デジモンアドベンチャー 〜剣と妖精の世界の物語〜 作:藤林 明
そして何書いたか忘れたー
「…食べてやる。有り金全部食べてやるー!やけ食いだぁぁぁ!!」
この場にいる1番の年長者、木戸丈(きど じょう)はそこが店内ー某有名ファーストフード店ーであることを忘れて吠えた。
理由はひどく単純なもので、お台場への道中乗り換えの為降りた新宿駅で偶然一部の仲間とはぐれてしまったのだ。…が、それだけなら見つかってよかったの一言で済むハズのこの一件ではぐれてしまっていた子供達はある致命的なミスをしてしまったのだ。
……そう。お台場までの電車賃を考えずに食事代で全て使っていたのだ。
これを知った彼は当然説教をした。「どうやって帰るのか」と。そして返ってきた答えは「ま、なんとかなるだろ。丈、お前も食ってかないか?」だった。
反省するそぶりすらなく楽しむ年下の少年・少女を見た丈は真剣に考える自分がアホらしくなり、半ばやけっぱちで叫びながら食事を注文するべくカウンターへ歩いていったのだが…
「よう少年、ここは店の中なんだ。静かに、とまでは言わんが、周りの人の事も考えな」
と、カウンターで先に並んでいた禿頭に巨漢の黒人にいきなり注意された。
「あっ!す、すいません…ちょっと連れがとんでもないことをしでかしまして、ちょっと頭に血が昇ってしまいました…次からは気をつけます…」
その巨漢を見た丈はいきなりの事で完全に萎縮してしまったが、自らの非についてはもはや言い訳のしようが無いので素直に謝りつつも事情を説明した。
「ほぅ、あんたの連れは一体何をやらかしたんだ?」
丈の言葉に興味を持ったのか、その黒人男性は何があったのか聞いてきた。
「…実は僕たち、これからお台場まで電車で帰ろうとしてたんですけど、皆してお金全部使ってしまったんです」
「おいおい、そんな事して大丈夫なのか?…見たとこ小学生位にしか見えないんだが…アテはあるのか?」
丈の言葉を聞いた黒人の男は驚いた顔で聞いてきた。もちろん、丈の答えは…
「…正直無い、です…はぁ、太一達はどうするつもりでいるんだろ」
「…あんたも苦労してんだな……あ、コーヒーを3つ。ええ、小さいので」
並びながら話していた二人のうち黒人の男の順番となったので、彼は手早く注文を済ます。…だが、ここでひとつ問題が起きた。
「…え?電子決済システムが無い?…マズったなこりゃ…え?ここだけじゃなくてほとんどの店が無理なんですか?…うーむ、困ったな…」
そう。支払いを済まそうとしたらしい黒人の男は、コンパクトな箱みたいな機械(?)を取り出したのだ。…だが、丈からしても店員同様?な行動にしか見えない男の動き、反応だが彼には何故か既視感があった。
「(あれ?こんな反応、確か何処かで僕もした様な…あ、そうか!僕がデジタルワールドでデジタマモンの店でドル通貨を持って無かった時の反応だ!!…え?でもあの時は確かドル通貨なのを知らなかった僕が円の通貨を渡して、だから…)」
「あのー…」
「ん?どうした?」
「もしよかったら、ここは僕が出しましょうか?さっき騒いで迷惑かけてしまいましたし…」
そう。かつてデジタマモンの店で無銭飲食という濡れ衣(とは言っても実際通貨単位の確認をし忘れた丈の落ち度であるが…)を被せられタダ働きさせられた時に助けてくれた仲間の事も同時に思い出した丈は、男に対して助け舟を出したのだ。…かつて、彼の仲間であるひとつ下の後輩石田ヤマトが自分にそうしてくれた様に。
「いや、流石に小学生に出させるのは…」
「いえ、とりあえず後ほど頂ければ大丈夫ですから。コーヒーだけなら僕の持ち合わせで足りますし…あ、すいませんこれでお願いします」
「……すまない、後で返そう。…あぁすまん名前をまだ言ってなかったな。俺はアンドリュー・ギルバート・ミルズだ。君は?」
黒人の男ーアンドリュー・ギルバート・ミルズーは申し訳なさそうにしつつも店内という事も考慮してあまり無理に断らず、まだ自己紹介していなかった事もあり自らの名前を言ってから聞いてきた。なので真面目な丈も
「あ、ご親切にどうも。僕は木戸丈といいます」
と応えたのだった……。
☆☆☆☆☆
「…さっきは本当にすまねぇな。丈君はそれで足りたのか?…なんかさっきやけ食いしてやる〜とか叫んでたが…」
カウンターで食事を受け取った丈と、コーヒーのカップをトレーに載せたアンドリューは、カウンターから少し離れた場所で話をしていた。
「いえいえ、困った時はお互い様ですよ。それに冷静になって考えたら万が一を考えて僕は少しでも出費は抑えておかないといけませんしね」
「おいおい…お前本当に小学生か?すげぇしっかりしてんじゃねぇか」
「ありがとうございます。アンドリューさんこそ、凄く落ち着いてましたね」
丈の落ち着きっぷりに驚きを隠せないアンドリューは、一度咳払いをしてから壁沿いにある一角を親指で示すと
「んじゃ、俺の仲間があそこで待ってるから行くわ。あいつらに事情話して丈君達の所へ行きたいんだが…」
と質問してきた。なので丈は
「あ、僕たちは向こうの奥にある窓側の席にいますから、後で来て下さい」
と言いながら窓側奥の席を指差した。
「了解。じゃ、また後ほどな。…あんまりはしゃぐなよ?」
窓側を見ながら頷いたアンドリューは、話しかけたきっかけでもある騒ぎについて釘をさした。
「うぅ……はぃ…」
そして、丈はアンドリューの言葉で凹みながらも仲間の待つ席へと向かったのだった……。
☆☆☆☆☆
「おぅ丈、遅かったんだな」
アンドリューと別れ、仲間の待つ席へと戻ると太一の脳天気な声が聞こえてきた。
「あぁ、今そこで外国人の人に話しかけられてね。…あ、でも結構日本語ペラペラだったんだよね。日本に長く住んでるのかな?」
丈は太一の質問に応えながら自分のトレーをテーブルに置いて自らも席についた。
「外国人?なーにそれ?美味いの??」
「食べ物じゃないよアグモン。外国人っていうのは簡単に言うと君たちで言う種族みたいなもんさ」
「ふーん、そうなんだ〜」
恐竜型デジモンのアグモンは、聞きなれない単語に対して反応したが、丈の説明で食べ物でないと知るとすぐに興味を失い、テーブルの上にあるハンバーガーを食べ始めた。
「あ、それでね皆。今からその人達がこっちに来るんだけど…」
「えっ!?それってヤバいんじゃないの?」
「タケルの言う通りだ。どうしてそんなことになったんだよ。デジモンなんてこっちじゃ存在してないんだぞ!」
丈の言葉にタケルは驚きを隠せず、タケルの兄であるヤマトは丈の行動を糾弾した。
無理もない。現実世界にはデジモンなんていう奇妙な生物は存在しない。故に、彼らデジモンを見た人間は怪獣だなんだとパニックを起こしてしまうだろう事は今ここにいる子供達全員が容易に想像できることだ。なので丈の発言は、自ら騒ぎを起こす様なものなのでヤマトの怒りは最もである。
しかし、当の丈本人は
「大丈夫だよ。だって…」
「おいらを見てもあんまり驚いて無かったからね」
丈の鞄から顔を出した彼の相棒、ゴマモンと共にとんでもない発言をするのだった……。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「よう、待たせたな丈君。後ろにいる二人が俺の連れだ」
事情説明を丈が終えた頃、アンドリューが自分の連れだと言う少女二人を連れて現れた。
「へぇ、これがデジモンかぁ…あ、初めまして。あたし、桐ヶ谷直葉(きりがや すぐは)。まだ15歳だけど高校1年です。宜しくね!」
1人目の黒髪ショートカットの少女ー直葉はデジモン達を興味深そうに見ながら自己紹介した。
「初めまして、綾野珪子(あやの けいこ)です。こんな見た目ですが一応中学生です。宜しくお願いしますね♪」
2人目の茶髪をツインテールに結んだ小柄な少女ー珪子はデジモン達の存在が気になりつつも自己紹介をした。
「んで、最後になったが俺がアンドリュー・ギルバート・ミルズだ。宜しくな」
最後に聞き心地の良いバリトンボイスに禿頭の黒人男性、アンドリューが自己紹介をすると
「こんにちは、俺八神太一(やがみ たいち)です。小学5年生」
「私は武之内空(たけのうち そら)。同じく小学5年生です」
「私は太刀川(たちかわ)ミミ!小学4年生!」
「僕は泉光子郎(いずみ こうしろう)といいます。小学4年生です」
「僕は高石(たかいし)タケルだよ。小学2年生!…ほら、お兄ちゃんも」
「…石田、ヤマト。…5年生」
子供達側も全員自己紹介をした。
「…そっちの兄ちゃんには随分警戒されちまってるみたいだな」
「…別に」
アンドリューはヤマトの反応に肩を竦めながら
「んじゃ、さっさと本題に移りますか」
真剣な表情でそう言ったのだった。
次回からはキャラクターサイド形式で書きます。
理由はあまりにもカタッ苦しいからです。…ということで次回予告。
アンドリューから聞かされる驚愕の真実。それは彼らがデジモン達同様デジタルな世界から来た存在だということだった。そして襲い来るヴァンデモンの手下。その時、信じられない事態が起きたのだった!
次回!デジモンアドベンチャー 〜剣と妖精の世界の物語〜 「前編 デジヴァイスとVRMMO」 今、冒険は進化する。