※この作品はR-18です。

うたわれるものヒロインとイチャイチャする話   作:クラムP

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第十四話中

 

 

 ————クオンは焦っていた。

 

 

 昼間は無関心を装っておきながら、夜になると急にオシュトルを独り占めしだすネコネ。

 気の赴くままマイペースを貫き通し、時も場所も問わず誘いをかけるアトゥイ。

 クオンを罠にかけ、マンネリ対策に利用してきたウルゥルとサラァナ。

 

 最近は彼女らにやられっ放し。

 以前であれば、ほかの子の誘いに流されるオシュトルに報復の一つもくれてやったところだが、今の彼女はそんな幼稚な真似をする気はない。

 

 クオンはもう二度と後悔したくないのだ。

 要らぬ自尊(プライド)を掲げて彼と揉めるくらいなら、手段を問わず篭絡することに注力する。

 彼の周りに女がいくら侍ろうとこの際構わない。

 彼女にとって大事なのは、オシュトルの隣にいることだけなのだから。

 

 しかし、今となってはそれこそが最も難しかった。

 

「兵法に則るなら……敵を分断して、局所的に自陣側の数的有利をつくる、なんだけど」

 

 女の戦に兵法があてはまるかは甚だ疑問だが、少女は真剣であった。

 現状、少数派なのはむしろクオンの方。

 味方を作ろうにも、欲目のある者たちではまた裏切られかねない。

 

 

 ——そこに現れたのが、フミルィルであった。

 

 

 確実に自分を裏切らず、かつ、あの唐変木の目を引くに足る、大人の魅力の持ち主。

 と考えたところで、クオンは舌を鳴らす。乙女心は複雑なのである。気が進まないクセに、自分の男にほかの女を用意するくらいには。

 しかし、嫉妬と焦燥に狂った禍日神(クオンガー)にとって、そんな倫理的な議論は二の次。

 

 フミルィルを用い、一時でも他の娘の妨害をシャットアウトする。そして、二人でオシュトルを囲い込み、思う存分イチャコラする。

 

「……うん、いける。これならいけるかも!」

 

 己の暴走に気づかぬまま、少女は邪悪な笑みを浮かべて立ち上がった。

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

「という訳かな」

「『という訳かな』、じゃないっ!!」

 

 寝所にて堂々とした佇まいで供述するクオンに、つい素の口調で怒鳴るオシュトル。

 

 恋人がまたぞろ頭の沸いた暴挙に出ていた。

 妙な方向へ全力疾走する悪癖は前からあったが、よりにもよって「彼女」を巻き込むとはオシュトルも予想していなかった。

 

 状況を整理するため、オシュトルはクオンの背後に控える人物へと視線を巡らせる。

 

「フミルィル殿も与太話に付き合わせて申し訳ない。訳もわからずこんなところへ連れてこられて、さぞかし困惑したことだろう」

 

 そこには、昼間同様おっとりとした佇まいで事態を見守るフミルィルの姿があった。

 

「ご心配なく。クーちゃんから、事前に仔細は聞き及んでおりますから」

 

「……へ?」

 

 オシュトルの口から思わず間の抜けた声が漏れる。だが、フミルィルの口から語られたのは、それだけではなかった。

 

 

「オシュトルさまが、そのぉ……大変にお盛んだとか」

 

「オフォ」

 

 

 クオンはあろうことか、「オシュトルの正体に関わる機密」以外の一切合切、特にオシュトルを巡る床事情の諸々を、包み隠さずフミルィルにぶちまけていたのである。

 

「いえいえ、お立場を考えれば、雄健であられることは歓迎すべきかと存じます。我が國にうたわれし御方も、かつては似たような浮名が付いて回ったと聞きますし。当人同士が幸せなら、私は応援いたしますから」

 

「は、はは、ははは……」

 

(ク~~オ~~ン~~!! ホントに、ホント~にそういうところだぞ! お前ってヤツは……!!)

 

 オシュトルは恥ずかしさで爆発しそうだった。

 何故、大事なクライアントの担当者様にこんなことを知られねばならんのか。

 そんなオシュトルの動揺など知らず、フミルィルの追撃は止まらない。

 

「オシュトルさまも苦労されていると聞きましたし、クーちゃんの負担を減らせるのなら、私にもなにかお手伝いができたらと」

 

「なっ……」

 

 思わずクオンの方を見やると、なぜか彼女は誇らしげ。

 文脈を考えれば、それは目の前の男との性交渉に対する同意とも受け取れる。彼女はそれを理解しているのだろうか。

 

 フミルィルにとってオシュトルは、大事な幼馴染を毒牙にかけ、あまつさえ他方にも浮名を流す不届き者のはずだ。

 良い感情などあるわけがない。ここにいるのも実際には自分を監視するためか、あるいは。

 

「はぁれむ増員」

「少々厄介な方ではありますが、主様のお世話がより捗るのであれば良しとしましょう。という訳で今宵は、ここにいる者でお勤めをさせて頂ければと」

 

 男の背後から音もなくウルゥルとサラァナが現れた。すでにシースルーの羽織を解き、ヤる気マンマンである。

 場の流れがきな臭くなってきたのをオシュトルが感じる中、

 

 

「ちょーっと待つかな!」

 

 

 話が進む前に、クオンが強引に割り込んだ。

 

「今夜は私とフミルィルのふたりだけでするから。あなた達も一緒だと、フミルィルが緊張しちゃうだろうし……ね?」

 

 クオンはフミルィルを盾にし、双子の不参加を促してきた。

 そこで初めてオシュトルは彼女(フミルィル)がここにいる理由を悟り、クオンに訝し気な視線を飛ばす。

 しかし、当の本人は涼しい顔。オシュトルのこめかみがピクピクと震える。

 

「なら、今回は引き下がる」

「フミルィルさんを引き入れた功に免じて、今日イジメるのは控えておきましょうか」

 

 てっきり激しく抵抗されるかと思いきや、ウルゥルとサラァナはあっさりと引き下がった。彼女たちはこの展開をある程度予想していたのだろう。

 完全に蚊帳の外に置かれていたのはオシュトルひとりである。

 

 

 ここで、大事な部分をまとめよう。

 

 

 ハッキリ言おう。

 フミルィルという女性は、オシュトルのストライクゾーンド真ん中である。

 

 おっとりとしていて、世話好きで優しい。彼よりは年下だが、醸し出す空気は包容力のある年上のお姉さんそのもの。

 

 それは、ハクがかつて秘めたる想いを寄せた兄嫁を彷彿とさせた。

 

 おまけに、服の上からでも分かる巨乳。精神・肉体ともに役満である。そんな事情もあり、男が彼女を邪険に扱えるワケが無かった。

 

 

 

 しかし——それはそれ。これはこれなのだ。

 

 

 

 

「勝手を言うようだが、某はフミルィル殿の助力を受けるつもりはない」

 

 オシュトルの声明に、クオンとフミルィルが同時にぽかんと口を開く。

 

「クオン」

 

 オシュトルは迷わず歩を進め、布団に陣取るクオンの正面に座すと、彼女の両肩をがっしりと掴んだ。

 

「オシュトル……? どうしたの?」

 

 その掌から伝わる真剣さに、クオンは思わず身を正す。

 

「某は、お前が良い」

 

「え? え?」

 

「ほかの者ではなく、今はお前と一緒にいたい」

 

「……………………ひゃぃ」

 

「避けるなよ」

 

「え、んん……!」

 

 クオンの顔が紅く染まりきる前に、オシュトルが彼女の唇を奪った。

 

 動揺して身をモゾモゾさせる彼女の身体が男の手に固定され、ついにフミルィルからは彼女の顔が見えなくなってしまった。

 

 須臾の沈黙。

 口づけを交わす二人を見つめる三対の視線。

 

 部屋内に響くのは、男の手が抱いた女の背や尻尾を撫でる微かな音のみ。

 それが幾ばくか続いたのち、風呂上りかのように熱気と湿り気を帯びた女の顔から、男が唇を引き上げた。

 

「不安にさせたのなら謝る。だが、某の気持ちはあの日となんら変わらぬ。某の真ん中にはお前が、クオンがいる。某が二心に収まらぬ不埒者なのは慥(たし)かだが、これだけは未来永劫、永遠に変わらぬのだ」

 

 此度の暴挙は己の至らなさゆえと解釈したオシュトルは、誠心誠意、直球極まる愛の告白を敢行。

 

「だから——今夜は、二人だけで過ごしてくれ」

 

「————!」

 

「まあ…………!」

 

 フミルィルの歓声がオシュトルの耳に届くが、いまは目の前で面白いほどにアワアワしている恋人が最優先だった。

 

(取引先の担当とワンナイトとか、そんな島●作じみた真似ができるかってんだ。人間関係をこれ以上ややこしくするなんて御免被る)

 

 先ほどの言葉は本心だが同時に、男の気を引くために他の女をダシにするような、真似しちゃいけないタイプの港区女子の如きムーブはいい加減止めさせたいオシュトルであった。

 なにより、ルルティエやノスリたちに対して後ろめたい気持ちがやはり大きい。

 彼女らへの告白がまだの状態で、別の女性に手を出すなど彼の倫理観では論外だった。

 

「そういうことなので済まぬな、フミルィル殿。今宵伴(とも)にする相手はもう決めてある」

 

 オシュトルが向き直って一礼すると、フミルィルは瞳を数回またたかせた後、いつものおっとりとした、しかしどこか満足げな笑みを浮かべて頷いた。

 

「かしこまりました。クーちゃんのこと、大事にしてあげてくださいね。オシュトル殿のこと、信じていますから」

 

 一片の棘もない、大切な妹分を祝福するような言葉。

 

(なんとかお眼鏡には叶ったか……?)

 

 かの國(トゥスクル)でクオンがどのような立場だろうと、オシュトルはもう彼女の手を離すつもりはない。

 その決意をフミルィルに示す意味も込めたつもりであったが、無事伝わったかと、オシュトルは内心で安堵した。

 

 

 ——その瞬間。

 

 

「んな……んんぅ!?」

 

 唇。

 無警戒の隙を突かれ、オシュトルは至近距離から奇襲を受けることになる。

 

「…………ぷぁ。ねぇ……私(わたくし)のこと、すき?」

 

「あ、ああ。もt、うぉぉ!?」

 

 首筋。

 

「ふふ……♡ ん…………♡♡」

 

 胸板、胸骨の下角。

 腹部へと口づけの雨が降りそそぐ。

 

 ストレートな愛の言葉を受け、照れと、嬉しさと、抑えきれない興奮を綯い交ぜにしたクオンは、発情キス魔と化して姉代わり(フミルィル)の目も憚らずにオシュトルに食いついた。

 

「クオン、その、まだ人目が——っ」

 

 言葉は唇に塞がれ、馬乗りに押し倒された。

 フリフリと大振りを続ける尻尾が、本人の興奮ぶりを雄弁に物語る。まるでハートマークをそこかしこにばら撒いているようである。

 

「ふも……♡ ちゅ……ちゅ……♡♡♡」

 

「おま、どこ触って、んほぉぅ!?」

 

 硬い喉仏をかぷりと食まれながら、男の仙骨が少女の尻尾にねちっこく撫でまわされる。

 粘ついた性欲が宿った尻尾愛撫がされるがままのオシュトルの殿部へと注がれ、つい威厳もへったくれもない声を上げてしまう。

 

 クオンは、完全にヤる気だ。

 

 こんな様を見せるのはマズイ、とオシュトルがフミルィル(一応部外者)を横目で探すと、彼女は既に寝室の襖に手をかけようとしており、

 

 

「……しーっ♪」

 

 

 オシュトルの視線に気づくと口元に人差し指をあて、悪戯っぽく微笑んだ。

 

 どうやら、好き好きオーラ全開の妹分の邪魔をする気はないらしい。足音を忍ばせ、静かに寝室を離れようとする様にオシュトルは一安心。

 

しかし、異なる思惑を抱く者が二名。

 

「すとっぷ」

「この場でのやり取りを知った者を、ただで返す訳には参りません」

 

「あら……」

 

 ウルゥルとサラァナがフミルィルの左右の袖をがっちりと掴み、引手に触れさせない。

 

「もうちっとだけ続く」

「ここでのクオンさんの『日常』、興味はございませんか? 共にその顛末を見届けからでも、お帰りになられるのは遅くはないかと」

 

 彼女を逃がすつもりのない二人に、ひとり情動のまま夢中で交合(セックス)へ移行しようとするクオン。

 ついでに、急所をまさぐられて無様な悲鳴をあげるオシュトル。

 

 奇妙極まる構図を皮切りに、夜の授業参観が始まったのである。

 




現状のそれぞれのスタンス
クオン→オシュトルのフリも認める。ハーレムも認める。ただし、一番は自分のもの。
ネコネ→兄さまぞっこんラブ、兄さまファースト。兄の性処理は妹の役目。隙あらばヤりたい発情猫。
アトゥイ→皆仲良しなのはいいこと。それはそれとして、しっかり自分のことも愛してもらなければ困る。
ウルサラ→目指せ子だくさん。ハーレム増員は大歓迎。ただ、主様の体調がちょっと心配。
フミルィル→クーちゃんが幸せそうでなにより。ダシにされたことは特に関知してない。

オシュトル→惚れた女を置いて新しい女に手を出すとかムリムリ。

あなたのうたわれ歴は?

  • 散りゆくのみ
  • 偽りあるいは偽り二白のみ
  • 散り~二白三部作
  • 三部作+ロスフラあるいはモノメビ
  • ロスフラのみ・モノメビのみ
  • 白への道標まで全て履修済
  • うたわれは未履修
  • その他
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