男に戻るためには「性の6時間」に10人とセックスして証拠のゴム入り精液持ってこいだって?! クリスマス限定の高額報酬裏バイトに申し込んだらミニスカサンタ娘にTSさせられた俺の話【リアルタイム更新】 作:猫浦めると
ビルから出ると、夜明け前の街はまだ薄暗く、朝焼けの気配も見えない。だけど空気の冷たさにはどこか透明感があって、闇の底から少しずつ光が立ち上がろうとしている感じがした。
俺は使い古してボロくなったサンタ衣装を必死に引っ張りながらタクシーを拾い、最初に面接を受けた雑居ビルへ戻る。震える太ももと鈍い痛みを引きずりつつ、暗いビルの階段を上がっていくと、20時頃に来たときとまったく同じ扉がそこにある。
(やっと……ここまで戻ってきた……)
ドアを開けると、例の面接官が奥の机に座ってこちらを見ていた。相変わらずの無表情、そして何も言わずに腕を組んでいる。俺はズタボロの姿勢のまま、机の前に立ち、精いっぱいの声で切り出す。
「戻ってきたか。どうだ? おおかた――」
「……全部……集めました……これで……」
そう言ってバッグから小さな袋を出して見せる。中には10個のコンドーム。ピンク、グリーン、ブラック、色とりどりのラテックスの中に、分量も色味もばらばらの白濁液が入っている。
俺の目には、それがやけに神々しく映る。いろんな相手と関係を重ね、あられもない姿で喘ぎ、必死でこのゴムに収めてもらった証。男に戻るために必要だった戦利品。
面接官は微動だにせず、「ほう」と小さく声を漏らす。俺は心臓を早打ちさせながら、続く言葉を待つ。
「いやあ、驚いたね。君、本当にやりきるとは……10人分、こんなにしっかり集めてきた人は初めてですよ」
「……はい……だって、やらないと……一生このままになっちゃうって……」
「約束は守りましょう。当初の契約通りの報酬は支払うし、君を男に戻すのもきちんと行う。さ、こちらへ」
面接官に促され、俺は再び隣の小部屋へ通される。そこは着替えに使ったあの空間。打ちっぱなしの壁と姿見がひとつだけ。靴がうまく脱げないくらいに足が震えていたので、壁にもたれかかるようにしてバランスを取った。
「大丈夫か? 随分疲れてるようだが」
「ええ……そりゃ……10人も相手に……こんな身体で……」
俺は苦笑いしつつ、胸を上下させて息を整える。サンタ衣装のファスナーがずり落ちかけていて、鏡には散々汚された姿の女が写っている。顔は赤く、髪は乱れ、下着はほとんど機能していない。こんなエッチな醜態、これっきりにしたい……。
面接官が歩み寄り、俺の肩に手を置く。冷たいような手のひらだが、不思議と拒否感はない。長い一夜の戦いを終えた安堵のほうが大きいからかもしれない。
「じゃあ、始めるが……その前に確認だ。本当に元の姿に戻りたいんだな? そのまま女として生きてもいいんだぞ?」
問われた瞬間、俺は思わず言葉を詰まらせる。
確かに、男に戻るために必死でこの闇バイトをこなしてきた。
だけど、思い起こすと脳裏に蘇るのは、一人ひとりの相手との熱くて濃厚な時間。そのたびに自分が女としてあり得ないほど感じてしまった記憶……そして、途中で芽生えた奇妙な充足感。
男の身体では絶対に味わえなかったであろう、性感。快感。
脳がしびれてしまうほどの絶頂。
惜しい。欲しい。
このままずっとこうしていたい気持ちもある。
けれども――やっぱり、俺は、男だ。
「わ、わた……いや、俺は……男に……戻ります。そりゃ……このままなんて……」
声が少し震える。けれど、面接官はただ「わかった」と無表情で頷き、俺の髪に軽く触れる。
「では、目を閉じて」
「はい……」
不安と期待が入り混じりながら目を閉じると、部屋の空気がぼんやり震えたような気がする。まるで熱が伝わるように肌をなぞる感覚があって、頭が軽く回る。ずん、と重たい衝撃が身体を貫き、バランスを崩しそうになった。
「っ……あ……」
揺らいだ視界が戻る。鏡を見ると、そこには私服姿の男――いや、男の姿の“俺”が立っていた。黒髪ショートに普通の体格、性転換される前の、毎日見ていたありきたりな青年の姿。サンタコスはもちろん消えていて、胸のふくらみもない。
「男……に、戻った……!」
思わず息をのむ。さっきまでの女の身体が嘘みたいに消え、言いようのない解放感がある。やっぱり自分にとってはこれが“普通”のはずだ。
しかし同時についさっきまで味わっていたあの“熱”が急に冷めてしまったようで、胸にぽっかり穴が開いた気もする。
「おめでとう。よくやり切ったな。約束の報酬だ」
面接官が封筒を差し出す。ドッサリと札束が入っていそうな重み。何度も味わった屈辱と快感の対価だから、受け取らないわけにはいかない。
「……ありがとうございます……」
手に取ると、面接官がうっすら微笑むように見える。そして、彼は背を向け、ドアのほうへ向かった。
「また働きたくなったら、連絡してこい。次は男のままで……というのもできるし、また女サンタになるのもいい」
その言葉にドキリとする。また会うなんて、絶対に御免だと思う反面、なぜか心が揺れた自分が怖い。そんな折り重なった戸惑いを抱きながら、「はい……」と曖昧に答えてしまう。
部屋を出ると、雑居ビルの廊下は薄暗く、階段の先には夜が明ける気配が迫っていた。俺は封筒を大事に抱え込み、頬を強張らせたままビルを出る。
外に出ると、だんだん東の空が白み始めている。ビルの谷間を抜けて朝の街へと戻るころには、街路には通勤の人々や車が少しずつ増え始めるだろう。
肩まであったはずの髪が今は短い。胸の重みも、甘い声も、もうどこにもない。だけど下腹のあたりが、なぜかまだじんと妙な感じを残している。まるで、さっきまで女だった頃の残り火が名残惜しそうにくすぶっているようで……思わず歩みを止めてしまう。
(なんだ……何がこんなに寂しいんだ……)
男に戻れたんだ。大金も手に入る。念願が叶ったはずなのに、なぜか胸が締めつけられる。この喪失感はなんなんだろう。あの数時間の出来事が夢みたいに思えるのに、身体は確かにあの快感を覚えている。
「はぁ……」
ため息をつきながら、俺は足を引きずるように歩く。クリスマスの深夜が終わりを告げ、街には朝日が差しはじめる。飾り付けが残るショーウィンドウを横目に、ただ足を前へ運ぶ。
サンタ姿で男たちとまぐわい、10個の「証」を集める――そんな体験はきっと二度とない。普通なら忘れ去りたい黒歴史のはずなのに、思い出すだけで胸の奥がざわつく。嘘みたいに美味しかったあの快感を、身体が無意識に求めそうで怖い。
(でも、もう男に戻ったんだから……)
自分に言い聞かせて歩く。行き交う人はまだ少ない。イルミネーションで飾られた街路樹が朝日を受けて霞んでいる。あの瞬間から解放されたはずなのに、足取りが重い理由をうまく説明できない。
ふと見上げれば、空に淡いオレンジがにじみ始めている。長い夜が終わっていく。冷たい風が頬を撫で、心なしか肩の力が抜けてくる。
「……まあ、忘れられないよな」
誰にも聞こえないように小声でつぶやく。戻ってきた“男の声”は、なんだか以前より低く感じる。あの甘い声と女の体が既に恋しい……なんて考えを振り切るために、俺は慌てて前を向き、足早に歩き出した。
朝の陽射しに溶け込むように、俺は人ごみにまぎれていく。10人もの男に抱かれたサンタの夜……もう二度と味わえないはずなのに、あの時の”アキちゃん“の身体がずっと囁きかけている。
(……忘れられないよ、ほんとに……)
固く唇を結んだまま、俺は雑踏の中へ消えていく。
途切れかけたイルミネーションが点滅し、まるで「またね」と名残を惜しむように瞬いた。
アキちゃんの聖夜の物語は、これにて終了。
リアルタイムで追いかけてくださった方、後からじっくり読んでくださった方、本当にありがとうございます。
それはそれとして、TSしてた間の強烈な快感が忘れられなくなっちゃってる男の子ってかわいいですよね。そういう話を書くことがあるかもしれません。