アラハバキとの融合症例として境界対策課の監視下に置かれ、どの班にも所属していない在野の祓魔師在原由良来であった。
「でも、せっかく来たのに地図だけ渡して門前払いなんて、ちょっと信じられなかったですけどね」
「支部の人達も忙しそうでしたし、仕方ないと思いますよ? 確かに異様に冷たかったですけど……」
「やっぱり私達が子供だからって軽く見られてるんですよ。むぅ、これだから大人ってやつはー!」
冗談めかしてそう言えば桃花もふふっと微笑む。
思い出されるのは、支部に訪れた二人の姿を見るや露骨に態度が悪くなった壮年の職員達の姿。子供だからと侮られたのだと、不条理に子供らしく憤慨する由良来をどうどうと宥めながら、確かに妙な態度ではあったなと桃花は思い返す。
しかし、ここでそのことについて考えていても仕方がない。第一に考えるべきは、この先の村で発生しているという境界異常を解決することなのだ。
「というか、学校休んでまで桃花さんもついてこなくて大丈夫だったのに。……嬉しいですけど」
「……そうはいきません。由良来ちゃん、すぐ無理するんですから。一人で行かせるくらいなら私も行きます」
そもそもアサインされたのは本来由良来一人だけであったが、そこに心配で自分も付いていくと立候補したのが、半ばこの数ヶ月の間で由良来のお目付役のようなポジションになっていた桃花だった。
彼女は高校生として学生生活をする傍ら、類稀な加護出力と医霊術式適性、祭具適性の高さで境対の医霊班にて活躍する若手の祓魔師だ。
「まぁ、いいですけど、危険なことしたらダメなのは桃花さんも同じですからね」
「あ、あはは。それもそうですね、気を付けます」
桃花には戦闘能力はほとんどない。しかし時折持ち前の勇敢さを発揮して思いがけない行動に出ることもあり、由良来からすればそんな桃花の方が心配で目が離せないのだが、それは互いに互いの身を案じる思いがそれだけ強いということでもあった。
「あ、桃花さん! あれじゃないですか?」
「うーん、そうですね。いただいた地図を見てもこの辺りなので間違いなさそうです」
「地図にも正確な位置が載ってないって……」
しばらく歩くこと十数分。二人の眼前には棚田とぽつらぽつら散在する古びた木造の家屋達が現れる。
あれが羽目村。二人はあまりにもイメージの中の過疎集落そのものな有り様に苦笑いしながら、境界を超えて足を踏み入れた。
空にはいつの間にか、暗雲が立ち込めていた。
■
「んぼっ♡ んっ♡ んぶっ♡」
放置された無人販売所の小さな屋根の下。辺りは視界が悪くなるほどの大雨が降り続いており、まるでここだけが外から隔絶された孤島じみて存在していた。
そんな場所に、あくまで外であるにも限らずぐっぽ♡ぐっぽ♡と淫らな水音が響く。
「ぁ♡ んっ♡ 桃花っ♡」
「んぼっ♡ んぼっ♡ んぶ、ちゅっ♡」
その音の出所は二人の少女、否、番の雄と雌。
ロングスカートを履いたまま、股をぱっくりと開いた蹲踞の姿勢で由良来の股座に向かい合う桃花の顔は、清楚然とした彼女とは思えないほど無様で卑猥なモノ。口を窄めたひょっとこフェラ顔で、由良来の長く太いふたなりペニスの半ばほどまでを咥えて一心不乱に頭を前後に振る。
その姿は浅ましく子種をねだるメスそのもの。
「ちゅ〜っぽ♡ ちゅっ♡ ちゅぅ〜っ♡ ちゅぱっ♡」
「ひぁっ、ぁっ!?♡ 桃花っ♡ えっちすぎるよぉっ♡」
亀頭だけを口に含み、カリ首を執拗に唇で弾く。わざとキス音を立てながら、由良来のデカマラに奉仕する。
雨が降り出したのと、桃花の様子が変わったのはほとんど同時だった。
顔を赤らめて胸を押さえた桃花にただ事ではないと感じ、その手をとった由良来はこの無人の販売所に駆け込んだ。そうして由良来が桃花に声を掛けるよりも早く、彼女は熱に浮かされたような顔でしゃがみ込んで由良来のペニスを咥え始めたのだ。
「桃、花っ♡ それっ、口の中っ♡ すごすぎっ♡」
「ぶぷっ♡ ぶっぽ♡ ぶぽっ♡ ぶぽっ♡」
普段であれば五回戦目くらいか。
互いにイカせ合ってなお、発情が限界まで達してさらに激しく貪り合う時にしか見せないようなそんな姿。少なくとも、外でいきなりフェラを始めただけでも異常だというのに、その上ここまで熱がこもっているとなれば何らかの干渉も疑って然るべきだろう。
だがそんな冷静な由良来をどこかへ追いやるように、桃花のどすけべフェラチオが勢い付く。
「んじゅるるっ♡ ん゛っふ〜っ♡ ん゛っ♡ ん゛ぶっ♡ ん゛ぶっ♡」
「ぁ、待っ♡ 桃花待ってっ♡ 出るっ♡ 出ちゃうからっ♡」
じゅぞぞぞっ♡じゅるるるるっ♡と啜る音。まるでこのペニスは自分だけのものだと主張するようなフェラ。
快楽に腰が引けて、所在なさげに彷徨った由良来の両の手を恋人繋ぎで結んで、桃花は淫靡に微笑む。快楽に顔を歪めた由良来を見上げながら、チロチロと鈴口を舌でほじくる。
「ぁ〜っ、やばっ♡ 桃花っ♡ 出すっ♡ 出すからねっ♡」
「ん゛ぶっ!?♡ ん゛ぼっ♡ ぶぷっ♡」
獣性に頭の中を支配された由良来が、桃花の手を振り払って彼女の頭を優しく、しかし逃さないように掴む。
口の端から唾液とカウパーが混ざり合った液体を散らしながら、桃花は息苦しさや物のように使われることすら被虐的な快楽に変えて身を委ねた。
「ん、ぐっ!♡ 桃、花ぁっ♡ 受け止めてっ♡」
「んごっ!?♡ んぶぅっ!?♡」
突き込まれたペニスが喉奥、食道までを貫いて爆ぜるように射精に至る。
どぷっ♡どびゅぷぅ〜っ♡と由良来のペニスから直接胃の奥にザーメンが注ぎ込まれるのを感じながら、桃花は酸欠で朦朧とする意識を必死に繋ぎ止めて、恍惚とした表情で腰を震わせ絶頂した。地面には桃花の膣穴から溢れた白濁とした本気汁が滴り落ちる。
実に数分にも渡る長い射精。桃花の胃を限界まで埋め尽くすザーメン。ようやくそれを出し切って、由良来はずろろろぉ♡と口からペニスを引き抜く。
「はぁっ♡ はぁっ♡」
「んぐっ、んぐっ♡ ……けぷっ♡」
口の中に残った最後の一滴まで嚥下して、桃花は小さくザーメン臭い息を吐く。その顔はまだまだ物足りないと言わんばかりで、すぐにでも二回戦が始まってしまいそうな雰囲気であった。
由良来もまた、一度や二度の射精では満足などできない。性欲に埋め尽くされた頭は他のことを考えるなどあり得ないと、目の前の極上の雌の身体を余すところなく貪ってからでも問題ないだろうと判断する。
桃花の狩衣を剥ぎ取ろうとその手を伸ばした時であった。
「お、お前さんら何しとんだ?」
「っ!?」
雨が上がる。瞬間、引いていく性の熱。
この村の人間らしい老齢の男が、傘をたたみながら二人に恐る恐る話しかけてきたのだ。
「ぁ、えっと」
「ん、ぷっ♡ ……ご、ごめんなさい。私達祓魔師でして。ここで雨宿りさせてもらっていたんです」
「祓魔師……?」
「そ、そうです。わたし達、東京から来た祓魔師で……!」
「東京から……ぉ、おお! あなた達が! ようこそおいでくださいました!」
不思議と先ほどまでの発情が嘘のように消え失せていた。ふらふらと立ち上がり、ペニスを露出させたままの由良来を背に隠すように立って弁明し始めた桃花の言葉に、由良来もあたふたとしながら合わせる。
二人の装いを見れば祓魔師であることは一目瞭然。と言えども一人であればその若い出立ちもあって信用されていなかった可能性もあるが、タクティカルな祓魔師とは容姿や立ち振る舞いで推し量れぬ異能の者たちが集団で行動しているものという大雑把な認識は市民の中で根強い。ゆえにか老人もすんなりと理解を示したようで、怪訝そうな視線から一転、喜色一面の声音で歓迎の意を表す。
「私、吉三と申します。この羽目村の村長をしております」
「山城桃花です。よろしくお願いしますね、吉三さん」
「あ、在原由良来です」
「山城さんに在原さん、ですな。ささ、長旅でお疲れでしょう。空き家の一つをお貸ししますので、今日はそちらで休まれるが良いかと。ついてきてくだされ」
「ありがとうございます、助かります!」
こういう時は桃花に任せるに限る。
しかしあの発情は何だったのだろうか。一切歯止めが効かなくなる感覚は尋常ではなかった。
由良来は先までの雌犬のように盛った桃花とは思えない冷静に村長と話を進める彼女の姿に、言いようのない不安と劣情を覚えながら、歩き出した二人の後を追いかけた。